2007年10月29日

「企業年金改革―公私の役割分担をめぐって」

企業年金に関する最も格調高い論文集

企業年金改革―公私の役割分担をめぐって企業年金改革―公私の役割分担をめぐって
船後正道[監修] OECD[編] 厚生年金基金連合会[訳]

東洋経済新報社 1997-05
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原著は"Private Pensions and Public Policy"というOECD諸国の年金専門家らによる論文集。収録されている論文は、年金制度に関する公私の役割分担、企業年金に対する政府規制のあり方、私的年金の税制、公平性・適正性・安全性という公共的な視点に立った企業年金分析──などなど多岐に渡る内容で、企業年金のあり方を検討する上で示唆に富む考察がキラ星の如く散りばめられている。原著の刊行から15年、日本語版である本書の刊行から10年が経過したが、本質に迫る内容や格調高さで本書を凌駕する書籍にはなかなかお目にかかれない。企業年金を研究する研究者・大学院生は必ず読むべし!

それにしても現在の企業年金業界を鑑みるに、2001年の企業年金二法の制定以来、制度改正・改革を追うのにばかり血眼になっているように感じる。財政状況が回復基調にある今だからこそ、「本質」や「原点」を顧みる余裕を取り戻して欲しいものだ。とりわけ業界団体である企業年金連合会には、こうした研究活動にもっとヒト・モノ・カネを割いて欲しいものだ。せっかく積立不足も解消したんだしさ(笑)。



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2007年10月24日

規制が嫌なら税制優遇を返上すればぁ?

退職者の企業年金 NTTの減額認めず (NIKKEI-NET)
「経営悪化なし」東京地裁判決
NTTグループ67社が、退職者の企業年金減額を厚生労働省が承認しなかったのは違法として、国に処分取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁の定塚誠裁判長は19日、「減額がやむを得ないほどの経営悪化はない」などとしてNTT側の請求を棄却した。
法律に基づく企業年金の国の処分を巡る初の司法判断。定塚裁判長は年金を減額できる条件として「経営悪化により、企業年金を廃止するのを避けるためやむを得ない場合」との厳格な基準を示した。その上で、2004年度までの3年間、NTT東日本とNTT西日本で合計約1000億円の当期利益を継続的に計上したことを挙げ「給付減額がやむを得ないとはいえない」と結論付けた。
(2007/10/20 日経朝刊 1・5面)

NTTの確定給付企業年金を巡る訴訟については当BLOGでも何度か取り上げたが、このたび地裁レベルではNTT側が敗訴した模様。NTTが給付減額を画策した2002年当時の年金・退職金の積立不足は3兆円超と言われていたが、直近の財務諸表(←81ページ参照)を見ると積立不足(未払退職年金費用)は1兆5000億円にまで減少しており、こうした環境の変化も作用したように思う。

ところで、本件について「一民間企業の労使合意に行政がいちいち介入するな」とする見解が散見される(ココとか)。確かに一面的には正しい指摘である。かくいう当BLOG管理人もかつてはそんなふうに考えていた時期があった。しかし、税制優遇を伴わない社内預金制度や自社年金制度ならそうした理屈も成り立つが、確定給付企業年金制度は掛金の損金算入をはじめ数々の税制優遇措置を享受していることを見過ごしてはならない。税制優遇(実質的には国から補助金を受けているのと同義)を受ける以上は、民間企業であっても公的な責任を背負わざるを得ない。年金支給のために税金を減免して貰いながら本来の目的を果たさないというのは、補助金の不正受給と同じである。給付減額の要件が厳格なのは、受給権保護も然ることながら、税制優遇の不正利用を防ぐためでもある。

それに対して「年金制度のために企業が潰れたら元も子もないではないか」という反論が予想される。しかし、企業年金は借入金や社債と同様、後日他人に対して支払うべき債務(他人資本)である。契約社会で「借入金返済のために企業が潰れたら元も子もない」「社債の利払いのために企業が潰れたら元も子もない」という抗弁が通用する筈もないのに、企業年金に限ってそれを認めろというのは珍妙な話だ。契約変更の自由とは、後出しジャンケンまで容認するものではあるまい。

それでも「労使の好きにさせろ」「行政は口を挟むな」と言うのなら、税制優遇とは無縁な社内預金制度・自社年金制度に移行すれば良い。これらの設立・廃止はそれこそ企業の自由だし、行政からも余計な介入はされまい。規制されたくないが税制優遇は欲しいというのは企業のエゴに過ぎない。まあ、本件については企業にも受給者にもどちらにも与するつもりはないので、あとは当事者同士で勝手にやってくれ(汗)。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/6/14): NTT企業年金減額訴訟が結審したわけだが
The企業年金BLOG(2006/5/6): 企業年金減額、NTTが行政提訴
The企業年金BLOG(2006/2/23): NTTの年金減額、厚労省認めず



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posted by tonny_管理人 at 12:03 | Comment(7) | TrackBack(0)
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2007年10月17日

2006年度の特例解散基金数

2005年度から鳴り物入りで導入された厚生年金基金の特例解散だが、ここ数年の資産運用の好転により基金の解散そのものが減少(04年度:81基金→05年度:30基金→06年度:8基金)していることから、特例解散制度もあまり利用されていないようだ。
ところで、特例解散基金数は@実際の解散基金数からA企業年金連合会が引き継いだ解散基金数を差し引くことで求められることは以前にも述べたが、06年度については以下の通り。

