2008年06月29日

「年金財政シリーズ14 企業年金の財政運営」

むしろアクチュアリー試験の2次対策に有用

zaisei14_2006年金財政シリーズ14 「企業年金の財政運営」

企業年金連合会 2006-03

年金数理にまつわるあらゆるトピックを扱った年金財政シリーズの第14巻。厚生年金基金および確定給付企業年金の財政運営(財政決算財政計算など)に関する内容で、読破するのにはやや骨が折れるが、直近の財政運営基準についてここまで詳細に解説した類書は他にない。とりわけ巻末の参考資料は、財政運営基準改正の経緯や、決算・再計算の根拠条文が政省令レベルから掲載されており、資料的価値は高い。実は、アクチュアリー試験の専門科目(2次試験)対策用の隠れた名著でもある。ただし、厚生年金基金と確定給付企業年金で記述がタブり過ぎなのが唯一の難点(汗)。



 ←気が向いたら是非クリック願います

posted by tonny_管理人 at 22:55 | Comment(2) | TrackBack(0)
| 書評:年金数理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月24日

日米のシンクタンクの能力差はあまりにも大きい!?

3兆円(日本)と900兆円(アメリカ)の差 (大和総研コラム)
(中略)国民が将来も生活の豊かさを維持するためには、年金制度の整備が不可欠であるが、公的年金が多くの困難を抱えている中にあっては、我が国においても、アメリカのようにIRAの創設と確定拠出年金の拡充が喫緊の課題である。
3兆円と900兆円(9.2兆ドル)。その差はあまりにも大きい。
(2008/6/23 大和総研Webサイト)

ハイ、またも出ました。証券業界関係者による無定見な米国金融市場礼賛記事。日米の経済規模や歴史的経緯などの差異を一切無視して「金額が巨額だから凄いんだぞ!」とのたまう様子は、真におめでたい(汗)。本論のツッコミ所は枚挙に暇がないが、整理すると以下の3点に要約される。


1.日米の経済規模の差を無視!
2006年末の名目GDPをみると、米国が約13兆ドルなのに対して、日本は約4兆ドル。米国は日本の3倍以上の経済規模を誇る。そもそもの土俵の大きさが違うのに、人口一人当たりに換算するでもなく、同じDC(確定拠出年金)資産だからと単純比較することに何の意味があろうか。柔道で言えば、48kg級の谷亮子と78kg超級の塚田真希を比較するようなもの。
※資料:OECD諸国の名目GDPの国際比較(pdfファイル)

2.DC制度の歴史の深浅を無視!
米国でDCとりわけ401(k)が本格導入されたのは1980年代初頭からであり、四半世紀以上の経験を有している。対して日本で確定拠出年金法が制定・施行されたのは2001年で、ようやく5年経ったところ。5歳のガキに20歳代後半の大人と同程度の素養を求めてどうする!?

3.老後所得保障の実態を無視!
いくら401(k)プランだのIRAだので資産を一時的に積み上げたところで、それが老後資金に用いられないのでは制度の作った意味がない。現にアメリカでは、DCプランが老後所得の柱としてはちっとも機能していない事はもはや周知の事実だというのに。。。


──とまあ、これがわが国を代表するシンクタンク(苦笑)の、しかも理事クラスの手による解説なのだから、脱力モノである。それにしても、単純に金額が大きければ由という理論は、預かり資産規模を以って「大和は野村以下だ」と断罪する結論に繋がりかねない。木村浩一理事よ、親会社に弓を引いてどうする(汗)。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/11/14): 『米国人は投資上手』なんて幻想?
The企業年金BLOG(2008/5/23): 金融のプロ(苦笑)ですら自身の老後準備には無頓着


統計数字を疑う統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか?
門倉 貴史

光文社 2006-10-17
売り上げランキング : 9,687
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools




 ←気が向いたら是非クリック願います

posted by tonny_管理人 at 23:55 | Comment(0) | TrackBack(0)
| 管理人の近況・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月21日

「厚生年金基金基礎講座(全99回)」

足掛け2年 当時の基金制度の全てを網羅

厚生年金基金基礎講座(全99回)厚生年金基金基礎講座 【全99回】

「週刊社会保障」(法研)
1991.9.2[1653号]〜 1993.10.4[1759号]

