2008年05月30日

適格退職年金の2008年3月末の状況

2012年3月に廃止(正確には税制優遇措置の廃止)されるため、その移行先について何かと議論される適格退職年金(適年)だが、このたび信託協会生保協会JA全共連の連名で直近の統計がリリースされた。

 ◆企業年金の受託概況(平成20年3月末現在)

 20080530nenkin-jutaku2007.jpg

  ■信託協会のリリース
  ■生保協会のリリース
  ■JA全共連のリリース
 (注)上記3つのリリースはいずれも同じ内容。

上記の3団体が公表している「企業年金の受託概況」では、適年の他にも厚生年金基金と確定給付企業年金の状況も掲載されている。この2制度については厚生労働省や企業年金連合会からも精緻な統計数値が公表されるが、適格退職年金に関する統計は、事実上この「企業年金の受託概況」でしか把握できない。適格退職年金の監督官庁は国税庁だが、この辺の監督体制はかなりアバウト。適年が他の企業年金制度への移行を余儀なくされたのも、この点が問題視されたとの説もある。

さて本題に入ろう。上記によると、適格退職年金は2008年3月末で契約件数32,825件(前年度比▲6,060件)、加入者数402万人(前年度比▲64万人)。いずれも減少傾向にはあるものの、減少幅は昨年と同程度(06年度の減少幅は契約件数▲6,205件、加入者数▲62万人)。一方、資産残高は11兆7,433億円(前年度比▲3兆8,820億円)と、減少幅は前年の倍以上となった(06年度の減少幅は▲1兆6,465億円)。米国のサブプライムローン騒動に端を発した世界的な株価下落の影響を受けた格好だ。この運用環境の低迷が、果たして適年移行を加速させることとなるのか、それとも足止め要因となるのだろうか。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/5/28): 適格退職年金の2010年3月末の状況
The企業年金BLOG(2009/5/27): 適格退職年金の2009年3月末の状況
The企業年金BLOG(2007/5/25): 適格退職年金の2007年3月末の状況
The企業年金BLOG(2006/5/26): 適格退職年金の2006年3月末の状況



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2008年05月29日

プロは「雇う」ものではなく「委託」するもの

公的年金運用 プロに (asahi.com)
経財会議 民間議員提案へ
制約が多く低い利回りに甘んじている公的年金150兆円の運用を、一流のプロに任せて効率化しよう――。政府の経済財政諮問会議の民間議員は23日の会合で、こんな提言をする。舛添厚生労働相も運用利回り向上には前向きの発言をしており、議論の行方が注目される。
(2008/5/22 朝日朝刊 7面)

数年前のマイナス運用時には「株なんかで年金を運用するな!」とヒステリックに叫んでいた連中(マスコミ、財界、学者等)が、今度は「運用のプロを雇って利回りを上げろ!」ですか(苦笑)。
日本の公的年金の運用利回りが低いというが、これは、前述の株式運用批判を受けて、利回りは低いが価格変動リスクも低い国内債券のウエイトを増やした結果である。リターンの高低を単純比較するのではなく、リスクに見合ったリターンが得られているかどうかで判断するというのは、投資理論の基礎のキなのだが。
また、運用のプロ(苦笑)というのも、そもそも何を以ってプロと定義しているのかが記事からは伺えず、単なる思いつき発言の域を出ていない。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が管理している運用資産(財投債含む)総額114兆円の内訳を見ると、自家運用(インハウス)で管理・運用を行っているのは国内債券パッシブファンドや財投債ファンドなど約36兆円(全体の30%)に過ぎず、残り70%は民間運用機関(信託銀行、投資顧問会社等)へ運用を委託している。つまり、運用のプロを高報酬で雇わずとも、業務委託という形で運用のプロを既に活用しているのだ(この中に"本物"がどの程度いるのかという問題はさておき)。
※資料:平成18年度業務概況書(pdfファイル)pp.76-77

運用の効率化は確かに喫緊の課題ではあるが、上記の現実すら踏まえず、「プロを雇えば全て解決!」と小学生レベルの幻想を振り撒くマスメディアや民間議員こそプロとしての知識・見識が欠如している(汗)。

なお本件の報道については、(株)日本生活設計(旧:企業年金研究所)のブログで的確な批判が為されている(ココとかココとか)。ここの社長は「役人に運用させるくらいなら国内債券のウエイトを90%超に引上げろ!」という徹底したアンチ厚労省派だけに、今回の報道についても惰性で役所叩きに回ると思っていたが、意外な反応であった。



