2017年05月26日

企業年金の概況(2017年3月末)

毎年5月下旬に公表される「企業年金の受託概況」が、今年も信託協会生保協会JA共済連の連名によりリリースされた。

 ◆企業年金(確定給付型)の受託概況(平成29年3月末現在)
  ■信託協会のリリース
  ■生保協会のリリース
  ■JA共済連のリリース
 (注)上記3つのリリースはいずれも同じ内容。

上記によると、2017年3月末における企業年金(確定給付型)の受託概況は、厚生年金基金が基金数110件(前年度比▲146件)、加入員数139万人(前年度比▲115万人)、資産残高は19兆714億円(前年度比▲5兆1,356億円)となった。2014年4月より施行された改正厚生年金保険法による事実上の縮小・廃止措置を受けて、施行時点に存在した526基金のうちじつに8割が解散または代行変更を済ませた形だ。
一方、確定給付企業年金(DB)は、制度数13,540件(前年度比▲150件)、加入者数818万人(前年度比+23万人)、資産残高は59兆4,429億円(前年度比+1兆5,427億円)となった。制度数は適格退職年金への移行措置が終了した2011年度末以降5年連続の減少となったが、加入者数・資産額は前年に引き続き増加基調にある。

ところで、このプレスリリースを基にした記事が幾つか報じられていたが、中には、業界の実情をちっとも把握していない残念な記事も見られた。

企業年金、確定拠出型への移行進む (SankeiBiz)
信託協会、生命保険協会などが23日発表した企業の確定給付型の今年3月末の年金制度の資産残高は前年同月比4.4%減の78兆5144億円だった。一方、企業型の確定拠出年金は、9.9%増の10兆4794億円となり、確定給付年金からの移行が進んだ。
(2017/5/24 産経新聞)

上記の記事では、厚生年金基金と確定給付企業年金をひっくるめて「確定給付型」「確定給付年金」と明記し、トータルの資産残高が減少していると報じている。しかし、前述した通り、厚生年金基金の資産残高は減少している一方で、確定給付企業年金の資産残高は堅調なマーケットの恩恵を受けてむしろ増加基調にある。法令改正で縮小を余儀なくされている制度とそうでない制度を混同するのは、ミスリードも甚だしい。

また、上記の記事では、確定給付年金からの移行が進んだため確定拠出年金(企業型)の資産残高が増加したとある。しかし、出典元である「確定拠出年金(企業型)の統計概況(平成29年3月末現在)」によると、2017年3月末時点における企業型DCの概況は、規約数5,236件(前年度比+356件)、資産額10兆4,794億円(前年度比+9,479億円)、加入者数592万人(前年度比+42万人)であった。企業型DCの普及は依然として右肩上がりだが、前述のDBの減少分を吸収しているとまでは言えない。

 ◆確定拠出年金(企業型)の統計概況(平成29年3月末現在)
  ■信託協会のリリース
  ■生保協会のリリース
 (注)上記2つのリリースはいずれも同じ内容。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2015/5/27): 企業年金の受託概況(2015年3月末)



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2016年12月10日

個人型確定拠出年金の通信教育ミシュラン2016

本年(2016年)5月に可決・成立した改正DC法の最大の目玉は、何といっても個人型確定拠出年金(個人型DC)の加入対象の拡大である。これまでDC制度の対象外だった公務員や専業主婦も対象となるなど、加入可能となる層(潜在マーケット)が、従来の約3,600万人から約6,700万人とほぼ倍増する。これを受けて、金融機関が運用商品ラインナップを拡充するなどの動きが早くも見受けられるほか、これまで個人型DCの普及にちっとも関心の無かった厚生労働省ですら、iDeCo(イデコ)という(事前に登録商標されていないか回避しまくった果ての)珍妙な愛称を付ける力の入れよう(汗)。

さて、今般の個人型DCの大幅拡充で算盤を弾いているのは、何も金融機関だけではない。金融機関向けの書籍・テキストを専門としている出版社もまた、金融機関向けの個人型DCに関する通信教育講座を相次いで立ち上げている。
そこで、先月からIdeCo担当となり多忙を極めているヘタレな当BLOG管理人が、今年の秋から年末にかけて開講が相次いでいる個人型DCの通信教育講座を4点ご紹介しよう。


