2009年04月27日

「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」

物事を「素直」に見ることと「深く」見ることは矛盾しない

「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?
世界一わかりやすい経済の本 (扶桑社新書)

細野 真宏

扶桑社 2009-02
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昨今のメディアにおける年金議論は、問題の本質から外れ、瑣末な事象を取り上げた役所叩き・役人叩きに明け暮れている。こうした年金不安・年金不信の誤解を解消するための動きはさほど目新しいものではなく、過去には「年金の誤解」(堀勝洋)「年金問題 要点を教えて」(金子幸嗣)」などの名著が刊行された。しかし、前者は厚生省出身という経歴が、後者は著者の知名度の低さがそれぞれネックとなり、真っ当な主張が市井に浸透するのは至難の技であった。

そんな中刊行されのが本書。分かり易さを重視したレイアウトは、「これなら読めそうだ」と気軽に手に取らせる効果大。しかも内容もおおむね正鵠を射ており、物事を「素直」に見ることと「深く」見ることは矛盾しないことを示唆してくれる。同じ内容を、官公庁が周知すると「大本営発表」、官僚出身者が著すと「御用学者の戯言」などと貶められがちだが、本書は著名な予備校講師が手がけているので、そうした不当なバッシングは通用しない。何より、本書への反論が「細部を押さえていない」「官僚に丸め込まれた」「権丈教授の受け売り」「細野信者ウザイ」といった瑣末なものばかりで、正面きって正論で対抗する向きが皆無なあたりに、本書の完成度の高さがうかがえよう。
もちろん公的年金制度は現状のままで万全というわけではなく、課題はなお山積している。本書も、全ての課題に対して処方箋を用意しているわけではない。しかし、建設的な年金議論のスタートラインに立つためには、本書程度の知識は土台として不可欠である。いずれにせよ、官公庁のプレスリリースや官僚や専門家による難解な著作以上に、年金制度に関する誤解の解消に貢献してくれること必至の一冊。もっとも、本書に寄せられる多数の絶賛の声を聞くにつけ、同じ主張にも関わらず発言者によって信憑性に差異が生じるというのは、やや複雑な心境ではあるが(汗)。



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2009年04月22日

「はじめての社会保障」第7版

内容の網羅性・正確性は元厚生官僚ならでは

はじめての社会保障 第7版はじめての社会保障 第7版―福祉を学ぶ人へ (有斐閣アルマ)
椋野 美智子

有斐閣 2009-03
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本書に限らず有斐閣アルマ全般に言えることだが、「解説が簡潔かつ分かり易い」「直近の時事的トピックが反映されている」「トピックの網羅性が高い」などの配慮がなされている。また、本書は元厚生官僚の大学教授らが手がけているだけあって、当該分野における改正動向および統計数値の正確さは折り紙付き。体系的な入門書としてのファーストチョイスに最適。
なお今回の第7版では、保険法の改正を受けて民間保険に関する記述が主に手当てされている。公的医療・年金制度を重視する前版所有者が敢えて買い替えに走る必然性は薄いかもしれない。



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2009年04月18日

「EXCELで学ぶファイナンス(2)証券投資分析」第3版


EXCELで学ぶファイナンス〈2〉証券投資分析EXCELで学ぶファイナンス〈2〉証券投資分析 第3版
藤林 宏

金融財政事情研究会 2009-04
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およそ金融機関の運用担当者であれば必ずや一度は手にするであろう、いわゆる「Excelを用いたリスク・リターン分析本」のパイオニア。Windows95が世に出た1995年に初版が刊行され、以降本書をインスパイアした書籍は数多あれど、本書を凌駕するに至ったものはごく少数。
完成度の高さはもはや言うまでもないが、解説が平易な箇所とそうでない箇所で難易度のブレが大きく、途中で難解な項目にぶつかって立ち止まってしまう事もしばしば。そんな時は構わず次へ次へと読み進めるのが賢明。文体は硬くとっつき難い面もあるが、繰り返し丹念に読むことを怠らなければ、必ずや自身の血となり肉となるであろう。本書では難し過ぎて歯が立たないという向きには、以前当BLOGでも紹介した「資産運用のパフォーマンス測定」「ゴミ投資家のためのインターネット投資術入門」がオススメ。

なお、前版から8年ぶりの改訂となった第3版だが、内容的にはさほど変化は見られず前版の保有者が敢えて買い替えに走る必然性は薄いかもしれない。



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2009年04月16日

「マンガでわかる生命保険入門」

ポップな画風とは裏腹な波乱万丈の保険人生

マンガでわかる生命保険入門マンガでわかる生命保険入門
消費者支援機構関西 監修

住友生命保険相互会社 2009-01

保険会社消費者団体がタッグを組んで作成した生命保険に関するパンフレット。生命保険契約に関する手続、留意事項および専門用語等がマンガ形式で分かり易く解説されている。タイトルだけ「入ってはいけない」「今すぐやめろ」「〜の罠」と扇動的だが中身スカスカな市販本よりも遙かにためになる内容。もっとも、こうした冊子を作る前に、シンプルで分かり易い商品を開発するのが先決ではとのツッコミは免れないが(汗)。

