2010年01月30日

企業年金における年金・一時金の選択に関する論点

退職金の受取方法、一時金と年金のどちらがお得?(2009/3/11 読売新聞)
退職金、一時金と年金のどちらが得?(2009年6月19日 読売新聞)
企業年金受給、一括の方が得?(2010年1月26日 読売新聞)

わが国の企業年金制度では、受給者の大半が、年金ではなく一時金(選択一時金)での受取を選択しているのは周知の事実。統計上は、厚生年金基金および適格退職年金の受給者の約半数が一時金を選択している計算になる。
ところで、「年金受取と一時金受取はどちらが有利なの?」とは、当BLOG管理人も良く聞かれるところ。どちらが有利かなんてケースバイケースだし、冒頭の記事を見ても論者によって見解がまちまちなのだが、当BLOGでは、比較・検討のポイントとなる論点について以下のとおりまとめてみた。


1.税制
企業年金から支給される年金給付には公的年金等控除が、一時金給付には退職所得控除がそれぞれ適用される。税制面における有利・不利は、条件によって異なるものの、一般的には退職所得控除の方が圧倒的に有利(推計例)となる。一方、受取年数および給付乗率が大きくなるほど年金受給の不利は帳消しとなるので、長生きする自信があり、かつ、勤務先が高水準の終身年金を提供してくれるならば、年金を選択するのも手ではある。

2.利回り
年金受取であろうと一時金受取であろうと、原資を高い利回りで運用できれば有利性が増すことは自明の理。年金を選択した場合、現在の企業年金の平均的な給付乗率はおおむね年2〜3%。かつての5.5%のような高利回りは望めないにしても、現在の超低金利を考慮するとなお魅力的な水準ではある。
一方、企業年金以上の高利回りが見込める金融商品が存在?するのであれば、一時金を選択してから当該金融商品に全額つぎ込むという手もある。あくまでも存在すればの話だが(汗)。

3.信用リスク
年金受取であろうと一時金受取であろうと、原資の預け先が途中で破綻してしまったら元も子もない。年金を選択するという事は、基本的には老後生活(の一部)を企業あるいは年金基金の命運と共にすることを意味する。年金受給を選択する際は、勤務先の10〜20年先の破綻懸念と勘案して決めないと、先日のJALと同様の問題に直面することとなる。
一方、一時金を選択すると、企業の破綻リスクからは逃れられるものの、原資は自己責任で管理しなければならない。この場合、使い込み過ぎないよう自己管理が求められる。また、大抵は一時金を預貯金ないし投資信託等に預けるだろうが、この場合、預け先金融機関の破綻リスクを考慮する必要が出てくるであろう。



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2010年01月25日

反面教師(セミナー講師編)

仕事柄これまで数々のセミナーに接してきたが、先週末に観覧したセミナーにおける某特任教授の発表は、小生が経験した中で最も脱力したトホホな内容であった(汗)。自分への戒めも兼ねて、その問題点をここに列挙する。


<情報源が外資系金融機関のものばかり>
かねてより氏の401(k)マンセー思考が目障り気になっていたが、今回のセミナーのレジュメを拝見すると、情報の出典がことごとく外資系金融機関からのものばかり。お前はBloombergの端末か(汗)。金融機関が自身のビジネスに不利な情報(401(k)のデメリット等)を取り上げることは希少なだけに、そりゃ401(k)マンセー思考に洗脳される筈だ(汗)。

<鵜呑みなのか、それとも確信犯なのか>
レジュメの末尾では、「世界ではもはや確定拠出(DC)が主流!」とする世界地図を嬉々として掲載していた(この地図の出典も外資系金融機関のもの)。しかしこの地図、確定給付(DB)が主流の地域(欧州とりわけ北欧)をバッサリ割愛したこの上なく恣意的なもの。にも関わらず、そんな地図を無批判に取り上げるのは、単にモノを知らないのか、それとも確信犯でやっているのか、小生にはとんと見当がつかない(汗)。
 
<自身の主張の整合性よりも舶来資料が先決?>
レジュメでは、前述の世界地図の直後に「世界の年金ランキング」を掲載しているが、このランキング、よーく見るとオランダが1位だったりする。世界ではDCが主流と言った直後に、DB主流の国が1位にランキングって・・・少しは己の主張との整合性を考慮したらどうだ(汗)。それとも、そんなに海外機関のランキングを見つけて嬉しかったのか(汗)。
※このランキングに対する留意点は、当BLOGで既に触れたとおり。

