2008年12月27日

2009年の最低責任準備金の予定利率

厚生労働省は12月26日、厚生年金基金の最低責任準備金の算定に用いる2009年の利率をマイナス3.54%と告示した(厚生労働省告示第572号)。最低責任準備金に付与する利率は、厚生年金本体の実績に基づき設定されることとなっており、今回の利率は、2007年度における年金特別会計の厚生年金勘定にかかる積立金の運用実績に基づき定められたもの。なお、特例解散における最低責任準備金の分割納付に用いる利率も同日付で告示されたが、さすがにマイナス利率を用いるわけにはいかず、0%と告示された(厚生労働省告示第573号)。

厚生年金基金の代行部分の予定利率については、1999年9月までは一律5.5%という固定利率だったものの、1999年10月以降は、厚生年金本体の運用実績に準拠した変動利率を用いている。09年の利率がマイナス3.54%となるであろうことは当BLOGでも既に報告済みであるため繰り返さない。99年10月以降の利率の推移は以下のとおり。

 <暦年>  <利率>
 1999年   4.66% ※10〜12月のみ
 2000年   4.15%
 2001年   3.62%
 2002年   3.22%
 2003年   1.99%
 2004年   0.21%
 2005年   4.91%
 2006年   2.73%
 2007年   6.82%
 2008年   3.10%
 2009年 ▲3.54%



<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/8/15): 公的年金決算から見る代行部分の予定利率の動向
The企業年金BLOG(2007/3/16): 企業年金の予定利率の算出根拠とは
The企業年金BLOG(2006/12/14): 代行部分の予定利率は5.5%に非ず






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2008年12月26日

「本部」の開催!?

適格退職年金の企業年金への移行支援本部の開催について (厚生労働省)
標記の会議を下記のとおり開催いたします。
傍聴を希望される方は、下記5の申込要領によりお申し込み下さい。
1.日時: 平成21年1月9日(金)15:00〜(30分程度)
2.場所: 厚生労働省5階専用第12会議室
     (東京都千代田区霞が関1-2-2中央合同庁舎5号館)
3.議題:
 ・適格退職年金の企業年金への移行支援本部の設立について
 ・適格退職年金の移行の現状及び取組について
 ・適格退職年金の企業年金への移行支援のための行動計画の策定について

なかなか進展が見られない適年移行について、厚生労働省がようやく身を乗り出すとの事。ところで、会議とか協議会の開催というのはわかるが、「本部」の開催という表現に当BLOG管理人は強烈な違和感を感じた。ところが検索してみると、行政用語としてはごく一般的な用法らしい(汗)。ともあれ、当本部の動向は適宜チェキラせねば。



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2008年12月25日

「備えあれば保険あり」'08−'09年度版

小冊子のセット販売 むしろ業界人向き!?

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業界団体がこれまでに刊行した小冊子の中から、人気の高い冊子を集めたセット商品。一般消費者を意識して作成したとの事で、生命保険や税金などの基本的な仕組みが分かり易く描かれているほか、数年前からはamazonをはじめ大型書店での販売にも踏み切っている。もっとも、保険に加入するだけのために本書を購入する向きはそうは居ないだろうが(汗)。むしろ保険会社職員やFP(ファイナンシャル・プランナー)などの業界人こそ、改めて読み返すと多くの示唆が得られること必至。なお個人的には、「ねんきんガイド」「生命保険と税金の知識」が白眉。



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2008年12月17日

DCに手厚く個人年金に冷たい与党税制改正大綱

【社説】景気も改革も力不足の与党税制大綱 (NIKKEI-NET)
2009年度の与党税制改正大綱は住宅ローン減税の拡大や証券優遇税制の延長など、国・地方で約1兆円(平年度ベース)の減税となった。景気悪化に一定の配慮はしたものの、一貫性のない政策減税の寄せ集めでは経済の浮揚には力不足である。中期の課題である消費税や法人税の抜本改革も踏み込めず、麻生政権の求心力低下を映した。
(2008/12/13 日経朝刊 2面)

今月12日に公表された2009年度税制改正大綱。マスメディアの報道ではたばこ税増税やら住宅ローン減税やらばかりが取り沙汰されているが、企業年金業界にとっては見逃せない項目が幾つか散見された。

平成21年度税制改正大綱(自民党)
第三 平成21年度税制改正の具体的内容
八 金融・証券税制

(中略)

6 確定拠出年金制度
 (1)企業型確定拠出年金への個人拠出(いわゆるマッチング拠出)は
   全額所得控除
に。
 (2)確定拠出年金の拠出限度額の引上げ。
  @企業型
   イ 他の企業年金がない場合 月額4.6万円 → 月額5.1万円
   ロ 他の企業年金がある場合 月額2.3万円 → 月額2.55万円
  A個人型
   ・ 企業年金がない場合   月額1.8万円 → 月額2.3万円

7 生命保険料控除の改組 ※2012年より適用
 (1)新しい控除枠の設定等(適用以後に締結した契約のみ)
  @介護医療保険料控除の創設(年4万円限度)
  A生命保険料控除の引下げ(年4万円限度)
  B個人年金保険料控除の引下げ(年4万円限度)
 (2)新控除の施行日前に締結した契約には引き続き旧控除を適用
 (3)新控除と旧控除の合計適用限度額は年12万円限度

(pp.34-36より一部抜粋、強調等は当BLOG管理人による。)

注目すべきは、何と言っても確定拠出年金(DC)のマッチング拠出解禁&拠出限度額引上げである。確かに業界からは要望が著しかったが、先月公表された政府税制調査会次年度答申ではDCについて一言も言及されていなかっただけに、唐突な感は否めない。まあ、DCの制度創設目的の一つが株価対策なのはもはや公然の秘密だけに、ある意味本来の趣旨に沿っているとも言えよう(汗)。それにしても、企業型で他の企業年金がある場合の新しい限度額は月額25,500円とあるが、この「500円」という端数には何か意図があるのだろうか・・・!?(汗)

また、個人年金保険および確定給付企業年金(DB)の本人拠出と密接に関連する生命保険料控除についても、1990年以来の大幅な改正案が提示された。医療保険・介護保険向けの控除として「介護医療保険料控除」(年4万円限度)が新設され、従来の生命保険料控除および個人年金保険料控除は限度額が年4万円にそれぞれ引下げられた。ただし引下げは制度施行後の契約にのみ適用されるため、現在の保険契約には一切影響なし。つまり、トータルでみた保険控除額が10万円(死亡・年金)から12万円(死亡・年金・医療)に増加したという事である。

最後に年金BLOGらしくまとめると、同じ老後資金準備のための自助努力手段であるにも関わらず、DCと個人年金保険とでは明暗を分ける結果となった今回の与党税制改正大綱であった。



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2008年12月10日

国際基準の鵜呑みしかできない日本の会計専門家

会計基準委、債券の保有区分変更を正式決定 (NIKKEI-NET)
企業会計基準委員会は4日、債券の保有区分の変更を認める会計基準を正式決定した。決算期ごとの時価評価が義務付けられている「売買目的」や「その他」の区分から、時価が大幅に下がった場合にだけ評価減する「満期保有」への振り替えが可能になる。2008年10―12月期の四半期決算から適用できる。欧米では先行して同様の会計処理を認めている。
保有区分を変更する際は、その時点の時価で貸借対照表に計上する。当初は「売買目的」で保有していた債券も、長期保有すると事前に意思決定している場合に限り、10月1日までさかのぼって「満期保有」に振り替えることができる。決議では14人の委員のうち2人が「恣意的な会計処理につながる」などとして反対した。
同様の会計処理は欧州企業が多く利用する国際会計基準でも認められている。すでに08年7―9月期の業績開示で欧州の金融機関が相次いで保有区分を変更した。
(2008/12/5 日経朝刊 7面)

「透明性の確保」「国際基準との調和」を旗印に時価会計をこれでもかと推進してきた企業会計基準委員会(ASBJ)だが、今度は、同じ「国際基準との調和」という論理を用いて、時価会計の一部緩和に踏み切りましたとさ(苦笑)。嗚呼、なんという変節漢。
なお、翌日の日経ではその経緯が一部報じられていた↓

「時価会計」緩和に疑問の声 企業の実体見えにくく
欧米に追随、苦肉の策 透明性の確保課題に
(前略)批判が多い中で、会計基準委があえて時価会計を一部見直したのは、海外の動向を無視できなかったからだ。欧州各国が採用する国際会計基準。同基準を作成する国際会計基準審議会(IASB)に対して、欧州連合(EU)は会計基準の見直しを要請した。米国基準では保有区分の変更が認められており、欧州の金融機関が米国に比べ不利にならないようにするためだ。EU側は見直しに応じないなら、国際基準の一部を採用しないとまで迫ったという。IASBの山田辰己理事は「脅しに近いものを受けた」と振り返る。基準見直しを受け、2008年7-9月期業績でドイツ銀行など大手金融機関が相次いで評価損計上を見送った。こうした流れを受けて「日本が欧米に比べ不利になる」「海外と足並みをそろえるべきだ」との意見が勢いを増し、会計基準委も変更せざるを得なかった。(後略)
(2008/12/6 日経朝刊 14面) ※太字強調は当BLOG管理人による

・・・つまり、ASBJは海外事例の踏襲しか出来ないヘタレ軍団ということが明るみとなったわけだ(汗)。しかも、欧米の都合次第で如何様にも改竄される国際会計基準(IAS)を未だに鵜呑みにしている始末。まあ、ASBJの舶来礼賛志向は、厚生年金基金の代行部分の会計処理を巡る議論で既に耳にしていたが、こんな連中が専門家の名の下に会計基準の決定権を握っているのだから、何とも救いようがない。これでは、同基準を用いて債券を簿価評価しようと画策したと言われている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のことを笑えまいて(汗)。
本件について、他の会計の専門家はどう考えているのか是非とも見解を伺いたいものだ。


※参考資料
「債券の保有目的区分の変更に関する当面の取扱い」の公表(ASBJ)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2005/11/25): 満期保有目的債券の簿価評価
The企業年金BLOG(2005/12/31): 代行部分の会計処理をめぐる論争



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2008年12月05日

公的年金にまつわる10の神話

しん‐わ【神話】
1.宇宙・人間・動植物・文化などの起源・創造などを始めとする自然・社会
  現象を超自然的存在(神)や英雄などと関連させて説く説話。
2.実体は明らかでないのに、長い間人々によって絶対のものと信じこまれ、
  称賛や畏怖の目で見られてきた事柄。
  「地価は下がらないという―」「不敗―」

(Yahoo!辞書[大辞泉 提供])

先日紹介した「脱=「年金依存」社会」に収録されていた論説の中で最も興味を惹かれたのは、オザーク&スティグリッツの論文「年金改革再考〜社会保障制度をめぐる10の神話」の抄訳版であった。「個人勘定・積立方式・民営化は年金問題の抜本的解決策に非ず!」というごく真っ当な主張が、厚生労働省サイドからではなく、著名なノーベル賞経済学者らの手によって為されたことが実に興味深かった。日本でも10年ほど前は公的年金の積立方式化・民営化諭が花盛りであったが(八田氏とか小塩氏とか)、本論の登場を機にすっかり鳴りを潜めてしまったのは記憶に新しい(汗)。なお、本論で提唱されている10の神話は以下の通り。

