前回に引き続き、日経ビジネス2007年11月12日号の附録「変わる企業年金」を教材にした記事の検証を行うこととする。
最後に言及する記事は、大川洋三東北福祉大学特任教授による米国401k制度のレポート。2006年の年金保護法の制定により、401kでは、@従業員が非加入を選択しない限り強制的に加入させる
「加入の自動化」、A加入者が拠出率を設定しない限り強制的に一定上限まで掛金を引上げる
「拠出の自動化」、B自動加入した者が運用商品の選定をしない限り強制的にバランス型投信等を選定する
「運用の自動化」などの措置が講じられたことは、当BLOGでも何回か取り上げた(
ココとか
ココとか)。
大川教授は、こうした米国の動向に何ら疑問を投げかけることなく、嬉々として
「これぞ確定拠出年金の進化した姿。It's Cool!」とばかりに舶来礼賛思考ぶりを晒している。だがちょっと待ってほしい(by朝日新聞社説)。401kがわが国に紹介された90年代後半当時、401kはどのように喧伝・賛美されていただろうか。曰く、
「自分の手で自分の未来を設計する」
「加入者に選択肢や権限を与える」
「米国では投資教育が小学校から根付いている」──06年の制度改正は、これらの賛美が
みーんな嘘っぱちだったことを白日の下に晒したわけだ。まあ考えてみれば、アメリカ人とて同じ人間。皆が皆投資知識に詳しいわけではない。かの
エンロンの社員ですら401kで自社株一点買いしてたわけだし。今回の401kプランの制度改正が示唆するもの、それは
自己責任原則の敗北である。
それにしても噴飯モノなのは、執筆者の大川特任教授。自動加入やファンドの自動選定などの措置を
「より簡便に適切な投資機会の普及が図られた」と賞賛しているが、
逆に加入者からは"選択する機会"を奪っているやんけ。挙句に、さんざん「自動化マンセー!」を唱えておきながら、最後は
「自立意識を醸成し、自らの手でつくり上げたライフプランをもとに、自分の老後を確立していく風土づくりが急がれる」だと。もはや正気の沙汰ではない。
欧米信奉者、マーケット信奉者にありがちな単細胞ぶりを見事に体現化した、ツッコミ所満載の記事であった。これでは"特任"教授の肩書きが泣くぞ(汗)。
<シリーズ:日経ビジネス別冊>
The企業年金BLOG(2007/11/29): リスク分散に逆行する「公的年金のDC化」The企業年金BLOG(2007/11/26): いまさら「会計基準」「適年廃止」でDC化が加速ですか(苦笑)<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/1/25): 反面教師(セミナー講師編)The企業年金BLOG(2006/11/17): DC運用は「自己責任」から「委託責任」へ?The企業年金BLOG(2006/11/14): 『米国人は投資上手』なんて幻想?
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posted by tonny_管理人 at 19:06
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