2010年10月31日

「どう変える? 退職金・企業年金」

むしろDCプランナー試験(A・B分野)の対策書として有用

どう変える? 退職金・企業年金どう変える? 退職金・企業年金
― 改革の選択肢を探る ―

久保 知行

オフィスTM 2009-08
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年金アクチュアリー界の論客による、適年移行を踏まえた退職金・企業年金改革のあり方をまとめた一冊。単なる知識の羅列ではない骨太な解説は相変わらずだが 内容的には、従来の著作である「わかりやすい企業年金」等とさほど差はない。横書きかつ2色刷りという読み易い装丁と、内容の半分弱を確定拠出年金(DC)の解説に焦点を当てている構成からすると、むしろDCプランナー試験(A・B分野)の対策書として活用するのが有効であるように思う。

※著者の久保氏のサイトはこちら

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/10/27): webセミナー「確定拠出年金で老後の準備を」
The企業年金BLOG(2009/8/31): 「わかりやすい企業年金」第2版
The企業年金BLOG(2005/11/23): 「わかりやすい企業年金」






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2010年10月30日

「損保マンのための数理入門」

文系出身の保険会社社員のための数学・統計学入門

損保マンのための数理入門損保マンのための数理入門(改訂2版)
小暮 雅一

(財)損害保険事業総合研究所 1989-08

アクチュアリー受験生の定番書として知られる「例題で学ぶ損保数理」の著者による数学・統計学の入門書。内容そのものは、指数・対数、微分・積分、行列などの高校数学の復習と、順列・組合せ、分布、時系列予測、標本調査、推定・検定などの統計学の基礎というよくある構成だが、本書が異色なのは、数学・統計学の基礎を損保会社の経営や実務になぞらえて学べる点にある。保険会社社員の数理センスの醸成だけでなく、アクチュアリー試験における統計学の入門・導入編としても有用。初版刊行から20年以上経過しているものの、文系出身の保険会社社員が数学・統計学の基礎を学ぶのに、これ以上最適な書籍は他にないと当BLOG管理人は断言する。
ただし、刊行がなにぶん古いせいか、現在では著しく入手困難となっている。当BLOG管理人も紆余曲折を経てようやく入手した次第(汗)。同じ著者による「保険の数理」が今春「保険の数学」として復刻されただけに、是非本書も復刻して欲しいものだ。

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/5/9): 「保険の数学」
The企業年金BLOG(2008/4/25): 「保険の数理」



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2010年10月27日

webセミナー「確定拠出年金で老後の準備を」

webセミナー「確定拠出年金で老後の準備を」 (全老健共済会)
退職金制度に関するリスクマネジメントは、適格退職年金制度の廃止(平成24年3月)を控えた今、待ったなしの緊急課題です。「適格退職年金をもつ法人・施設」「退職金制度がある法人・施設」「退職金制度がない法人・施設」それぞれが、経営上・人事上のリスクを抱えており、その対応が重要となっています。
退職金制度に関する対応の第一歩として、WEBセミナー「確定拠出年金で老後の準備を」を無料(株式会社損害保険ジャパン提供)で開講することとなりました。

webセミナー「確定拠出年金で老後の準備を」



損害保険代理業を主に営む企業による確定拠出年金のwebセミナー。第1部「確定拠出年金で老後の準備を」は、当BLOG管理人の年金の師匠でもある久保知行氏が担当しているだけあって、確定拠出年金だけでなく企業年金・退職金制度を包括した骨太な考察が聞きどころ。第2部「全老健共済会連合型確定拠出年金制度の概要」は、主催者が代表事業主を務める連合型DC制度の宣伝。いずれにせよ、この内容で受講料無料とはまさに太っ腹! 
なお、本セミナーを主催している全老健共済会(非営利団体かと思いきや、実は株式会社)では、上記以外にも様々なwebセミナーを開催している。時間があればチェキラするのも一興。



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2010年10月24日

「いまさら人に聞けない『適年廃止後の退職金再設計』の実務」

Q&A形式で分かり易いが、細部に詰めの甘さも

いまさら人に聞けない「適年廃止後の退職金再設計」の実務いまさら人に聞けない「適年廃止後の退職金再設計」の実務
佐藤 崇、 川島 孝一

セルバ出版 2010-09
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期限までいよいよあと1年半を切った適格退職年金の税制優遇の廃止。本書は、適年移行のポイントをQ&A形式で分かり易く整理・解説しており、タイトルどおり「いまさら適年移行の検討に入る企業」にとっては重宝すること請け合い。
ただし、分かり易さを重視したせいか、細部に事実と異なる表記も散見される。例えば、適格退職年金契約について「会社と信託会社、生命保険会社、全国共済農業協同組合連合会が『新企業年金保険契約』を締結して〜」(p.35)とあるが、新企業年金保険契約とは生命保険会社と締結する場合の契約名称であり、相手方が信託会社であれば「適格退職年金信託契約」、JA共済連であれば「退職年金共済契約」とするのが正しい。また、適格退職年金の適格要件について「法人税法施行令第159条に定める適格要件〜」(p.39)とあるが、当該条項は2002年に既に削除されており、現在は法人税法施行令附則第16条」に記載されているとするのが正しい。まあ、本書全体の完成度の高さを損ねるものではないが。。。



