2007年09月28日

横浜国立大学の企業年金フォーラムを観覧

去る9月27日に開催された横浜国立大学企業年金フォーラム「持続可能性の高い年金制度の構築」を観覧した。講演4つにパネルディスカッションというプログラムは、内容こそ盛り沢山だが、時間的にはかなりタイトであった。おかげで休憩時間は切り詰められて少ないわ、質疑応答は機会すら設けられなかった始末(汗)。
それにしても今回のフォーラム、大学主催とは思えないほど業界人(金融機関・年金基金)の「規制は緩く、税制優遇は厚く」的なエゴ剥き出し発言が随所に飛び交い、ある意味爆笑(苦笑)ものだった。とりわけ、主催者たる横国大のA教授(元信託銀行マンにして日本における資産運用理論の権威)の「企業の掛金拠出へのインセンティブを高めるために、一定水準以上の剰余金を企業に自由に利用させるべきとの発言には思わず( ゚д゚)ポカーン。年金積立金の目的外流用が企業年金制度の持続性を高めるという理屈は、当BLOG管理人のような凡人には到底理解の及ぶところではない(汗)。

ところで横浜国立大学と言えば、日本では2つしかない年金に特化した社会人大学院(MBA)を開講していることは、業界人ならば知る人ぞ知るところ。当BLOG管理人はもう一方の年金MBAに通学中だが、本フォーラム終了後は横国大MBAの現役学生・OB諸氏との懇親会に参加、有意義な意見交換を行うことが出来た。



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2007年09月24日

抜本改革に過度の期待を寄せる楽観主義者たち

当BLOGは、冒頭にも掲げている通りオススメ書籍を淡々と紹介することを主たる目的としており、読むに値しないクズ本には一切関わらないことを原則としている(amazonのレビューではボロクソに言及する場合もあるが)。しかし、このたび余りにもお粗末な書籍を手にしてしまい、またそれがわが国の社会保障制度抜本改革論者の問題点を具現化した一冊だったので、敢えてその禁を破ることとする。

問題の書籍は、旧大蔵省出身の大学教授が提唱する社会保障の財政改革論。初っ端から「皆保険・皆年金の幻想を捨てよ!」「社会保障制度にもパラダイムシフトを!」と掛け声だけは勇ましい。さてどんなに抜本的な改革案を提示してくれるのかと思いきや、これが全くの期待ハズレ。結局出て来たのは、「少子高齢化で財源が厳しいから、全て廃止・民営化しちゃえ」という単なる歳出カット路線。現行の社会保障制度に対して「理念がない」「旧来のパラダイムに拘っている」とさんざん批判している割には、著者の歳出カット論こそ旧来の財政パラダイムに拘泥している上に、著者の社会保障に関する理念が微塵も覗えない。この馬鹿らしさを経営コンサルタントに置き換えると、「ビジネスリスクを抑えたい」という顧客に対して「とっとと会社を畳んじまえ」とアドバイスするようなもの。
また、現行制度を廃止・民営化した際の悪影響に関する考察が皆無なのは、学者としてはお粗末極まりない。著者は2004年年金改正のスローガン「100年安心」を無い物ねだり(wishful thinking)と皮肉っていたが(←これには当BLOG管理人も同意)、何のことはない、「抜本改革すれば全てが上手くいく」という著者の主張もまたwishful thinkingに過ぎない。民営化や個人勘定化が必ずしも上手く機能しないことは、米国の民間医療保険の惨状401kプランの現状を見れば一目瞭然なのだが。

とまあツッコミ所満載の本書だが、巻末の参考資料の論文「年金財政の危機と確定拠出型年金の導入について」は、企業年金制度の歩みと確定拠出年金制度の検討経緯がつぶさに記されている資料的価値の高い力作。本書では抄録のみの掲載だが、財務総合政策研究所(PRI)のWebサイトに全文掲載されているので、こちらを参照されたし。それにしても、このペーパーで行ったような緻密な下調べを何故本論において行わなかったのか、理解に苦しむ(汗)。

