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先日の記事で税方式論者の書籍についてレビューした以上、社会保険方式を支持する側の言い分についても紹介しておかないとフェアじゃなかろう。社会保険方式論者と聞いてまず思い付くのは法律・社会保障学系の学者(厚生省OB多し)だが、彼らもまた経済学者らと同様、自説に対する愛情の深さゆえか、反対論を無知と切り捨てたり無視を決め込むきらいがある。学者ってこんなんばっかりやね(汗)
そんな中、公的年金改革を議論する上で当BLOG管理人が最も自信をもってオススメするのが本書。本書がスポットを当てているのは、基礎年金制度の導入等を盛り込んだ昭和60年年金改正時の厚生省(現厚生労働省)の年金局長を務め、病魔に侵されつつも年金改革に邁進し「年金の神様」「年金の鬼」と呼ばれた故山口新一郎氏。そんな氏のエピソードや語録を引用しつつ、現在の公的年金制度の課題やその対応策を模索する内容となっている。適切かつ本質に迫った解説も然ることながら(個人的には図表2-5や図表7-4には思わず唸らされた)、「鬼」の足跡を辿ることによって制度創設・改正の理念や歴史的経緯を回顧させるという構成がユニーク。
驚くべきことは、本書が厚生省のOBでも部下でもない、民間の年金数理人(アクチュアリー)の手によって著された事である。専門性と中立性を兼ね備えた著者による「経過措置を重ねるため複雑化してしまう年金制度において、過去(歴史)を知らずして現在や未来を語ることは浅薄である」という言葉は重い。
<この本を読んで欲しい方>
・効率性や損得諭にしか目が行かない経済学者ご一行様
・制度充実一辺倒でコスト意識が希薄な社会保障学者ご一行様
・国民の不安解消に関心を示さない政治家、官僚ご一行様
・制度不安を煽ることしか能の無いマスゴミご一行様
・公的年金改革に関心のある全ての方
そういえば、ここんとこ公的年金ばっかり扱っていて、"企業年金ブログ"の体を成していない感がある(汗)。次回から仕切り直しつうことで宣しこ。
