2007年05月28日

「企業年金ガバナンス 年金格付けへの挑戦」

「格付け一覧」に非ず、格付けを行うための「理論書」

企業年金ガバナンス―年金格付けへの挑戦企業年金ガバナンス―年金格付けへの挑戦
森戸 英幸

中央経済社 2007-05
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「世の中にはレストランやワインの格付けさえあるのに、なんで企業年金の格付けはないんだろう?」という冒頭書き出しこそ大いに興味を引くが、実際に格付けについて言及しているのは終わりの2章のみ。「企業年金の格付け一覧」を期待すると肩透かしを喰らうが、企業年金の格付けを行うために最低知っておきたい基礎理論(財務戦略・人事戦略・年金資産運用etc)をまとめた書籍としては良質な一冊に仕上がっている。次回は是非全年金基金にレーティングを施し、業界に論争を巻き起こして貰いたいものだ。かつて藤沢久美氏が投資信託の格付けでそうしたように。






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2007年05月25日

適格退職年金の2007年3月末の状況

2012年3月に廃止(正確には税制優遇措置の廃止)されるため、その移行先について何かと議論される適格退職年金(適年)だが、このたび信託協会生保協会JA全共連の連名で直近の統計がリリースされた。

 ◆企業年金の受託概況(平成19年3月末現在)

 20070525nenkin-jutaku2006.jpg

  ■信託協会のリリース
  ■生保協会のリリース
  ■JA全共連のリリース
 (注)上記3つのリリースはいずれも同じ内容。

上記の3団体が公表している「企業年金の受託概況」では、適年の他にも厚生年金基金と確定給付企業年金の状況も掲載されている。この2制度については厚生労働省や企業年金連合会からも精緻な統計数値が公表されるが、適格退職年金に関する統計は、事実上この「企業年金の受託概況」でしか把握できない。適格退職年金の監督官庁は国税庁だが、この辺の監督体制はかなりアバウト。適年が他の企業年金制度への移行を余儀なくされたのも、この点が問題視されたとの説もある。

さて本題に入ろう。上記によると、適格退職年金は2007年3月末で契約件数38,885件(前年度比▲6,205件)、加入者数506万人(前年度比▲63万人)。いずれも減少傾向にあるものの、減少幅は昨年よりむしろ小さくなっている(ちなみに前年度の減少幅は契約件数▲7,671件、加入者数▲86万人)。近年の資産運用の好調を受けて期限ギリギリまで様子見を決め込む企業が増えたことに加えて、金融機関サイドも同じく様子見モードに入ったように感じる。これを危機感の欠如と批判するのは容易いが、必要に迫られないと動けないのが人間の性というものよ(汗)。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/5/28): 適格退職年金の2010年3月末の状況
The企業年金BLOG(2009/5/27): 適格退職年金の2009年3月末の状況
The企業年金BLOG(2008/5/30): 適格退職年金の2008年3月末の状況
The企業年金BLOG(2006/5/26): 適格退職年金の2006年3月末の状況



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2007年05月24日

「CFA受験ガイドブック レベル1」

受験ガイドとスタディノートの豪華2本建て

CFA受験ガイドブックレベル1 第2版CFA受験ガイドブックレベル1 第2版
大野 忠士

金融財政事情研究会 2007-04
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冒頭20ページこそタイトル通りCFA試験(証券アナリストの国際版みたいなもの)のガイドブックだが、残りのページは全て出題範囲をまとめたスタディノートとなっている。このスタディノートが何とも白眉で、投資理論、財務会計、経済学のエッセンスがここまで簡潔にまとめられた書籍は、日本の証券アナリスト試験対策書ではまずお目にかかれない。専門用語はもちろん日英両文併記。外資系金融機関との付き合いが多い企業年金の資産運用担当者ならば、CFAを受験しなくとも、辞書代わりに傍らに置いておくと何かと重宝する。
なお今回の第2版では、職業倫理・職業行為基準に関する改正が手当てされるとともに、文中の例題が直近のものに入れ替わっている。



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2007年05月22日

「企業のための確定拠出年金」

制度施行から5年間の試行錯誤を網羅

企業のための確定拠出年金企業のための確定拠出年金
みずほフィナンシャルグループ確定拠出年金研究会

東洋経済新報社 2007-05-11
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確定拠出年金に関する書籍と言えば、制度導入が叫ばれていた90年代末から2000年初頭は雨後のタケノコの如く刊行されていたものの、施行後はそれが嘘のように沈静化、今や毎年改訂されているのはDC資格関連の参考書・問題集だけという衰退ぶりなのはもはや知る人ぞ知るところ。
しかしそんな折、久々に歯応えのあるDC本が刊行された。本書は、実際に制度導入・運営を手掛けている金融機関によるものだけに、実務に裏打ちされた解説が特徴。内容的には過去の自社主催セミナーの資料を繋ぎ合わせただけとも言えなくもないが、こうした一連の形でまとめられたものはないだけに、資料としての利便性は却って高い。まさに制度施行から5年間の金融機関の試行錯誤を一冊に凝縮した内容。



