2006年08月30日

「決算書でわかる儲けの極意」

財務分析(デュポン・システム)の超入門書

決算書でわかる儲けの極意決算書でわかる儲けの極意―3倍株投資法
佐々木 洋

サイビズ 2004-11
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ムック調の装丁「儲けの極意」「世界3位の投資実績」という煽り文句からして、よくある胡散臭い成功自慢本と思われがちだが、さに非ず。中身は財務分析、とりわけデュポン・システムについて書かれた真っ当な解説書である。
デュポン・システムとは、ROE(株主資本利益率)を「売上高純利益率」「総資産回転率」「財務レバレッジ」に分解する等という代表的な財務分析手法。証券アナリスト試験では頻出事項だが、このような"教科書的"な手法を個人投資家の株式投資向けに解説したのはおそらく本書が初めて。「決算書を読め」とは投資の世界では良く言われるが、ではプロは決算書のどこをどう実際に読んでいるのか──というノウハウ(めいたもの)の一端をチラチラと垣間見せる構成が秀逸。「所詮は机上の空論」だの「附属のExcelシートの性能がイマイチ」といった批判もあるが、財務分析に関する良質な入門書であることは確か。
なお、本書の手法で実際に儲けられるかどうかはまた別のハナシなのであしからず。

余談だが、著者の佐々木洋氏のメルマガ「10秒で読む日経!」は全般的に高品質でオススメ。以前当BLOGで話題にした時はこんな感じだったが(汗)、当BLOG管理人は現在も愛読している。

※著者の佐々木氏のサイトはこちら






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2006年08月24日

「年金制度の改善プラン」

税法の視点から見た年金制度

年金制度の改善プラン年金制度の改善プラン
木原 俊夫

中央経済社 1998-03
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保険会社出身の税理士による年金の解説書。税理士が著しただけあって年金税制に関する記述が手厚いのは勿論だが、わが国の年金制度を「税法」の視点から分類・解説している手法は斬新。また、個人年金に関する記述が厚いほか、特退共や小規模企業共済といったマイナー制度にも広く言及しているのも特徴。1998年の刊行とやや古くなったものの、年金業界にどっぷり浸かった向きにとっては新たな視点が得られること請け合い。



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2006年08月19日

「真島の年金がアッという間にわかる本」10訂版

祝10訂版! 年金科目に悩む受験生の"駆け込み寺"

「年金」がアッという間にわかる本「年金」がアッという間にわかる本
真島 伸一郎

住宅新報社 2006-07
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年金科目に悩む社労士受験生のバイブルとしてつとに有名。社労士受験生向けに書かれているだけあって、解説が丁寧なのは勿論だが、「昭和36年と61年の2つをまず押さえろ」に代表されるように、憶えるべきポイントが上手く系統化されている点が秀逸。試験合格後も、法改正事項を追うのに重宝する一冊。
今回の10訂版では、「離婚時の厚生年金の分割」や「老齢厚生年金の繰下げ支給の復活」など、平成16年改正のうち平成19年4月施行分までが本文中に反映されている。

余談だが、本書は公的年金に関する記述は隙が無いものの、厚生年金基金に関する記述はすっかり陳腐化しており、当BLOGとしては非常に気になるところ。資産運用の低迷と硬直的な予定利率により基金は崩壊寸前云々って、アンタそれ前世紀のハナシですから! 著者の真島氏といえばかつて「誰も書けなかった厚生年金基金」という名著を世に贈ったものだが、どうやら企業年金に関する知識はその当時(1998年頃)から時が止まったままのようだ。



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2006年08月16日

「EXCELで学ぶファイナンス(2)証券投資分析」

「Excelを用いたリスク・リターン計算本」のパイオニア

EXCELで学ぶファイナンス〈2〉証券投資分析EXCELで学ぶファイナンス〈2〉証券投資分析
藤林 宏

金融財政事情研究会 2001-10
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およそ金融機関の運用担当者であれば必ずや一度は手にするであろう、いわゆる「Excelを用いたリスク・リターン分析本」のパイオニア。Windows95が世に出た1995年に初版が刊行され、以降本書をパクったインスパイアした書籍は数多あれど、本書を凌駕するに至ったものはごく少数。
完成度の高さはもはや言うまでもないが、解説が平易な箇所とそうでない箇所で難易度のブレが大きく、途中で難解な項目にぶつかって立ち止まってしまう事もしばしば。そんな時は構わず次へ次へと読み進めるのが賢明。文体は硬くとっつき難い面もあるが、繰り返し丹念に読むことを怠らなければ、必ずや自身の血となり肉となるであろう。
なお本書では難し過ぎて歯が立たないという向きには、以前当BLOGでも紹介した「資産運用のパフォーマンス測定」「ゴミ投資家のためのインターネット投資術入門」がオススメ。


