2011年03月30日

2011年度の企業年金の予定利率

厚生労働省は3月30日、厚生年金基金および確定給付企業年金の財政検証に用いる2011年度の利率を告示した(厚生労働省告示第88〜90号、年企発第0330第1号)。継続基準に用いる予定利率の下限は1.1%、非継続基準に用いる利率は2.32%となった。企業年金の予定利率は1997年以降ほぼ自由化されており、上記の利率は例年3月頃に告示または通知される。適格退職年金の下限予定利率も省令改正で発表される予定。当該利率の根拠となる国債の応募者平均利回りは、財務省Webサイトの「国債入札カレンダー」から入手できる。なお、各制度における下限予定利率の推移は以下のとおり。

◆継続基準の予定利率
 <年度> <厚年> <DB>   <算定根拠>
 1997年  4.0%   ──  10年国債応募者平均利回りの5年平均
 1998年  3.4%   ──        
 1999年  2.9%   ──        
 2000年  2.4%   ──        
 2001年  2.0%   ──        
 2002年  1.2%  1.2%  5年平均または1年平均のいずれか小さい率
 2003年  1.2%  1.2%       
 2004年  0.9%  0.9%       
 2005年  1.3%  1.3%       
 2006年  1.2%  1.2%       
 2007年  1.3%  1.3%       
 2008年  1.4%  1.4%       
 2009年  1.5%  1.5%       
 2010年  1.3%  1.3%       
 2011年  1.1%  1.1%       

 <年度> <適年>   <算定根拠>
 1997年  3.1%  10年国債応募者平均利回りの1年平均
 1998年  2.3%        
 1999年  1.5%        
 2000年  1.7%        
 2001年  1.7%        
 2002年  1.2%        
 2003年  1.2%        
 2004年  0.9%        
 2005年  1.4%        
 2006年  1.3%        
 2007年  1.7%        
 2008年  1.6%        
 2009年  1.5%        
 2010年  1.3%        
 2011年  1.1%        



非継続基準については、利率そのものは告示等で定められているものの、2003年以降は、当該利率に0.8〜1.2の調整率を乗ずることが可能となっている。非継続利率の推移は以下のとおり。

◆非継続基準の予定利率
 <年度> <厚年> <DB>   <算定根拠>
 1997年  4.75%   ──  20年国債応募者平均利回りの5年平均
 1998年  4.00%   ──  (小数点以下0.25揃え)
 1999年  3.50%   ──        
 2000年  3.00%   ──        
 2001年  2.75%   ──        
 2002年  2.50%  2.50%       
 2003年  2.23%  2.23%  (小数点以下0.25揃えを廃止)
 2004年  2.29%  2.29%  30年国債応募者平均利回りの5年平均
 2005年  2.20%  2.20%       
 2006年  2.17%  2.17%       
 2007年  2.20%  2.20%       
 2008年  2.27%  2.27%       
 2009年  2.44%  2.44%       
 2010年  2.38%  2.38%       
 2011年  2.32%  2.32%       



※参考資料
企業年金制度における各利率の設定基準(日本年金数理人会) (pdfファイル)
◆10年国債応募者平均利回り (当BLOG作成)
 keizoku-rate2011.jpg
◆20年・30年国債応募者平均利回り (当BLOG作成)
 hikeizoku-rate2011.jpg


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/3/31): 2010年度の企業年金の予定利率
The企業年金BLOG(2007/3/16): 企業年金の予定利率の算出根拠とは






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2011年03月27日

「生命保険の法務と実務」改訂版

生命保険の教科書兼百科事典 保険法施行に対応

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金融財政事情研究会(きんざい)「法務と実務」シリーズといえば、金融業に関するあらゆるトピックをこれでもかと網羅した圧倒的な分量と価格でその存在感を示しているが、その生命保険バージョンが本書。700ページに迫る分厚さに違わず、生命保険に関するあらゆるトピックが網羅されており、まさに生命保険の百科事典といった様相。業界の定番書として名高い「生命保険講座」(生命保険協会)は業界人以外には入手困難なだけに、その代替としても最適。
なお今回の改訂版では、保険法の施行、保険業法等の改正、銀行窓販の全面解禁、少額短期保険業制度の創設、金融ADR制度などの直近の動向に対応しているほか、章立ても大幅に改めている。

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/10/12): 「生命保険講座」
The企業年金BLOG(2007/6/20): 「生命保険の法務と実務」



