OB年金 黒字でも減額承認 (nikkei.com)
基準不透明との声も
厚生労働省が2期にわたって黒字を計上した建設会社に対し、退職者分の企業年金の減額を認めたことが8日わかった。退職者分の減額は「経営状況が著しく悪化している」ことを承認の条件としており、黒字企業の申請を認めるのは異例。直近の決算が黒字だったNTTの減額申請は2006年2月に却下しており、承認基準の不透明さを指摘する声が出ている。
大阪市の中堅ゼネコン、浅沼組の減額申請を10月1日付で認めた。同社は09年3月期から2期連続で黒字を計上した。厚労省の承認を受け、退職者分も含めて企業年金の給付水準を引き下げる。
(2010/10/9 日経朝刊 3面)
同じ黒字計上企業であるにも関わらず、
NTT(9432)は企業年金の給付減額を却下されて
淺沼組(1852)が承認されるのは基準が不透明だとする今回の記事。一見まともそうな主張だが、しかし、両社の経営状況を有価証券報告書で詳細に比較すると
記事とは違った実態が見えてくる。
両社の2010年3月期の有価証券報告書によると、直近5年間の
当期純利益の推移は、以下のとおりである。なお、NTTの連結決算は米国基準に拠るため、比較可能性を考慮して、単体決算の数値を用いている。記事には
「浅沼組は直近2年度は黒字」とあったが、
その前の3年間は逆に大赤字に見舞われていたことがわかる。一方NTTは、淺沼組とは対照的に
過去5年度にわたり2000億円の黒字をコンスタントに計上している。
◆当期純利益 (単位:百万円) ▲はマイナス
<決算期> <NTT(9432)> <淺沼組(1852)>
2006年3月期 394,033 ▲823
2007年3月期 189,399 ▲5,264
2008年3月期 195,833 ▲2,475
2009年3月期 195,983 273
2010年3月期 215,746 484
(注)NTTは単体決算、淺沼組は連結決算の数値。また、NTTと淺沼組では企業規模が大きく異なるため、念のため
自己資本利益率(ROE)の推移も確認しておこう。記事では、両社とも直近では黒字計上しているのに取り扱いが異なる点をことさら問題視していたが、ROEをみれば
同じ黒字でもその質は大きく異なることは一目瞭然。
◆自己資本利益率(ROE) ▲はマイナス
<決算期> <NTT(9432)> <淺沼組(1852)>
2006年3月期 7.8% ▲2.4%
2007年3月期 3.8% ▲15.9%
2008年3月期 3.9% ▲9.6%
2009年3月期 4.0% 1.3%
2010年3月期 4.4% 2.5%
(注)NTTは単体決算、淺沼組は連結決算の数値。このように、同じ黒字企業であっても、経営状況は淺沼組の方が大きく見劣りする。このような状況下において、NTTの給付減額が却下されて淺沼組の給付減額が承認されたことについては、
あながち不透明とまでは言えまい。それにしても、たった5年分の情報もチェックせず、ほんの直近の経営状況を以って「同じ黒字企業なのに・・・」とのたまうこの記事。日経新聞の記者は
財務分析のイロハも知らないのか。この程度でよくもまあ
『日経会社情報』など臆面もなく刊行できるものだ(汗)。つくづく、マスメディアの記事を鵜呑みにせず
原典に当たることの重要性を噛み締めた秋の夜長である。
<参考>
◆NTT(9432)の2010年3月期有価証券報告書は
こちら◆淺沼組(1852)の2010年3月期有価証券報告書は
こちら
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posted by tonny_管理人 at 23:58
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