2009年02月27日

2008年9月末時点の適格退職年金は29,321件

今週23日(月)に開催された社会保障審議会年金部会(第14回)については、公的年金の財政検証結果に関する報道が大きくなされているところであるが、企業年金に関しても、確定拠出年金の拠出限度額引上げなど幾つか議題に上がっていた。
その中で気になったのは、参考資料3「企業年金制度等の現状」の1ページ目の図。適格退職年金からの移行状況などを表している毎度お馴染みの図だが、図中左やや下の適格退職年金の直近の件数を見ると、なんと2008年9月末時点の数値(29,321件)が掲載されていた。適格退職年金の件数といえば、従来は年度ベースでしか発表されていなかっただけに大変興味を引いた。なお、適年移行が始まった2002年以降の件数の推移は、以下のとおりである。

  <年月> <件数> <減少数>
  2002.3  73,582   ──
  2003.3  66,741 (▲6,841)
  2004.3  59,163 (▲7,578)
  2005.3  52,761 (▲6,402)
  2006.3  45,090 (▲7,671)
  2007.3  38,885 (▲6,205)
  2008.3  32,826 (▲6,059)
  2008.9  29,321 (▲3,505) ※半期ベース


2008年4-9月期で3,505件減少というのは、年間ペースでは約7,000件の減少に過ぎず、減少幅は例年と大差ないことがうかがえる。減少契約の約半数が他制度への移行ではなく解約を選択しているであろうことを考慮すると、そりゃ移行支援本部の一つも立ち上げる衝動に駆られる心情は理解できなくもない(あとは実効性の問題だが)。

※参考資料 「企業年金制度等の現状」(参考資料3) (pdfファイル)


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2008/12/26): 「本部」の開催!?
The企業年金BLOG(2008/7/13): 適年からの移行は進んでいるか
The企業年金BLOG(2008/5/30): 適格退職年金の2008年3月末の状況






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2009年02月26日

「投資家のための金融マーケット予測ハンドブック」第4版

マクロ経済指標の概要をサラッと掴むのに最適 直近のトピックを網羅

投資家のための金融マーケット予測ハンドブック(第4版)投資家のための金融マーケット予測ハンドブック(第4版)
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金利・為替といった金融市場の分析に必要な基礎知識が上手くまとめられている良書。国内外の経済・金融統計の見方から、過去の金融政策や為替政策の動向分析までコンパクトかつ幅広くまとめられている。また米国・欧州など海外の景気指標に関する記述も厚く、海外関連だけでページ数の半分を占めるほど。個人的には、経済指標の解説において、@公表元、A公表頻度、B他の指標との相関の3点がキチンと網羅されている点が好印象。うろ覚えな際にサラッと概要を把握するのに最適この上なく、手元にあると何かと重宝する一冊。

第4版では、コラムにサブプライムローンやリーマンショックといった直近のトピックが網羅されているものの、本書のメインコンテンツである統計解説についてはさほど大きな変化はない。前版の所持者が敢えて買い替えに走る必然性は薄い気もするが、そこは好みによる。



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2009年02月23日

「国民年金 厚生年金保険 改正法の逐条解説」7訂版

2004年改正法の全容を網羅

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経過措置だらけでとかく難解と言われる国民年金法ならびに厚生年金保険法の解説書。法律条文に沿って詳細に説明しているだけでなく、立法趣旨や経緯にもキチンと言及しており、改正内容がより深く理解出来る内容となっている。厚生労働省・社会保険庁の職員をはじめ、およそ公的年金業務に携わる者ならば必ずや一度は手にした事がある定番書。今回の7訂版では、2004年改正法のうち前版では未施行だった離婚分割3号分割のほか、日本年金機構法時効特例法などを手当している。

余談だが、本書のような解説書への批判として「こんな分厚い本など無くとも誰でもシンプルに理解できるような年金制度とすべき」との見解が時々見られるが、「解説の分かり易さ」と「年金制度のあり方」を混同して論ずることはおよそ適切ではない。シンプルな制度とやらを求めるならば、「経過措置(=現在の年金受給者への配慮)は全て無くしてしまえ」と併せて主張しなければ、ただの机上の空論に過ぎない。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/10/12): 「国民年金・厚生年金保険改正法の逐条解説」
The企業年金BLOG(2007/10/9): 法令に精通してなくても「ミスター年金」ですかそうですか



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2009年02月21日

最近の厚労省の傍聴締切の早さは異常

第14回社会保障審議会年金部会の開催について (厚生労働省2/19夕刻公表
標記の会議を下記のとおり開催いたします。
傍聴を希望される方は、下記5の申込要領によりお申し込み下さい。
1.日時: 平成21年2月23日(月)18:00〜
 (中略)
5. 申込要領
(4)申込締切: 平成21年2月23日(月)午後12時必着

第1回企業年金政策研究会の開催について (厚生労働省2/9夕刻公表
標記の会議を下記のとおり開催いたします。
傍聴を希望される方は、下記5の申込要領によりお申し込み下さい。
1.日時: 平成21年2月18日(水)12:00〜
 (中略)
5. 申込要領
(4)申込締切: 平成21年2月10日(火)17時必着

公表から締切までのタイムラグが短すぎ。
傍聴させる気があるのか・・・!?