ところで主人公のスミレだが、才色兼備のキョウコ先輩をさしおいてセイジと結婚するなどスミレとセイジでスミセイですかそうですか)序盤こそ順風満帆な人生だったが、その後は保険給付の事例を身を呈して解説するべく、胃潰瘍・子宮がん・脳卒中と疾病のオンパレードに見舞われる始末。読んでいて、病に伏して保険金を貰うよりも健康でいるほうが幸せだとつくづく思い知らされる(汗)。



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2009年04月14日

「生命保険はだれのものか」

前著『生命保険入門』のアップデート&口語版 より良質な入門書に進化

生命保険はだれのものか生命保険はだれのものか―消費者が知るべきこと、業界が正すべきこと
出口 治明

ダイヤモンド社 2008-11
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A5横書きからB6縦書きにサイズやレイアウトこそ変われど、基本的には前著『生命保険入門』の内容を下敷きとしているだけに、生命保険に関する一連のトピックを体系的に押さえているほか、より消費者・生活者の視点に立った分かり易い記述に改められている。生命保険を体系的かつ真面目に学ぶためのファーストチョイスには最適な一冊。
著者の既存の生保業界・生保会社に対するアンチテーゼ的提言は前著でも際立っていたが、提言だけでは不十分とばかりに、その後著者自らネット生保会社の立ち上げに東奔西走したのはもはや万人の知るところ。本書にもその形跡がしばし垣間見えるが、新会社創業までのより具体的な顛末については、近著『直球勝負の会社』に詳しい。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/10/14): 「生命保険入門」



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2009年04月08日

早くも総合型DB設立の動きが加速!?

トラック運送業界初の確定給付企業年金が誕生 (物流ウィークリー)
神奈川県でこのほど、トラック運送業初の確定給付企業年金であるANT企業年金基金が設立される。2012年3月に廃止される適格退職年金の受け皿として期待されており、18日には設立説明会が開催された。
ANT企業年金基金の理事長で、神奈川貨物自動車厚生年金基金理事長でもある筒井康之氏は設立の経緯について、「年金基金の中で適格退職年金廃止後の受け皿をどうするのか、という議論を2年間続けてきた」と説明。「受け皿としては中退共(中小企業退職金共済)もあるが、もう少し柔軟なものがいいのではないかと考え、トラック業界では全国35の年金基金がある中、業界最初の総合型確定給付型企業年金基金制度を設立した」と述べた。
(2009/4/6 物流ウィークリー)

業界の年金基金が業界誌に取り上げられることはよくある話だが、当該業界誌の記事がWeb上に掲載されているのはじつに珍しい。いつぞや発表された規制緩和措置を受けての動きではないにしても、適格退職年金の受け皿として総合型DBが有力な選択肢となり得ることを示唆する記事であった。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/2/18): 総合型企業年金の時代が再び到来するか



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2009年04月06日

「なぜGMは転落したのか」

労働組合の際限なき要求と経営陣の妥協が招いた顛末記 GMは蛇足

なぜGMは転落したのかなぜGMは転落したのか―アメリカ年金制度の罠
Roger Lowenstein 鬼澤 忍

日本経済新聞出版社 2009-02
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昨今経営危機が叫ばれているGM(ゼネラル・モーターズ)が主題のごときタイトルだが、GMに関する記述は本書全体の3分の1程度で、残りは米国の公務員年金に関する記述である。
全般的には、企業年金の給付を巡っての、労働組合の際限なき要求と経営陣の妥協が招いた顛末を綴った内容。年金給付の引上げは、原資を直ちに必要とする賃上げとは違い、原資の積立てを将来に先送りしたまま約束だけは容易にできてしまう。そのため、労働組合および経営陣双方の体面保持と点数稼ぎのために企業年金給付が労使交渉の具として利用されて来た経緯を本書は詳細に綴っている。そしてこの傾向は、株主の存在が辛うじて歯止めとなるGMなどの民間企業よりも、そうした規律が無い(労組が主要な票田であるため議会のチェックも働かない)公務員・自治体年金の方が遙かに深刻であることを本書は示唆している。

なお、2009年4月5日付日経朝刊の森戸英幸上智大教授による書評では、あたかも「エリサ法(年金受給権保護のための法律)が企業年金を駄目にした」かの如く評していたが、本書におけるエリサ法に関する言及はごく僅かである。危機の原因は制度や法制ではなく労使交渉に依るところが大きく、その点では森戸教授のコメントはミスリードも甚だしい。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/2/7): 「エリサ法の政治史」



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posted by tonny_管理人 at 12:38 | Comment(4) | TrackBack(17)
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