※販売元サイトから正誤表(pdfファイル)がUPされています。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/4/18): 「EXCELで学ぶファイナンス(2)証券投資分析」第3版



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2006年08月14日

「やさしい年金財政」

新任担当者向けの年金数理の解説書

やさしい年金財政やさしい年金財政
田村 正雄

社会保険広報社 1997-04
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やや古くなった感はあるが、年金財政・年金数理を平易に解説している現役(絶版ではない)の市販本は本書くらいのもの。本書が刊行された1997年といえば、「予定利率の自由化」「時価評価の導入」など、企業年金(当時は厚生年金基金のみだったが)の財政運営基準が自由化されたまさに変革の第1期。現在ではやや陳腐化した記述も見受けられるが、年金数理のキモを語った第1章第3節〜第2章は今もなお普遍。

なお上記で「平易」と書いたものの、さすがにズブの初心者がいきなり挑むのはちと厳しい。「年金制度はそこそこ知ってるけど数理はからっきし」というレベルの層(例:年金基金の新任担当者など)に最もフィットするものと思われ。



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2006年08月11日

国内株式ベンチマークを巡る思惑記事

企業年金連合会 国内株運用基準 脱TOPIX (NIKKEI-NET)
企業年金連合会が国内株式パッシブ運用の基準として使う株価指数をこれまでの東証株価指数(TOPIX)から、「ラッセル野村プライム指数」に切り替えたことが分かった。TOPIXは流動性にかかわらず東証一部の全上場銘柄を含むため、資金量が大きいと運用が難しくなるためだ。トヨタ自動車やブリヂストンの企業年金もラッセル野村を採用しており、TOPIXが長らく保ってきた「業界標準」の地位も変化する可能性がある。
(2006/8/11 日経金融新聞 1面)

これまで年金運用における国内株式のベンチマークといえばTOPIXが定番であったが、銘柄入替の頻度や流動性の低い銘柄の取り扱いなど、パッシブ運用のベンチマークとしてはそぐわない面もこれまで度々指摘されてきた。今般、日本の企業年金の中心団体である企業年金連合会(企年連)が、国内株式パッシブ運用のベンチマークをTOPIXからRussell野村プライムに変更したとの事。さっそく企業年金連合会の「年金資産運用の基本方針」をチェキラしてみた。

企業年金連合会 年金資産運用の基本方針 (抜粋)

W.自家運用(インハウス)
(4)運用手法

国内株式運用については、Russell/Nomura Primeインデックスの変動と一致することを目的とするインデックス運用とし、原則として当該株価指数に採用されている全ての銘柄の株式について、当該株価指数における個別銘柄の時価総額構成比率に応じて算出される株数を選定する方法(完全法)を採用する。

(中略)

Y.運用受託機関の評価及びシェア変更
1.運用受託機関の評価
(2)ベンチマーク

連合会として各資産の運用状況の指標とするベンチマークは、各資産毎に次のとおりとする。
 ○円建債券:NOMURAボンド・パフォーマンス・インデックス総合
 ○円建株式:TOPIX(配当込み)
 ○外貨建債券:シティグループ世界国債インデックス(日本を除く、円換算)
 ○外貨建株式:MSCI(KOKUSAI、円換算・配当再投資・GROSS)
 ○短期資金:コール・ローン(翌日物、有担保)

(以上「年金資産運用の基本方針」より抜粋。2005年10月1日版。)

どうやら、今回ベンチマークを変更したのはパッシブ運用のみ。資産ベンチマークやアクティブ運用機関の評価に関しては引き続きTOPIXを用いるようである。

それにしても不可解なのは、昨年8月に実施された今回の件をなぜ1年も経った今頃記事にしたのか。企年連が市場へのインパクトを避けるため公表を遅らせたことが一因としても、同じ日経グループの「年金情報」誌は今年6月に既報済みだっただけに、尚更不可解・・・と思いきや、記事中にこんな図が↓

20060811kabuka-index.jpg

なるほど、ベンチマークビジネスの一環でしたか(汗)。
 
 企業年金連合会 国内株運用基準 脱TOPIX (記事全文)



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2006年08月08日

年金加入記録にミスはつきもの!?

