2005年11月25日

満期保有目的債券の簿価評価

年金運用の独立法人、国債を満期保有 (NIKKEI-NET)
厚生労働省と同省所管の特殊法人、年金資金運用基金は公的年金の積立金で運用する国債について、来年度から満期まで売却せずに保有する方針を固めた。満期保有を前提に国債を時価評価の対象から外し、取得原価(簿価)を計上する方式に改める。市場金利の変動による影響を受けにくくする狙いだが、「時価主義の流れに反する」という指摘もある。
国民年金と厚生年金の積立金のうち、年資基金が市場運用しているのは58兆円(2005年3月末)で、国債は約30兆円と過半を占める。来年4月に年資基金が独立行政法人に改組されるのに合わせて、保有する国債の約8割を満期まで持ち続けることにする。残りは金融機関に運用を委託し、相場環境を見ながら売買する。
(2005/11/12 日経朝刊 1・4面)

企業会計基準(金融商品に係わる会計基準)では、満期保有目的債券は簿価(正確には償却原価法)で評価することとされている。上記の記事は、この会計基準を公的年金の資産運用にも適用しようというものである。金利上昇が懸念される昨今、金利が上昇(=債券価格が下落)しても評価損を出すまいという意図だろう。

これには、「時価主義の流れに反する行為」「きちんと実態を把握してこそ資産運用だ」「評価方法の恣意的な変更は許されない」といった批判が噴出している。これらの批判は至極真っ当ではあるのだが、一つ気になる点がある。

企業会計基準が満期保有目的債券の簿価評価を認めているのは、「満期まで保有することによる利息収入確保を目的としていることから、満期までの間の金利変動による価格変動リスクは認めずとも良い」という論拠らしい。しかし、そもそもこの会計基準自体は妥当なのだろうか!?
今回の年金資金運用基金の措置を批判するならば、企業会計基準そのものについても妥当性を問うのが筋だと思うのだが、マスメディアやネットを見渡した限りでは、その点にまで言及してる発言は皆無であった。

個人的には、年金運用の目的が運用収益を稼ぐことにある以上、保有目的は何であれ債券もまた投資有価証券(こちらは企業会計基準でも時価評価が必須)であり、よって時価認識こそ合理的であると考える。むしろ、投資有価証券は原則時価評価としつつも「満期保有目的債券なら簿価評価OK」という恣意性テンコ盛りの処理を残している企業会計基準の方こそ珍妙に感じる。会計の専門家でもない素人の戯言だが、どなたか専門家の方からご意見をいただけると幸いである。

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ちなみに、同様の措置は企業年金(厚生年金基金・確定給付企業年金)についても2004年より認められている。

年金経理では、積立金の価格下落により積立不足が生じた場合、通常は掛金拠出の増加といった措置が求められる。しかし、満期保有目的債券を簿価評価にすると、金利変動による資産価格の変動の影響を受けにくくなるため、積立不足の発生を抑制できる。ただし企業の最終的な負担が減るわけではなく、あくまでも金利変動の影響を受けにくくなるだけの話である。

ところが、退職給付会計では事情が少々異なる。まず退職給付会計では年金資産はどのみち時価評価である。また、積立金の価格下落により損失(正確には期待運用収益との差額)が生じても、当該損失分は「数理計算上の差異」として次年度以降に遅延認識していくため、掛金拠出の増加が求められるわけではない。要は、退職給付会計とはあまり関係ないという事だ。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/3/23): 公的年金の債券運用、結局時価評価に






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posted by tonny_管理人 at 12:27 | Comment(2) | TrackBack(2)
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