2008年01月31日

「社会保障と日本経済」

社会保障は経済成長に貢献している!? 初の実証分析による反論

社会保障と日本経済社会保障と日本経済―「社会市場」の理論と実証
(総合研究 現代日本経済分析 1)

京極 高宣

慶應義塾大学出版会 2007-07-28
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近年は、財界・経済学者・マスコミ等を中心に「社会保障が日本経済の足を引っ張っている」という論調が幅を利かせているが、そうした昨今の風潮に真っ向から反論を試みたのが本書。
「社会保障制度の発展が様々なルートで日本経済を底支えしている」という主張は、これまでも局所的に展開されてきたが、ともすると観念的な主張のみに終始し、数値的な根拠を伴った反論はこれまで皆無であった。著者もまた、過去の講演著作等ではデータ等を省略することが多かったが、本書では、これまで掲載を簡略化していた膨大な数値・データ等を惜しげもなく全収録したため、400ページを超える大著となったが、説得力は増した。これまで経済学者からの一方的な批判に対し、実証分析を以って反論に転じたのは、おそらく本書が初ではないか。 その他にも、社会保障を論ずる上で示唆となる考察がテンコ盛りで、今後わが国の社会保障を語る上で外せない定番となること必至。経済学に疎い社会保障学者は勿論のこと、社会保障に疎い経済学者にも是非目を通して貰いたい一冊。なお、本書で語られている社会保障の経済効果は、以下の通り。

 ◆生活安定効果(年金等の社会保障給付が消費を下支え)
 ◆所得再分配効果
 ◆労働力保全効果(医療制度が労働力の創出・保全を下支え)
 ◆産業・雇用創出効果(医療・介護業界の経済波及効果は公共事業以上)
 ◆内需拡大効果(地域経済で最も成長著しいのは介護産業)
 ◆資金循環効果(年金積立金は金融資本市場への資金供給源)



─────────────────────────

【追記】
「細かい数値はいいから著者の主張のエッセンスを知りたい」という向きには、以下の資料・書籍をオススメしておく。


<第11回厚生政策セミナー(主催:国立社会保障・人口問題研究所)>
 ○資料(pdfファイル)
 ○講演録(pdfファイル)

<書籍>
社会保障は日本経済の足を引っ張っているか社会保障は日本経済の足を引っ張っているか
京極 高宣

時事通信出版局 2006-11
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2008年01月29日

「新 経済学入門塾」

「経済ニュース」ではなく「経済学」の超入門書 2色刷りに進化

試験攻略新経済学入門塾 1 マクロ編試験攻略新経済学入門塾 1 マクロ編
石川 秀樹

中央経済社 2007-08
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以前当BLOGでも紹介した「経済学入門塾」シリーズが、装いも新たにリニューアルしていたことに気が付かなかったのは不覚(汗)。

経済学の入門書というと、書店に行けばそれこそ「入門」「わかりやすい」と銘打つ表紙が百花繚乱の如く並んでいるものの、経済学を平易に平易に語ろうとするあまり、気がついたら単なる経済ニュースの解説書と化している事例は枚挙に暇がない(例えば細野某のシリーズとか)。これを「実学でござい」とうそぶくのは勝手だが、学問としての経済理論を学ばんとする向きにとっては、紛らわしい上に不愉快千万。
そんな欲求不満に正面から応えてくれるのがこの「経済学入門塾」シリーズ。サブタイトルこそ「試験攻略」と一見表層的だが、初学者が陥りがちな論点をことごとく押さえた構成はむしろ本質的ですらある。まさに入門書の名に偽り無し。経済学を一から学ぶ大学生、経済学から永らく遠ざかっていた社会人には、第1冊目として文句無くオススメ。新版では、2色刷りとなり読み易さが向上したほか、演習問題も新たに追加された。
なお、「論理的厳密さに欠ける」として本書を過小評価する輩が稀に存在するが、大抵は「入門書の世話にならない知的なオレ様」に酔いしれているだけなので、捨て置くに限る(汗)。


試験攻略新経済学入門塾 2 ミクロ編試験攻略新経済学入門塾 2 ミクロ編
石川 秀樹

中央経済社 2007-08
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ミクロ編は、マクロ編に比べるとやや歯応えがあるものの、類書に比べると分かり易さではやはり頭一つ抜きん出ている。


試験攻略新経済学入門塾 3 上級マクロ編試験攻略新経済学入門塾 3 上級マクロ編
石川 秀樹

中央経済社 2007-10
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上級マスター編は、国際マクロ経済学などオープン・マクロ経済学の超入門書。実は証券アナリスト試験対策用の隠れた名著でもある。


なお今回の新版では、新たに「上級ミクロ編」がラインナップに加わったが、「論文マスター編」「計算マスター編」は改訂されていない模様。



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2008年01月25日

「自分の職歴ぐらい覚えてろ」というのは酷な注文かね?