1991年から2年間にわたって連載された、厚生年金基金に関する解説記事。執筆者は不明だが、おそらく行政担当官の手によるものであろう。内容は、制度の役割から始まり、認可基準、数理基準、事務処理体制、資産運用、果ては福祉施設に至るまで、幅広いトピックを網羅している。とりわけ、設立認可基準と数理基準の解説にそれぞれ25回ずつ割くなど両トピックで連載の半数を占めるあたりに、90年代初頭の基金設立ブームが偲ばれる。現在となっては陳腐化した記述も幾分見受けられるが、厚生年金基金の給付設計についてここまで平易に解説した記事は他にはない。是非この現代版を誰かに手がけてもらいたいものだ(他力本願でスマソ)。

なお本連載は、連載番号こそNo.1からNo.100までとなっているが、途中で連載番号の振り間違いが発生したため、実際の連載記事数は99本である。収集の際は注意されたし。
・間違い1: No.57が欠番、No.58が2本存在する。
・間違い2: No.62が欠番(目次表記はNo.62だったが、記事ではNo.63と表記)




 ←気が向いたら是非クリック願います

posted by tonny_管理人 at 14:05 | Comment(0) | TrackBack(0)
| 書評:雑誌・連載記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月12日

「企業年金改革(全20回)」

DB法・DC法制定当時の貴重な解説記事

企業年金改革(全20回)企業年金改革 【全20回】
 (シリーズ・21世紀の社会保障 第77〜96回)

厚生労働省年金局企業年金国民年金基金課

「週刊社会保障」(法研)
2002.1.14[2168号]〜 2002.6.10[2188号]

2002年初頭から20回にわたって連載された、確定給付企業年金法(DB法)、確定拠出年金法(DC法)および厚生年金基金の制度改正に関する解説記事。
2002年といえば、前年6月にDB法・DC法のいわゆる「企業年金ニ法」が成立、10月にはDC法がいち早く施行し、あとは4月のDB法施行を待つばかり──という、まさに企業年金の改革真っ只中の時期であった。本連載は、ニ法に関する政令・省令・通達等が出揃った段階で所轄課が満を持して執筆しただけあって、ニ法およびそれに伴う制度改正の経緯・概要が分かり易く解説されている。本連載をたたき台に制度解説資料をしたためた関連団体・受託金融機関はおそらく数知れず(汗)。なお、市販本で本連載を凌駕する解説書の登場は、同年6月刊行の「図説すべてがわかる確定給付企業年金法」まで待つこととなる。

なお本連載は、「シリーズ・21世紀の社会保障」という全121回のシリーズ中第77〜96回の枠内で連載された、劇中劇ならぬいわば連載中連載。この「シリーズ・21世紀の社会保障」は、当初は学者による持ち回り寄稿がメインだったが、そのうち連載内で短期特集を取り扱うという変遷を辿って行った。今回紹介した「企業年金改革」の他にも、「公的年金制度の基本的考え方」「雇用・社会保障政策と税制改革」など興味を引く特集が少なくない。興味と時間のある向きは是非トライしてみては如何。


図説すべてがわかる確定給付企業年金法図説すべてがわかる確定給付企業年金法
久保 知行

ぎょうせい 2002-06
売り上げランキング : 232,734

Amazonで詳しく見る
by G-Tools




 ←気が向いたら是非クリック願います

posted by tonny_管理人 at 23:21 | Comment(0) | TrackBack(0)
| 書評:雑誌・連載記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月09日

