2005年12月31日

代行部分の会計処理をめぐる論争

厚生年金の代行部分「退職給付債務」 会計処理でさや当て (日経金融新聞)
厚生年金基金が国に代わって運用している厚生年金の代行部分の会計方法をめぐり、基金と会計士の間で論争が起きている。基金に給付責任のない部分は退職給付債務から除くべきだとする基金側に対し、これまでの会計ルール通りに全額を債務とするよう主張する会計士側。議論が紛糾し、年内に出るはずだった結論は来年に持ち越された。企業財務に大きな影響を与えるだけに、議論の行方に注目が集まっている。
(2005/12/26 日経金融新聞 3面)

当記事は、厚生年金基金の代行部分の会計処理をめぐり「従来通りのルールで債務を評価すべし」とする会計士サイドと「代行部分の正当な評価額である最低責任準備金で評価すべき」とする厚生年金基金サイドの間で論争が起きているというものである。

2001年3月期決算より導入された退職給付会計基準により、退職金や企業年金の積立度合いが母体企業の財務諸表に反映されるようになった。退職時に見込まれる退職給付の総額(退職給付見込額)のうち期末までに発生している分を、一定の割引率で割引計算したものを退職給付債務としている。退職給付会計基準の導入自体は「簿価から時価への移行」という時価主義の流れに沿ったものであり、異論を挟む余地は全く無い。当記事で論点になっているのは、退職給付債務のうち厚生年金基金の代行部分についてである。

代行部分の法律上の債務は、厚生年金保険法等で定められた最低責任準備金である。基金が代行返上を行う際は、この最低責任準備金相当額を返還すれば良い。ところが現行の退職会計基準では、この代行部分についても上乗せ部分(=純正な企業年金部分)と同様に割引計算することを求めている。退職給付債務の割引率には長期国債などの利回りが主に用いられるが、昨今の低金利を反映して割引率は低くなっているため、代行部分の退職給付債務は一般的に最低責任準備金よりも大きくなる。つまり、代行部分についても現在の会計基準を機械的に適用するため、返上時に支払えばよい額(最低責任準備金)を不当に超過している事になる(下図の黒塗りの部分)。

20051226_kaikei.jpg

現行基準では、低金利下では「代行部分の退職給付債務>最低責任準備金」となる一方、金利上昇局面では逆に「代行部分の退職給付債務<最低責任準備金」となる。金利変動でここまで債務がフラフラするようでは、そもそも認識方法自体に問題があると言わざるを得ない。代行部分については、最低責任準備金という明確なモノサシがある以上、素直にこれを用いるのが「現状を正確に写し出す」という会計の役割に則したものだと思うが。

ここ1・2年、代行返上により特別利益を計上する企業が相次いでいるが、これはまさに、代行部分について過大な債務認識を強いられていたものが代行返上により解除されたためであり、実際にそれだけの資金が企業に入る訳ではない。つまり代行返上益なんて見せかけに過ぎないってこと。
しかもこの会計処理には「原則は過去返上完了時に損益を計上するが、将来返上認可時点でも損益計上できることとする」という特例がある。要は、代行返上の意思表示さえすれば未実現の利益を計上してもOKつうこと。おいおい、飲み屋のツケ払いじゃないんだから!

ここまでくると、粉飾決算の片棒を担いでいるようなもの。「代行部分と私的年金とで分割管理されていない」とする会計士サイドの主張も分からぬでもないが、一方でルールの厳格化を唱えながら、もう一方では特例措置による事実上の野放し状態では説得力に欠ける。これは連結会計の全額時価評価法や税効果会計の繰延税金資産にも言える。

もっとも、基金サイドの反撃も遅きに失した感がある。単独・連合型基金(大企業が中心)の85%以上がすでに代行返上に動いており、2005年12月1日現在で残っているのは僅か145。代行返上は既に終盤局面にある。これもひとえに年金基金サイドの政治力の無さの賜物か(汗)。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG: 代行部分の会計処理、進展見られず
 
 厚生年金の代行部分「退職給付債務」 会計処理でさや当て (記事全文)