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2009年02月18日

総合型企業年金の時代が再び到来するか

確定給付企業年金、中小で共同設立容易に (NIKKEI-NET)
厚生労働省は従業員に一定の年金額を約束する確定給付企業年金を中小企業同士で設立しやすいよう条件を緩和する。2012年3月末に廃止する税制適格年金の受け皿を拡大する狙いだ。税制適格年金からほかの年金制度への移行や、解約が済んでいない企業は約3万社に上る。制度面から移行を後押しし、給付水準が長期的に下がる公的年金を補完、老後の所得保障を支援する。
(2009/2/18 日経朝刊 4面)

中小企業が合同で退職金・年金を準備する制度の元祖は、1959年(昭和34年)に創設された中小企業退職金共済(中退共)である。その後、厚生年金基金における総合設立(総合型)が台頭し、バブル絶頂期には規制緩和も手伝って数多くの総合型基金が設立された。ところが、従来から「どんぶり勘定」「寄り合い所帯で意思決定が遅い」「幹部は役所からの天下りばかり」との批判を受けていたことに加え、バブル崩壊とともに下火になったことは、さほど古い時代の話ではない。

しかし、力の無い小さな者が身を守るために「群れを為す」あるいは「団結する」ことは、人類のみならず全ての生物の本能であり知恵である。この効用は、毛利家の「三本の矢」や童話の「スイミー」の例を持ち出すまでもない。そもそも企業年金自体が、個々人の年金資産を一括管理することによって事務負担や手数料負担を軽減するスケールメリットをもたらす仕組みを内在している。そういう意味では、中小企業同士による企業年金の共同設立を支援するという今般の施策は非常に理に適ったものである。少なくとも、先日報道された特例措置の発動よりかは遥かに筋が良い。
とはいえ、かつて批判されたようなどんぶり勘定の時代に逆戻りすることはもはや容認されまい。次世代の総合型企業年金には、加入者個々人の持分や制度運営状況などに関する徹底した透明性の確保が求められよう。



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2009年02月15日

好況時は無策で不況時は特例措置ですかそうですか

企業年金積み立て不足穴埋め、掛け金上げ猶予 (NIKKEI-NET)
厚生労働省は12日、株価急落による運用環境の悪化を受け、厚生年金基金など確定給付型の企業年金の財政運営ルールを一時的に緩める方針を固めた。運用利回りの低下で年金積立金が一定以上減ると、企業は掛け金を追加拠出し積み立て不足を穴埋めする必要がある。厚労省は掛け金の引き上げを1-2年間、猶予する措置を検討。企業の負担増を先送りし、金融危機の中でも企業年金を維持しやすくする。
(2009/2/13 日経朝刊 1面)

金融危機という非常事態なのだから負担増先送りもやむなしという事なのだろうが、ならば問いたい。過去最高の運用利回りを享受していた過去4・5年間は何をやってきたのか。企業が積立不足の償却を率先して進めたなんて話は寡聞にして存じないし、行政にしても非継続基準の特例措置(最低積立基準の90%までで可)の延長を早々と決定してしまう始末。
運用が好調な時は「企業年金はプロフィットセンターだ」「余計な規制は設けるな」「これからはオルタナティブ投資だ」と言っておきながら、一変して不調に転ずると「制度の持続性が重要」「特例措置の発動を」「株式割合を減らしてLDIだ」などとのたまう不見識ぶりでは、自分達は時代の変化に対応できない遺物だと自ら宣言しているようなもの。これでは山崎元氏の企業年金無用論に説得力のある反論はできまい。



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2009年02月13日

「これでなっとく 金融数学の基礎知識」

金融工学の超入門書 ハードルの低さが長所(であり短所!?)

これでなっとく 金融数学の基礎知識これでなっとく 金融数学の基礎知識
藤田 岳彦

講談社 2000-12
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とかくとっつき難い金融工学の概念を、「日本シリーズ」「イチロー」「宝くじ」等になぞらえて平易に解説する様は、秀逸の一言に尽きる。また、この手の入門書にありがちな文系向けの文章による解説に終始することなく、理系向けの数式等による解説も並行して掲載するなど、著者の確固たる理論的蓄積をもうかがわせる出来に仕上がっている。刊行から8年以上経過しているが、金融工学の専門用語に拒絶反応を覚える向きにとっては、依然として格好の入門書である。
唯一の欠点は、他の金融工学入門書とのレベル差を考慮すると、本書のハードルがあまりに低過ぎるため、2冊目選びに苦慮することくらいか(汗)。



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2009年02月10日

マッチング拠出など砂上の楼閣!?

