2006年11月25日

「会計のことが面白いほどわかる本」会社法対応版

天使とウサギが紐解く会計の「本質」

会計の基本の基本編会社法対応 会計のことが面白いほどわかる本
<会計の基本の基本編>

天野 敦之

中経出版 2006-07-01
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以前当BLOGで紹介した「会計のことが面白いほどわかる本」が、会社法施行に対応して5年半ぶりにリニューアル! 前版は、それまで日商簿記3級に2回連続不合格(注:それ以来怖くて受験できず)をくらうほど会計オンチだった私を、一転して会計の魅力に目覚めさせてくれる契機となった一冊。天使とウサギのほんわかした語り口こそ平易だが、内容は非常に高度かつ本質的。会計の役割・本質をここまで噛み砕いて丁寧に解説した入門書は他に見たことがない。今までの会計入門書は一体何だったのか!
なお会計の基本の基本編では、貸借対照表の「資本の部」が「純資産の部」に変更されるなど、会社法施行に対応した手当てが為されている。


会計基準の理解編会社法対応 会計のことが面白いほどわかる本
<会計基準の理解編>

天野 敦之

中経出版 2006-07-01
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一方、会計基準の理解編は「会社法対応」を謳っているものの、申し訳程度の幾つかのコラムと中小企業の会計指針が加わった他は、前版とさほど変更は無い。まあ前版の完成度がそれだけ高かったという事で。



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2006年11月22日

「企業年金の数理と設計」

数式の丁寧な解説はむしろ文系向き

企業年金の数理と設計企業年金の数理と設計
三菱信託銀行

ダイヤモンド社 1987-09
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1987年の刊行と古臭さは否めないが、年金数理の基礎理論から給付設計までを網羅した名著。第2章以降の記述(当時の適格退職年金・厚生年金基金の実務基準)はさすがに前時代的な内容(ただし歴史的・資料的価値は高い)だが、第1章「年金数理の基礎」は、具体的な計算例に基づいて詳しく説明されており、現代でも通用する分かり易さ。特に文系出身者にとっては、Σで表記された(理系出身者にとって)簡潔な式よりも加減乗除のみを用いた四則式で説明して貰った方が理解し易い面があり、このへんは刊行当時の購読者層(企業年金の実務担当者)を完全に意識しており心憎い。年金数理に関する入門書としては「やさしい企業年金教室」(日本生命)と双璧を成す一冊。

余談だが、本書を含めて年金数理に関する良書は80年代後半から90年代にかけて相次いで刊行されている。ある意味企業年金が最も"熱い"時代であったと言えよう。企業年金の解説書がダイヤモンド社から刊行されるなど、現代では冗談にも使えない(汗)。



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2006年11月19日

退職金・企業年金は民高官低!?

年金受給「民間が公務員上回る」 人事院調査 (NIKKEI-NET)

人事院は16日、会社員の厚生年金と公務員の共済年金の一元化に伴う公務員の新たな年金制度の設計に向け、民間企業と国家公務員が受け取る年金や退職金の調査結果をまとめ、塩崎恭久官房長官に提出した。共済独自の上乗せ給付である「職域加算」を廃止した場合、民間の給付水準が公務員を約8%上回るため、格差を埋めるために国庫負担による新制度を作る必要があるとの見解も示した。

当BLOGでも以前触れた人事院による退職金実態調査の結果がこのほどまとまった。結果は官民格差どころか予想に反して民高官低となり、内閣官房長官に宛てた書簡では「不足分は国庫負担で(民間の企業年金に当たる)新制度を作る必要がある」と提言している。

まず初めに述べておくが、どうも「不足分は国庫負担で」というくだりで「税金を使うとは何事か!」と脊髄反射しているブログが散見される。しかし公務員とて一介の労働者。労働者を遇するのに雇用主(ここでは国や地方自治体)がある程度の出費(ここでは税金)を賄うことまで拒否するのは極論に過ぎよう。「公務員の処遇」の問題と「税金の無駄遣い」の問題を混同して批判するべきではない。