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2011年03月26日

OECD「Pensions at a Glance」2011年版が公表

OECD加盟国の公的年金制度を比較検証する資料として定評のある『Pensions at a Glance』(邦題:図表でみる年金)の第4版(2011年版)がこのたび公表された。
第4版は、調査対象国が43ヶ国に増加したほか、「年金支給開始年齢」「退職行動」「年金による退職へのインセンティブ」「高齢労働者に対するニーズ」「年金と平均寿命のリンク」という構成が示すとおり、OECDがかねてより問題視している年金支給開始年齢と平均寿命が主要テーマとなっている。日本語概要が公開されているほか、海外では英語版がpdfファイルで全文公開されている。

なお、本シリーズは大変有意義なレポートではあるが、制度も歴史風土も異なる各国の制度を統一的な基準に置き換えているため、数値の解釈には慎重に挑む必要がある。また、本書の記述の一部を切り取って「OECDもかく語りき!」自説の権威付けに用いるマスメディア・研究者も多いので、その点要注意である。
さっそく反面教師的な事例を紹介すると、時事通信社の401kWebサイトでは、本レポートの紹介記事を確定拠出型年金の導入拡大と絡めて掲載していた。しかし、実際にレポートに目を通すと、「確定拠出型年金の導入では平均寿命の延びに対応できない」(給付減少という形で個々の受給者に影響が及ぶ)との見解が示されており(日本語概要にも記載)、記事とは様相が異なっている(汗)。

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<参考資料>
日本語概要(OECD東京センター) (pdfファイル)
原文ファイル (pdfファイル)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/12/5): OECDが提唱する日本の年金改革(総論)
The企業年金BLOG(2009/6/25): OECDの公的年金所得代替率に関する留意点
The企業年金BLOG(2008/5/15): 「図表でみる世界の年金」2005



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2011年03月22日

年金特会の英訳は「pension fund」か!?

年金特会の震災復興利用は好ましくない=与謝野担当相 (reuters)
 [東京 22日 ロイター] 与謝野馨経済財政担当相は22日朝の閣議後会見で、東日本大震災の復興財源に年金特別会計を利用するのは好ましくないとの考えを示した。また、自民党との大連立については、意思決定の速度を速めることができるとして「私は願っている」明言。期待を表明した。
(2011/3/22 ロイタージャパン)

記事の内容については正直どうでもいいが、偶然にも、海外の年金基金または機関投資家向けのWebマガジン「GLOBAL PENSIONS」に同じ記事が取り上げられていたので、備忘録および英語の練習がてらupしておく(著作権に抵触する場合は即刻削除する所存)。
それにしても、英語では「pension fund」とあったので公的年金積立金を取り崩すのかと思いきや、実際は年金特別会計からの繰入れの話だったのね。なんか違和感がある表現だのう(汗)。


Japan should not use pension funds for disaster relief - minister (GLOBAL PENSIONS)
JAPAN - Japan should not tap funds said aside for pension payments to fund disaster relief efforts, economics minister Kaoru Yosano has said.
[日本]与謝野馨経済財政担当相は、政府は年金支払いのために蓄えられた積立金を震災復興に活用するべきではないと述べた。

"It is undesirable to use pension funds as a source of money for disaster relief, as it would destroy the basic principle of a pension fund," Yosano told reporters after a cabinet meeting on Tuesday.
与謝野氏は火曜日(22日)の閣議後の会見で、「年金積立金を震災復興の財源に用いることは望ましくない、それは年金積立金の基本原則を崩すことになる」と語った。

He also urged the formation of a grand coalition with the opposition to speed up the political decision-making process as Japan responds to the earthquake and tsunami which devastated the northeast of the country and the subsequent nuclear safety crisis.
彼はまた、東北地方を壊滅させた後に原発危機を招いた地震と津波に対処するためには、政策の意思決定プロセスの速度を上げる必要があり、そのためには野党との大連立を組むべきであると主張した。
 
(2011/3/22 GLOBAL PENSIONS) ※翻訳は当BLOG管理人による




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2011年03月18日

企業年金における被災者支援措置(続報)

前回のエントリに関連する続報を幾つか。

1.厚生年金基金に対する通知の出状
3月16日付けで、東北地方太平洋沖地震に伴う厚生年金基金および国民年金基金の特例措置に関する通知が出状された(年企発0316第1号)。内容は、掛金等の納付猶予や現況届の提出期限延長等を柱としており、前回解説した内容とほぼ同一である。

