待望される本格的個人年金 (大機小機)
(前略)残る一つは、全国民に向けた老後のための非課税積立制度である。個人の自助努力を促すうえでは、何にもまして税の優遇による後押しが欠かせない。米国で企業年金を補完する目的で誕生したIRA(個人退職勘定)は、今では資産規模で401kを超える最大の退職所得制度となっている。二匹目のドジョウではないが、日本版個人退職勘定の登場が切望される。(後略)
(2009/6/10 日経朝刊 17面)
IRA(個人退職勘定)とは、個人が金融機関等に開設した個人口座に拠出する制度であり、1974年に制定された
ERISA(法)により規定されている。元来は企業年金制度が無い労働者への税制優遇措置であったが、その後の改正により現在は70.5歳未満の全勤労者および自営業者が利用可能である。また、中途引出しには10%のペナルティ・タックスが課せられる。日本で言うところの
個人型確定拠出年金のイメージに近い。IRAの資産規模は2007年末で4.7兆ドルと、同時期のDC制度(401(k)プラン含む)の資産規模3.7兆ドルを上回っている。これは記事の指摘のとおり
(出典)。しかし、IRAの年間拠出限度額は5,000ドルと、401(k)プランの拠出限度額15,500ドルと比較すると
拠出限度枠は小さい。IRAの資産規模が大きいのは、
転職時・退職時における401(k)プラン等の積立金の受け皿として機能していることによる(これをロールオーバーIRAと言う)。
さて、これまで確定拠出年金
(注:日経新聞は必ず日本版401k(笑)という呼称を用いる)の導入・普及の旗振り役を担ってきた日経新聞だが、日本における普及が思うように進まない苛立ちからか、今度は
日本版IRA(笑)を創設せよと来たもんだ。要は、どんな形でもいいから
株式市場に資金が流入すれば万々歳という発想なのだろう。さすがは
日本最大の株式新聞の面目躍如といったところ(毒)。別に日本版IRAなどと声高にブチ上げなくても、個人型DCの改正・整備で十分に対応可能なのだがね。IRAや401(k)は
本来は非常に良い制度であり、ポータビリティ確保の観点からはこれらの機能を拡充すべきと当BLOG管理人は考える。しかし、同じ主張を
投信手数料を稼ぎたい金融機関や
資産運用アドバイスで優越的地位を占めたい金融マスメディア風情に為されると、それが結果的に正論であっても「お前が言うな」と思わず条件反射してしまう(汗)。
予断だが、日本においてIRAではなく最初に401(k)が注目されたのは、当時(1990年代半ば)は401(k)の方が資産規模が大きかったことによるものと思われる(IRAがDCの資産額を追い越したのは1999年)。
<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/1/11): 「中途引出し緩和」より「ポータビリティの充実」を
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posted by tonny_管理人 at 23:58
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