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2010年10月13日

黒字といっても「質」は異なるのだが

OB年金 黒字でも減額承認 (nikkei.com)
基準不透明との声も
厚生労働省が2期にわたって黒字を計上した建設会社に対し、退職者分の企業年金の減額を認めたことが8日わかった。退職者分の減額は「経営状況が著しく悪化している」ことを承認の条件としており、黒字企業の申請を認めるのは異例。直近の決算が黒字だったNTTの減額申請は2006年2月に却下しており、承認基準の不透明さを指摘する声が出ている。
大阪市の中堅ゼネコン、浅沼組の減額申請を10月1日付で認めた。同社は09年3月期から2期連続で黒字を計上した。厚労省の承認を受け、退職者分も含めて企業年金の給付水準を引き下げる。
(2010/10/9 日経朝刊 3面)

同じ黒字計上企業であるにも関わらず、NTT(9432)は企業年金の給付減額を却下されて淺沼組(1852)が承認されるのは基準が不透明だとする今回の記事。一見まともそうな主張だが、しかし、両社の経営状況を有価証券報告書で詳細に比較すると記事とは違った実態が見えてくる。
両社の2010年3月期の有価証券報告書によると、直近5年間の当期純利益の推移は、以下のとおりである。なお、NTTの連結決算は米国基準に拠るため、比較可能性を考慮して、単体決算の数値を用いている。記事には「浅沼組は直近2年度は黒字」とあったが、その前の3年間は逆に大赤字に見舞われていたことがわかる。一方NTTは、淺沼組とは対照的に過去5年度にわたり2000億円の黒字をコンスタントに計上している。

◆当期純利益 (単位:百万円)  ▲はマイナス
   <決算期> <NTT(9432)> <淺沼組(1852)>
 2006年3月期    394,033       ▲823
 2007年3月期    189,399     ▲5,264
 2008年3月期    195,833     ▲2,475
 2009年3月期    195,983        273
 2010年3月期    215,746        484
 (注)NTTは単体決算、淺沼組は連結決算の数値。



また、NTTと淺沼組では企業規模が大きく異なるため、念のため自己資本利益率(ROE)の推移も確認しておこう。記事では、両社とも直近では黒字計上しているのに取り扱いが異なる点をことさら問題視していたが、ROEをみれば同じ黒字でもその質は大きく異なることは一目瞭然。

◆自己資本利益率(ROE)  ▲はマイナス
   <決算期> <NTT(9432)> <淺沼組(1852)>
 2006年3月期      7.8%      ▲2.4%
 2007年3月期      3.8%     ▲15.9%
 2008年3月期      3.9%      ▲9.6%
 2009年3月期      4.0%        1.3%
 2010年3月期      4.4%        2.5%
 (注)NTTは単体決算、淺沼組は連結決算の数値。



このように、同じ黒字企業であっても、経営状況は淺沼組の方が大きく見劣りする。このような状況下において、NTTの給付減額が却下されて淺沼組の給付減額が承認されたことについては、あながち不透明とまでは言えまい。
それにしても、たった5年分の情報もチェックせず、ほんの直近の経営状況を以って「同じ黒字企業なのに・・・」とのたまうこの記事。日経新聞の記者は財務分析のイロハも知らないのか。この程度でよくもまあ『日経会社情報』など臆面もなく刊行できるものだ(汗)。つくづく、マスメディアの記事を鵜呑みにせず原典に当たることの重要性を噛み締めた秋の夜長である。

<参考>
◆NTT(9432)の2010年3月期有価証券報告書はこちら
◆淺沼組(1852)の2010年3月期有価証券報告書はこちら



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2010年10月02日

2年目で早くも寂れつつある「確定拠出年金の日」

2001年10月1日に確定拠出年金法が施行されたことにちなみ、NPO法人確定拠出年金教育協会(401k教育協会)が昨年制定したのが確定拠出年金の日。しかし、制定記念イベントが大々的に行われた昨年とは違い、今年は確定拠出年金の日がクローズアップされたという話を寡聞にして知らない。名付け親の401k教育協会に至っては、今年に入りホームページのコンテンツを大幅縮小した上に、昨年掲載していた確定拠出年金の日の宣言まで削除する始末。やる気があるのか(汗)。

唯一、確定拠出年金の日について言及していたのが、大和総研の村山俊明氏のコラム。しかし中身を読むと、「元本確保型商品が過半数を占めるのは、加入者が無知だから」「加入者を教育するためにも、想定利回りに着目せよ」という噴飯ものの駄文。「元本確保型商品だけでは退職目標額に到達しない恐れが」と煽るが、そんなの投資信託のウエイトを増やせば解消する問題でないことは、2008〜09年の資産運用環境を振り返れば一目瞭然だろうに。まあ、シンクタンク研究員のレポートだと思うから粗が目に付くのであって、株屋の投信販促記事だと思えば腹も立つまい。

当BLOG管理人が思うに、確定拠出年金の普及が進まない最大の理由は、上記のコラムに代表されるように推進派にロクな輩がいないことに尽きる。手数料狙いの金融業者オピニオンリーダー気取りの経済評論家預貯金を過度に蔑む投資バカに確定拠出年金の素晴らしさを聞いても、「投資信託が安く買えまっせ」「確定給付型の企業年金はダメダメ」「貯蓄から投資へ(笑)」という的外れな回答しか返ってこない。確定拠出年金のポジティブな意義を世間に広めるうえで、こうした不埒な輩の妄言は害毒でしかない。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/10/1): 10月1日は「転がし計算の日」に決まってるだろ



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