【マネー外来】 年金の記録 支給額に影響 (asahi.com)
厚生年金の金額は、保険料ではなく、それを払った時の給料に応じて決まる。その記録を会社からもらって管理しているのが社会保険庁。ところが、この記録に多くの間違いが見つかっているという。決してひとごとではない。
(2006/8/5 朝日朝刊 b5面)

国(社会保険庁)が管理している国民年金・厚生年金の被保険者記録データベースに記録ミス・記録漏れが存在する可能性ついては当BLOGでも以前言及したが、先週末の朝日新聞でも同様の特集が組まれていた。特に、記録ミスが年金額にどのような影響を及ぼすかを示したチャートは秀逸↓

20060805record-miss.jpg

なお記事中では、ミスの原因が社会保険庁側のみにある事を強調していたが、実務家から見れば実は企業側のミスも多いのよねぇ(汗)。まあ、複数の組織・人間の手を介する以上、こうしたミスを完全に撲滅することは残念ながら不可能。これは何も年金に限った話ではない。大事なのは、ミスを発見したら速やかに修正できる体制の整備だろう。幸いにも現在では、年金加入記録を最寄りの社会保険事務所から「被保険者記録照会回答票」を貰うことができる。勤務期間に漏れがないか、給料の不自然な増減がないか、できるだけ確認することをお勧めしたい。

※当BLOG管理人が直面した記録ミス事例はコチラ
※社会保険庁の年金記録紹介サービスはコチラ
※自身の年金加入記録をチェックするのに有用な書籍はコチラ


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/6/8): 基礎年金番号に反対してきた連中が年金記録不備を糾弾する矛盾
The企業年金BLOG(2006/9/5): 朝日新聞の年金記録記事は必見
The企業年金BLOG(2006/4/25): 年金加入記録の記載ミス・記録漏れにどう対応すべきか
The企業年金BLOG(2006/4/1): 「年金生活への第一歩」改訂版


─────────────────────────

【2007.6.6追記】
画像のリンクが切れていたので貼り直しました。
それにしても、まさか今頃になって騒動になるとは・・・(汗)




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2006年08月06日

公的年金に関する朗報と凶報

8月4日(金)の日経新聞に、公的年金に関する対照的なニュースが2本掲載された。
まずはコチラ↓。

厚生年金、2年ぶり黒字 株高で8兆9500億円 (NIKKEI-NET)
社会保険庁は3日、2005年度の厚生年金と国民年金の決算を発表した。厚生年金は株価回復などを背景に8兆9500億円の黒字になった。国民年金も6600億円の黒字となり、いずれも2年ぶりに赤字を脱した。黒字額はともに過去最高。今後も好調な資産運用が続けば、保険料引き上げ幅の圧縮など制度改革に影響を与える可能性がある。
(2006/8/4 日経朝刊 5面)

同じ「年金が黒字」という記事でも、先日のエントリで紹介したのは資産運用が黒字だという記事だったが、今回の記事は保険料や年金給付を含めた全体の収支も黒字という記事である。2005年度は保険料収入も保険料率UPにより若干増加したものの、やはり一番大きかったのは運用収益の増加。少子高齢化により保険料収入の伸びが今後さほど期待できないだけに、運用収益の向上が公的年金財政に少しでも寄与してくれると良いのだが。。。

一方、年金保険料の徴収を司る社会保険庁に関しては、同日付で以下の記事が↓。

年金不正免除で2000人近く処分へ 厚労相は「国民におわび」 (NIKKEI-NET)
全国の社会保険事務所で国民年金保険料の不正免除が相次いだ問題で、社会保険庁は3日、2000人近くの職員を処分すると発表した。調査に虚偽の報告をした職員らには停職を含む重い処分を科す。刑事告発の可能性も検討する。記者会見した川崎二郎厚生労働相は「国民におわびする」と陳謝。在任中の給与を8月分から全額返納すると表明した。村瀬清司社保庁長官も給与を一部返納する。
(2006/8/4 日経朝刊 1面)

総括すると、資産運用セクション(年金積立金管理運用独立行政法人)はGoodJobだったが、徴収セクション(社会保険庁)はトホホ・・・という2005年度であった(汗)。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/7/21): 公的年金は赤字?それとも黒字?
The企業年金BLOG(2006/3/17): 国内債券偏重は配分ミスだって!?



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2006年08月03日

人事労務屋さんの講演を聴いて

本日は、企業年金の世界を離れて、企業の人材・組織戦略のための専門イベント「ヒューマンキャピタル2006」に足を運んだ。お目当ては、当BLOGともリンクさせていただいている「〜人事労務屋のつぶやき〜」の田代氏による目標管理制度に関する講演。氏とはとある縁で顔見知りなのだが、氏の本業である人事労務関連に関する話を聞くのは実は今回が初。社労士資格を有するものの、人事労務業務の経験ゼロの自分に果たして理解できるのだろうか・・・?

ところがそうした心配は杞憂に過ぎなかった。普段は企業年金の世界に篭ってる自分にとっても、分かり易くまとまった講演であった。本業に関するテーマだけあって、氏のプロならではの丁寧さが感じられた。もし現在の自分が今すぐ企業年金の現状をああいった公衆の面前で語れと言われたら、果たして破綻することなく遂行できるかは疑問だが(汗)、ともあれ良い意味で刺激となった一日であった。その後は顔見知りの社労士氏らと夜の八重洲に繰り出した次第。



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