2006年05月26日

適格退職年金の2006年3月末の状況

2012年3月に廃止(正確には税制優遇措置の廃止)されるため、その移行先について何かと話題の適格退職年金(適年)だが、このたび信託協会生保協会JA全共連の連名で直近の統計がリリースされた。

 ◆企業年金の受託概況(平成18年3月末現在)

20060526nenkin-jutaku2005.jpg

  ■信託協会のリリース
  ■生保協会のリリース
  ■JA全共連のリリース
 (注)上記3つのリリースは内容はいずれも同一。

上記の3団体が公表している「企業年金の受託概況」では、適年の他にも厚生年金基金と確定給付企業年金の状況も掲載されている。この2制度については厚生労働省や企業年金連合会からも精緻な統計数値が公表されるが、適格退職年金に関する統計は、事実上この「企業年金の受託概況」でしか把握できない。適格退職年金の監督官庁は国税庁だが、この辺の業務はまさに投げっ放しジャーマン状態。適年が他の企業年金制度への移行を余儀なくされたのも、一説にはこの監督体制のアバウトさが問題視されたとの指摘もある。

さて本題に入ろう。上記によると、適格退職年金は2006年3月末で契約件数45,090件(前年度比▲7,671件)、加入者数567万人(前年度比▲88万人)と、いずれも減少傾向にあるものの、減少スピードはさほど上がっていない。
一方、この統計で当BLOG管理人が目を見張ったのが資産残高。前述のとおり契約件数が約7千件減少したにも関わらず。今回の発表では時価残高が17兆2,718億円(前年度比+890億円)と、ごく僅かではあるが増加している。つまり、それだけ資産運用が好調だったということか。

以上から、適年移行については、まだまだ様子見の企業が多いように感じる。その上資産運用が好調とくれば、危機感を持てという方が無理な注文か(汗)。とはいえ、当BLOG管理人はどっかの弱小コンサルタントみたいに「早く対応しないと大変な事になるYO!」と煽るさもしい真似はしない主義なのでご安心を(笑)。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/5/28): 適格退職年金の2010年3月末の状況
The企業年金BLOG(2009/5/27): 適格退職年金の2009年3月末の状況
The企業年金BLOG(2008/5/30): 適格退職年金の2008年3月末の状況
The企業年金BLOG(2007/5/25): 適格退職年金の2007年3月末の状況



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2006年05月17日

「経済統計の活用と論点」

実用度の高い経済統計の"百科事典"

経済統計の活用と論点経済統計の活用と論点 第2版
梅田 雅信 宇都宮 浄人

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文体はとっつき難いが、国内のほぼ全ての経済統計を網羅的に解説している、経済統計の百科事典。著者サイドもそうした辞書的な使われ方を意識してか、「概要」「公表元」「公表時期」「留意点」といった項目が指標別に完結するよう工夫されている。また「GDPのゲタ」「SNA統計(内閣府)と家計調査(総務省)とで家計貯蓄率が異なる理由」といった経済統計特有のお馴染みの問題点についてもキチンと言及されている。経済論文の執筆や景気予測に携わる者であれば必携の一冊。なお本書は証券アナリストの指定参考書ではあるが、むしろ合格後にこそ利用頻度が増える感がある。



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2006年05月13日

本音は年金改革よりもコスト削減!?

経済同友会が社会保障で提言 (NIKKEI-NET)
経済同友会は10日、年金・医療・介護など社会保障制度について、ナショナルミニマム(国民生活の最低限の水準)の保障に限定する一体的改革を求める提言をまとめた。人口減少や少子高齢化の加速が見込まれるなか、制度の持続可能性を高めるには漸進的な変更では不十分と判断。これまでの社会保障に関する提言を一本化した。
公的年金制度では全国民共通の基礎年金について、税率9%の目的消費税を財源とする税方式に移行し、65歳以上の全員に月額7万円を支給する。現役時代の収入に比例する厚生年金の報酬比例部分は政府の関与をやめて、民間による確定拠出型年金に段階的に移行する。
(2006/5/11 日経朝刊 4面)

経済同友会といえば、日本経団連、日本商工会議所と並ぶ「経済三団体」の一つ。数日前に首相の靖国神社参拝に再考を求める提言で世間の顰蹙を買ったのは記憶に新しい。その翌日、今度は社会保障に関する提言をひっそりと公開した。

 ◆社会保障制度を真に持続可能とするための抜本的・一体的改革

お題目そのものには異論は無い。現行制度の改革は焦眉の急であり、そのためには国民的な議論を展開しなければならないとする姿勢は評価に値するのだが・・・

ところがいざ提言を読み進めると、上記のご立派なお題目とは相容れない違和感を感じること必至。結局、経済同友会の頭の中にあるのは企業負担を軽くしたいという一点のみで、文中にもその本音がありありと滲み出ている。こんなエゴ剥き出しの主張でも、抜本改革などと口当たりの良いスローガンで繕っておけば国民はホイホイ支持してくれるとでも思ってるのだろうか? たとえ社会保険料の企業負担が全廃されたとしても、彼ら経営者がその浮いた余資を給与や雇用という形で還元するとは到底思えない。