(マクロ経済に関する神話)
神話1 民間拠出建て年金にした方が、貯蓄率が上昇する。
神話2 個人勘定にした方が、収益率が高い。
神話3 賦課方式において収益率が低下することが、この方式の根本的問題を
    示している。
神話4 公的信託資金を株式に投資しても、マクロ経済的な効果や福祉への影響
    はない。

(ミクロ経済学に関する神話)
神話5 労働市場のインセンティブは、私的拠出建て制度の方が優れている。
神話6 給付建て制度は、早期退職のインセンティブを高める。
神話7 競争が民間拠出建て年金の下での低い運営費用を保証する。

(政治経済学の神話)
神話8 政府が非効率なことが私的拠出建て年金を正当化する。
神話9 民間拠出建て年金より公的給付建て年金の方が、危機における救済措置
    政策が困難である。
神話10 公的信託資金への投資は常に浪費され経営を誤らせる。


詳しい中身については、書籍を当たるか、世界銀行Webサイトに公開されている原文を参照されたし。ところで、著者の記載順は日本語版では「スティグリッツ+オザーク」という順番だが、原文では「Orszag and Stiglitz」と逆に表記されている。これはノーベル経済学賞の威光の為せる技だろうか・・・(汗)


※原文(世界銀行webサイト)
"Rethinking Pension Reform: Ten Myths About Social Security Systems"

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2008/11/26): 「脱=「年金依存」社会」



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2008年12月02日

師走早々飛ばしまくる日経新聞

企業年金 選択肢広く 確定給付・確定拠出の混合型拡充 (NIKKEI-NET)
厚労省検討 適格年金12年廃止 移行を円滑に
厚生労働省は企業年金の給付設計を拡充する検討に入った。一定の年金額を約束する確定給付型と、積立金の運用成績次第で年金額が変動する確定拠出型の双方の要素を併せ持つ混合型の企業年金メニューを増やす。負担をできるだけ抑えたい企業の要望に対応することで、2012年3月末に廃止となる税制適格年金からの移行を円滑にする狙いだ。
厚労省が09年度に企業年金研究会で具体的な検討を始め、政省令の改正などで対応する。同研究会の議論に影響力を持つ日本年金数理人会(佐々木政治理事長)が専門の委員会で議論を始めている。
(2008/12/1 日経夕刊 1面)

師走に入って早々に企業年金の文字が新聞の一面を飾っていると思いきや、これが何ともしまりのない記事であった。見出しではいかにも厚生労働省が本腰を入れたかの如き印象を受けるが、記事を良く読むと、議論を始めているのは厚生労働省ではなくて日本年金数理人会だし(汗)。この段階で本記事のいい加減さが覗えようというもの。

更に本記事は、混合型年金に関する基礎的理解が欠落している。記事の表では、混合型年金が「給付建て(DB)年金」および「掛金建て(DC)年金」と伍する独立した制度であるかのように描かれているが、勘違いも甚だしい。混合型といっても、あくまでも給付設計の一種であり、給付建て(DB)か掛金建て(DC)いずれかを基盤とするものである。記事では拡充案として「フロア・オフセット・プラン」「キャッシュ・バランス・プラン改良型」「利益分配プラン」「集団的確定拠出年金(コレクティブDC)」等が挙げられていたが、このうち真に混合型といえるのはフロア・オフセット・プランのみである。キャッシュ・バランス・プランは年金額こそ変動すれど基本的にはDBであるし、利益分配プランは完全にDCに分類されるべきものである(この利益分配プランに税制優遇を与えたのが米国の401(k)の嚆矢である)。コレクティブDCに至っては、DCと称してるのに何故混合型に分類するのか理解不能もいいところ(汗)。

ともあれ、ソースの不確かさといい、基礎的知識の欠落ぶりといい、夕刊とはいえ1面カラーで掲載するに値する記事ではないことだけは確か。まあ、よっぽど他にネタが無かったのであろう・・・(汗)。



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