 @実際の解散基金数: 8基金
   出典:企業年金連合会「企業年金の現況」

 A企業年金連合会が引き継いだ解散基金数: 7基金
   出典:企業年金連合会「平成18年度 企業年金連合会業務報告書」(←40ページ)

 @−A = 8基金−7基金 = 1基金

以上から、06年度の特例解散基金数はわずか1基金であったことが判明。まあ、基金の解散が減ったこと自体は素直に喜ぶこととしますか。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/1/19): 特例解散の利用件数は3年間で計9件
The企業年金BLOG(2007/10/17): 統計から特例解散基金数を割り出す方法



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2007年10月12日

「国民年金・厚生年金保険改正法の逐条解説」

年金官僚御用達 年金を語る国会議員にも是非

国民年金・厚生年金保険改正法の逐条解説国民年金・厚生年金保険改正法の逐条解説

中央法規出版 2005-06
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経過措置だらけでとかく難解と言われる国民年金・厚生年金保険法の解説書。法律条文に沿って詳細に説明しているだけでなく、立法趣旨や経緯にもキチンと言及しており、改正内容がより深く理解出来る内容となっている。厚生労働省・社会保険庁の職員をはじめ、およそ公的年金業務に携わる者ならば必ずや一度は手にした事がある定番書。本書の記載内容すら把握していないようでは、ミスター年金などと名乗るのは100年早い(笑)。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/2/23): 「国民年金 厚生年金保険 改正法の逐条解説」7訂版



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2007年10月09日

法令に精通してなくても「ミスター年金」ですかそうですか

「ミスター年金」長妻氏、舛添厚労相は「お役所の答弁」 (asahi.com)
民主党の「ミスター年金」、長妻昭氏が9日の衆院予算委員会で、舛添厚生労働相と初対決した。たたみ掛けるように詰める長妻氏に対し、対話路線を打ち出す福田政権の看板閣僚である舛添氏は、丁寧な答弁を重ねた。ただ、内容は「安全運転」路線で、長妻氏は委員会後、「大臣になった途端に普通の大臣になったな、と。お役所の答弁で、もう少し枠をはみ出して欲しかった」と記者団に語った。一方の舛添氏は「公務がある」として、委員会直後の取材には応じなかった。

国会議員なら、立法をしろ立法を。

瑣末な批判・質問ばかり繰り返して、その内容を法案提出などで反映しようとしない輩のどこが「ミスター年金」なのだろうか。例えるなら、井筒監督を「ミスター映画」、田中眞紀子を「ミセス政治」と称するくらい的外れというもの(汗)。現在の長妻議員ミスター年金ではなくミスター年金不祥事発掘人でしかない。真にミスター年金を目指すならば、まずは国民年金法・厚生年金保険法の条文・政省令の精読から始めていただきたい。それが出来ないなら、潔く議員バッジを外すべき。国会議員の本分は立法であってジャーナリストの真似事ではない筈。


※そんな長妻議員へのオススメ書籍

国民年金 厚生年金保険 改正法の逐条解説(7訂版)国民年金 厚生年金保険 改正法の逐条解説(7訂版)

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2007年10月04日

「会社勤めでもできる余裕の年金づくり」

「これなら自分でも出来そうだ!」と思わせる構成が秀逸

会社勤めでもできる余裕の年金づくり会社勤めでもできる余裕の年金づくり
山口 哲生

アスカ・エフ・プロダクツ 2007-09-13
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巷に溢れる「自分年金」本は、ともすると「公的年金は信用できない→だから個人年金や投資信託で自助努力せよ」といった食傷気味のパターンばかり。これらの書籍の欠点は、自助努力だけで全て賄おうとする余り目標貯蓄額が法外な金額に膨んでしまい、結果として読者にとっては非現実的かつ非実践的なものとなってしまう事である。

本書は、読者の不安を煽るのではなく、不安を取り除くところに注力している点が異色。公的年金にしても、いきなり制度の否定に走るのではなく(制度廃止のリスクを侵す政治家・官僚は皆無)、将来の年金額を完全予想することは不可能にしても「最悪のケースでもこれ位は確実に貰える」金額を紐解くところから始めている。確かに、「これでは足りない」と不安を煽るよりも「これだけあれば足りる」と安心させる方が、日本人の貯蓄マインドに適っていると思う。
後半では、老後資金の準備手段として「変額保険(月払・終身)」「個人型確定拠出年金」の活用を提唱している。これも単純な比較論・技術論ではなく、ズボラな一般人でも手軽に長期投資・分散投資できるという観点から検討した結果であり、そこに至るまでに積み重ねられた数々の考察は深い。とりわけ(変額"年金"ではなく変額"保険"を奨める理由として)「変額年金は年金開始日時点の積立状況に左右される」という指摘には思わず唸った。

ともあれ、(公的年金があてにならないから)「1から100まで自分で頑張らねば!」というのと、(公的年金は最悪でもこれ位は出るから)「あとは足りない分だけ補おう!」というのでは、登山でいえばエベレストと富士山くらい心理的重圧が異なる。「老後」「年金」という後ろ向きなテーマにも関わらず、読んでいて前向きな気分にさせてくれる一冊である。

※著者のサイト「年金の不安/撲滅委員会」はこちら



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posted by tonny_管理人 at 17:12 | Comment(3) | TrackBack(0)
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