正統的・体制的ゆえに耳目を集めきれなかった悲劇の書社会保障審議会の委員を務める大学教授が、無責任かつ扇動的な年金批判に反論するべく、満を持して世に問うた渾身の一冊!
──となる筈だったが、その教科書的な面白みの無い文体が災いしてか、残念ながら、センセーショナルな年金報道に躍らされた一般市民の誤解を解くには至らず。それどころか、体制賛美的な姿勢と元厚生官僚という経歴を逆手に取られ、すっかり
御用学者の戯言というレッテルを貼られてしまった悲劇の書(汗)。議論が盛り上がる法案審議時に刊行しなかったのがそもそもの敗因か。
とはいえ、無責任かつ扇動的な年金批判への反論はおおむね正鵠を射ており、
2004年改正の意義と考え方を知る上では良い教科書である。前回改正から時を置いた今こそ、冷静になって本書を紐解いてみると、新たな知啓が得られることだろう。
なお各論に関する個人的見解は以下の通り。
○賦課方式と積立方式を混同した財政比較は無意味との指摘は、至極ごもっとも。
だからといって
「賦課方式に財政検証は不要」と言い切るのは単なる暴論。○年金制度は
政治的に崩壊させられないとの指摘は、確かにその通り。
○「労使折半で保険料はお得」との指摘には何故か批判が多いが、仮に事業主負担が
廃止されても、企業がその分を給与に上乗せしてくれるとは到底思えないのだが。
徴収システムとして考えると、労使折半は実は秀逸な制度ではないのか。
○「マクロ経済スライドは公的年金のインフレヘッジ機能を損う」等に代表される、2004
年改正の問題点についても触れて欲しかった。
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posted by tonny_管理人 at 23:57
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書評:公的年金
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