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2008年05月23日

金融のプロ(苦笑)ですら自身の老後準備には無頓着

少々古い記事で恐縮だが、確定拠出年金(DC)の投資教育に関わる衝撃的な記述を発見してしまったので、敢えて取り上げることとする。

年金のイロハ(下)企業年金にも目配りを
企業に勤めている人ならば「厚生年金基金」や「確定拠出年金」といった企業年金にも加入している人が多いだろう。これらは国民年金や厚生年金に上乗せされる「三階部分」で、こちらにも目配りが必要だ。年金の基本的な仕組み第三弾は、種類が多く仕組みも複雑な「企業年金」について解説する。
(2008/05/11 日経朝刊 17面)

一読すると、週末の日経によくある何の変哲もないマネー解説記事なのだが・・・

(中略)もっとも積極的に運用する人は少数派で、多くは元本保証型商品を選ぶ傾向がある。加入者が投資先を選ばないと、自動的に預金として運用する設定の会社が多いのも一因だ。だが現在のように金利が低い状況では、預金だけで従来の確定給付型を上回る利回りを確保するのは難しい。
そのため確定拠出年金を採用した企業にとっては、社員に運用技術を身に付けさせることが課題。社員全員が同年金に加入する野村総合研究所は08年4月、何も選ばないと、株式と債券の両方を組み入れた「バランス型ファンド」に投資先が自動でなるような設定に変えた。「運用について考えてもらう機会をつくるのが狙い」(同社)だ。

・・・( ゚д゚)ポカーン

これが、DCの導入当時(2001年)に「これからは自己責任だ!」と旗を振り、当時の日本証券業厚生年金基金からグループ丸ごと脱退してみせた、自称金融プロ集団(苦笑)の成れの果てである(汗)。そんなにお任せ運用が好きならば、元居た基金に帰ればぁ!? と毒づきたいところだが、証券業基金は当時の三大証券グループ大量脱退の煽りを受け、2005年3月に敢えなく解散。余談だが、証券業基金といえばかつては総合型基金だけでなく日本の厚生年金基金のオピニオンリーダー的な存在だっただけに、解散時は業界でも話題になったものだ。いずれにせよ、(野村総研は実質的にはシステム会社だが)証券マンの長期的視野の欠落ぶりを裏付けるエピソードがまた一つ増えた。
なお、本件を嬉々として取り上げる日経新聞は、401k導入を煽る一方で自身は厚生年金基金をひっそりと運営していたりする。株屋と株式新聞は同じ穴の狢だと思っていたが、社員の退職給付に限って言えば、日経の方がより狡猾かも(汗)。


<今回のまとめ>
@野村證券グループの一角を担う野村総研の社員ですら、自身の
  老後準備のための資産運用には無頓着。
Aそれを恥じ入るどころか、「新しいチャレンジでござい」とばかりに
  マスメディアに公開してしまう厚顔さ(汗)。



<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2008/2/26): DCファンド教育アカデミーを観覧
The企業年金BLOG(2007/12/1): 自己責任原則の敗北を意味するDCの「自動化」
The企業年金BLOG(2007/8/8): 確定拠出年金は隗より始めよ!?
The企業年金BLOG(2006/11/17): DC運用は「自己責任」から「委託責任」へ?
The企業年金BLOG(2006/11/14): 『米国人は投資上手』なんて幻想?



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2008年05月20日

「週刊社会保障」

社会保障系専門誌の老舗

週刊社会保障週刊社会保障

法研
毎週月曜日発行

1947年(昭和22年)創刊の社会保障系専門誌の老舗。業界では「週刊東洋経済」に擬えられることが多いが、本家の東洋経済がややリベラルなスタンスなのに対し、こちらは著名な学者や現役厚生労働官僚を執筆陣に擁するなど、官界・学界との太いパイプが売り。これが一部の口さがない向きからは役所の広報誌だの御用雑誌だのと揶揄されるものの、業界動向をつぶさに捉えるためのツールには最適この上ない。
とりわけ、毎年夏に刊行される特集号「社会保障読本」は、医療・年金・福祉の現状について厚生労働省の各部署を総動員して情報収集するとともに、前後と脇を著名な社会保障系学者の小論で固めるという豪華ラインナップ。編集部サイドの心意気を感じる逸品。