思うに、社会保障制度の立て直しには特効薬など存在しない。現実的な妥協点を探りつつパッチワーク的に対処するのが、遠回りなようで実は近道ではないか。要はダイエットと同じ。社会保障の抜本改革を声高に唱える連中と、新手のダイエット手法に見境なく飛びつく輩が重なって見えるのは気のせいだろうか(汗)。



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2007年09月19日

早稲田大学比較法研究所セミナーを観覧

本日は、たまたま縁あって早稲田大学比較法研究所主催の公開講演会を観覧した。テーマはアメリカの年金制度および医療制度の最新動向。他の用件での来日ついでに引っ張ってきたわざわざ米国人教授を招聘しての講演会だったが、最新動向というよりは歴史的経緯に関する説明がメインだった。それはそれで参考になったが。

米国の医療制度といえば、マイケル・ムーア監督作品「SiCKO(シッコ)」が現在上映中だが、民間保険に頼る米国の医療制度の問題点を如実に表している秀作である。こうして見ると、日本の医療保険制度は、低い医療費(増加率は近年大きいが)で高い平均寿命を実現しているという意味では、他の先進諸国と比べても非常に優れた制度と言えよう。医療については、決して米国を模倣してはならないと思った次第。



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2007年09月17日

「保険税務のすべて」

保険税務の百科事典

保険税務のすべて (平成19年度版)保険税務のすべて (平成19年度版)
榊原 正則

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タイトルの通り、保険税務に関わるあらゆる事項を体系的・包括的に収録した一冊。トピックの中心は生命保険だが、1300ページ強にも及ぶ電話帳サイズなだけに、企業年金や個人年金の税制に関する記述も充実しており、他の類書の追随を許さない。保険会社の経理・税金担当者ならば必ずや傍らに置いているという業界人必携の書。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/2/7): 「個人年金税務ハンドブック」



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2007年09月12日

「真島の年金がアッという間にわかる本」11訂版

年金科目に悩む社労士受験生のバイブルが2色刷りに!

「年金」がアッという間にわかる本 11訂版「年金」がアッという間にわかる本 11訂版
真島 伸一郎

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年金科目に悩む社労士受験生の"駆け込み寺"としてつとに有名。社労士受験生向けに書かれているだけあって、解説が丁寧なのは勿論だが、「昭和36年と61年の2つをまず押さえろ」に代表されるように、憶えるべきポイントが上手く系統化されている点が秀逸。試験合格後も、法改正事項を追うのに重宝する一冊。
今回の11訂版からは2色刷りとなり読み易さがupした。また、前版のレビューで当BLOG管理人が指摘した、厚生年金基金に関する陳腐化した記述も幾分改善された。



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2007年09月10日

問題は申請主義ではなく周知の不徹底だ

企業年金未払い 「申請主義」を盾にした怠慢だ (YOMIURI ONLINE)
またしても、年金制度の信頼を損なう出来事である。
厚生年金基金を持つ企業の中途退職者などを対象に業務を行う「企業年金連合会」が、受給資格者124万人に対して、計1544億円の年金を未払いのままにしていることがわかった。
企業年金連合会は、理由を「本人の請求がないから」としている。社会保険庁と同様、「申請主義」を盾にした言い逃れに過ぎない。60歳以上の受給対象者400万人のうちの、実に3分の1が請求していないのが現状だ。権利を知らせ、請求を促す業務に怠慢があったということだろう。
(2007/9/7 読売朝刊)

社会保険庁の年金記録問題が、とうとう企業年金にも飛び火した。企業年金連合会(旧厚生年金基金連合会)は10〜15年未満の短期で企業年金を脱退した者(中途脱退者)に対して年金支給を行う組織だが、こうした中途脱退者は、勤続期間が短くなればなるほど転居・転職を繰り返す傾向にあるので、住所の把握が困難となるのは致し方ないところ。まあ、今回の騒動で「年金請求もれを許すな!」という大義名分は立ったので、対策のための予算・人員の確保は容易になるであろう。また連合会の積立不足が解消した後だったことも不幸中の幸い。むしろ良い機会なのでは。