その上で本調査について言及すると・・・やっぱ怪しいわコレ(笑)。他の退職金統計と比較しても、民間企業の給付水準が過大評価されてるように感じる。この調査、不審な点もいささか多い。ポイントをまとめると以下の通り。

kanmin_hikaku.jpg

1.民間企業の企業年金は「退職金の振り替え」である
本調査では官民双方について「退職金+企業年金」の総額で比較しているが、そもそも民間の企業年金は退職金原資を移行したものであり、退職金原資の枠内で一時金受給か年金受給かを選択できるに過ぎない。そのため調査結果にあるような金額(2,980万円)を満額受給できるわけではない。一方公務員は退職金と共済年金の職域加算部分は別建てなので、双方とも満額受給が可能である。そもそも前提条件が違うもの同士を比較して「民間の方が高い」とのたまうのは我田引水もいいところ。しかし調査結果にはこの辺の違いをどう処理したかが明記されておらず、民間企業の退職給付水準はダブルカウントされている恐れがある。

2.割引率「2.20%」は妥当か
退職一時金は退職時に支払われた額を計上しているが、企業年金については、年金額だけでは評価が難しいため、本調査では、将来支払われる年金総額を現価換算した額を用いている。現価額で評価する事自体は真っ当である。だが問題は現価換算する際の割引率である。割引率が小さいほど現価は大きく計算される。本調査では、厚生労働大臣告示により定められている企業年金の最低積立基準額算出の割引率(平成17年度は2.20%)を用いたとあるが、上記の割引率は企業年金の解散・清算基準の算出に用いる保守的なものであり、企業年金に係る給付額が過大評価されている怖れがある。せっかく支給実態を調査したのであれば、実際に用いられている予定利率または給付乗率で割り引くのが筋ではないか。

3.「従業員規模50人以上」の実態は
企業規模50人以上6,232社(3,850社、回答率61.8%)を対象としたとあるが、実際はもっと大規模な企業に絞られているのではないか。今回の調査に当たってとある公務員系の労働組合では、「調査対象企業は1,000人以上とすること」などの要求を人事院に突き付けており、また今回の調査結果が出るやいなや「取組みを強化してきた結果である」などと誇らしげに語る始末。自分たちは大企業並みの待遇を受けて当然と考えているのか、或いは高水準な企業と比較する事により官民格差を小さく見せようと画策したのかは定かではないが、既得権益擁護のためなら集計方法に至るまで口を挟む緻密さ・勤勉さ、ぜひ本来の公務の方で発揮して欲しいものだ(汗)。

※人事院の調査結果はこちら


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/6/29): 企業年金・退職金に関する統計調査(総論)
The企業年金BLOG(2007/1/10): 追加調査に非ず、単なる帳尻合わせ



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2006年11月17日

DC運用は「自己責任」から「委託責任」へ?

先日開催された「野村グローバル・ペンション・シンポジウム2006-U」で確定拠出年金に関する講演を聴いたのだが、いみじくも先日観た米国の企業年金に関するドキュメンタリーの内容を裏付けるものであった。講演で確認した米国401kの状況を幾つか列挙すると、

 @エンロンやワールドコムの破綻を契機に、自社株保有は減少しつつある。
 A加入者の年齢に応じて資産配分を自動的に変更する「ライフサイクル型」「ターゲ
  ット・イヤー型」といったバランス型ファンドの採用割合が高まっている。
 B投資アドバイス業者「マネージド・アカウント」(投資アドバイスを自動執行す
  る口座)の人気が高まっている。


──とのこと。特にABの傾向は、投資教育の先進国とされてきた米国でも投資判断を重荷に感じる加入者が多いという証左。洋の東西を問わず「信頼できる第三者に任せたい」というニーズは根強くあるということか。ある意味自己責任原則の放棄とも言えなくもないが、一方で、昨今の「リスク商品に投資するのが賢明な投資家」と言わんばかりの風潮が是正される契機となることを期待したい。少なくとも「リスクを取らない奴は馬鹿」と言わんばかりの旧来イケイケ型投資教育には、この際絶滅していただきたいものよ(笑)。



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2006年11月14日

『米国人は投資上手』なんて幻想?

去る11月7日にNHK BSで放送されたドキュメンタリー「ベビーブーマーの年金が危ない −アメリカ揺れる企業年金」(原題:Can you afford to retire?)は、アメリカの企業年金の現状を伝える示唆に富む内容であった。内容は「企業破綻に伴う年金削減」と「401kの運用に戸惑う人々」に大きく分かれており、この2つの要因によりアメリカ人の老後は終身年金から終身労働へと変わりつつある──というもの。

 studying

アメリカでは、公的年金の水準が日本に比べると著しく低いため、その分企業年金の老後生活に占める役割は相対的に大きい。しかし企業のコスト削減により、従来の給付建て(確定給付型)年金制度は姿を消しつつあり、代わって401kが主流となりつつある。
そもそも401kとは経営者への税制優遇措置であり、厳密には年金制度ではない。しかし1981年に給与所得に対しても税制優遇が認められたことから俄然注目を集め、米国株の高騰と相まって普及し始めた。導入時のキャッチコピーに良く用いられるのが 「自分の未来を自分の手で設計する」「労働者に力や権限を与える」といった耳障りの良い台詞。最近日本でも目にする機会が多いですなあ(笑)。