◆個人型確定拠出年金の提案セールスに強くなる講座(近代セールス社)
個人型確定拠出年金の提案セールスに強くなる講座個人型確定拠出年金の提案セールスに強くなる講座

近代セールス社
2ヵ月 5,400円(税込)
3ヵ月 7,020円(税込)

老後資金づくりにおける確定拠出年金の重要性を踏まえた上で、確定拠出年金の仕組みを解説しているこの講座。中でも、税制優遇措置の重要性について1章まるまる割いているのは、なかなかの着眼点である。また、自営業者、公務員、専業主婦など、ターゲット別にポイントやトーク例を取り上げているのは、金融機関の職員にとっては実践的である。個人型DCの通信教育テキストとしては最高峰といっても過言ではない。文句なしに星5つ!
(★★★★★)


◆すぐわかる! iDeCo(個人型確定拠出年金)Q&A講座(きんざい)
すぐわかる! iDeCo(個人型確定拠出年金)Q&A講座すぐわかる! iDeCo(個人型確定拠出年金)Q&A講座

きんざい
2ヵ月 10,800円(税込)

金融機関向け専門出版社では最大手の金融財政事情研究会(きんざい)による通信教育講座。同社刊行の「DCプランナー教本」を彷彿とさせるQ&A形式に加えて2色刷りと、読み易さ・とっつき易さに配慮したレイアウトとなっている。しかし、読み物としては秀逸だが、通信教育のテキストとなるとQ&A形式はなかなか頭に入ってこないのがネック。また、今回紹介する通信講座の中では月単価が最高値というのも、マイナス金利の現状に喘ぐ金融機関としては採用すべきか迷うところ。
(★★★★☆)


◆改正確定拠出年金法対応〜iDeCo(イデコ)〜 個人型DC早わかり講座(銀行研修社)
改正確定拠出年金法対応〜iDeCo(イデコ)〜 個人型DC早わかり講座改正確定拠出年金法対応〜iDeCo(イデコ)〜 個人型DC早わかり講座

銀行研修社
2ヵ月 9,800円(税込)
3ヵ月 10,880円(税込)

こちらも金融機関向け専門出版社では老舗の部類に入る銀行研修社の通信教育講座。老舗だけあって、テキストのレイアウトも老舗を思わせるレトロなテイストを醸し出しているのはご愛敬か(汗)。内容については、2分冊のうち2冊目の「投資知識と個人型年金の提案」はそれなりに実践的な内容となっているが、残念ながら1冊目の「確定拠出年金の基礎知識」が無味乾燥かつ退屈な内容に堕している。推察するに、実務を知らない(or金融機関にいたが実務にさほど携わっていない)大学教授に書かせてしまったのが最大の敗因と思われる。
(★★★☆☆)


◆ここだけは押さえておきたい よくわかる確定拠出年金コース(ビジネス教育出版社)
ここだけは押さえておきたい よくわかる確定拠出年金コースここだけは押さえておきたい よくわかる確定拠出年金コース

ビジネス教育出版社
2ヵ月 5,650円(税込)
3ヵ月 7,350円(税込)

「年金制度における確定拠出年金の位置づけや改正のポイントを徹底理解!」という触れ込みに偽りなく、わが国の年金制度を取り巻く環境や、公的年金、私的年金、確定拠出年金の制度解説は充実している。ただし、資産運用・金融商品に関する記述は一切ない。一般向けの解説書ならそれでも良いかもしれないが、金融機関の職員をターゲットとした通信教育テキストとしては、顧客への推進・提案事例に関する解説が皆無というのは、ある意味致命的かもしれない。読み易い文体とレイアウトなだけに、購読層を意識した構成にすべきだった。
(★★☆☆☆)