2.厚生年金基金以外の企業年金制度に対する支援措置の動向
前述の特例措置は厚生年金基金および国民年金基金を対象としたものであり、確定給付企業年金等は対象外であるが、これらの制度についても同様の特例措置を講ずるよう行政へ要望する動きがあるとの由。

3.受託金融機関の動向
企業年金業務を受託する金融機関(信託銀行、生保会社など)によっては、被災者向け連絡窓口等を設けるなどの措置をとる会社も出てきている模様である(ココとか)。

4.企業年金の財政運営に関する特例措置の要望
今回の震災の発生以降、株価や為替など資産運用環境が大きく変動しており、企業年金の財政運営にも影響が及びかねないことから、企業年金連合会では昨年12月に発表した提言を「緊急提言」として再度発表し、特例措置の発動を要望している。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/5/12): 企業年金における被災者支援措置(第4報)
The企業年金BLOG(2011/4/1): 企業年金における被災者支援措置(第3報)
The企業年金BLOG(2011/3/15): 企業年金における被災者支援措置



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2011年03月15日

企業年金における被災者支援措置

2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により被災された皆様に対し、心よりお見舞い申し上げますm(__)m

今回の震災を受けて、銀行では預金引出に係る本人確認の簡素化、生保会社においては保険料払込猶予期間の延長地震免責条項等の不適用などの被災者救済措置を打ち出している。ところで、企業年金は被災者のために何か手立ては打てないものだろうか?
実は企業年金の世界においても、過去に災害等が発生した際には「掛金の納付猶予」現況届の提出期限延長」など、様々な措置が打ち出された経緯がある。参考までに、2008年6月に発生した岩手・宮城内陸地震の際に厚生年金基金および国民年金基金に対して出された通知の内容は以下のようなものであった。

<給付関係>
 現況届の提出期限延長
 支払通知書等の再交付
<掛金関係>
 掛金等の納付猶予
 口座振替から自主納付への取扱変更(注:自動引落しはしないという意味)
<その他>
 当該取扱の加入者等への周知
 保養施設を保有している厚生年金基金への被災者救済の協力依頼

出典:「岩手・宮城内陸地震に伴う厚生年金基金及び国民年金基金の事務処理に関する指導等について」(平成20年6月16日 年企発第0616001号)
 

折しも、健康保険および公的年金(国民年金・厚生年金保険)においては保険料払込猶予などの特例措置が13日付で出状されたことから、おそらく厚生年金基金についても同様の措置が採られるものと思われる。なお、確定給付企業年金および確定拠出年金については、いずれも代行部分を有さない純正な私的制度という整理なのか、過去においてもこのような通知が出されたことはない。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/5/12): 企業年金における被災者支援措置(第4報)
The企業年金BLOG(2011/4/1): 企業年金における被災者支援措置(第3報)
The企業年金BLOG(2011/3/18): 企業年金における被災者支援措置(続報)



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2011年03月09日

「新年金財政シリーズ 給付設計」第5版

体系的・網羅的な給付設計の「虎の巻」

給付設計(第5版)新年金財政シリーズ 「給付設計」(第5版)

企業年金連合会 2009-03

年金数理にまつわるあらゆるトピックを扱った年金財政シリーズだが、刊行元の企業年金連合会は数年前から「新年金財政シリーズ」に徐々に再編しつつある。
本書は、厚生年金基金および確定給付企業年金の給付設計について、法令(法律政令省令)のみならず、法令解釈通知や承認・認可基準にも言及して解説している一冊。今回紹介する第5版では、直近の制度改正が反映されているほか、近年流行のポイント制キャッシュバランスプランの設計に関する記述が手厚くなっている。更に、代議員会等における制度改定の説明ポイント等もまとめるなど、金融機関のコンサルタント・営業担当者のみならず、年金基金関係者にとっても有用な内容となっている。読破するのにはやや骨が折れるものの、給付設計についてここまで網羅性の高い書籍は他に見当たらない。

なお、年金財政シリーズ全体に共通する厚生年金基金と確定給付企業年金とで記述の重複が多いという特徴だが、本書に限っては、両制度で異なる規定(例:保証期間の制限規定など)を比較参照するのに思いのほか役立っている。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/2/5): 「新年金財政シリーズ 企業年金の年金数理」
The企業年金BLOG(2010/4/9): 「新年金財政シリーズ 企業年金の財政運営」第2版



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