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2005年12月29日

「会計のことが面白いほどわかる本 会計の基本の基本編」

天使とウサギによる会計談義

会計のことが面白いほどわかる本 会計の基本の基本編会計のことが面白いほどわかる本 会計の基本の基本編
天野 敦之

中経出版 2001-04
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それまで日商簿記3級に2回連続不合格(汗)をくらうほどの会計オンチだった当BLOG管理人を、一転して会計の魅力に目覚めさせる契機となった一冊。会計の役割・本質について対話形式で丁寧に解説しており、会計を学ぶ第1冊目としては最適。いきなり簿記の問題集に取り組むのも一つの手だが、その前に本書で会計の本質に触れておくと、その後の理解が加速すること必至。本書に出会わなかったら、証券アナリスト試験の「財務分析」は到底クリアできなかったであろう。まさにタイトルに偽り無しを実体験した次第。なお姉妹編に「新会計基準の理解編」もあり、コチラもなかなかの出来。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/11/25): 「会計のことが面白いほどわかる本」会社法対応版



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2005年12月26日

「企業年金コンサルタント養成講座」

"企業年金"コンサルタントとは大きく出たものよ

consultant企業年金コンサルタント養成講座

金融財政事情研究会

日商・金財が主催するDCプランナー試験の1級向け通信講座。6分冊+2別冊から成っており、計算すると1冊あたり約5,000円(汗)。
金融機関の並居る面々が執筆・編集しただけあって、金融機関サイドに都合の良い理論一辺倒かと思いきや、さに非ず。あの山崎元氏も編集に関わっており、「手数料は確実なマイナス要因だ」「仕組みを理解できない商品は買うな」等々、金融業界を敵に回して憚らない山崎イズム全開の内容となっている。読み物としてはなかなか面白い。

ただし、試験対策用としてはやや重装備な感がある。DCプランナー試験は4つの分野(A:公的・私的年金、B:確定拠出年金、C:投資、D:ライフプラン)から構成されているのに対し、当講座は6分冊。中身もA〜D分野の区分があいまいで、過去問をやってても該当事項を6冊の中から探すのに苦労した。また制度移行に関する記述が無駄に多く、この事項だけで2冊分は軽く水増しされている印象を受ける。試験ではせいぜい応用編で1問出る程度だろうに。
とはいえ、DC試験対策用の書籍なんてそもそも選択肢が少ないし、通信添削は試験傾向に即してイイ感じなことから、余裕資金のある向きは買っておいて損は無い。



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2005年12月24日

「資産運用のパフォーマンス測定」

入門と実務の絶妙なバランス

資産運用のパフォーマンス測定―ポートフォリオのリターン・リスク分析資産運用のパフォーマンス測定―ポートフォリオのリターン・リスク分析
砺波 元

金融財政事情研究会 2000-08-01
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当BLOG管理人が資産運用実務において最も役に立った書籍がコレ。以前紹介した「基礎から学べる投資・運用関連数式集」と同じ著者による一冊。資産運用におけるリスク・リターンの計算方法に特化した書籍としては最高の分かり易さを誇る。投資理論関連の書籍を読んでいて一度は目にしたことのあるデュレーションベータトラッキングエラーといった専門用語の概念を簡易な例題を用いて解説しており、例題を実際に手で解くことにより実感できる仕組みが秀逸。また、同じ時間加重収益率でも厳密法修正ディーツ法の違いなど、取り扱っている項目も実務を多分に意識しており心憎い。業界の新入社員・新任担当者にオススメの一冊。



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2005年12月22日

「労働組合のための退職金・企業年金制度移行対応ハンドブック」2006年版

労働組合のための退職金・企業年金制度移行対応ハンドブック(2006年版)労働組合のための退職金・企業年金制度移行対応ハンドブック(2006年版)

日本労働組合総連合会
NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク 共編
2005-11

先日紹介した「労働組合のための退職金・企業年金制度移行対応ハンドブック」だが、今月に入ってから改訂版が出たとのこと。イデオロギー色を排除して情報を整理することに注力した構成は、前版同様使い勝手が良い。今回は「退職金前払い」「高齢者雇用」「企業年金のポータビリティー」に関するトピックが新たに加わっている。



