2006年01月28日

企業年金の運用利回り報道に関する留意点

(1)生保の企業年金運用、利回り最高の19.5% (NIKKEI-NET)
生命保険会社の企業年金運用が好調だ。年金が生保に運用委託している特別勘定の昨年4―12月の利回りは、主要生保7社平均で19.49%となり、特別勘定ができた1990年度以来の最高だった2003年度を2.61ポイント上回った。05年度は通期でも過去最高となる公算が大きい。
(2006/1/26 日経朝刊 7面)

株式市況が俗に"ライブドアショック"と呼ばれる混迷の最中にある昨今、企業年金の運用利回りに関する報道がなぜか相次いで為されている。上記以外にも以下のような記事が出ている。


(2)企業年金、利回り15.8% 4-12月 3年連続プラス運用に
企業年金の運用成績の好調が続いている。昨年秋以降の株価高騰で2005年4-12月の運用利回りは15.8%のプラスになったようだ。足元では株式相場の勢いがそがれたが、1-3月の運用が大幅なマイナスに陥らない限り、年度でもプラスを確保できそう。かつて年金運用成績の悪化が業績の足を引っ張っていたが、3年連続のプラス運用が確実で、状況は好転しつつある。
(2006/1/24 日経朝刊 17面)

(3)R&I推定・時間加重収益率 2005年度第3四半期は6.26%、年度通算15%超
格付投資情報センター(R&I)の運用評価サービスの対象である、厚生年金基金、企業年金基金、税制適格年金等の2005年度第3四半期(05年10-12月)の運用成績の全体像がまとまった。時間加重収益率の平均は、生保一般勘定を含む資産全体で6.26%となり、過去5四半期続けてプラスだった。
(『年金情報』 2006/1/23 12頁)

(4)05年12月の年金インデックス、2.65%、通算17.43%
年金パフォーマンスインデックス(年金信託の資産配分を基に年金情報が試算した複合ベンチマーク)は2.65%となった。2005年5月以来8ヶ月連続してプラスを確保した。4月からの通算では17.43%に達した。
(『年金情報』 2006/1/23 15頁)

どの記事もおおよそ傾向は同一なのだが、記事によって数値が微妙に違ってたりするため混乱しやすい。(2)と(3)の記事なんて同一ソースなのに受ける印象がまるで違う。また(3)と(4)の記事に至っては、同じ雑誌の同じ号に掲載されてるにも関わらず記事によって見出しの利回りが異なるという事態になっており、混乱にますます拍車がかかる。企業年金の運用利回りに関する記事を読む際は、以下の点について考慮しなければならない。
 
 
1.どのくらいの期間を見ているか?

提示されているデータが月次か四半期か年次かによって、意味合いがかなり変わってくる。(1)および(2)の記事は「昨年4―12月」とあるので、2005年度通期の利回りであることがわかる。(3)の記事の6.26%は第3四半期(10-12月)という3ヶ月分の利回り、(4)の記事の2.65%は2005年12月という1ヶ月分の利回りである。



2.運用主体は誰か?

年度通算の利回りと一口に言っても、(1)の記事では19.5%とあるが、(2)および(3)の記事では約15%、(4)の記事では17.43%と、報道によってばらつきがある。当然ながら誰が運用しているのかについて注意せねばならない。主なパターンとしては
 @企業年金(厚生年金基金、確定給付企業年金、適年等)
 A信託銀行
 B生命保険会社

などが挙げられる。上述の記事を再度確認すると、(1)の記事は生命保険会社、(2)および(3)の記事は企業年金の運用実績であることがわかる。

@の企業年金については、調査の母集団も考慮する必要がある。(2)および(3)の記事は約130の企業年金が対象とのこと。なお、最も多い母集団を誇る企業年金連合会の資産運用実態調査は、2004年度で約1,200の基金を対象としている。数値の傾向は双方とも大差無いため、業界ではR&Iは速報値、企年連は確報値といった感じで使い分けている向きが多いように感じる。

Bの生命保険会社については、さらに一般勘定か特別勘定かについても留意する必要がある。一般勘定では、企業年金の資産を個人保険といった他の資産と合同して運用されるが、特別勘定では、企業年金資産は一般勘定とは独立して運用・管理される。上記(1)の記事は特別勘定に関するものであり、一般勘定に比べると企業年金の運用実態により近いと言える。



3.実績値か推計値か?

上記(1)の記事の数値は運用実績を集計したものだが、中には複合ベンチマークなどの推計値を用いる場合もある。複合ベンチマークとは、株式や債券といった各資産のベンチマーク収益率を、各資産の資産配分割合で加重平均したものである。例えば、株式と債券を60:40の割合で保有していて、株式の利回りが10%、債券の利回りが2%だった場合だと、複合ベンチマークの収益率は以下のようにして求められる。

  10×0.6 + 2×0.4 = 6.8(%)
   <株式>   <債券>  <複合ベンチマーク>

実績値に比べると厳密性に若干欠けるものの、各資産の収益率と資産配分さえ判ればすぐ計算できるため、速報性に優れているのが特徴である。(4)の記事では、信託銀行の年金信託の資産配分を基に試算した複合ベンチマークを用いたとしている(ただし記事では配分比率が提示されていない)。また(2)および(3)の記事では、4-11月までは実績値、12月は11月末の時価構成比に各資産の騰落率を反映させた推計値という合わせ技を用いている。

また、実績値と一口に言っても時間加重収益率やら修正総合利回りやら、計算方法も多岐に渡っている。詳細の解説は次の機会に譲るとして、とりあえず
 ・運用能力を見るなら時間加重収益率
 ・企業年金の資産増減の状況を見るなら修正総合利回り

と覚えておいて差し支えない。

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運用利回りの算出方法については、以前紹介した「資産運用のパフォーマンス測定」および「基礎から学べる投資・運用関連数式集」に詳しく載っているので、興味のある方はどうぞ。

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posted by tonny_管理人 at 17:20 | Comment(2) | TrackBack(0)
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この記事へのコメント
なんとなく「上がっているんだなあ」くらいにしか数字を見ていませんでした。我々がだまされやすい部分の、判別のコツがわかりました。さすがですね。
Posted by kirilltm at 2006年01月29日 23:03
kirilltmさま、ありがとうございます。
貴社のメルマガの中退共に関する記事を拝見しました。ポイントがまとまってて有益でした。
ところで中退共って適年移行で「焼け太り」状態なのかな〜って思ってたのですが、統計を見てビックリ。年間の脱退企業数が適年からの移行件数の3倍じゃないですか!?
Posted by tonny_管理人 at 2006年02月01日 14:22
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