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2008年05月15日

「図表でみる世界の年金」

OECDレポートの日本語版

図表でみる世界の年金図表でみる世界の年金―公的年金政策の国際比較
経済協力開発機構 栗林 世 OECD

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原著はOECDの「Pensions at a Glance: Public Policies across OECD Countries」の2005年版。OECD加盟30ヶ国の公的年金制度を、「相対的年金水準」「総所得代替率」など6つの尺度で比較検証を行ったものである。あくまでも一定の仮定に基づいた国際比較であり鵜呑みは禁物だが、海外の公的年金制度について詳細な分析を行った類書は皆無なだけに希少価値大。なお、日本語版の翻訳には連合系のシンクタンクが絡んでいるが、イデオロギー色は一切なく公正な記述となっているのでご安心を。とりわけ196〜197ページの訳語一覧は重宝する。

なお、英語版では第2版となる2007年版が既に刊行されており、しかも全文がpdfファイルで公開されている。

Pensions at a Glance: Public Policies Across OECD Countries 2007Pensions at a Glance:
Public Policies Across OECD Countries 2007

OECD 2007-05

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<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/6/25): OECDの公的年金所得代替率に関する留意点
The企業年金BLOG(2011/3/26): OECD「Pensions at a Glance」2011年版が公表



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2008年05月11日

「海外の年金制度」

特に私的年金の海外情報が充実

海外の年金制度海外の年金制度―日本との比較検証
厚生年金基金連合会

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企業年金の業界団体が、生保会社や信託銀行のアクチュアリー・年金数理人を総動員して、主要12ヶ国の公的・私的年金制度の比較検証を行った一冊。諸外国の年金制度を国際比較したものとしては、OECD編「図表でみる世界の年金」(原題:Pensions at a Glance)や清家篤・府川哲夫編著「先進5か国の年金改革と日本」など類書には事欠かないものの、本書は私的年金とりわけ企業年金に関する海外情報が網羅されている点が特長。1999年の刊行だが、本書を凌駕する年金国際比較本は未だ現れていない。一刻も早く改訂してほしい書籍のひとつである。

予断だが、本書の改訂を望む声は少なくなく、出版社サイドも改訂版の出版を打診したらしいのだが、編者サイドが予算・人員難を理由に断ったとの噂がまことしやかに囁かれている。事実だとしたら真に遺憾である。



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2008年05月07日

適年の基準利率がようやく改定

財務省は4月30日、法人税法施行規則の一部を改正する省令を公布した(財務省令第25号)。これにより、法人税法施行規則附則第5条第4項で規定する適格退職年金の基準利率(下限予定利率)は、予定通り1.6%に変更された。上記の省令改正は、例年ならば年度末(3月末)までに行われるのが通例だが、今回は例の暫定税率問題の余波を受けたせいか、例年より約1ヶ月遅れの公布となった。

ところで、改正省令附則を見た限りでは、施行期日には何の配慮も為されていない。額面どおりに読むと、改正後の基準利率(1.6%)が適用されるのはあくまでも2008年4月30日からであり、同年4月1日〜29日については従前の基準利率(1.7%)が適用されるという事になるのだが・・・?
詳しい筋からの情報を求むm(__)m


※参考資料
○財務省令第25号「法人税法施行規則の一部を改正する省令」
 出典:官報(平成20年4月30日、特別号外第9号)
 ・冒   頭(Web官報より抜粋、p.240) (pdfファイル)
 ・該当部分(Web官報より抜粋、p.244下段) (pdfファイル)
 ・附   則(Web官報より抜粋、p.294) (pdfファイル)

企業年金制度における各利率の設定基準(日本年金数理人会) (pdfファイル)


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2008/3/11): 2008年度の企業年金の予定利率
The企業年金BLOG(2007/3/16): 企業年金の予定利率の算出根拠とは



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2008年05月02日

「年金とファイナンス」

年金と企業財務・資産運用を絡めた実証論文集

年金とファイナンス年金とファイナンス
浅野 幸弘、矢野 学、岩本 純一

朝倉書店 2006-08
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これまで年金に関する計量分析・実証分析と言えば、公共経済学者および財政学者の独壇場で、しかも手法(世代会計)も結果(公的年金は先行世代が不当に得をしている!)もありきたりでもはや食傷気味。対して本書は、年金資産運用等の実務に携わっている実務家が、「年金財務と企業評価」「企業財務と年金資産運用」「積立不足と年金ALM」など、従来のトレンドとは一線を画した新たなテーマを手がけている。推計手法や推計結果の是非はさておき、年金の実証分析において新たな分析領域を開拓したことは評価に値する。年金で実証論文を一丁仕上げようとする大学院生は、今後は本書を規範とすべし。なお、第3章以降は、前提知識なしに読み進むのは至難の技であることを予め付記しておく(汗)。



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