公的年金積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人は27日、ライブドアを相手取って同日起こした訴訟の損害賠償請求額が48億円になることを明らかにした。有価証券報告書の虚偽記載など「ライブドア側の違法性は重大かつ明白」と指摘。国民の年金を守る観点から訴訟に踏み切ったとしている。
同法人の前身である旧年金資金運用基金は2005年、西武鉄道が有価証券報告書の虚偽記載で上場廃止になった際も、損害賠償請求を提訴している。西武鉄道が上場廃止になった際には、厚生年金基金連合会(現企業年金連合会)なども損害賠償請求をしており、他の年金基金にも提訴の動きが広がる可能性が高い。
(2006/12/28 日経朝刊 5面)
有価証券報告書の虚偽記載で上場企業が年金基金から提訴された事例としては西武鉄道の件が記憶に新しいが、今度は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がライブドアに対して同様の損害賠償請求訴訟を起こしたとの事。
GPIFは国内株式ベンチマークを一部上場銘柄が対象のTOPIX(配当込み)に設定している。ライブドア株は東証マザーズ上場であったから、パッシブファンドには組み込まれていない筈。となると、国内株式アクティブ運用を受託していた14社・15ファンド(2006年3月末現在)のいずれか数社が「証券会社とのお付き合い」か「お遊び」で保有していたものと思われる(このチョンボが原因で既に解約されたかもしれない)。こうした「自主性の尊重」と「お任せ丸投げ」のさじ加減が委託運用の難しいところである。
○国内株式アクティブ運用受託機関一覧(2006年3月末)
(↑上記ファイルの10ページ参照)
ところで、2006年1月に起きた騒動による損失は約44億円との事だが、それでもGPIFは2005年度通期で8兆6,795円もの運用収益を稼いでおり、今回の損失額はそのうち0.1%にも満たない。また05年度の国内株式アクティブ運用の時間加重収益率は54.05%とベンチマークを6.21%上回る成果を上げている。つまり、本件のライブドア株による毀損額などGPIFの資産規模からすれば全くの許容範囲だし、むしろ分散投資によるリスク管理の有効性を実証した好例と言っても良い。
にも関わらず、資産総額の万分の一にも満たない端額回収のために世間に恥を晒す道を選ぶのだから全くもって不可解。西武鉄道のケースでは「よりによって一部上場企業が!」という大義名分があったものの、ライブドア(ひいては新興市場銘柄全般)にそこまでの社会的規範や倫理を求める投資家は皆無であろう(汗)。そのへんが杓子定規というか、「賠償請求額」と「ブランドイメージ失墜」を秤にかけて判断できる奴は上層部にいないのだろうか(それともいわゆる国策捜査の一環だったりしてw)。
06年7―9月期は2兆円超の黒字を計上するなど好調が伝えられていたのに、今回の提訴によって、「GPIFはやはり運用下手」「責任回避のためなら訴訟も辞さず」というマイナスイメージが早くも世間に浸透しつつある。このブランド価値の失墜は、おそらく賠償請求額を遥かに上回ることだろう(汗)。
損害賠償の請求費用 : ¥4,809,657,057
うち弁護士報酬など : ¥40,000,000程度
提訴により失う信用 : priceless