しかし上記のドキュメンタリーによると、結局資産を上手く増やしているのはごく一部の高学歴・高収入の富裕層で、中産階級以下は資産運用もままならず老後の不安に怯えているとのこと。日本ではかねてより「アメリカの投資教育は進んでいる」「アメリカ人は401kでハッピーリタイヤメント」などと喧伝されてきたが、なあに、実情は日本と大して変わらないではないか。日本と違って先進的な投資教育を施されてきたはずのアメリカ人(それも大学教授)がなおも続ける。「誰もが金融のエキスパートになるなんて無理(crazy idea)だ」。

おまけに、@企業に401k制度があっても(加入できる従業員の)3割は加入しない、A掛金を限度額いっぱいまで拠出しているのは全体の1割に満たない、B転職者の半数は401kの資金を途中で引出してしまう──などなど、老後資金不足に拍車をかける要因には事欠かない(汗)。日本では中途引出し禁止を緩和しろとの声が強いが、老後資金の確保という観点からみると、実は有益な規制なのではないか。

個人的な感想としては、401kは老後の資金準備の手段としては最適な制度であるものの、既存の退職金制度の代用品になるかというと、ちと齟齬があるように思う。



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2006年11月11日

投資教育の問題点を具現化した一冊

当BLOGは、冒頭にも掲げている通りオススメ書籍を淡々と紹介することを主たる目的としており、読むに値しないクズ本には一切関わらないことを原則としている(amazonのレビューではボロクソに言及する場合もあるが)。しかし、このたび余りにもお粗末な書籍を手にしてしまい、またそれがわが国の確定拠出年金における投資教育の問題点を具現化したような一冊だったので、今回は敢えてその禁を破ることとする。

問題の書籍は、確定拠出年金(日本版401k)の投資教育に関するもの。本書をめくってまず感じるのは、とにかくまあ威勢というか勢いだけは良い。もっとも、序文から第5章までは、章こそ変われど言ってることはほぼ同じ。要は、わが国の投資教育は問題だらけで、日本の歴史と風土にあった真の投資教育が必要だと喝破している。その割には、「日本版アメリカンドリームの実現を!」とか「日本の投資教育の原点はアメリカの西部開拓史にあり!」などなど、「欧米か!」と突っ込みたくなるような舶来礼賛志向が目立つ。日本の歴史や風土はどこへ行ったコラ(汗)。

とはいえ、わが国の確定拠出年金の投資教育は様々な課題に直面しているのは事実。著者の嘆きは続く、
 「机上の理論や欧米の模倣ではなく、現実に根ざした知識が必要」
 「国のガイドラインにさえ従っていれば良いというものではない」
 「"説明"ではなく"教育"を!」

──指摘そのものは至極ご尤もである。さて、ここまで物申すほどの御仁だ。証券業界での長きに渡る経験を活かした、さぞかし画期的な投資教育スキームが提示されるのかと思いきや・・・

しかしその期待は微塵にも打ち砕かれた。第6章以降では経済・金融・会計制度に関する解説が一通り為されているのだが、これが何ともお粗末。ひたすら用語説明の羅列・羅列・羅列で、制度の背景や趣旨といった骨格への言及はごく僅か。構成も、き●ざいのテキスト等どっかで一度は見たことのあるものばかり。これって著者が皮肉っていた「マニュアル化された説明会資料」の最たるものではないか。これのどこが「新しい投資教育」なのかと問いたい、問い詰めたい、小一時間問い詰めたい(汗)。さんざん前振りしておきながらコレかよ・・・桜塚やっくんだったら「ガッカリだよ!」と突っ込むこと必至。

巻末では「(我々の唱える)投資教育こそが国家の成立基盤を確かなものにする」と偉そうに締めているが、あんな予備校テキストの劣化コピーを「新しい投資教育でござい」と誇示されても説得力ゼロ。皮肉にも、本書の存在自体が日本の投資教育のレベルの低さを如実に物語ってしまっている。この著者のような業界のベテランですらこの程度の切り口しか提示できないとは、確かに日本の投資教育には大きな問題点があるのかもしれない。もしかしたら著者はそれを訴えんがために、敢えて自ら汚れ役を演じたのだろうか・・・?(んなアホな)



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2006年11月09日

「HP-12C 日本語マニュアル」

あの幻の日本語マニュアルがついに復刻!?