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2005年12月21日

「年金財政シリーズ1 基金財政のしくみ」

買うなら第3版以降

zaisei1年金財政シリーズ1 「基金財政のしくみ」(第3版)

企業年金連合会 2003-02

年金数理にまつわるあらゆるトピックを扱った年金財政シリーズの第1巻。「企業年金関係者に年金財政の理解を深めてもらう」──というフレコミとは対照的に、以前入手した第2版は、文章と数式の羅列で嘆きたくなるほど理解が深まらなかった事を記憶している(汗)。

ところが2003年に刊行された第3版は、図表をこれでもかとテンコ盛りに用い出したからたまげた。特に21ページの「現価」の概念図や、57ページ以降の「弾力償却」「定率償却」のイメージ図は、思わずパクらずには インスパイアせずにはいられない出来。厳密性に欠ける部分もあるものの、入門書としては十分。余談だが、以前はこれがたったの1,500円で購入できたのだが、版元が社名変更した2005年10月以降、一気に4,200円に跳ね上がった。山頂の自動販売機も真っ青のインフレぶりである(汗)。

このシリーズ、今回のように目を見張るべき良書があるかと思えば、未だ改訂される気配も無いグダグダな本もあったりして、冊子によって玉石混合。他の冊子についても、機を見て取り上げて行きたい。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/4/19): 「新年金財政シリーズ 年金財政入門」第5版



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2005年12月19日

「年金改革の原点―『年金の鬼』からのメッセージ」

故きを温ねて新しきを知る

年金改革の原点―「年金の鬼」からのメッセージ年金改革の原点―「年金の鬼」からのメッセージ
久保 知行

ぎょうせい 2005-09
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先日の記事で税方式論者の書籍についてレビューした以上、社会保険方式を支持する側の言い分についても紹介しておかないとフェアじゃなかろう。社会保険方式論者と聞いてまず思い付くのは法律・社会保障学系の学者(厚生省OB多し)だが、彼らもまた経済学者らと同様、自説に対する愛情の深さゆえか、反対論を無知と切り捨てたり無視を決め込むきらいがある。学者ってこんなんばっかりやね(汗)

そんな中、公的年金改革を議論する上で当BLOG管理人が最も自信をもってオススメするのが本書。本書がスポットを当てているのは、基礎年金制度の導入等を盛り込んだ昭和60年年金改正時の厚生省(現厚生労働省)の年金局長を務め、病魔に侵されつつも年金改革に邁進し「年金の神様」「年金の鬼」と呼ばれた故山口新一郎氏。そんな氏のエピソードや語録を引用しつつ、現在の公的年金制度の課題やその対応策を模索する内容となっている。適切かつ本質に迫った解説も然ることながら(個人的には図表2-5や図表7-4には思わず唸らされた)、「鬼」の足跡を辿ることによって制度創設・改正の理念や歴史的経緯を回顧させるという構成がユニーク。

驚くべきことは、本書が厚生省のOBでも部下でもない、民間の年金数理人(アクチュアリー)の手によって著された事である。専門性と中立性を兼ね備えた著者による「経過措置を重ねるため複雑化してしまう年金制度において、過去(歴史)を知らずして現在や未来を語ることは浅薄である」という言葉は重い。


<この本を読んで欲しい方>
 ・効率性や損得諭にしか目が行かない経済学者ご一行様
 ・制度充実一辺倒でコスト意識が希薄な社会保障学者ご一行様
 ・国民の不安解消に関心を示さない政治家、官僚ご一行様
 ・制度不安を煽ることしか能の無いマスゴミご一行様
 ・公的年金改革に関心のある全ての方


