日経平均1万6000円台、年金の売り重し
東京証券取引所が同日発表した投資主体別売買動向では、先週(2月13日―17日)の信託銀行の売買は3,543億円の売り越しになった。信託銀として統計を取り始めた1996年9月以降、週間ベースで過去最大の売越額だ。
(2006/2/24 日経金融新聞 3面)
信託銀の売越額、過去最大3,543億円
2月第3週の投資主体別売買動向で信託銀行の売越額は3,543億円となり、前の週に比べ1,582億円増加した。33週連続の売り越しで売越額は過去最大となった。相場の乱高下が続いたことで、3月期末決算を控えた年金資金などが利益を確定する動きを強めた。これまで売越額が最も大きかったのは2005年10月第1週の3,422億円だった。
(2006/2/24 日経朝刊 18面)
株式市況の報道で「外国人買い」や「年金の売り」といった言葉を良く耳にするが、これらのソース(情報源)は何なのか? という質問をたまに受ける。
最もポピュラーなのは、
東京証券取引所が発表する
「投資部門別売買動向」である。これは東京・大阪・名古屋の国内3証券取引所で売買された株数および金額を、証券会社の自己売買、個人投資家、外国人投資家といった投資主体別に集計したものである。投資主体のうち
信託銀行は、年金基金から資産管理を受託していることから
年金基金の売買動向を表しているとされている。上記の記事はこの統計を受けての報道である。ただし、信託銀行は企業年金以外からも資産管理を受託している関係上、実際は
企業年金だけでなく公的年金・郵貯・簡保の売買動向も混在している。そこで、上記の投資主体を細分化してより緻密な動向を見るのならば、
日本銀行が発表している
「資金循環統計」が便利だ。資金循環統計は、ある期間の資金の流れを表わした「金融取引表」(フロー表)と、ある一時点の資産・負債の残高を表わした「金融資産・負債残高表」(ストック表)から成る。いずれの表も、横軸には家計・企業・政府・金融機関なといった46の経済部門が、縦軸には現金・預金、株式、債券といった51の取引項目が配置されている。経済部門には、公的年金や生命保険とは別に、私的年金を司る
年金基金という部門が独自にあり、年金基金は更に
企業年金と
その他年金に細分化される。これら部門のフロー表を見れば、企業年金のより綿密な売買行動(株式以外も参照可)を把握することが可能である。
資金循環統計で2005年1月から9月までの株式売買動向を見ると、公的年金は8,853億円売り越している一方、企業年金は7,256億円の買い越しとなっている。つまり東証の投資部門別売買動向による信託銀行の売り越しは、企業年金以外の
公的年金・郵貯・簡保といった公的セクターによるものであることが見えてくる。
しかし、資金循環統計も必ずしも完璧ではない。各部門の動きが綿密に記録されている反面、
四半期ベース単位でしか状況を把握できず、公表時期も遅い(直近の四半期末の約2ヶ月後)という難点がある。この点は、週単位のデータを翌週木曜には公表している東証の投資部門別売買動向の方に分がある。要は、こうした各種統計の
特徴を事前に認識した上で利用することが肝要である。
最後に、資金循環統計における「企業年金」と「その他年金」の分類は以下の通りである。詳しくは
コチラを参照されたし。
<企業年金>
・厚生年金基金(代行部分含む) ・適格退職年金
・確定給付企業年金 ・確定拠出年金(企業型)
<その他年金>
・国民年金基金 ・確定拠出年金(個人型)
・小規模企業共済 ・石炭鉱業年金基金
・勤労者退職金共済機構(中退共、建退共・酒退共・林退共)
・農業者年金基金(特例付加年金勘定、農業者老齢年金等勘定)
<関連エントリ>
The企業年金BLOG: 資金循環統計で見る機関投資家の株式売買動向The企業年金BLOG: 機関投資家の株式売買動向(2005年9-12月期)
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posted by tonny_管理人 at 17:29
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