<過去の教訓を活かす気ゼロ>
まあ悪口ばかりも何なので、今回の発表で唯一評価できる点を強いて挙げるとするならば、アメリカの最新動向について、メリット一辺倒ではなく影の部分マッチング拠出の凍結デフォルトファンドの課題etc)についてもきちんと網羅していたことくらいか。ところが、いざ日本の話となると、「マッチング拠出が解禁に向かうようで何より」的なDCマンセー思考を繰り返すばかり(汗)。海外の事例を調査する目的は、成功例の後追いだけでなく失敗例の分析することにある。失敗から学ぶのが教授センセイの役割ではないのか。日本に、このままアメリカの成功例だけでなく失敗例を踏襲しろと言うのか(汗)。

挙句の果てに、「日本人には金融リテラシーが足りない(キリッ!)」ときたもんだ(苦笑)。金融機関のデータを鵜呑みにするような単細胞にだけは言われたくない。それとも、金融機関が求めるリテラシーとは、業界の意向に沿って投信や株式の保有割合を増やす行為なのだろうか?
・・・ああ、もう書いてて疲れてきた _| ̄|●


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/12/14): 国際機関の調査とて鵜呑みは禁物
The企業年金BLOG(2007/12/1): 自己責任原則の敗北を意味するDCの「自動化」



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2010年01月21日

「労働組合のための退職金・企業年金制度移行対応ハンドブック」2010年版

もはや定番!? 労組目線の企業年金の解説書

ikou-taiou2010労働組合のための退職金・企業年金制度移行対応ハンドブック(2010年版)

日本労働組合総連合会
NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク 共編
2009-11

労組系団体やその出身者が書く年金本というと、殆どは「負担は低く、給付は高く」を唱えるだけの他力本願クレクレ本ばかりで、読むに堪えない。しかしこのハンドブックは、イデオロギー色を排除して情報を整理することに注力しており、良質な資料集としての地位を年々確立しつつある。2010年版では、企業再編時の確定拠出年金の取り扱いや、退職給付会計・国際財務報告基準(IFRS)の動向が新たに手当てされている。書籍としての完成度の高さでは、今や『企業年金に関する基礎資料』(企業年金連合会)を凌駕すると言っても過言ではない。これで1,000円はお買い得!
なお、本書と並行して「働く人のためのライフプランニングと企業年金の活用ハンドブック」も刊行されている。前掲書よりも完成度は若干落ちるが、まあ関心があれば是非。

life-planning2010働く人のためのライフプランニングと企業年金の活用ハンドブック(第3版)

日本労働組合総連合会
NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク 共編
2009-11


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/5/14): 労組系NPOの研究会を観覧
The企業年金BLOG(2008/2/25): 「労働組合のための退職金・企業年金制度移行対応ハンドブック」2008年版
The企業年金BLOG(2006/12/25): 「労働組合のための退職金・企業年金制度移行対応ハンドブック」2007年版
The企業年金BLOG(2005/12/22): 「労働組合のための退職金・企業年金制度移行対応ハンドブック」2006年版



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2010年01月09日

「ご隠居と熊さんの年金資産運用の極意」

上方落語で学ぶ年金資産運用「高座」

ご隠居と熊さんの年金資産運用の極意ご隠居と熊さんの年金資産運用の極意
―ナニワの名跡「こうやっ亭ぶんさん」師匠の年金運用寄席高座―

増井 克行

金融財政事情研究会 2009-12
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かつて当BLOGでも取り上げた、年金資産運用を落語で解説する意欲作「広八亭分散(こうやってぇ ぶんさん)〜師匠が落語で語る年金資産運用」が、このたびめでたく書籍化の運びとなった。掲載元の「FundManagement」は季刊誌(年4回刊行)だけに、連載開始から4年半かけての書籍化には感慨深いものがある。