「講座 企業年金の『基礎知識』」

企業年金の基礎知識講座 企業年金の「基礎知識」
厚生労働省年金局企業年金国民年金基金課

「週刊社会保障」(法研)
2008.3.24[2474号]〜【連載中】

「週刊社会保障」2008年3月24日号(2474号)から連載開始したシリーズ記事。執筆は厚生労働省年金局企業年金国民年金基金課が担当。官公庁の執筆物に期待することといえば、中立的な記述と数値の出所の確かさである。人によっては「文体が無味乾燥で面白みに欠ける」と批判する向きがあるが、それは歴史の教科書にドラマティックを要求するくらい的外れというもの。本連載もそのご多分に漏れず、安定感のある記述が売りで、今後の展開が楽しみである。これら連載記事は、刊行の都度パッと読み流すのもいとをかしだが、連載終了後に一気に読通するのもまた言ふべきにあらず(by枕草子)。連載記事をストックしておくと、時として良質な一冊に化けることがあるので、マニアなら要チェキラ。しかも連載が終わった頃には入手困難になるという罠。
なお同誌では、これまでにも役所サイドが執筆したと思われる良質な連載記事を幾つか掲載していた。当BLOG管理人はそのうち数本をコピー保存して手元に置いているが、機会があれば当BLOGにて取り上げたいと思う。



 ←気が向いたら是非クリック願います

posted by tonny_管理人 at 19:36 | Comment(0) | TrackBack(0)
| 書評:雑誌・連載記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月04日

論文のパワポ化は案外難しい!?

本日午後は、某所にて開催された某ビジネススクール修了生による年金研究発表を傍聴してきた。内容は、退職給付会計と確定拠出年金制度に関するテーマ3題。担当教授が「ウチは実証分析を売りにしてまして云々」と自負するだけあって、いずれのお題も論旨の軸は明快で、かつ堅牢な仕上がりであった。

しかし、それと同時に感じたのは、学位論文をパワーポイントで概略化することの難しさ。発表者は、当然ながら研究過程において試行錯誤を繰り返してきた(であろう)から、多岐に渡る前提条件はもはや自明の理だったのだろうが、初めて耳目に触れるギャラリーにとっては、「ここはキチンと説明して貰わないと分からんよ」といった箇所が幾つも散見された。とりわけ実証論文は前提条件の置き方が命であるため、いくら「有意でござい」とばかりにアスタリスク(***)を並べられた図表を示されても、前提条件の説明を伴わないものは説得力ゼロ。発表後に仔細について質問したかったのだが、主催団体のサイトに論文自体が後日upされるとの事なので、そちらを参照することにして会場を後にした。実証論文は原文に当たらないと何とも言えない。

ところで、論文を概略化する過程において重要な論点が抜け落ちてしまう危険性は、何も実証論文に限った話ではない。当BLOG管理人も来月に執筆論文のプレゼンを控えているだけに、肝に銘じなければ(汗)。ともあれ収穫の多い一日であった。



 ←気が向いたら是非クリック願います

posted by tonny_管理人 at 20:13 | Comment(0) | TrackBack(0)
| 管理人の近況・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月02日

「税制改革の渦中にあって」

公職から解放されての本音ぶちまけトーク、でも正論。

税制改革の渦中にあって税制改革の渦中にあって
石 弘光

岩波書店 2008-01
売り上げランキング : 60,783
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

6年間にわたって政府税制調査会の会長を務めてきた租税・財政学の大家による、これまでの税制改革議論を綴った回顧録。著者はその司馬遼太郎然とした風貌からこれまで冷静沈着なイメージがあったが、公職から解放された安堵感と鬱憤からか、本書ではそれまで聞かれなかったような凄まじい弁舌が並ぶ。曰く、

 「増税請負人と揶揄されようが、言うべきは言うのが政府税調の役割」
 「少子高齢化と未曾有の財政赤字の前では、もはや増税は不可避」
 「将来世代のためにも、負担増から逃げるな」
 「負担増を先送りしてきた結果が、今日の財政赤字の山だ」
 「経済成長や歳出削減だけで赤字が消えると思ったら大間違い」
 「マスコミは本質を正しく報道せよ」
 「政治家は覚悟を持て」
 「政治家を選ぶ国民の目こそ問題だ」 etc


──けだし正論である。賛否両論は当然あろうが、多面的な税制改革議論のためには、是非とも押さえておきたい論点ばかりである。それにしても、こうした議論を公職在任中に提起しても「サラリーマン増税」などと曲解して報じる辺りに、わが国のマスメディアの病巣が覗える。現在の年金改革議論においてもまた然り(汗)。



 ←気が向いたら是非クリック願います

posted by tonny_管理人 at 23:58 | Comment(0) | TrackBack(0)
| 書評:租税・税制 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする