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元厚生官僚の大学教授がこれまでの論稿をまとめた一冊。第1部「年金制度とは何か」では、年金制度の意義や「税方式と社会保険方式」「賦課方式と積立方式」「給付建てと拠出建て」等の基本原理が上手く分類・整理されており、年金制度を議論するための前提知識が凝縮された良質な教科書となっている。第2部「変貌する世界の年金」は、フランス、ニュージーランド・オーストラリア、チリの公的年金改革に関する仔細な資料集。とりわけ、著者が規範としているフランスについて多くの字数が割かれている。第3部「変貌する日本の年金」では、現在の日本の年金議論における今日的課題(一元化、パート労働者問題、財源etc)を論じているほか、公的年金と私的年金の融合という新たな機軸も打ち出しており興味深い。
厚めのハードカバーでとっつき難そうな外観とは裏腹に、いざ開いてみると意外と読み易く分かり易い。同時期に刊行された西沢和彦著『年金制度は誰のものか』と併せて読めば、年金制度に関する質の高い知見が必ずや得られるであろう。もっとも、著者の元厚生官僚という経歴と現行制度に対する肯定的(改革ではなく改正で対応可能という意味で)なスタンスから、西沢本を評価する層(政治家、マスコミetc)からはおそらく一顧だにされまい(汗)。