物語は、ご隠居の倅(せがれ)の商店が奉公人のための企業年金制度を作ることとしたため、知り合いの熊さんに運用執行理事就任を要請するところから始まる。年金資産運用のイロハを落ちを交えつつ解説する語り口は、そもそもズブの素人に資産運用を任せようとする受託者責任違反を補って余りある絶妙さ(汗)。また、本書には連載記事の第1〜17話が収録されているが、書籍化を機に、章構成を改めたり図表等を加筆するなど、読み易さへの配慮が為されている。年金基金の資産運用担当者にとっては、実務には勿論のこと、代議員会等における報告・説明の際にも大いに参考となるであろう。

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/1/17): 落語と年金資産運用のコラボレーション



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2010年01月06日

イベント開催告知 2010年新春

一年の計は新春にあり。つうことでイベント告知をば。


2010年1月13日(水)東京開催
2010年1月14日(木)大阪開催
2010年1月15日(金)名古屋開催
モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信
「2010年 新春年金セミナー」
http://www.morganstanley.co.jp/im/pension/news/091214/index.html

2010年1月14日(木)開催
NPO法人 金融・年金問題教育普及ネットワーク
「2010連合企業年金セミナー 企業年金をどう守り、どう運営していくか」
http://kinyunenkin.jp/07event.htm

2010年1月19日(火)開催
DC協会 中央区分科会(主催:FPネット 下町の知恵袋)
「確定拠出年金プランにおける分散投資の理論と実践」
http://www.nenkinnet.co.jp/dc/5_semina.html
http://blog.livedoor.jp/progreoyazi/archives/51358311.html

2010年1月22日(金)開催
商工会議所年金教育センター(主催:TIMコンサルティング)
「確定拠出年金の動向と今後の展望」
http://www.tim-con.com/study1.html
http://www.cci-nenkin.jp/annai/11annai.html

2010年1月23日(土)開催
DC協会 港区分科会(主催:LLPペンションプランアドバイスセンター)
「米国年金制度の現状と将来U」
 〜GM年金&アメリカ年金事情Up to Date 〜
http://www.nenkinnet.co.jp/dc/5_semina.html
http://www1.odn.ne.jp/~cdp00460/llppac-17-2010.01.23.pdf

2010年2月17日(水)開催
商工会議所年金教育センター(主催:TIMコンサルティング)
特別セミナー「適格退職年金の廃止とこれからの企業年金のあり方」
 〜企業の役割と国・金融機関・コンサルタントの在り方〜
http://www.tim-con.com/20100217.pdf
http://www.cci-nenkin.jp/annai/11annai.html

2010年2月19日(金)開催
日本年金学会 2009年度第3回研究会
「障害年金をめぐる国際的動向と日本の課題」
「企業年金について」
http://www.nensoken.or.jp/gakkai/kenkyukai/kenkyukai2010-2.html



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2010年01月03日

「生命保険入門」新版

体系的な生命保険の入門書 5年間の蓄積を余す所なく披露

生命保険入門 新版生命保険入門 新版
出口 治明

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生命保険に関する入門用教科書というと、有斐閣『生命保険新実務講座』生命保険協会『生命保険講座』がまず思い浮かぶが、前者は刊行から約20年が経過しており古臭さは否めなく、また後者は業界人以外には入手困難であるなど、ファーストチョイスとしてはいまいち決め手に欠ける。一方、消費者向けのムック本の類は雨後のタケノコの如く出回っているものの、生命保険を真面目に学ぼうとする向きには物足りないことこの上ない。
本書は、実務家の視点から体系的に生命保険を学べる入門書として好評を博した『生命保険入門』の5年ぶりの改訂版。全体の構成は前版とほぼ同一だが、統計・データがことごとく最新の数値に更新されたほか、「国際動向(米・英・仏・独)」「保険負債の時価評価」「保険法の制定」「保険金不払い問題」「自由化15年の検証」「医療保険・年金保険への上手な加入」などのトピックが新たに強化された。その他の記述についても、野口悠紀雄『1940年体制』日本経済研究センター報告書の影響を色濃く受けたと思われる手当てが随所で為されており(旧版と読み比べると興味深い)、前版刊行から5年間の著者の蓄積が漏れなく反映されていると言っても過言ではない。実務家・研究者・消費者の各々のニーズを同時に満たすという意味では、本書はまさに生命保険の入門書の決定版であり、今回の新版の刊行によりその地位をより強固なものとした感がある。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/4/14): 「生命保険はだれのものか」
The企業年金BLOG(2006/10/14): 「生命保険入門」



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