Sprint Nextel、従業員8000人を削減 (ITmedia News)
米携帯キャリア大手のSprint Nextelは1月26日、年間約12億ドルの人件費削減を目指し、3月31日までに従業員のおよそ13%に当たる約8000人を削減すると発表した。8000人のうち約850人は、昨年末に発表された自主退職プランの志願者となる。同社はカスタマーサービスの質を維持するため、顧客に直接対応するサービス部門の人員削減は、ほかの部署よりも少ないとしている。
また人件費削減計画には、企業年金401kプランの企業負担の差し止めと、2008年に引き続き2009年の昇給ゼロも含まれる。
(2009/1/27更新)

確定拠出年金(DC)を推進する金融機関および新聞社は、米国のようにマッチング拠出(注:本家米国では、個人拠出に企業拠出を上乗せ拠出することを意味する)が認められればDC市場が拡大・安定するかの如き幻想を振り撒いているが、何てことはない、マッチング拠出など不景気になれば容易に減額・停止される代物ではないか(毒)。

一方、日本では企業拠出に従業員拠出を併せることをマッチング拠出と称しているが、こちらは不景気になったら従業員に拠出させようとする意図だろうねおそらく。DC業界には「身銭(従業員拠出)を切れば資産運用に本気になる」と真顔で唱えるトホホな御仁が少なくないが、DC関連のフォーラムだのシンポジウムだのでパネリストを梯子している旗振り役に限って実はDC未加入だったりするのは、業界では半ば公然の秘密(汗)。



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2009年02月07日

「エリサ法の政治史」

企業年金への規制は何故生まれたか

エリサ法の政治史エリサ法の政治史―米国企業年金法の黎明期
James A. Wooten著、みずほ年金研究所訳

中央経済社 2009-02
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米国ERISAの制定・立法経緯を綴ったJames A. Wooten著「The Employee Retirement Income Security Act of 1974: A Political History」。本書の邦訳プロジェクトには、当BLOG管理人が在籍している大学院の指導教員・学生OBも何名か携わっていることもあり、昨春からその進捗状況を小耳に挟んでいたが、今般ようやく刊行の運びとなった。

本書は、米国における企業年金の基本法に相当する従業員退職所得保障法(通称ERISA)の制定・立法経緯を綴った政治史。米国といえば自由主義に基づく市場原理主義が幅を利かしていることは周知の事実だが、そんな米国において、なぜ企業年金に限っては社会主義国家も真っ青な厳格な規制が敷かれるに至ったのか。本書は綿密な取材および文献を基にその詳細を綿密に描いており、単なる企業年金法制の歴史絵巻に留まらず、市場経済における規制のあり方を考える上でも示唆に富んだ一冊である。邦訳版では、米国における立法機構および法案制定プロセスに関する補論が追加されており、理解の一助となる。

なお個人的には、企業年金の税制優遇措置の起源を綴った第1章がとりわけ興味深かった。当BLOG管理人がこのたび執筆した修士論文も、本書第1章から多分にインスピレーションを受けた次第。それにしても、論文提出直後に邦訳版が刊行されるとは(汗)。



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2009年02月04日

イベント開催告知2題

ネタがない時のBLOG更新は、他人の褌を取るに限る(汗)。
というわけで、今回はイベント告知を2つほど。。。


第8回日経企業年金フォーラム (日本経済新聞社
第8回 日経企業年金フォーラム
  「市場混迷期の企業年金と重要性高まる継続教育」
◆日時: 2009年2月24日(火)13:30〜17:30
◆場所: ベルサール神田 2Fイベントホール
     (東京都千代田区神田美土代町7 住友不動産神田ビル)
◆申込締切日: 2009年2月15日(日)

日経企業年金フォーラムと言えば、年金運用と確定拠出年金(DC)へのテーマの傾倒ぶりはともかく、講演者・パネリストの豪華さは折り紙つき。例年は12月に開催されるものの、諸般の事情により延期され、今般の開催とあいなった次第。事前申込制なのでご注意を。


公開シンポジウム 「年金を数理から考える」 (日本大学文理学部
日本大学文理学部数学科のアクチュアリーコースでは、今回、年金をテーマに年金数理の専門家をお招きし、年金数理を交えた観点から年金問題を皆様とともに考えることにいたしました。多くの皆様のご参加をお待ちしています。
◆日時: 2009年3月7日(土)13:30〜17:00
◆場所: 日本大学文理学部 100周年記念館国際会議場
      (京王線下高井戸駅より徒歩8分)
◆入場無料

一方こちらは、日本大学文理学部数学科アクチュアリーコース主催のシンポジウム。これまでにも「アクチュアリー教育」などをテーマに何回か開催されたが、今年は、数理的な観点から年金をテーマとしたもの。
なお、同コースではアクチュアリー試験対策に沿ったカリキュラムが組まれており、社会人も科目等履修生として夜間に受講可能とのこと。ご興味のある向きは要チェキラ。



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