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2007年05月19日

「年金問題 要点を教えて!」

昨今の年金不安の解消に最も貢献するであろう一冊

年金問題 要点を教えて!年金問題 要点を教えて!
金子 幸嗣

ランダムハウス講談社 2007-04
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昨今の年金不安・年金不信の誤解を解消すべく刊行された書としては「年金の誤解」(堀勝洋著)が代表的だが、正確性を優先するが故に記述が難解になり、一般市民にとっては却って敷居が高くなってしまった。そのため「年金は難解だ→難解な制度はけしからん!」という負のスパイラルを招いてしまい、誤解を解くはずが逆効果となってしまったのは記憶に新しい。

そんな「年金の誤解」の戦略上の失敗を教訓にしたかのような書が本書。サブタイトルの「細かいことはいいから」というのがまさに本書のキモで、分かり易さを重視したレイアウトは「これなら読めそうだ」と気軽に手に取らせる効果大。それでいて内容も正鵠を射る本質的なもので、昨今の年金報道がいかに的外れであるかが実感できる。特に「年金制度が破綻することはないが、年金のしくみを知らないと貴方の老後が破綻するかもしれない」という著者の言葉は重い。また、こうした本を官僚出身者が著すと「体制擁護」と批判されがちだが、著者は市井の社労士なのでそうした不当なバッシングとも無縁。いずれにせよ、官僚や大学教授による著作以上に年金制度に関する誤解の解消に貢献してくれること必至。まさに"出藍の誉れ"を具現化した一冊といえよう。



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2007年05月16日

「年金の誤解」

正統的・体制的ゆえに耳目を集めきれなかった悲劇の書

年金の誤解―無責任な年金批判を斬る年金の誤解―無責任な年金批判を斬る
堀 勝洋

東洋経済新報社 2005-02
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社会保障審議会の委員を務める大学教授が、無責任かつ扇動的な年金批判に反論するべく、満を持して世に問うた渾身の一冊!
──となる筈だったが、その教科書的な面白みの無い文体が災いしてか、残念ながら、センセーショナルな年金報道に躍らされた一般市民の誤解を解くには至らず。それどころか、体制賛美的な姿勢と元厚生官僚という経歴を逆手に取られ、すっかり御用学者の戯言というレッテルを貼られてしまった悲劇の書(汗)。議論が盛り上がる法案審議時に刊行しなかったのがそもそもの敗因か。
とはいえ、無責任かつ扇動的な年金批判への反論はおおむね正鵠を射ており、2004年改正の意義と考え方を知る上では良い教科書である。前回改正から時を置いた今こそ、冷静になって本書を紐解いてみると、新たな知啓が得られることだろう。
なお各論に関する個人的見解は以下の通り。

○賦課方式と積立方式を混同した財政比較は無意味との指摘は、至極ごもっとも。
 だからといって「賦課方式に財政検証は不要」と言い切るのは単なる暴論。

○年金制度は政治的に崩壊させられないとの指摘は、確かにその通り。

○「労使折半で保険料はお得」との指摘には何故か批判が多いが、仮に事業主負担が
 廃止されても、企業がその分を給与に上乗せしてくれるとは到底思えないのだが。
 徴収システムとして考えると、労使折半は実は秀逸な制度ではないのか。

○「マクロ経済スライドは公的年金のインフレヘッジ機能を損う」等に代表される、2004
 年改正の問題点についても触れて欲しかった。
 



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2007年05月10日

「年金財政シリーズ1 年金財政入門」第4版

タイトル一新&大幅加筆!

zaisei1_2007年金財政シリーズ1 「年金財政入門」(第4版)

企業年金連合会 2007-03

年金数理にまつわるあらゆるトピックを扱った年金財政シリーズの第1巻が、装いも新たにパワーアップ。タイトルをそれまでの「基金財政のしくみ」から「年金財政入門」に一新するとともに、ボリュームも70ページから150ページへと倍増。前版はどちらかというと年金数理に重きを置いた内容だったが、第4版では、年金数理については現価計算の解説が強化されたほか、決算書の見方や給付設計といった、これまで手薄だった財政関連のトピックも網羅。これにより、年金数理のみならず年金財政全般を網羅した書へと進化した。
なお、タイトルの「入門」の二文字に偽りが無いのは第2章まで。第3章以降はそれなりに骨のある内容なので、心してかかられたし。とはいえ、他の類書に比べると全然マシだが。

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/4/19): 「新年金財政シリーズ 年金財政入門」第5版



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2007年05月08日

時価評価もせずにオルタナとな!?