なお経済同友会の年金問題に関する見解は、2004年に刊行された「年金再生論」にもまとまっている。内容も不遜さも上記の提言と瓜二つ(汗)。当BLOGは基本的にはオススメ書籍を紹介する運営方針なのだが、今回は敢えて晒し上げ↓。

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2006年05月10日

「MBAバリュエーション」

"コーポレートファイナンス"の理解への第一歩

MBAバリュエーションMBAバリュエーション 日経BP実戦MBAシリーズ2
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表紙に恥ずかしげも無くデカデカと掲げられたMBAの3文字をもって「なんだ、MBAブームに乗っかった便乗本か」と早合点してはいけない。中身はコーポレートファイナンス、とりわけ「企業価値の算定」に特化した高品質な入門書である。

コーポレートファイナンスを学び始める際に、いきなりブ厚い専門書から取り組むというのも一つの見識ではあるが、例えるなら仮免ドライバーがいきなりカーレースに挑むようなもので心許ない(汗)。そこで、「まずは家の周囲で地道に訓練しよう」とする堅実派におあつらえ向きなのが本書。全ページに目を通すのが億劫であっても、せめて基礎編(第1〜3章)だけは目を通すべし。特に以下の3点は目から鱗モノ。

 @企業価値をc/(r-g)という数式に置き換えるメリット
 A純資産(資本)と時価総額の違いを図示した図表3-4
 Bブランド(無形の営業資産)失墜が時価総額減少を引き起こす仕組みを
  図示した図表3-5・3-6


──これらを抑えるだけでも、その後のコーポレートファイナンスへの理解が早まること必至。2001年の刊行だが古臭さを感じさせないのは、ひとえに骨組みがしっかりしているからである。
本書の根底にあるのは、配当割引モデルにしろEBITDA倍率にしろ、これらはビジネスの共通言語であり、商売相手を説得するためのツールに過ぎないという事。「世の中数字だけで割り切れるものではない」と達観ぶるのは勝手だが、ことビジネスの世界においては、そうした振る舞いは、共通言語に則った円滑なコミュニケーションを図ろうとしない不誠実な行為なのだ。



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2006年05月07日

企業年金は社会保険方式だと? んなアホな!!

先日取り上げたNTTの企業年金減額訴訟の一件だが、今回は各メディアでも大きく取り上げられている。普段は陽の目を見ない分野だけに、各メディアの見解を一堂に比較できるまたとない機会だが、さっそくトホホな記事があったので晒し上げ↓。

却下の厚労省 「税方式」流れを警戒 (Mainichi-msn)
厚生労働省がNTTの申請を却下したのは「企業年金は公的年金に準じた社会保険方式」と判断しているためだ。「保険料に見合う給付」という原則を崩せば、公的年金税方式化に道を開くとの警戒感からだ。
基礎年金を全額税でまかなう民主党などの案は、現役時に未納でも老後は保障されるが、同省は「契約の概念が弱く減額も容易」とみる。企業年金でも「契約」を軽視すれば公的年金の基盤が揺らぐという危機感を抱く。
(2006/5/2 毎日新聞朝刊 11面)


企業年金は「社会保険方式」だと!?
ハァ!?


公的年金を語る上では、「社会保険方式か税方式か」という議論は重要なファクターである。しかし、企業年金は民間運営による私的年金という性質上、税による徴収という選択肢は当然ながら存在しない。仮に「保険料に見合った給付」を指して社会保険方式と呼んでいるのであれば、正確には「保険料方式」と表現するべきだ。公的年金における「社会保険方式vs税方式」という対立構図を企業年金にそのまま当てはめるのは無理がある。

また本記事は、公的年金における「積立方式か賦課方式か」という議論と混同している恐れもあるため補足しておく。賦課方式とは、その時に必要な年金原資をその時の現役世代の保険料で賄う財政方式である。ただし、これを行うには「掛金の強制徴収」が大前提となるため、賦課方式での運営が可能なのは必然的に公的年金に限られる。私的年金たる企業年金では、将来の年金給付に必要な原資を予め積み立てていくという積立方式を採用せざるを得ない。

今回の記事が、記者の単なる勘違いなのか、それとも何らかの意図を以って書かれたのかは定かではないが、いずれにせよ全国紙の記事(それも署名入り)としては最もお粗末なものの一つであることは確か。世の中に警鐘を鳴らすならば、せめてそれ相応の理論的背景は抑えておきたいものだ。それにしても今回のNTTの企業年金減額の件、各所であらぬ思惑を産んでいる。他にも「厚生年金と共済年金との一元化を封じ込める狙い」といったトホホな議論が横行している(ココとかココとかココとか)あたり、つくづく日本は平和だと思う今日この頃(汗)。皆さん陰謀論が好きなのねぇ。。。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG: 企業年金減額、NTTが行政提訴
The企業年金BLOG: NTTの年金減額、厚労省認めず
 
 2006/5/2毎日記事(全文)



