2008年09月30日

「変貌する世界と日本の年金」

「教科書」「資料集」「論説」の三部構成

変貌する世界と日本の年金変貌する世界と日本の年金―年金の基本原理から考える
江口 隆裕

法律文化社 2008-04
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元厚生官僚の大学教授がこれまでの論稿をまとめた一冊。第1部「年金制度とは何か」では、年金制度の意義や「税方式と社会保険方式」「賦課方式と積立方式」「給付建てと拠出建て」等の基本原理が上手く分類・整理されており、年金制度を議論するための前提知識が凝縮された良質な教科書となっている。第2部「変貌する世界の年金」は、フランス、ニュージーランド・オーストラリア、チリの公的年金改革に関する仔細な資料集。とりわけ、著者が規範としているフランスについて多くの字数が割かれている。第3部「変貌する日本の年金」では、現在の日本の年金議論における今日的課題(一元化、パート労働者問題、財源etc)を論じているほか、公的年金と私的年金の融合という新たな機軸も打ち出しており興味深い。

厚めのハードカバーでとっつき難そうな外観とは裏腹に、いざ開いてみると意外と読み易く分かり易い。同時期に刊行された西沢和彦著『年金制度は誰のものか』と併せて読めば、年金制度に関する質の高い知見が必ずや得られるであろう。もっとも、著者の元厚生官僚という経歴と現行制度に対する肯定的(改革ではなく改正で対応可能という意味で)なスタンスから、西沢本を評価する層(政治家、マスコミetc)からはおそらく一顧だにされまい(汗)。



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2008年09月26日

加入期間だけチェックしても不十分

当BLOG管理人にも〜

ねんきん特別便が〜

キターーーー!! (by山本高広)

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幸いなことに、当BLOG管理人の加入期間に漏れは無かった。しかし、社会保険庁から届いた年金記録に掲載されているのは加入期間のみで、年金保険料ならびに年金額を算出する上で最も重要である標準報酬月額に関する情報は一切掲載されていない。これでは、加入月数はチェック出来ても、正確な記録に基づいた金額が将来貰えるかどうかはチェックのしようがない。昨今報道されている年金改竄問題を見ても、記録が改竄される可能性が最も高いのは標準報酬月額だというのに。。。
今回は特別便で至急の対応だったから仕方がない面もあるのだろうが、それでは「ねんきん定期便」ではその点が改善されているかというと、見本を見た限りでは特別便と大差なし。ダメじゃん(汗)。

余談だが、社会保険庁webサイトの「年金個人情報提供サービス」では、標準報酬月額等についても閲覧可能とのこと。自身の年金記録に高い関心のある向きは、こちらをオススメする。



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2008年09月18日

「年金制度は誰のものか」

御用学者とは一線を画す切れ味の鋭さ (鵜呑みは禁物だが)

年金制度は誰のものか年金制度は誰のものか
西沢 和彦

日本経済新聞出版社 2008-04
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社会保障審議会において煩型(うるさがた)の委員として鳴らしている民間シンクタンク研究員による年金改革論。前著「年金大改革」同様、政府および行政への一貫した懐疑的目線から繰り出される考察が本書の魅力。個人的には賛同しかねる見解も散見されるものの、御用学者による鈍(なまくら)本が跋扈する年金分野において、筆者の考察の鋭い切れ味は貴重な存在である。なお、個人的には以下の見解が興味深かった。

<刮目すべき見解>
・マクロ経済スライドが基礎年金にも適用されるのは、所得保障機能の観点から問題
 である(基礎的所得水準を下回る恐れあり)
・スウェーデンの年金制度はスウェーデンのお国柄(納税者番号制、高い移民率etc)
 ゆえに成り立つ(日本に導入したからといって必ずしも機能しない)
・英国の「ベヴァリジ報告」は福祉充実を意図したものではない。国家が保障するのは
 基礎的給付のみ(それ以下でも以上でもダメ)
・在職老齢年金は百害あって一利なし  etc

<首を捻らざるを得ない箇所>
・役所批判が際立つ割には、その背後にある「政治家」ひいては「有権者」(=国民)
 への批判が皆無なのは片手落ち。「低負担高給付」を望んだのは役所だけでなく
 当時の日本国民の総意ではないのか?
・持論(間接税による二階建て制度)を1987年当時の年金局長が評価したことを以
 って「理想的」と評するのは我田引水もいいところ。役所の人間は信用できない筈
 ではなかったのかね?(汗)
・年金と税制のリンクについては、消費課税だけでなく資産課税への言及も欲しかった
 (高所得者は消費ではなく保有資産が大きいはず)  etc



