2009年08月05日

「年金被害者を救え」

年金記録問題に関する客観的な分析と熱い提言

年金被害者を救え―消えた年金記録の解決策年金被害者を救え―消えた年金記録の解決策
野村 修也

岩波書店 2009-08
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年金記録改ざん問題の調査委員長を務めた大学教授による、いわゆる「宙に浮いた年金」に代表される年金記録問題の全容を俯瞰した一冊。年金記録問題の責任は、厚生労働省や社会保険庁ばかりにあるわけではなく、記録問題を政局に結びつけた民主党の戦略や、それに屈した政府・与党の不甲斐なさ、果ては虚偽の申請すら行っていた一部の企業・国民にもあるとし、これ以上の時間の浪費は止めてこの問題にけりを付けるべきと明言している。その上で、
 ◆謝るべき者(政府・行政)が謝る
 ◆許すべき者(国民)が許す
 ◆莫大なコスト(税金)がかかるだけの記録統合作業は直ちに止める
 ◆被害者は税金で直ちに救済する

──ことを提唱している。これら一連の主張は、ともすると暴論とも受け取られかねないが、本書に目を通すと、著者が記録問題発生の原因を実務的側面も踏まえて丹念に分析し、記録改ざん問題の実態解明に真摯に取り組んだ末の結論であることが良くわかる。とりわけ、漢字カナ変換をめぐる「窓口担当者の職人芸」(本書ではp.54〜55)にまで言及されては、実務経験者とて生半可な反論はおよそ不可能。こうした客観的かつ緻密な分析と、「最後の1件まで記録を統合することは不可能でも、最後の1人まで被害者を救済することは可能だ」との言に代表される良心的スタンスは、まさに法律家の鑑(かがみ)のそれである。この期に及んで年金問題を政争の具に利用する輩は、まずは著者の爪の垢を煎じて飲んでから年金問題を語るべし!


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/6/8): 基礎年金番号に反対してきた連中が年金記録不備を糾弾する矛盾
The企業年金BLOG(2006/9/5): 朝日新聞の年金記録記事は必見
The企業年金BLOG(2006/8/8): 年金加入記録にミスはつきもの!?
The企業年金BLOG(2006/4/25): 年金加入記録の記載ミス・記録漏れにどう対応すべきか
The企業年金BLOG(2006/4/1): 「年金生活への第一歩」改訂版






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posted by tonny_管理人 at 23:29 | Comment(4) | TrackBack(0)
| 書評:公的年金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
実務に造詣の深い専門家のお立場から過分なるコメントをいただき、
お礼の申しようがございません。書籍の権威がぐーんと上がりました。
本当にありがとうございました。
Posted by 野村修也 at 2009年08月06日 09:48
管理人様ご紹介の野村先生の本を購入・拝読しました。

実は私は以前から、”年金記録問題が全て現場の問題に矮小化されてしまう事への危惧”を強く抱いていました。この点は、本来の責任を暈かすばかりか、制度を企画立案する年金局の関係者・制度を法律として認める国会議員・加えて制度執行に必要とされる被保険者である国民の主体性・当事者性を喪失させる(それぞれ自身の負うべき責めを容易に執行現場に転嫁する事が出来てしまう)事に繋がる事を激しく畏れているからです。
この点は、仮に執行組織を改廃し、現職の職員を全員解雇したとしても、あるいは民主党様の(実態は税による社会保険制度である最低保障年金と社会保険制度である報酬比例年金の組み合わせからなる)年金制度が施行されたとしても、とりわけ被保険者である国民の適時・適切・適正な届出・保険料納付という当事者性・主体性が存在しない状態では、同じような事を繰り返す虞は排除されないのですから。

年金記録を正確に維持し制度を正しく執行する為には、被保険者である国民の適時・適切・適正な届出という協力が不可避ですから。基礎年金番号以前でも、同一制度では最初に付番された番号を使い続けるという法令上の原則が遵守されていれば、宙に浮いた記録は随分減少した筈ですし。これからも、年齢詐称・経歴隠蔽・外国籍被保険者の通名問題と発音のカタカナ化の問題のほか、被保険者である国民や事業主の適時・適切・適正な届出や年金手帳の管理が為されなければ、一人に複数の基礎年金番号が付番される事態は防げないですし。特に20歳時に職権付番された学生が最初に被用者年金制度の対象となるときが非常に危ういですから。

そう言う意味では、野村先生が今回の本を著されたことには、深い感謝の念を抱くと伴に、僭越ながら”私が感じていた昨今の状況への強い危惧は、言葉にすると正しくコレだ!”という感想を抱いています。
Posted by 素人の浅知恵 at 2009年08月06日 13:53
> 野村さま
著者様自らの過分なコメント、こちらこそ恐れ入りますm(__)m
入念な分析と意識の高さに心打たれました。
益々のご活躍を祈念申し上げます。
Posted by tonny_管理人 at 2009年08月06日 22:11
> 素人の浅知恵さま
仰せのとおり、照合にあたっている現場職員は一生懸命やっているのは間違いないのでしょうが、その熱心さが逆に責任逃れに利用されている感もあります。野村先生の「厚労省・社保庁の幹部が責任を取りたがらない」「政治の側にも問題がある」との指摘は、この問題の本質を衝いているように思います。
Posted by tonny_管理人 at 2009年08月06日 22:17
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