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2006年05月06日

企業年金減額、NTTが行政提訴

NTT、年金給付減額の不承認取り消し求め国を提訴 (NIKKEI-NET)
NTTとグループ会社の計68社は1日、退職者への年金給付削減を認めないとした厚生労働省の処分を不服として、国を相手取り、処分取り消しを求める行政訴訟を東京地裁に起こしたと発表した。企業年金の制度変更を巡って民間企業が行政を訴えるのは極めて異例だ。
NTTグループは昨年9月、約14万人の退職者に対する年金給付を事実上削減する制度変更を申請した。厚労省は今年2月、「経営状態が著しく悪化しているとは認められない」として、申請を却下していた。
(2006/5/2 日経朝刊 3面)

本件については前回のエントリ「NTTの年金減額、厚労省認めず」でも触れたが、NTT側はいよいよ行政訴訟に踏み切った模様。個人的には「勝手にやってろ」って感じで関心ゼロなのだが(汗)、法曹畑の連中にとっては、以下の2点について判断基準が示されるかもしれないということで要チェキラな訴訟らしい。

1.「経営状態の悪化」の基準は?
2.労使合意はOB(年金受給者)にも適用されるのか?


まあ厚生労働省としては、仮に給付減額を承認したならば年金受給者からの提訴は必至だったであろう。どのみち提訴されるのが避けられないのならば、老人連中(失礼)相手よりは大企業相手の方が世間体が立つという算段か。一方NTTとしても、たとえ今回の行政訴訟で勝利したとしても、今度はOBからの提訴が待ち受けること必至。どのみち訴訟の連鎖は断ち切れないのね、ううむ。。。

(♪チャンチャカチャンチャン、チャチャンッチャチャンチャン♪)
国との裁判に勝ったと思っていたら〜♪
今度は受給者から訴えられました〜♪


チックショーー!!


 (by小梅太夫)


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/6/14): NTT企業年金減額訴訟が結審したわけだが
The企業年金BLOG(2007/10/24): 規制が嫌なら税制優遇を返上すればぁ?
The企業年金BLOG(2006/2/23): NTTの年金減額、厚労省認めず



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2006年05月02日

生保の年金運用が好調なようで・・・

大手生保の企業年金利回り23% 過去最高に (NIKKEI-NET)
企業年金が生命保険会社に運用を委託している特別勘定の2005年度の利回りが過去最高となった。大手生保7社の平均は23.33%となり、これまで最も高かった03年度(16.88%)を上回った。国内の株価が大幅に上昇したことが主因。生保の特別勘定の運用利回りは3年連続のプラスで、企業財務に好影響を与える。
特別勘定は一定の利回りを保証する一般勘定と異なり、運用実績をそのまま利回りに反映させる。利回りが過去最高になったのは国内外の株式や債券に分散投資する「総合口」で、大手生保各社が1990年度に取り扱いを始めた。
(2006/5/1 日経朝刊 1面)

年度末が終わって早1月。そろそろ各運用機関の決算がまとまる時期だけに、しばらくは上記の記事のような景気の良い数字が紙面を賑わすことだろう。以前「企業年金の運用利回り報道に関する留意点」でも述べたが、企業年金の運用利回りに関する記事を読む際には、

 @運用主体(誰の実績か?)
 A時点・期間(いつ、どのくらいの長さを見ているか?)
 B利回りの算定方法(実績値か推計値か?)


の3点に留意すべしと書いた。この分類に従うと、上記の記事は、@生命保険会社大手7社の「特別勘定」、A2005年度(05年4月〜06年3月までの1年間)、B不明──と位置付けることができる。今後も似たような記事が溢れかえるとは思うが、上記のような分類を踏まえれば混乱することはない。そういえば、生保会社の運用に関しては↓こんな記事もあった。


大手生保、団体年金の配当増・運用が改善 (NIKKEI-NET)
大手生命保険は企業向け団体年金保険の2006年3月期決算で配当を前の期(0.1―0.4%程度)を上回る水準へ引き上げる。日本生命保険は大幅な上乗せを検討しているもようだ。株価上昇などによる運用成績改善を受けた動きで、各社の配当実施は2期または3期連続となる。
(2006/4/17 日経朝刊 1面)

こちらの記事は、@生命保険会社の「一般勘定」、A2005年度(05年4月〜06年3月までの1年間)、B不明──と分類することができる。なお記事にもある通り、同じ生命保険会社の運用商品でも、一定の運用利回りは保証されるが運用成績が良くても配当しか上乗せされない「一般勘定」と、運用成績がそのまま反映される「特別勘定」とでは、商品の性質が大きく異なる。自社の企業年金がどんな資産構成なのかをチェックするとともに、くれぐれも↓のようなヌカ喜びはせぬようご注意を(汗)。

(♪チャンチャカチャンチャン、チャチャンッチャチャンチャン♪)
20%以上の利回りを稼いだと思っていたら〜♪
資産が全て「一般勘定」でした〜♪


チックショーー!!


 (by小梅太夫)


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/1/28): 企業年金の運用利回り報道に関する留意点



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