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2008年09月14日

「年金の基礎知識」2009年版

年金相談員御用達

年金の基礎知識2009年版年金の基礎知識―厚生年金・国民年金・共済年金〔2009年版〕
服部 営造

自由国民社 2008-08
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完全に実務家向けであるためお世辞にも分かり易いとは言い難いものの、公的年金を扱った市販本としては最も充実していることは確か。公的年金に関するあらゆる項目が網羅されており、特に障害給付、遺族給付および共済年金については、他の類書の追随を許さない情報量を誇る。巻末の連絡先窓口リストは、かつては更新漏れが散見されものの、現在は幾分改善されている。

※著者の服部氏のサイトはこちら



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2008年09月09日

「企業年金連合会 受給者のしおり」改訂版

「受給者のしおり」の良いお手本

企業年金連合会 受給者のしおり(改訂版)企業年金連合会 受給者のしおり(改訂版)

企業年金連合会 2008-04

企業年金連合会が年金受給者向けに作成しているしおり。一般人がつい勘違いしがちなトピック(例:年金が振り込まれないぞ!(恕) → そういえば口座変更してたwww)がQ&A形式で分かり易くまとまっているほか、年金証書の見方や支払月一覧表などは専門家にとっても参考になる内容。今回の改訂版は、前版に比べると、公的年金制度改正に関する記述が手厚くなったほか、細かい規定の表記も手当てされた。

それにしても、かくも良質なしおりを用意しておきながら、肝心の年金未払いが減らないというのは如何なものか(汗)。年金未請求が一刻も早く解消され、このしおりが一人でも多くの年金受給者に配布されることを願って止まない。

未払い147万人に増加 企業年金連合会 (NIKKEI-NET)
転職した会社員の企業年金の資産を預かる企業年金連合会は29日、60歳以上の受給資格者の32%にあたる147万人に3月末時点で本来払うべき年金を支給していなかったと厚生労働省に報告した。未支給総額は1,865億円。住所不明などで受給者に連絡がつかなったのが原因。連合会は未払い対象者への周知徹底に取り組んでいるが、未払いの解消には時間がかかりそうだ。
(2008/8/30 日経朝刊 5面)


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2005/11/21): 「企業年金連合会 受給者のしおり」



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2008年09月04日

年金MBAはもはや風前の灯火!?

少子高齢化の波を受けてか、ここ数年、社会人をターゲットにした大学院が雨後のタケノコの如く増殖している。そんな中、4・5年前には企業年金に特化した奇特な大学院まで現れたのは知る人ぞ知るところ。

早稲田大学大学院商学研究科専門職学位課程ビジネス専攻マネジメント専修
横浜国立大学大学院国際社会科学研究科(横浜ビジネススクール)

大学院で年金を学ぶというと、それまでは社会保障論あるいは社会福祉論的なアプローチが主流であったが、上記の2校では、年金数理や資産運用に携わる実務家を招くとともに、数理的・財政的なアプローチから企業年金を研究するというMBAチックなスタイルが注目された。しかし悲しいかな、テーマのマイナーさが災いしてか、両校ともカリキュラムの再編等を余儀なくされている。
早稲田では2005年度に「年金マネジメントと数理」モジュールが開設された。しかし、「マーケティング」「経営戦略」などの花形モジュールに比べるとやはり見劣りするのか、翌年度は募集が行われず、07度年には「保険・年金マネジメント戦略」と保険色を打ち出したモジュールに改編された。だがこちらもやはり翌年度は募集が行われず、09年度に至って「企業リスクマネジメント戦略」とテーマを広範にしたモジュールへと更に改編された。
一方、早稲田に先んじて2004年度から開講した横国大は、サテライトキャンパスが横浜ランドマークタワー内というロケーション(ただし平日のみ)と、年金数理の山口修氏と資産運用の浅野幸弘氏という二大巨頭を擁し、早稲田とは対照的に毎年コンスタントに募集を続けていたものの、こちらも09年度からは「企業ファイナンスと会計の融合戦略」というファイナンスと会計を扱うカリキュラムに改組された。

という訳で、残念ながら年金MBAは風前の灯火となりつつある。個人的には、たまたま上記のような大学院が開講していた時期に、たまたま知力・体力・財力・時間の折り合いが付いて進学できたことは、まさに幸運としか言いようがない。書籍だけでなく大学院もまた一期一会。



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posted by tonny_管理人 at 01:31 | Comment(2) | TrackBack(0)
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