2007年11月29日

リスク分散に逆行する「公的年金のDC化」

前回に引き続き、日経ビジネス2007年11月12日号の附録「変わる企業年金」を教材にした記事の検証を行うこととする。

今回取り扱う記事は、内閣府大臣政務官(経済財政政策・金融・再チャレンジ担当)の田村耕太郎参議院議員へのインタビュー。元証券マンにして国内外でMBAやら経済学修士を取りまくりな御仁なだけに、マーケット信奉者としての発言を期待されての人選と思われる。記事自体は、「金融市場の活性化のためにも確定拠出年金(DC)の普及は必須」といういつものパターンで、特段目新しさは無かった。田村議員の「公的年金もDCで良くね?」「投資教育を義務教育に組み込むぞ!」などの発言の数々は、編集部の期待に違わぬ好演ぶりであった(笑)。

ところで、前述の「公的年金もDCで良くね?」という発言、田村議員に限らず、経済学者と称する連中がしばし主張するところ。金融商品の購入が進めば、金融市場が活性化して万々歳! という程度の浅薄な発想だが、投資理論をかじったことのある向きならば、この主張には違和感を感じるはず。年金と一口に言っても、公的年金は高所得者から低所得者への所得再配分、私的年金は自分のための利殖と、それぞれ性格は大きく異なる。これらを統一しろというのは、株式投資でいえば特定銘柄に集中投資せよと言ってるのと同じで、リスク分散の観点からは到底容認されるものではない。投資教育では「異なるリスク特性の資産に分散投資せよ」と言いながら、こと年金制度となると「公的年金も企業年金も全てDCにしてリスク特性を同一化せよ」と真顔で主張するダブルスタンダードな輩には、もういっぺん学部から経済学を学び直せとだけ忠告しておこう。


<シリーズ:日経ビジネス別冊>
The企業年金BLOG(2007/12/1): 自己責任原則の敗北を意味するDCの「自動化」
The企業年金BLOG(2007/11/26): いまさら「会計基準」「適年廃止」でDC化が加速ですか(苦笑)






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2007年11月26日

いまさら「会計基準」「適年廃止」でDC化が加速ですか(苦笑)

「日経ビジネス」といえば、「東洋経済」「エコノミスト」「ダイヤモンド」と並ぶ4大ビジネス誌の一角だが、附録として半年に一度発行される企業年金特集号「変わる企業年金」をご存知だろうか。別冊といってもパンフレット程度の厚さだが、半分は金融機関の広告、残り半分は確定拠出年金(DC)の提灯記事というまさに森林資源の無駄遣い。去る11月12日号の附録として刊行された最新版も、期待に違わぬ能天気さ&ご都合主義な内容のオンパレード。あまりにも反面教師に最適な教材なので、本日より3回にわたって晒し上げ取り上げることとする。

まず最初は、「公的年金改革」「国際会計基準」「適年廃止」によってDC化がますます加速するという希望観測記事。「公的年金は今後スリム化が避けられないから、今後は私的年金が補完すべし」とは良く用いられるフレーズだが、当BLOG管理人はかねてよりこの前提はおかしいと感じている。そもそも公的年金への拠出すら余裕が無いという状況下で、果たして私的年金への拠出は可能なのかね? 懐が苦しい時は、支払先が公的年金だろうが私的年金だろうが、無い袖は振れないけどね。
「国際会計基準」「適年廃止」に至っては、5年前ならともかく、現在ではインパクトどころか既に"織り込み済み"な感が強い。会計基準そのものが導入された2000年に比べたら、即時認識への変更なぞ可愛いものよ。有識者(ニッセイ基礎研の臼杵氏)を担ぎ出してまで警鐘を鳴らすべき事項とは思えない。つうか臼杵氏ももう少し仕事を選べよな(毒)。
あげくに、公的年金もDBもダメダメだけど、DCは自己変革しながら成長するから大丈夫(苦笑)なんだそうな。DCの自己変革&成長の事例として、スウェーデンのNDC(みなし拠出建て公的年金)やオランダのCDC(集団型DC)の例を挙げているが、NDCの個人勘定はあくまでも概念上のものであり実際の運営は賦課方式のままである。オランダのCDCは、会計基準の適用を免れるための苦肉の措置として編み出された経緯があり、実はCDCこそ国際会計基準の動向如何では制度が衰退する危険性を孕んでいる。

この通り、初っ端から「生半可な知識」と「我田引水な自論」のオンパレード。附録だからって書き流しているだけなら良いのだが(いや良くない)。
(次回に続く)


<シリーズ:日経ビジネス別冊>
The企業年金BLOG(2007/12/1): 自己責任原則の敗北を意味するDCの「自動化」
The企業年金BLOG(2007/11/29): リスク分散に逆行する「公的年金のDC化」



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2007年11月24日

あのPマークがブラウン管に

企業年金連合会 テレビCM

 pfa_cm

先日の朝、出勤準備がてらテレビを観ていたら、どこかで見たことのあるマークが。国民年金基金集客してナンボなだけにCM打ちまくりだが、まさか企業年金連合会のあのPマークをブラウン管で拝む日が来るとは・・・。まあ、やれる事は何でもやろうという意欲の現れと好意的に解釈することとしよう。



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2007年11月15日

意外にも旬なテーマが揃っていた

第11回企業年金研究会を傍聴してきた。開催前は「報告書のフォローアップ」という触れ込みだったが、実際の議事次第を配布資料に沿って記すと以下の通り。

1.企業年金制度の施行状況の検証結果のフォローアップについて
(1)平成20年度税制改正要望について
(2)「確定拠出年金等の掛金の状況」について
(3)「確定拠出年金における投資教育のあり方に関する検討会」について
(4)「自動移換者問題関係者連絡協議会」について
2.その他
(1)「厚生年金基金における年金記録の適正な整備等について」
(2)「確定拠出年金等における年金記録の適正な整備等について」
(3)「国民年金基金における年金記録の適正な整備等について」
(4)「国民年金基金・国民年金基金連合会の年金支給について」
(5)「NTT企業年金規約不承認処分取消訴訟判決の概要」について

報告書のフォローアップについては、DCの掛金拠出に関する精緻な資料が出たほかは、企業年金連合会国民年金基金連合会が開催している検討会等の開催状況を述べるに留まった。意外だったのは、議事の後半にて年金記録の管理に関する報告が多く為されたこと。年金記録問題が企業年金の分野にも影を落としている様が如実にうかがえた。まあ、この手の議論がこうした公開の場で行われること自体は素直に歓迎しておこう。
なお議事の最後では、NTT年金減額訴訟の東京地裁判決に関する報告が行われた。なんでも判決文の公表を原告側が差止め要望しており、現時点では判決要旨しか公表されないとのこと。注目を集めている裁判の割には検証記事になかなかお目にかかれなかったのだが、道理で・・・(汗)。

つうことで、今回の企業年金研究会は委員8名中4名が欠席と低調な滑り出しだったものの、旬なテーマが多岐に扱われており、個人的には足を運んだ甲斐があったというもの。確定拠出年金の拠出限度額UPにしか興味の無い運管関係者には物足りなかっただろうが(笑)。なお次開催は年末か年明けの開催するとの事。まだ終わってなかったのね。


─────────────────────────

【2007.11.21追記】
第11回の資料が厚生労働省サイトにupされました。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/11/s1115-2.html



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2007年11月13日

「厚生年金・国民年金 平成16年財政再計算結果」

公的年金を語る上で外せない基礎資料集

厚生年金・国民年金 平成16年財政再計算結果厚生年金・国民年金 平成16年財政再計算結果
(pdfファイル)

厚生労働省年金局数理課 2005-03

ご存じ国民年金・厚生年金保険の財政歳計算結果報告書。実物は450ページに渡る電話帳並みにブ厚い一冊だが、厚生労働省の年金財政ホームページに無償公開されていることをつい最近知ったのでご紹介。本文はpdfファイルでの公開だが、基礎数や基礎数値をExcelファイルでダウンロード出来るというのは便利。つうかそれを知らずに今までベタ打ち入力してた俺って・・・_| ̄|●


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/3/13): 「平成18年度 年金制度のポイント」



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2007年11月06日

てっきり完結したものと・・・

第11回企業年金研究会の開催について
 標記研究会を下記のとおり開催いたします。
 傍聴を希望される方は、下記5の申込要領によりお申し込み下さい。
1.日時:平成19年11月15日(木)10:00〜12:00
2.場所:東海大学校友会館「阿蘇の間」
      千代田区霞ヶ関3−2−5 霞ヶ関ビル33階
      (別添(PDF:291KB)の地図を御参照下さい。)
3.議題:(1)「企業年金制度の施行状況の検証結果」のフォローアップについて
      (2)その他

昨秋に鳴り物入りで立ち上げられた企業年金研究会。去る7月に取りまとめられた報告書「企業年金制度の施行状況の検証結果」は、当初こそ包括的に論点整理された様が好感されたが、そのうち両論併記ばかりで結論なしという惨状が明らかになるに連れ、業界からはすっかりソッポを向かれた恰好となったのは記憶に新しいところ。数ヶ月前、当BLOGでもこの報告書を逐次解説しようかと検討したものの、早々にギブアップした次第(汗)。本報告書に関する詳細に渡る解説は、確定拠出年金コンサルティングのgorogorowin氏による長編力作をご参照いただきたい。

そんな折、突如告知されたのが上記の開催案内。税制改正要望に間に合わせるがためだけに強引に完結したものと思っていただけに、まさに青天の霹靂。しかも議題はフォローアップときたもんだ。果たしてどんな後日談が飛び出すのやら。ともあれ、仕事と論文執筆に追われてネタ枯れだった当BLOGにとっては思わぬ恵みの雨となった(汗)。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/7/10): 企業年金研究会の報告書がまとまる



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