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2016年06月12日

確定拠出年金の入門書ミシュラン2016

個人型確定拠出年金(個人型DC)の大幅拡充等を柱とした「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」が本年(2016年)5月24日に可決・成立し、翌6月3日に公布された(平成28年法律第66号)。
これを受けて、一部の金融機関では運用商品ラインナップの見直し・拡充など個人型DCの推進強化を図る動きが早くも見受けられるほか、書籍の世界においても、DCの入門書が相次いで刊行されている。
そこで、改正DC法成立の煽りを受けて業務多忙を極めているヘタレな当BLOG管理人に代わり、先月から今月にかけて刊行が相次いでいるDCの入門書を数点ご紹介しよう。


◆はじめての確定拠出年金投資(大江英樹著)
はじめての確定拠出年金投資はじめての確定拠出年金投資
大江 英樹

東洋経済新報社 2016-06-10
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野村證券でDCの運営管理業務に携わり、独立後は経済コラムニストとして活躍中の著者によるDCの入門書。同じ著者によるDC本には「自分で年金をつくる最高の方法」があるが、タイトルと内容のそぐわなさやレイアウトの素っ気なさが災いしてか、良書の割にはいまいちパッとしなかった感があった。
そんな前著の反省を踏まえてか、本書は初心者でも読み易くとっつき易いレイアウトに配慮している。また、この種の本を手にする読者が一番知りたがる「どこの金融機関が良いか」「何に投資すれば良いか」という正解の無い質問に対しても、逃げることなく著者なりの方向性を打ち出している点は好感が持てる。著者は、行動経済学関連の記事では「何言ってるんだこのオッサン!?」的な言動が散見されるものの、本書については著者のDCにおける実務経験がベースになっており、安心して読める。2016年上期の確定拠出年金の「入門書」としては早くも最高峰といっても過言ではない。


◆確定拠出年金の教科書(山崎元著)
確定拠出年金の教科書確定拠出年金の教科書
山崎 元

日本実業出版社 2016-06-09
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理知的だが歯に衣着せぬ物言いで資産運用業界のみならずマルトタレントとしても名を馳せている山崎元氏による入門書。氏のスタンスは「合理的な個人が合理的な判断を行えば由」という徹底した個人主義・実力主義に根ざしており、本書もそんな山崎イズムあふれる一冊となっているが、この「説明は以上。あとは自分で考えろ」というスタンスが、本書のような入門書・教科書では裏目に出てしまっている。
肝心のDCの解説にしても、著者自身にDCに関する確固たる知識や実務経験があるわけではないため、どこか上っ面。山崎氏の最近の著作は「手数料批判と銀行員・証券マン批判ばかり」との指摘もあるが、その時の歯切れの良さは本書からは微塵も感じられない。山崎師匠から直々に教えを乞いたいという「信者」から見れば星5つなのだろうが、それ以外の者からすると中途半端さは否めない。


◆図解 はじめての確定拠出年金(朝倉智也著)
図解 はじめての確定拠出年金 (お金のきほん)図解 はじめての確定拠出年金
朝倉智也

学研プラス 2016-05-17
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投資信託の格付評価を生業とするモーニングスター社の社長による、確定拠出年金(DC)の入門書。前半は、DC制度のメリットやおすすめ金融機関について解説しているが、とにかく様々な業態(銀行・保険・証券・ネットetc)の運営管理機関を紹介しており、結局どれがオススメなのかは不明。投信評価会社ならではの全方位外交の様相を呈しているが、そうした事情を差し引いても「情報量」では類書の中ではピカイチ。
しかし、後半(というか本書の大半)は投資信託や運用スタイルの解説にページが割かれており、やはり著者の関心はDCよりも投資信託や資産運用にあるのだなあと感じる内容。まあ、それを隠そうともしない馬鹿正直さは逆に好感が持てるが(笑)。各トピックが見開き2ページでまとまっており拾い読み可能で、DCを利用しようと決めた者が具体的な情報収集に用いるには最適。良くも悪くも投信評価会社ならではの網羅性が特徴である。



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2016年03月29日

2016年度の企業年金の予定利率

厚生労働省は本日3月29日、厚生年金基金および確定給付企業年金の財政検証に用いる2016年度の利率を告示した(厚生労働省告示第110〜112号、年企発第0329第1号)。継続基準に用いる予定利率の下限は0.3%非継続基準に用いる利率は1.76%となり、予定利率が自由化された1997年以降では4年連続で史上最低水準を更新した。当該利率の根拠となる国債の応募者平均利回りは、財務省Webサイトの「国債入札カレンダー」から入手できる。

それにしても、ただでさえ金利水準は低下基調だったのに、今年に入りわが国でもマイナス金利政策(マイナス金利付き量的・質的金融緩和)が導入されたのを受けて、ひょっとすると将来、企業年金の予定利率もマイナスで告示・通知される時代が到来するのだろうか・・・?(汗)
なお、各企業年金制度における下限予定利率の推移は以下のとおり。

◆継続基準の予定利率
 <年度> <厚年> <DB>   <算定根拠>
 1997年  4.0%   ──   10年国債応募者平均利回りの5年平均
 1998年  3.4%   ──         
 1999年  2.9%   ──         
 2000年  2.4%   ──         
 2001年  2.0%   ──         
 2002年  1.2%  1.2%  5年平均または1年平均のいずれか小さい率
 2003年  1.2%  1.2%       
 2004年  0.9%  0.9%       
 2005年  1.3%  1.3%       
 2006年  1.2%  1.2%       
 2007年  1.3%  1.3%       
 2008年  1.4%  1.4%       
 2009年  1.5%  1.5%       
 2010年  1.3%  1.3%       
 2011年  1.1%  1.1%       
 2012年  1.1%  1.1%       
 2013年  0.8%  0.8%       
 2014年  0.7%  0.7%       
 2015年  0.5%  0.5%       
 2016年  0.3%  0.3%       



非継続基準については、利率そのものは告示等で定められているものの、2003年以降は、当該利率に0.8〜1.2の調整率を乗ずることが可能となっている。非継続利率の推移は以下のとおり。

◆非継続基準の予定利率
 <年度> <厚年> <DB>   <算定根拠>
 1997年  4.75%   ──   20年国債応募者平均利回りの5年平均(小数点以下0.25揃え)
 1998年  4.00%   ──         
 1999年  3.50%   ──         
 2000年  3.00%   ──         
 2001年  2.75%   ──         
 2002年  2.50%  2.50%       
 2003年  2.23%  2.23%  (小数点以下0.25揃えを廃止)
 2004年  2.29%  2.29%  30年国債応募者平均利回りの5年平均
 2005年  2.20%  2.20%       
 2006年  2.17%  2.17%       
 2007年  2.20%  2.20%       
 2008年  2.27%  2.27%       
 2009年  2.44%  2.44%       
 2010年  2.38%  2.38%       
 2011年  2.32%  2.32%       
 2012年  2.24%  2.24%       
 2013年  2.13%  2.13%       
 2014年  2.00%  2.00%       
 2015年  1.90%  1.90%       
 2016年  1.76%  1.76%       



※参考資料
企業年金制度における各利率の設定基準(日本年金数理人会) (pdfファイル)
◆10年国債応募者平均利回り (当BLOG作成)
 keizoku-rate2016.jpg
◆20年・30年国債応募者平均利回り (当BLOG作成)
 hikeizoku-rate2016.jpg


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2014/3/21): 2014年度の企業年金の予定利率
The企業年金BLOG(2007/3/16): 企業年金の予定利率の算出根拠とは



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2015年12月31日

そういえばBLOG開設10周年だった

2005年11月、経済シンクタンクに出向中だった時に暇に飽かせて開設したこのBLOGも、気づけば早10年が経過した次第。

当時は、企業年金に関する情報がweb上には殆ど無かった時代。ごく少数の有益なサイトへのリンク集&備忘録が当初の目的だった当BLOGだが、気がつけば、企業年金をめぐるトンチンカンな報道に対する反論と毒を撒き散らす場となってしまったのはご愛嬌(汗)。

当BLOG開設からの10年間を振り返ると、企業年金を取り巻く情勢は、運用益過去最大→リーマンショック→AIJ事件→厚生年金基金縮小→アベノミクスで運用益回復、とジェットコースターばりの変動だった。また、当BLOG管理人自身も出向・転職など10年前には予想だにしなかった展開を経ている。

近年は本業が多忙を極めており、またリアルでの執筆・講演の機会も増えたことから更新も滞りがちな当BLOGだが、引き続きご愛顧のほど宜しくお願い申し上げます。




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2015年12月23日

「リスク分担型DB」に関する独断と偏見

会社が運用・給付変動の新年金制度 16年度にも  (日本経済新聞 電子版)
企業が運用し、運用成績次第で加入者が受け取る年金額が変わる第3の企業年金制度の内容が9日、固まった。企業が20年に1度程度の運用損失に備えて特別な掛け金を出すように義務付ける一方、リーマン・ショックのような経済危機などで年金財政が想定外に大幅悪化した場合には給付額を減らす。リスクを労使で分け合う仕組みだ。将来の公的年金の目減りが避けられないなか、選択肢を増やして企業年金を維持しやすくする。
(2015/12/10 日経朝刊 1面)

本年6月公表の日本再興戦略改訂2015に盛り込まれたことを受けて、9月16日の第16回社会保障審議会企業年金部会で急遽検討・了承され、首尾よく2016年4月から施行可能とあいなった新ハイブリッド型年金制度(リスク分担型DB)。新しモノ好きの日経新聞なんぞは「第3の企業年金」だのと発泡酒の飲み過ぎとしか思えない見出しで煽っているが、所詮は給付建て(確定給付型:DB)と掛金建て(確定拠出型:DC)の混合あるいは組合せに過ぎない。ハイブリッド型年金制度は、DBとDCの利点を組合せて一つの制度にしようとするものであるが、DBとDCを組合せたからといって、双方のデメリット「だけ」が消失するわけではないことに留意が必要である。

さて、来年度(2016年度)より実施可能となるリスク分担型DBだが、法令上はDBにおける給付設計の一形態として制定されるが、運用実績に連動して給付が増減する点や(下図参照)、退職給付債務(PBO)の認識が不要となる点では、DCに近い性質を有していると言える。
20151223hybrid2.jpg


よって、本制度を導入するか否かの価値判断は、この制度を「DBとして見るか」あるいは「DCとして見るか」によって異なってくる。当BLOG管理人の独断と偏見でまとめると、以下の通り。

◆DBとしてみた場合・・・
 ・退職給付債務(PBO)の認識が不要なDB
 ・給付が変動する退職給付信託
◆DCとしてみた場合・・・
 ・個人勘定を持たないDC
 ・投資教育が不要なDC
 ・中途退職しても一時金が貰えるDC
 ・運用商品数に制約が課されないDC ※改正DC法案が可決・成立した場合

こうして見ると、リスク分担型DBは、DBのデメリットよりもDCのデメリットが数多く解消される制度であることがわかる。今春に国会提出された改正DC法案では、ポータビリティの拡充策として「DCからDBへの移行解禁」も盛り込まれており、ひょっとすると、既存DBからの移行よりも既存DCからの移行による導入が相次ぐかもしれない。



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2015年07月23日

個人型DCの金融機関比較サイトが花盛り

個人型確定拠出年金(個人型年金、個人型DC)といえば、制度創設当初から企業型DCの陰に隠れており、2015年3月末時点の加入者数は、企業型DCの505万人に対し個人型DCはようやく20万人を突破したという体たらく。
ところが、本年4月に国会提出された改正DC法案において個人型DCの加入対象の大幅拡充が措置されるに至り、金融機関の個人型DCに対する姿勢がようやく変わりつつある。こうした動きを受けて、個人型DCの運営管理機関の比較サイトもかつてないほど充実しつつある。今回は、そんな個人型DCの金融機関比較サイトを何件かご紹介しよう。

◆モーニングスター 個人型確定拠出年金の総合ポータルサイト (MORNINGSTAR)
 ・旧サイト
  モーニングスター 個人型確定拠出年金の総合ポータルサイト(旧)

 ・新サイト
  モーニングスター 個人型確定拠出年金の総合ポータルサイト(新)