ねんきん特別便、70万通を再送付 厚労相方針 (NIKKEI-NET)
舛添要一厚生労働相は22日、誰のものか分からない「宙に浮く年金記録」の持ち主とみられる人に送る「ねんきん特別便」の内容を全面的に見直し、送付済みの約70万通はすべて送り直す方針を明らかにした。社会保険庁は記録漏れの可能性が高い人を優先して特別便を送っている。だが書類を見ても自分の年金記録漏れに気づかない事例が多発しているため。
(2008/1/23 日経朝刊 5面)

2004年改正法で、公的年金の加入履歴通知サービスとして「ねんきん定期便」が導入されたが、それとは別に、年金記録漏れ対策として導入されたのが今回話題の「ねんきん特別便」である。しかし、ねんきん特別便を受け取った者の多くが「訂正なし」と回答していることが問題視されているという。マスコミは例によって結果論でしか批判していないが、記事を続けて読むと、何とも言えない違和感が漂う↓

特別便にはどんな年金記録が漏れているのかは書かれていない。全国の社会保険事務所などに問い合わせても勤務先などが分かるヒントを教えない仕組みになっていた。不正受給を防ぐためだが、特別便を受け取った人は自分の過去の勤務先などを正確に思い出さない限り、「宙に浮く年金記録」は自分の年金記録にならない。
(前掲記事より抜粋。太字は当BLOG管理人の強調。)

「どんな年金記録が漏れているのかは書かれていない」
「過去の勤務先などを正確に思い出さない限り自分の年金記録にならない」

・・・至極真っ当な措置だと思うが何か?

確かに、これまでの社会保険庁の数々の不手際は非難されても致し方ない。しかし、誰のものとも分からない記録まで開示せよと言うのは、情報漏洩を推奨しているのと同じ。これで「なりすまし」が横行したら、マスコミは責任を取るのか? いや、おそらく情報漏洩の片棒を担いだことを棚に上げて「またしても社保庁が!」と責任転嫁するに決まっている。まあ、それぐらい厚顔無恥なのがマスコミのマスコミたる所以か(汗)。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/9/10): 問題は申請主義ではなく周知の不徹底だ



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2008年01月23日

「平成19年度 年金制度のポイント」

前版よりビジュアル面を強化 セミナー資料に最適

平成19年度 年金制度のポイント平成19年度 年金制度のポイント (pdfファイル)

厚生労働省年金局 2008-01

年明け早々に厚生労働省のWebサイトにひっそりとupされた、「平成18年度 年金制度のポイント」の改訂版。公的年金および企業年金の制度概要が良くまとまっているのは勿論だが、今回は、フォントを丸ゴシックにしたり、前版では横倒しのまま掲載していた図表を縦サイズに収まるように改めるなど、ビジュアル面に注力している。おそらく、Web上ブラウザで閲覧されるよりも、印刷・製本されることを意識しているのだろう。かつて厚生省年金局より刊行された「年金白書」をますます髣髴とさせる仕上がりとなった。
強いて難点を挙げれば、いくら容量の制約があるとはいえ、1ページ単位でしか閲覧できないというのは何とかならないものか。閲覧するにも印刷するにも手間がかかってしょうがない(汗)。ダウンロード用に全体版を別途設けるべきかと。



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2008年01月21日

「社会保障の明日」

論点整理と国際比較から、社会保障の今後の方向性を示唆

社会保障の明日社会保障の明日―日本と世界の潮流と課題
西村 淳

ぎょうせい 2006-12
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厚生労働省の現役官僚が著しただけあって、現在の社会保障制度の課題および国際動向が分かり易くまとまっているのは勿論だが、更に、「自立支援」「ソーシャル・インクルージョン(社会的統合)」「経済成長との調和(社会保障は経済成長を阻害しない)」といった今後の重要トピックもつぶさに押さえており、情報の鮮度と正確さにおいては他の類書の追随を許さない。これまでの厚生労働行政に対して現状肯定かつ自画自賛的な記述が目立つのはご愛嬌だが(汗)、それを逆手に「そこまで分かっているのに何故対策を打たない!?」と歯痒さを感じるようになるまで本書を何回も読み返すと、社会保障に対する質の高い問題意識が醸成されること必至。社会保障をテーマに卒論・修士論文を一丁仕上げようという学生であれば、是非とも参考文献に加えるべき一冊。見た目は薄いが情報量の密度は濃い。



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2008年01月15日

「敗者のゲーム」

資産運用を語る上で外すことのできない「古典」

敗者のゲーム(新版)敗者のゲーム(新版)
チャールズ・エリス

日本経済新聞社 2003-12
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「運用基本方針遵守」「ポートフォリオ堅持」「長期運用」の意義をお節介なまでにこんこんと説いてくれる、インデックス運用派の経典。とはいえ、本書で述べられている「敗者のゲーム」の概念をはじめとした資産運用に係る数々の考察は、インデックス運用派のみならずあらゆるスタイルの投資家に重要な示唆を与えてくれること必至。「表現が回りくどい」「抽象論ばっかり」(特に運用基本方針について)etcといった批判はあるものの、資産運用を語る上で外すことのできない「古典」としての地位は依然健在である。

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/4/6): 「敗者のゲーム」原著第5版



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2008年01月09日

「現代保険経済」

保険学を専攻する大学院生のバイブル

現代保険経済現代保険経済 第8版
水島 一也

千倉書房 2006-04
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保険学を専攻する大学院生のバイブルとしてつとに有名な一冊。保険論と金融・経済論を絡めた著作は現在でこそ珍しくないが、その嚆矢となったのが本書。1979年の初版刊行以来、保険業を取り巻く諸情勢を反映し版を重ねてきた。第8版では、生・損保会社の不払い問題にも言及している。「直近の情勢をいちいち反映しなくても十分なのに」「節立てが大雑把で読み難いしまとめ難い」といった批判はあるものの、本質的かつ骨太な論説から得られる知見は多い。読み返せば読み返すほど新たな発見が得られるという意味では、もはや「古典」の域に達したと言っても過言ではない。



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posted by tonny_管理人 at 23:59 | Comment(0) | TrackBack(0)
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