そういえば、ここんとこ公的年金ばっかり扱っていて、"企業年金ブログ"の体を成していない感がある(汗)。次回から仕切り直しつうことで宣しこ。




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2005年12月17日

公的年金運用、過去最高の黒字

年資基金、7―9月運用利回りは5.22%・運用益は過去最高 (NIKKEI-NET) 
公的年金積立金の一部を株式や債券で運用する年金資金運用基金は15日、2005年7―9月の運用実績を発表した。運用利回りは5.22%で4四半期連続のプラス。03年4―6月(6.25%)以来の高水準となった。国内外株式の運用が好調で、運用益は過去最高の3兆1240億円に達した。
運用実績を資産別にみると、利回りが最も高かったのは国内株式の21.47%。外国株式(8.11%)、外国債券(2.21%)もプラスだった。国内債券は金利上昇(債券価格は低下)の影響を受け、1.31%のマイナスだった。2005年度上半期(4―9月)の利回りは6.74%で、運用益は3兆9831億円。
(2005/12/16 日経朝刊 7面)

2002年度末には6兆円もの赤字を抱えていた年金資金運用基金(旧年金福祉事業団)だが、気が付けば4兆円近くの黒字だとか(!)。年資基金への批判として「役人(正確には団体職員なのだが)ごときに運用なんて無理」と良く言われるところだが、では彼らの運用手法がここ数年で改善されたのかというと、んな事ぁ無い(byタモリ)。

つまるところ運用なんて環境に拠るところが大きいのだが、重要なのは、そうした環境変化に一喜一憂せず価格変動リスクを長い目で甘受すれば、ある程度のリターンも見込めるということだ。こうした「長期投資」に最も適している資産の一つが年金マネーであり、現時点ではたまたまそれが良い方向に転んでいるだけのハナシ。公的年金運用への批判が喧しかった数年前に慌てて株式を売却して全額債券運用などしていたら、果たして今回のような成果は得られていただろうか?
もちろん今後どう環境が変化するかは分からないため過信は禁物だが、長期的視野を保つことの重要性と難しさを認識する意味では良い機会だったのではないか。少子高齢化により保険料収入の先細りが叫ばれる昨今、賦課方式とはいえ、運用収益が公的年金財政に少しでも寄与してくれると良いのだが。

それにしても、これだけの成果を挙げたにも関わらず、マスメディアはベタ記事扱い赤字の時は「1面見出し+関連記事」のコンボでこれでもかと罵るくせにねえ。まったくもう・・・(by長井秀和)。

上手く運用して結果を出しても給料が増える訳でもなく、さりとて下手をやらかしたらマスコミからバッシングの嵐。公的年金運用という仕事はつくづく報われないものよ。こんな損な役回り、貴方は引き受ける?

・・・自分はまっぴら御免ッス(汗)。
 

<関連エントリ>
The企業年金BLOG: 企業年金の運用利回り報道に関する留意点
The企業年金BLOG: 年金問題は企業の重要な経営課題ではなくなった!?



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2005年12月16日

「消費税15%による年金改革」

消費税方式論者のガイドライン

消費税15%による年金改革消費税15%による年金改革
橘木 俊詔

東洋経済新報社 2005-08-31
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本書のレビューを書こうとしていたら、丁度良いことに、先日見学したRIETI政策シンポジウム「日本の年金制度改革」のパネルディスカッションに著者本人がパネリストとして名を連ねていたので、今回はその様子も踏まえてご報告しよう。

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本書は「1階部分は全額消費税負担で定額給付、2階部分は民営化」という、絵に書いたような税方式論を展開している。経済的効率性に重点をおいた主張は経済学者ならではだが、巷で取り沙汰される「消費税の逆進性」批判に対抗するべく、食料品には低く贅沢品には高い「累進消費税」の導入を提唱するなど、消費税に抵抗を感じる向きにも配慮した姿勢を見せており心憎い。しかし、税方式の優位性を強調するあまりに、自説のデメリットについては過小評価している感がある。

  「消費税収や経済成長率だって、人口動態の影響を受けるのでは?」
  「税率を上げると低中所得者は貯蓄に走るから効果が薄まるのでは?」
  「間接税の高いヨーロッパ諸国は実際成長率が低いわけだが」  etc