HP-12C日本語マニュアル HP-12C 操作ハンドブック (pdfファイル)

横河・ヒューレット・パッカード(株)
1987-01

当BLOG管理人も愛用している金融電卓HP-12C。その魅力については以前にも語った通り。かつては日本でも紀伊国屋書店などで日本語マニュアル付きで販売されていたのだが、2003年より電卓部門は日本から撤退。12C本体は秋葉原や海外通販などでも入手可能だが、本体以上に入手困難となったのが日本語マニュアルで、おかげでヤフオクなんかでは「日本語マニュアル付き」と銘打つだけで落札価格が5ケタに達するほど。
そんな折、日本語マニュアルがいつの間にか日本ヒューレット・パッカード社のサイトに掲載されていた。1987年の旧横河・ヒューレット・パッカード(YHP)時代に作成されたもので、pdfファイルでクソ重たい上に雑な白黒コピーなのはアレだが、ユーザーにとっては有難いことこの上ない。当BLOGには「HP 12C 電卓」などのキーワード検索からご来訪される向きも少なくないので、これを周知しないわけには行くまいて。
なお現在のところ日本語マニュアルがupされているのはHP-12Cのみ。個人的にはHP-17BUのマニュアルも欲しいところだ。

─────────────────────────

【2007.12.20追記】
気がついたらHP-17BUの日本語マニュアルもHP社サイトにupされていました。



<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2005/12/9): HP-12C



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2006年11月06日

「図解 年金のしくみ」第5版

公的・私的を問わない年金の入門書

図解 年金のしくみ図解 年金のしくみ―年金制度の問題点を理解するための論点40
みずほ総合研究所

東洋経済新報社 2006-10
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年金関係の書籍と聞くと、

 ・定年間近の高齢者向け、1円でも多く分捕ろう! 自称「裏ワザ」本
   (→本当は裏技でも何でもなくて、きちんと法律に定められてる訳だが)

 ・いたずらに制度不安を煽るだけの「批判だけならサルでもできる」本
   (→この手の連中が有効かつ具体的な解決策を口にする事はまず無い

 ・専門家向けの「難解さと分厚さがステータス」本
   (→難しい事を分かり易く解説することの方が本当は難しい・・・)

・・・というパターンばかりで、一般向け、特に保険料を負担している我ら現役勤労世代に向けて公正に書かれた書籍は殆ど無いのが現状である。そんな数少ない例外の一つが本書。正しい情報をわかり易く伝えようという執筆陣(とりわけ、全体を監修している堀江奈保子主任研究員の手腕に依るところが大きいとみた)の意気込みが感じられ、実際本当にわかり易い仕上がりとなっている。制度概要から財政・運用まで、年金に関するあらゆるトピックが網羅されており、公的・私的を問わず「年金」の入門書としては掛け値なしに最高峰の一つに入る。本書の内容を少しでもかじっていれば、新聞や週刊誌の記事の大半がいかに的外れであるかが実感できよう。

なお第5版では、「公的年金の一元化」「離婚分割」「未納問題」が新たに手当てされている。その一方で、企業年金の「運用規制緩和」「財政危機」といった一昔前のトピックや「退職金制度」「財形制度」の記述が削除されている。このように、版によって盛り込まれるトピックに差異が生じるため、改訂版が出たからといって旧版を廃棄するような愚は犯さぬよう注意されたし。



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2006年11月03日

財政検証における継続基準・非継続基準とは

先日当BLOGで取り上げた企業年金の財政状況に関する記事だが、当方でも企業年金連合会から調査結果概要を入手・参照したところ、記事で言及されていた数値は非継続基準でみた積立状況だったことが判明した。記事では継続基準か非継続基準かについての言及が全く無かったが、この2つの違いは重要なので解説しておこう。

厚生年金基金制度および確定給付企業年金制度では、年に1度の決算期に財政状況のチェックを行う。これを財政検証といい、「継続基準による財政検証」「非継続基準による財政検証」に大きく分類される(正確には「積立上限額に係る財政検証」も財政検証に含まれるが、ここでは省略)。
その名が示す通り、継続基準とは、企業年金が将来も存続するとした場合に、現在必要な金額が確保されているかを検証するものである。一方非継続基準は、企業年金制度を廃止した場合に、現在約束している給付を支払うために必要な年金資産が確保されているかを検証するものである。教科書的な説明は以上だが、まあ何のこっちゃか(汗)。詳しい説明は他のサイトオススメ書籍に譲るとして、継続・非継続の違いを当BLOG流にかいつまんで表記すると以下の通り。

