今回取り扱う記事は、内閣府大臣政務官(経済財政政策・金融・再チャレンジ担当)の田村耕太郎参議院議員へのインタビュー。元証券マンにして国内外でMBAやら経済学修士を取りまくりな御仁なだけに、マーケット信奉者としての発言を期待されての人選と思われる。記事自体は、「金融市場の活性化のためにも確定拠出年金(DC)の普及は必須」といういつものパターンで、特段目新しさは無かった。田村議員の「公的年金もDCで良くね?」「投資教育を義務教育に組み込むぞ!」などの発言の数々は、編集部の期待に違わぬ好演ぶりであった(笑)。
ところで、前述の「公的年金もDCで良くね?」という発言、田村議員に限らず、経済学者と称する連中がしばし主張するところ。金融商品の購入が進めば、金融市場が活性化して万々歳! という程度の浅薄な発想だが、投資理論をかじったことのある向きならば、この主張には違和感を感じるはず。年金と一口に言っても、公的年金は高所得者から低所得者への所得再配分、私的年金は自分のための利殖と、それぞれ性格は大きく異なる。これらを統一しろというのは、株式投資でいえば特定銘柄に集中投資せよと言ってるのと同じで、リスク分散の観点からは到底容認されるものではない。投資教育では「異なるリスク特性の資産に分散投資せよ」と言いながら、こと年金制度となると「公的年金も企業年金も全てDCにしてリスク特性を同一化せよ」と真顔で主張するダブルスタンダードな輩には、もういっぺん学部から経済学を学び直せとだけ忠告しておこう。
<シリーズ:日経ビジネス別冊>
The企業年金BLOG(2007/12/1): 自己責任原則の敗北を意味するDCの「自動化」
The企業年金BLOG(2007/11/26): いまさら「会計基準」「適年廃止」でDC化が加速ですか(苦笑)