ところで、大多数のマスコミはいわゆる「申請主義」を目の敵にしている。これまでにも生損保の不払い問題や、公的年金の記録漏れ問題でも同様の主張を展開しているが、とあるサービスを享受するために利用者がサービス提供元に対して申請を行うのは当然である。宅配ピザだって電話しなければ届けてはくれないし、新聞だって購読申込をしなければ配達されない。申請主義に係る昨今のマスメディアの論調は「購読申込者か否かに関わらず新聞を配達しまくれ」と言っているようなもの。これを年金でやると過誤払いや年金着服が頻発するのは必至。問題は申請主義そのものではなく申請を呼びかけずに放置してきた事にある。そのへんを混同してはいけない。


【追記】それでもなお「申請主義はケシカラン」とのたまう方々へ
申請せずとも年金が支払われるという夢のような方法は無い訳ではない。それはズバリ、国民総背番号制の導入である。とりあえず氏名・性別・生年月日・住所・基礎年金番号の5項目が管理されていれば、理論上は不可能ではない。しかし申請主義を攻撃する輩に限って、管理社会反対だの情報統制社会反対だのとうるさいからねえ(苦笑)。蕎麦屋に出前を注文する時に、自分の住所・氏名を告げるだろ普通? 年金もまた然り。いいかげんに「利便性とプライバシーは両立しない」という現実を直視すべき。



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2007年09月05日

特例適格退職年金 ─ 芽が出なかった大物ルーキー

前回に引き続き、特別法人税に絡む制度ネタ。
特別法人税の課税対象となるのは、厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金、財形給付金、財形基金の5制度だが、何事にも例外があるもので、積立金額が努力目標水準(代行部分の3.23倍)に満たない厚生年金基金および一定要件を満たした適格退職年金については、特別法人税の減免措置が講じられている。うち後者は、俗に特例適格退職年金と呼ばれているのをご存知だろうか。

特例適格退職年金とは、加入者(適年では「使用人」)が少ない適格退職年金契約のうち年金としての実質が確保されるなど一定の要件を満たしている契約をいい、租税特別措置法(第68条の5)の規定に基づき1993年4月より導入された。つまり、加入者数が少なくて単独で厚生年金基金を設立できない企業であっても、厚生年金基金に準じた年金給付を行うならば、同じく厚生年金基金に準じた特別法人税の減免措置を認めるというものである。なお、人数要件が一定未満に抑えられているのは、「大企業は厚生年金基金を使え」という政策的な意味合いだろうか。主な要件は以下の通り(租税特別措置法施行令第39条の36第4項より)。

<加入者数>
 単独契約:500人未満
 結合契約:800人未満(ただし1企業500人未満)

<給付水準>
 老齢厚生年金の報酬比例部分の10%相当額以上

<支給期間>
 退職年金の現価総額の2分の1以上は終身給付

<選択一時金の限度額>
 「年金現価総額の90%」または「保証期間部分現価」のいずれか少ない額


上記のうち、人数要件が500名未満とあるのは、かつて厚生年金基金の人数要件が500人以上(単独型の場合)だったことによる。2005年4月より厚生年金基金の人数要件は1000人以上に引上げられたが、適年の新規設立が2002年4月より停止されていることもあり、当該人数要件も500名のまま変更されていない。

なお特例適年の実施状況だが、直近では2005年度末で356件と、適年契約全体のうち1%にも満たない。制度創設時こそ「年金らしさ(終身給付etc)を全面に出せば特別法人税が非課税に!?」ということで鳴り物入りで迎えられたものの、中小企業にとって終身年金は荷が重かったのか、企業年金の表舞台に立つことなく、2012年3月の適年廃止とともに消え行く運命(さだめ)にある。特例適年のこの有様を元中日の藤王の姿と重ねてしまうのは私だけだろうか・・・(汗)。