など、税方式にも様々な疑問が生じるのだが、本書では「大したことない」と切り捨てるか無視を決め込む(意図的かどうかは知らんが)かで、反論に対処しようとする姿勢が感じられないのが残念なところ。先日のシンポジウムでも「本に書いてある」「とにかく税方式が一番効率的!」との発言が多かった。また、著者のゼミ生の見解を以って「若者も支持してる」とするのは、余りにもあざとい。「改革に妥協を許さない進歩的なオレ様」を夢想しがちな年頃に、抜本改革を唱えるなと言う方が無理な注文だろう。
シンポジウムでは見学者がペーパーでパネリストに質問することができたので、当BLOG管理人も上記の疑問を投げたのだが、多数の質問が殺到したこともあってか、残念ながら私の質問は見事にスルーされた。 _| ̄|○

ともあれ、本書は税方式vs社会保険方式の論点整理に有用な一冊であることは間違いない。もっとも、論点は整理できたとしても両社の溝が埋まるかどうかはまた別問題だが(汗)。著者もまた同じ認識のようで、「両者の議論は出尽くしたからあとは国民の選択に委ねるべき」と締めくくっていた。



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2005年12月14日

2004年の公的年金改正を再評価する機運高まる

「世代間の助け合い」と「世代間の公平」の調和を求めて (RIETI 経済産業研究所)
来たる15・16日に開催されるRIETI政策シンポジウム「日本の年金制度改革」の直前企画として、横浜国立大学の神代和俊教授のインタビュー記事が掲載された。先日の記事で「海外では2004年の公的年金改正に対する評価が高い」という件について触れたが、タイムリーなことに本記事でも同様の見解を述べていたので紹介する。今後の公的年金改革に残された課題が簡潔にまとめられていて興味深い内容である。リンク先が無くなる事態に備え、ログも残しておくとしよう。
なお当BLOG管理人もこのシンポジウムに参加する予定。後日レポートするかどうかは気分次第(汗)。

インタビュー記事(全文)



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2005年12月13日

2004年公的年金改正は画期的な改革だった?

【経済教室】 危機は終わった
  コロンビア大学教授 デビッド・ワインシュタイン
日本の財政が破綻の瀬戸際にあるというのは誤解だ。日本政府の債務水準はネットベースで見れば、途方もなく高いと言うわけではなく、将来の年金問題も昨年の改革でほぼ解決した。重要なのは小さい政府の実現を目指すことであり、消費税の増税は不要である。
(2005/11/29 日経朝刊 33面)

上記の記事は、日本の財政破綻説を一刀両断に斬り捨てたものである。興味深いのは、不評だった2004年の公的年金改革を高く評価している点だ。年金に関する言及を抜粋・要約すると以下の通り。

マクロ経済スライドの導入により、社会保障費の増大に歯止めがかかった。これら改革の効果は(医療制度改革など比較に及ばぬほど)かなり大きく、日本経済が適度なペースで成長を続けていけば、将来、消費税を引き上げるには及ばない。差し迫っていると言われる年金危機だが、実際にはほとんど終わったと言うべきだ。
ただし、年金制度改革の結果、将来世代の受ける年金給付は大幅に減る。今後は最高齢層を除くすべての日本人が高い税金と少ない年金給付に苦しめられることになる。
(以上、当BLOG管理人による要約)

現在の高齢者に比べると将来世代はやはり苦労はするものの、年金制度の持続可能性はむしろ高まった──とする考察は、国内のマスメディアからはついぞ聞かれない指摘だ。2004年の公的年金改正については悪評プンプンというのが国内の一般的な見方だが、一方、海外では専門家や国際機関により高く評価されていると聞く。この記事により初めてそれを実感した次第である。

なお記事は「年金改革による負担増に増税が加わると、却って景気の腰折れを招く。ゆえに消費税増税は不要。小さい政府を実現すべし!」と締め括っている。この他にも、政府債務に関する考察など、全体的に非常に示唆に富む内容であった。



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2005年12月12日

「基礎から学べる投資・運用関連数式集」

試験対策用だけでは勿体ない

基礎から学べる投資・運用関連数式集基礎から学べる投資・運用関連数式集
砺波 元

金融財政事情研究会 2003-01
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年金基金やらで資産運用業務に携わると、まずはポートフォリオ理論、とりわけ分散投資の重要性をこんこんと説かれるのが通例。その効果(結果)先日紹介した本で認識できるとして、ではそのプロセス、すなわち最適ポートフォリオの導出に用いられる分散・標準偏差・相関係数といった統計的数値はどのように算出されるのだろうか?

