とりわけ田村氏の講演は、戦前の労働者年金保険(厚生年金保険の前身)の時代から財政再計算の過程および保険料率の推移を解説した資料的・歴史的価値の高い内容で、声が小さくて聞き難ったものの目から鱗の連続であった。公的年金の保険料や給付水準の歴史って、つまるところ、制度の持続性を重視する行政サイドと一般大衆受けを重視する政治サイドとの対立あるいは妥協の歴史でもあるのだった。こうした当時の経緯を踏まえずに、現在の常識のみで公的年金を語るのは本質を大きく見誤る危険があると改めて感じた(なにも年金に限った話ではないが)。なお、経済学者は何かというと賦課方式を目の敵にするが、そもそもわが国で賦課方式を主張し始めたのは当時の高名な経済学者だったらしい(苦笑)。
それにしても本日の講演会、収容人数300名を誇る最新鋭の会場にも関わらず、観覧者数は50〜60人と空席が目立った。これは明らかに周知宣伝不足であろう。せっかく内容の濃い講演会だっただけに、実に勿体無かった。
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