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2007年09月03日

財形給付金・財形基金にも課税される特別法人税

企業年金積立金への課税 完全撤廃を要望 厚労省
厚生労働省は2008年度の税制改正で、企業年金の積立金に課税される特別法人税を廃止するよう財務省に要望する。課税は株価が低迷した1999年度から凍結されているが、08年3月末で期限が切れる。完全に撤廃することで企業年金の資金運用を支える考えだが、財務省は慎重な姿勢を示している。
企業年金の積立金には、国税と地方税を合わせて1.173%の特別法人税が課税されることになっている。不況が深刻化した90年代後半に、企業年金の資金運用を少しでも改善するため課税が凍結された。凍結措置はこれまで三度延長されてきたが、同省は「凍結が続くなら、廃止すべきだ」としている。
(2007/8/24 日経朝刊 5面)

税制改正要望における特別法人税の撤廃は、業界団体あたりは飽きずに毎年要望しているが、監督官庁が同様の要望を行うのは課税凍結期限が切れる直前のみと相場が決まっている。なお特別法人税の廃止が要望されるのは、平成17年度改正要望以来、3年ぶり●回目(←高校野球の出場歴か)。

さて、平成20年度税制改正要望項目では、企業年金に関する要望項目は「第6」に列挙されているが、肝心の特別法人税に関する項目を見ると・・・

第6-(6)厚生年金基金、確定拠出年金、確定給付企業年金、勤労者財産形成給付金及び勤労者財産形成基金に係る積立金に対する特別法人税の撤廃〔法人税、法人住民税〕

厚生年金基金、確定拠出年金、確定給付企業年金、勤労者財産形成給付金及び勤労者財産形成基金の積立金に対する特別法人税を撤廃する。
平成20年度厚生労働省税制改正要望項目より抜粋)

勤労者財産形成給付金? 勤労者財産形成基金? 何やら見慣れない制度名が並んでいるが、勤労者財産形成給付金制度(財形給付金)および勤労者財産形成基金制度(財形基金)とは、サラリーマンにお馴染みの勤労者財産形成促進制度(財形)の一種である。財形貯蓄を行う勤労者に対し、事業主が1人につき年10万円を限度に拠出を行い、7年経過毎に拠出金の元利合計額を支給することにより、勤労者の財産形成を援助・促進する制度である。なお、財形給付金と財形基金の主な違いは以下の通り。

<制度の開始>
 財形給付金:厚生労働大臣の承認
 財形基金 :厚生労働大臣の認可
<運営主体>
 財形給付金:事業主
 財形基金 :財形基金
<人数要件>
 財形給付金:要件なし
 財形基金 :100人以上(設立時)
<助成制度>
 財形給付金:中小企業の事業主に対して拠出金の一部を助成(財形助成金制度)
 財形基金 :上記の財形助成金制度のほか、基金設立奨励金(一律30万円)を支給

こうして比べるとお気付きだと思うが、財形給付金は確定給付企業年金(DB)における規約型企業年金に、財形基金は基金型企業年金(企業年金基金)に相当する制度と言える。なお資産規模は財形給付金が503億円、財形基金が21億円(ともに2006年度末)と慎ましやかだが、無情にもこれら全額に対して特別法人税が課税される。特別法人税の餌食となるのは、何も企業年金制度(厚生年金基金、適格退職年金、確定給付企業年金、確定拠出年金)に限った話ではない。

※平成20年度厚生労働省税制改正要望項目はこちら
※財形給付金制度についてはこちら
※財形基金制度についてはこちら

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/6/28): 特別法人税に関するQ&A
The企業年金BLOG(2008/3/25): ガソリン値下げの代わりに特別法人税が復活!?



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posted by tonny_管理人 at 23:49 | Comment(0) | TrackBack(0)
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