・退職金の受取方法、一時金と年金のどちらがお得?(2009/3/11 読売新聞)
・退職金、一時金と年金のどちらが得?(2009年6月19日 読売新聞)
・企業年金受給、一括の方が得?(2010年1月26日 読売新聞)
わが国の企業年金制度では、受給者の大半が、年金ではなく一時金(選択一時金)での受取を選択しているのは周知の事実。統計上は、厚生年金基金および適格退職年金の受給者の約半数が一時金を選択している計算になる。
ところで、「年金受取と一時金受取はどちらが有利なの?」とは、当BLOG管理人も良く聞かれるところ。どちらが有利かなんてケースバイケースだし、冒頭の記事を見ても論者によって見解がまちまちなのだが、当BLOGでは、比較・検討のポイントとなる論点について以下のとおりまとめてみた。
1.税制
企業年金から支給される年金給付には公的年金等控除が、一時金給付には退職所得控除がそれぞれ適用される。税制面における有利・不利は、条件によって異なるものの、一般的には退職所得控除の方が圧倒的に有利(推計例)となる。一方、受取年数および給付乗率が大きくなるほど年金受給の不利は帳消しとなるので、長生きする自信があり、かつ、勤務先が高水準の終身年金を提供してくれるならば、年金を選択するのも手ではある。
2.利回り
年金受取であろうと一時金受取であろうと、原資を高い利回りで運用できれば有利性が増すことは自明の理。年金を選択した場合、現在の企業年金の平均的な給付乗率はおおむね年2〜3%。かつての5.5%のような高利回りは望めないにしても、現在の超低金利を考慮するとなお魅力的な水準ではある。
一方、企業年金以上の高利回りが見込める金融商品が存在?するのであれば、一時金を選択してから当該金融商品に全額つぎ込むという手もある。あくまでも存在すればの話だが(汗)。
3.信用リスク
年金受取であろうと一時金受取であろうと、原資の預け先が途中で破綻してしまったら元も子もない。年金を選択するという事は、基本的には老後生活(の一部)を企業あるいは年金基金の命運と共にすることを意味する。年金受給を選択する際は、勤務先の10〜20年先の破綻懸念と勘案して決めないと、先日のJALと同様の問題に直面することとなる。
一方、一時金を選択すると、企業の破綻リスクからは逃れられるものの、原資は自己責任で管理しなければならない。この場合、使い込み過ぎないよう自己管理が求められる。また、大抵は一時金を預貯金ないし投資信託等に預けるだろうが、この場合、預け先金融機関の破綻リスクを考慮する必要が出てくるであろう。