公的年金資金、株や債券以外でも運用検討 (NIKKEI-NET)
公的年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(年金運用法人)は、国内外の株式と債券に限っている運用先を多様化するため、不動産の証券化商品などへの投資を検討する。分散投資によって株式や為替相場に大きく左右される運用利回りを安定させるのが狙い。株・債券運用では先物市場を活用し、株価の急変動などによる損失を回避することも検討する。
(2007/5/5 日経朝刊 1面)

企業年金運用の世界では既に導入が進んでいるオルタナティブ投資。そこに公的年金もいよいよ乗り出すか──というのが上記の記事。先月も似たような報道がなされたが、公的年金運用の規制緩和について当局もいよいよ本腰を入れて来たという意思表示だろうか。オルタナ投資の導入は、分散投資によるリスク低減という観点に立てば望ましい方針ではある。少なくとも市場運用から撤退せよとかいうトンデモ理論よりは(汗)。

ところで公的年金運用といえば、ここ数年必ず話題に登るのが国債を簿価評価に変えようという陰謀。オルタナティブ投資に進出するのであれば、この際、債券を簿価評価にしたいなどという甘えは捨てるべきである。それとも、意表を突いてオルタナティブ投資にも簿価評価を求めたりして!?(笑)

maro_alternative.jpg


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2005/11/25): 満期保有目的債券の簿価評価
The企業年金BLOG(2006/3/23): 公的年金の債券運用、結局時価評価に
The企業年金BLOG(2006/12/11): 年金会計に関するトピック4題 ←トピック1参照



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2007年05月06日

憶測・伝聞に群がる情報サービス会社

ファンドに群がる厚生年金基金 (TOKEI News)
東芝企業年金基金運用担当課長、富士通厚生年金基金常務理事、ブリヂストン厚生年金基金常務理事・運用執行理事、紀文厚生年金基金理事長、山崎製パン企業年金基金常務理事・運用執行理事、三菱商事企業年金シニアマネージャー、プロミス厚生年金基金常務理事、ライオン企業年金基金常務理事、TDK企業年金基金常務理事・理事長、イトーヨーカ堂グループ厚生年金基金運用担当マネージャー、明治乳業厚生年金基金常務理事・理事長、三井物産連合厚生年金基金理事長・常務理事・事務長、カシオ計算機企業年金資金部長、あいおい損保厚生年金基金事務長など合計60名程が出席した新春セミナーが、1月10日東京プリンスホテルで開催された。

冒頭に年金基金の名前が連々と列挙されているのでつい目に留まってしまった上記の記事だが、読んでみると、一昔前の伝聞を繋いだだけのお粗末そのものな内容だった。概要をまとめると以下の通り。

1.タワー投資顧問清原達郎氏が2005年に長者番付トップとなった事で有名)がセミナーを開催
     ↓
2.そこでとある有望銘柄の買いを推奨
     ↓
3.その有望銘柄がSECの家宅捜索を受けて株価急落
     ↓
4.ところで厚生年金基金の役員って天下りばかりだよね
     ↓
5.天下り幹部は損失の責任も取らずにいい気なもんだ


まず、セミナーに出席した=問題銘柄を保有したという決め付けがイタい。金融機関のセミナーなんて宣伝&ポジショントークの嵐なんだから、それをいちいち真に受けて資産をつぎ込むほど関係者は暇じゃないのよ(汗)。
また、厚生年金基金=天下りという指摘も、業界団体が中心の総合型基金ならともかく、一企業および系列企業で構成される単独型連合型基金にとっては現在ではほぼ無縁な話(かつては学識経験監事なる制度もあったが)。本記事の冒頭に掲げられているのはいずれも単独・連合型基金ばかりで、この顔ぶれを以って天下り云々を語るのは、中日時代の成績だけでブライアントを語るようなもの、もしくは、横綱昇進後の成績だけで隆の里を語るようなものである。

本記事の発信元は企業の倒産・信用情報を扱っているようだが、こんなトンチキ記事を「警鐘」と銘打って恥じないようでは、この企業が提供する情報サービスの程度が知れるというもの(汗)。



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2007年05月02日

運用利回りは地味なくらいが丁度良い!?

生保7社、団体年金の利回り5.48% 06年度 (NIKKEI-NET)
大手生命保険7社が企業年金から運用を受託している団体年金(特別勘定)の2006年度の運用利回りは、平均5.48%となった。株価の急上昇で過去最高を記録した05年度の利回り(平均23.33%)は下回ったものの、4年連続でプラスを確保した。
団体年金の特別勘定は一定の運用利回りを保証する一般勘定とちがい、運用実績をそのまま運用利回りに反映する。企業は一般勘定に上乗せして生保に委託する。生保が受託する団体年金全体の残高は約33兆円で、特別勘定はこのうち2割程度を占める。
(2007/5/2 日経朝刊 4面)

新年度に入って早くも1月が経過し、そろそろ昨年度の運用利回りに関する発表がチラホラと為される時期となった。史上最高の運用利回りを記録した一昨年(05年度)は新聞の1面をしばしば飾っていたものだが、昨年度はそれらに比べると数字が地味なこともあり、今回の記事は4面でひっそり掲載されていた。一喜一憂すべき類の数値ではないだけに、このくらいの扱いが相応しい。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/1/28): 企業年金の運用利回り報道に関する留意点
The企業年金BLOG(2006/5/2): 生保の年金運用が好調なようで・・・



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