個人型DCの金融機関比較サイトの草分け的存在。「手数料水準」および「運用商品数」による比較が可能。開設当初は社会保険労務士の北村庄吾氏を前面に押し立てた構成だったが、情報更新の頻度にやや難があった。新サイトでは、更新がタイムリーに行われるようになり、情報の鮮度は格段に向上した。原則ログインが必要だが、ユーザー登録は誰でも無料で行える。個人型DCヲタクとしてはまずチェキラしておきたい。


個人型確定拠出年金 運営管理機関別手数料一覧 (DC協会)
  個人型確定拠出年金 運営管理機関別手数料一覧(DC協会)

DCアドバイザー資格を主宰するNPO法人DC協会(確定拠出年金教育・普及協会)による比較コーナー。「手数料水準」の比較が可能。開設は2015年1月と割と最近だが、昇順・降順の並べ替えができないなど検索性・比較性に欠けるのが難点。今後の操作性の改善・向上に期待したい。


個人型確定拠出年金ナビ (401k教育協会)
  個人型確定拠出年金ナビ(401k教育協会)

DCに関するアンケート調査等で定評のあるNPO法人401k教育協会(確定拠出年金教育協会)による、今月(2015年7月)設立されたばかりの比較サイト。「手数料水準」および「運用商品数」による比較が可能。手数料の昇順・降順の並べ替えが「加入時」「運用時」「受取時」等に細分化されるなど、より精緻な比較が可能。これまで個人型DCの手数料比較と言えば、運営管理手数料が0円という理由だけで「S●I証券」や「ス●ガ銀行」をバカの一つ覚えのように推奨するヘッポコWebサイト・ヘッポコFPが多数だったが、DCのような長期積立投資では時間の経過とともに信託報酬のインパクトが大きくなるため、信託報酬(残高比例)を踏まえた比較が可能な同サイトの利用価値は高いと言えよう。



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2015年06月02日

「図表でみる世界の年金」2013年版

OECDレポートの日本語版(8年ぶり2回目)

図表でみる世界の年金 2013年版図表でみる世界の年金 OECDインディケータ(2013年版)
OECD編著 岡部史哉訳

明石書店 2015-05
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原著はOECD編著「Pensions at a Glance」シリーズの2013年版。本シリーズは、2005年の初版刊行以降2年毎に刊行されているが、日本語版の刊行は、2005年版の邦訳「図表で見る世界の年金:公的年金政策の国際比較」以来8年ぶり2回目となる。
本書は、OECD加盟国およびG20諸国の計42カ国の公的年金制度を中心に、「相対的年金水準」「総所得代替率」などの尺度で比較検証を行ったものである。本書で用いられている指標は統一的な指標による定量比較を目的としており、各国の社会経済情勢や制度の歴史的経緯を無視した鵜呑みは禁物だが(この点は翻訳者もあとがきで言及している)、海外の公的&私的年金制度について詳細な分析を行っている類書は皆無なだけに、希少価値は大きい。

本書を読んで考えさせられるのは、少子・高齢化および経済の成熟化によって年金制度の持続可能性が問われているのは、日本だけでなく先進諸国が抱える共通の課題(新興国にとっては将来起こりうる課題)であり、どの国も制度の持続可能性と給付水準の十分性とのバランスを取るため試行錯誤していること。そして、年金制度以外の経済社会要因(就労環境、住宅、経済成長etc)もまた重要であるということ。年金制度改革に必要なのは、抜本改革という名の実現不可能な空論ではなく、現実に知恵を出し合って乗り切る以外にないことを、本書は示唆してくれる。


<参考資料>
日本語概要(OECD東京センター)
原文ファイル(OECD web site) (pdfファイル)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/3/26): OECD「Pensions at a Glance」2011年版が公表
The企業年金BLOG(2010/3/8): 掛金拠出期間と年金受給期間の関係
The企業年金BLOG(2010/3/5): 平均余命と年金支給開始年齢の関係
The企業年金BLOG(2009/12/5): OECDが提唱する日本の年金改革(総論)
The企業年金BLOG(2009/6/25): OECDの公的年金所得代替率に関する留意点
The企業年金BLOG(2008/5/15): 「図表でみる世界の年金」2005