──そんな疑問に分かり易く答えてくれるのが本書。資産運用に関わる基本的な数式が見開き2ページにうまく収められている。そもそもDCプランナー試験の受験生向けに刊行されただけに、「数字なんて見るのもイヤ!」という向きには丁度良いレベルに仕上がっている。試験対策ならば、2・3・5章を押さえておけばOK。

ただし、整理されてて見易いが故に、一通り眺めただけで分かったような錯覚に陥る危険性があるのでその点注意が必要。そのためにも演習問題をタンマリと付けて欲しかったのだが・・・。 



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2005年12月11日

「ゴミ投資家のためのインターネット投資術入門」

史上最"易"の現代投資理論の入門書(第1章のみ)

ゴミ投資家のためのインターネット投資術入門ゴミ投資家のためのインターネット投資術入門
海外投資を楽しむ会

メディアワークス 2000-03
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「インターネット投資術」だなんていかにもなタイトルに騙されてはいけない。中身は「現代投資理論」と「外債投資」に関する真っ当な解説書である。特に現代投資理論を扱った第1章は圧巻の一言。第1章だけを抽出すればまさに史上最"易"の現代投資理論の入門書である。

Excelを用いたポートフォリオ理論の解説書は数あれど、本書の解説の分かり易さはその中でもダントツ。また、マーコヴィッツやシャープ、さらにマルキール(ウォール街のランダム・ウォーク)やエリス(敗者のゲーム)に至るまで、現代投資理論の主要トピックについてもキッチリ網羅(おまけに複雑系の話まで!)。まさに、名著「Excelで学ぶファイナンス」「証券投資の思想革命」のエッセンスを凝縮しながらも分かり易くした充実の内容である。

ただ惜しむらくは、やはりタイトルの羊頭狗肉さだろうか。実際の内容は現代投資理論と外債投資なのに、言うに事欠いて「インターネット投資術」ってアンタ・・・(汗)。まあ、刊行時(ITバブルの絶頂期!)の状況を考慮すると致し方なかったのだろうが。

ともあれ、第1章を読むだけでも本書を手に取る価値は十分にある。年金基金の資産運用業務の新任担当者のみならず、証券アナリスト受験生にもオススメ。なお、第2章以降の評価については各自で判断されたし。



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2005年12月09日

HP-12C

「逆ポーランド方式」の妖しい魅力!?

HP-12C 金融電卓HP-12C 金融電卓 F2230W

ヒューレット・パッカード 1981-12
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1981年の発売以来現在でも製造販売されている、技術進歩の目まぐるしい電脳グッズの世界では考えられないロングセラー。管理人がこの電卓の存在を知ったのはつい2年ほど前。かつて「株屋の裏」(←このたび復刻!)という外資系証券マンの日常を綴ったサイトがあったのだが、そこでこのHP-12Cに関するエッセイを読んだのがきっかけ。Internet Archiveにそのログが残っていたので、私の拙文よりもそちらをお読みいただいた方がこの電卓の魅力が伝わるかと。末尾に転載しておく。
以前は日本でも紀伊国屋書店などで日本語マニュアル付きで販売されていたのだが、電卓部門は残念ながら日本から撤退。現在入手する方法としては、海外から輸入するか、ネットオークションで競り落とすか位か(ちなみに管理人はヤフオクで購入。しかも日本語マニュアル付き!)。ご興味のある方は、検索の上検討されたし。
しかし惜しむるかな、プログラム機能を有するため資格試験では持ち込みが著しく制限されているのがイタい。現時点で持ち込みOKなのは証券アナリストとCFAくらいか。

※ ヤフオクの検索結果はコチラ

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/12/20): HP-17BU

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【2010.9.27追記】
外資系証券マンの日常を綴った傑作サイト「株屋の裏」が、このたび製作者の手により復刻されました!