 ・継続基準   : 基準日以降は「掛金+運用収益」で賄う
 ・非継続基準 : 基準日以降は掛金+運用収益のみで賄う


非継続=解散=掛金が入って来ないとイメージすると分かり易い。つまり、非継続基準では、掛金が期待できない(だって解散するんだし)ぶん、継続基準よりも積立水準のハードルが高くなることになる。前述の調査では継続基準についても調査しており、継続・非継続双方の結果を併記すると、継続基準よりも非継続基準に引っかかる基金の方が多いことがわかる。

積立水準を下回った企業年金の割合 (2005年度決算)

         厚生年金基金  確定給付企業年金
 継続基準       1.4%       2.9%
 非継続基準    10.5%      28.1%

(出典:企業年金連合会「企業年金実態調査」)

なお非継続基準については、2007年度決算までは本来の水準の90%を満たせば良いという特例があり、前述の検証結果も特例適用後の水準であることを付記しておく。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/11/1): 企業年金の「積立不足」報道に関する留意点



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2006年11月01日

企業年金の「積立不足」報道に関する留意点

(1)企業年金 積み立て不足 減少 05年度
年金給付に必要な積立金が不足している企業年金の割合が減少している。企業年金連合会のアンケート調査によると、2005年度に積み立て不足だった厚生年金基金は全体の10.5%で、前回調査より15ポイント減少した。確定給付企業年金も28.1%と21.2ポイント減った。企業年金の資産運用利回りが好調だったのが原因セ。
(2006/11/1 日経金融新聞 5面)

05年度の企業年金決算といえば、企業年金連合会が積立不足から一気に1兆円超の積立余剰に転じたのは記憶に新しいが、一般の厚生年金基金・確定給付企業年金もそのご多分に漏れず、財政状況は軒並み好転しているようだ。まあ05年度の資産運用状況を考えれば、さして驚くには値しない。
ところで、企業年金の積立状況に関しては、上記以外にも以下のような記事が夏場以降に出ていた↓


(2)年金積み立て不足7割減 企業年金、2006年3月期末
不足が常態化してきた企業年金の積み立て状況が改善している。3月期決算の上場企業について集計したところ、2006年3月期末の年金積み立て不足額は2兆7300億円と1年前より7割減少した。各社が年金制度の改革に取り組んだほか、国内株などの運用成績が好調だったためだ。積み立て超過会社は550社と3倍になり、企業年金が経営の足かせから利益の下支え要因へと転じるケースも出そうだ。
集計対象は06年3月期に年金積み立て状況を開示した1433社のうち、4年連続してデータの取れる1414社。03年3月期には23兆6000億円あった積み立て不足額は3年間で10分の1に減少した。
(2006/9/8 日経朝刊 17面)

(3)企業年金 積み立て不足 85%減 (NIKKEI-NET)
企業の年金財務が改善している。将来の年金支払いに必要な額から年金運用資産額などを引いた「積み立て不足」は、日本経済新聞社の集計で2006年3月期に6500億円と1年間で85%減少した。株価回復による運用改善や年金制度変更が寄与。運用資産が潤沢で「積み立て超過」の企業は504社と前の期(163社)に比べ約3倍に膨らんだ。
集計対象は06年3月期の決算短信などで年金状況を開示した上場会社で、過去4年分のデータがある1279社。積み立て不足は、将来払う年金のため手元に確保する必要額である「退職給付債務」から、年金基金などが運用する「年金資産」と既に費用計上した「退職給付引当金」を差し引いて算出した。
(2006/6/27 日経朝刊 5面)

どの記事も「企業年金の積立不足が減少傾向にある」という趣旨は一致しているのだが、記事によって数値や用語がまちまちであるため混乱し易い。(1)の記事は年金財政の話であり、調査対象は企業年金(厚生年金基金・確定給付企業年金)である。それに対して(2)(3)の記事は企業会計の話であり、調査対象は上場企業である。退職給付会計では、企業年金のみならず退職一時金制度など企業が採用しているあらゆる退職給付制度が対象である点に留意が必要。なお(2)と(3)で数値が微妙に違うのは、母集団の違いによるものと思われる。



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