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2015年05月28日

「確定給付企業年金Q&A」がひっそりと更新

厚生労働省ホームページに「確定給付企業年金Q&A」というコンテンツがあるのをご存じだろうか? 「確定給付企業年金Q&A」は、確定給付企業年金制度の法令・通達等について、項目別(加入者、給付、給付減額、掛金、制度間移行etc)にQ&A形式で解説したもので、2011年7月に公表された際には当BLOGでも取り上げている。今般、当該Q&Aが公表以降初めて更新された。具体的には、かつての適格退職年金に係る項目や給付減額の理由要件に係る項目が整理されトピック総数が102から88に減少したほか、掲載方法がHTMLテキスト形式からpdfファイル形式に変更された。新旧Q&Aのトピック数の比較は、以下の通り。

 <項目>     <旧版>        <新版>
・加入者     13個(No. 1〜13)   13個(No. 1〜13)
・給 付     44個(No.14〜57)   44個(No.14〜57)
・給付減額   14個(No.58〜71)    8個(No.58〜65)
・掛 金    10個(No.72〜81)    9個(No.66〜74)
・積立金     3個(No.82〜84)    2個(No.75〜76)
・制度間移行 10個(No.85〜101)  10個(No.77〜88)
・規約変更    1個(No.102)          ────
    計        102個          88個

<参考リンク>
新版「確定給付企業年金Q&A」 (厚生労働省ホームページ)
旧版「確定給付企業年金に関するQ&A」 (Internet Archiveにて復元)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/7/20): 厚生労働省「確定給付企業年金に関するQ&A」



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posted by tonny_管理人 at 01:20 | Comment(0) | TrackBack(0)
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2015年05月27日

企業年金の概況(2015年3月末)

毎年5月下旬に公表される「企業年金の受託概況」が、今年も信託協会生保協会JA全共連の連名によりリリースされた。

 ◆企業年金(確定給付型)の受託概況(平成27年3月末現在)
  ■信託協会のリリース
  ■生保協会のリリース
  ■JA全共連のリリース
 (注)上記3つのリリースはいずれも同じ内容。

上記によると、2015年3月末における企業年金(確定給付型)の受託概況は、厚生年金基金が基金数444件(前年度比▲87件)、加入員数363万人(前年度比▲55万人)、資産残高は31兆2,882(前年度比+3,581億円)となった。2014年4月より施行された改正厚生年金保険法(正式名称:公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律)を受け、じつに87もの基金が解散・代行返上したにもかかわらず、資産残高はむしろ微増している。
一方、確定給付企業年金(DB)は、制度数13,884件(前年度比▲394件)、加入者数782万人(前年度比▲6万人)と、3年連続で制度数・加入者数が減少という結果となった。資産残高は58兆4,636億円(前年度比+4兆8,515億円)と依然増加基調にあるが、これを「資産運用の効率化を企図した制度の集約」とみるか、「企業のDB離れ」とみるか、判断は分かれよう。

なお、運営管理機関連絡協議会、信託協会および生命保険協会の連名で同時に公表された「確定拠出年金(企業型)の統計概況(平成27年3月末現在)」によると、2015年3月末時点における確定拠出年金(DC企業型)の状況は、規約数4,572件(前年度比+191件)、資産額7兆4,871億円(前年度比+1兆3,132億円)、加入者数507万人(前年度比+41万人)であった。DCは普及が依然として右肩上がりだが、前述のDBの減少分を吸収しているとまでは言えない。

 ◆確定拠出年金(企業型)の統計概況(平成27年3月末現在)
  ■信託協会のリリース
  ■生保協会のリリース
 (注)上記2つのリリースはいずれも同じ内容。

なお、現在国会提出されている「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」では、個人型DCの加入対象の拡大等が大きな柱となっている。数年後には、個人型DCの統計概況なんてものも公表されるようになるかもしれない。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2014/5/27): 企業年金の受託概況(2014年3月末)
The企業年金BLOG(2013/5/27): 企業年金の受託概況(2013年3月末)



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posted by tonny_管理人 at 06:13 | Comment(0) | TrackBack(0)
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