【2006.11.9追記】
HP-12Cの日本語マニュアルがHP社サイトにupされました。
また、現在は復刻版であるHP-12C Platinumが販売されています。処理速度はコチラの方が上だとか。


HP-12C Platinum 金融電卓 HP-12C Platinum 金融電卓 

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 どんな電卓使ってますか? (「株屋の裏」過去ログ)



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2005年12月07日

「年金情報」

●●な子ほど可愛い!? 愛すべき業界誌

年金情報(R&I)年金情報

格付投資情報センター(R&I)
編集協力:日本経済新聞社

4大格付け機関の一つである格付投資情報センター(R&I)日経新聞のタッグによる業界誌(月2回発刊)。

「購読料がバカ高いよ」
「市況に一喜一憂しすぎでは?」
「批判記事は決まって匿名」
「前号で『リスクを取れ』と書いておきながら、次の号では『リスクを抑えろ』とか言ってるし・・・」
「年金基金が株を買えば『相場の後追い』、買わなければ『及び腰』って、一体どないせーっちゅうねん!?」


・・・といった批判の声はあるものの、資産運用に関する記事の充実ぶりは他の追随を許さない、業界では「月刊企業年金」と双璧を為す業界誌。

当サイト管理人のお気に入りは、巻末を飾る対談形式コラム「インサイド」。「〜らしいね」「〜だそうだ」「〜という声をよく聞く」という伝聞調の書き出しに始まり、「でもいかがなものか」「〜は巻き返しに必死だ」と意見対立の構図を煽りつつ、最後は「お手並み拝見」「見ものだ」と知的な第三者を装いつつ幕──という構成は、姉妹誌「日経公社債情報」のコラム「放電塔」から受け継いだもはや伝統芸。コラム全体を支配するマスコミ人特有のスカした雰囲気に月2回触れないと禁断症状が出てくるようになれば、貴方も立派な業界人(笑)。




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2005年12月05日

「日本版401k 導入・運営・活用のすべて」

立案当事者による貴重な証言の数々
日本版401k 導入・運営・活用のすべて日本版401k 導入・運営・活用のすべて
尾崎 俊雄

東洋経済新報社 2002-03
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著者は現役の厚生官僚で、確定拠出年金法(いわゆる日本版401k)の企画立案から施行まで携わった、いわばDC界の「生き字引き」。法令・通達等についての解説が詳細になされているのは勿論のこと、制度導入時における論点・根拠や検討経緯まで多岐に触れられているのは、やはり当事者ならでは。拠出限度額(36,000円や15,000円など)にもそれぞれ根拠があるって知ってた? 納得できるかどうかはともかくとして(汗)。

また、刊行当初はDC制度が創設されたばかりということもあり、類似の解説本が氾濫されてそれこそ玉石混合であったが、本書は制度のメリット・デメリット双方について触れられているなど、公平・公正という観点からもオススメ。法改正もあり刊行当初から事情は幾分変わったが、それでも古さを感じさせない骨太な造りとなっている。およそ退職金コンサルに関わる者であれば、是非一度目を通しておきたい一冊だ。




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2005年12月01日

「企業年金の法と政策」

労働法的な視点から見る退職金・企業年金

企業年金の法と政策企業年金の法と政策
森戸 英幸

有斐閣 2003-03
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企業年金制度を労働法的視点から俯瞰したものとしては、現在最も完成度の高い一冊。退職給付制度の主流である厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金のみならず、退職一時金、特退共、年金財形といったマイナー(失礼)な制度に関しても記述が丁寧で、しかも必ず根拠条文が記載されているのは嬉しい限り。まさに「法と政策」という題名に偽りなし。

しかし何と言っても白眉なのは、「判例」「不利益変更」「受給権保護」といった法務的トピックの充実ぶり。年金業界を見渡すと、「企業の財務担当者」「ファンドマネージャー」「年金数理人」「役人OB」と、数字には強いが法務には疎い面々ばかりなだけに、労働法の専門家によるこうしたタイプの書籍が永らく待たれていた。年金受給者による年金減額訴訟が紙面を賑わしつつある昨今、改めて本書を読み返してみる意義は大きい。



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