個人型確定拠出年金(個人型DC)の大幅拡充等を柱とした
「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」が本年(2016年)5月24日に可決・成立し、翌6月3日に公布された(平成28年法律第66号)。
これを受けて、一部の金融機関では運用商品ラインナップの見直し・拡充など個人型DCの推進強化を図る動きが早くも見受けられるほか、書籍の世界においても、DCの入門書が相次いで刊行されている。
そこで、
改正DC法成立の煽りを受けて業務多忙を極めているヘタレな当BLOG管理人に代わり、先月から今月にかけて刊行が相次いでいるDCの入門書を数点ご紹介しよう。
◆はじめての確定拠出年金投資(大江英樹著)野村證券でDCの運営管理業務に携わり、独立後は経済コラムニストとして活躍中の著者によるDCの入門書。同じ著者によるDC本には
「自分で年金をつくる最高の方法」があるが、タイトルと内容のそぐわなさやレイアウトの素っ気なさが災いしてか、良書の割にはいまいちパッとしなかった感があった。
そんな前著の反省を踏まえてか、本書は初心者でも読み易くとっつき易いレイアウトに配慮している。また、この種の本を手にする読者が一番知りたがる
「どこの金融機関が良いか」「何に投資すれば良いか」という正解の無い質問に対しても、逃げることなく著者なりの方向性を打ち出している点は好感が持てる。著者は、
行動経済学関連の記事では「何言ってるんだこのオッサン!?」的な言動が散見されるものの、本書については著者のDCにおける実務経験がベースになっており、安心して読める。
2016年上期の確定拠出年金の「入門書」としては早くも最高峰といっても過言ではない。
◆確定拠出年金の教科書(山崎元著)理知的だが歯に衣着せぬ物言いで資産運用業界のみならずマルトタレントとしても名を馳せている山崎元氏による入門書。氏のスタンスは「合理的な個人が合理的な判断を行えば由」という
徹底した個人主義・実力主義に根ざしており、本書もそんな山崎イズムあふれる一冊となっているが、この
「説明は以上。あとは自分で考えろ」というスタンスが、本書のような入門書・教科書では裏目に出てしまっている。
肝心のDCの解説にしても、著者自身にDCに関する確固たる知識や実務経験があるわけではないため、どこか上っ面。山崎氏の最近の著作は
「手数料批判と銀行員・証券マン批判ばかり」との指摘もあるが、その時の歯切れの良さは本書からは微塵も感じられない。山崎師匠から直々に教えを乞いたいという「信者」から見れば星5つなのだろうが、それ以外の者からすると中途半端さは否めない。
◆図解 はじめての確定拠出年金(朝倉智也著)投資信託の格付評価を生業とする
モーニングスター社の社長による、確定拠出年金(DC)の入門書。前半は、DC制度のメリットやおすすめ金融機関について解説しているが、とにかく様々な業態(銀行・保険・証券・ネットetc)の運営管理機関を紹介しており、結局どれがオススメなのかは不明。
投信評価会社ならではの全方位外交の様相を呈しているが、そうした事情を差し引いても「情報量」では類書の中ではピカイチ。
しかし、後半(というか本書の大半)は投資信託や運用スタイルの解説にページが割かれており、やはり
著者の関心はDCよりも投資信託や資産運用にあるのだなあと感じる内容。まあ、それを隠そうともしない馬鹿正直さは逆に好感が持てるが(笑)。各トピックが見開き2ページでまとまっており拾い読み可能で、DCを利用しようと決めた者が具体的な情報収集に用いるには最適。
良くも悪くも投信評価会社ならではの網羅性が特徴である。
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posted by tonny_管理人 at 11:13
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書評:確定拠出年金(DC)
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