2009年11月02日

積立方式の難しさを物語るOECDのレポート

年金資産490兆円目減り OECD30カ国 (NIKKEI-NET)
【パリ=古谷茂久】経済協力開発機構(OECD)は26日、加盟30カ国の年金資産の時価総額について、2008年中に5兆4千億ドル(約490兆円)減ったとの試算を発表した。昨年秋からの金融危機が響き、株式や債券などの運用資産が目減りした。今年1〜6月期には約1兆5千億ドル増えたが「08年の損失を取り返すには時間がかかる」と分析している。
(2009/10/27 日経朝刊 7面)

去る10月26日に公表されたOECDのPension Markets in Focus (Issue 6)によると、OECD加盟30カ国の私的年金資産の総額は、2008年の1年間だけで5.4兆ドル目減りしたものの、09年上半期で1.5兆ドル以上回復したというもの。報道媒体によって「2008年の減少」と「2009年の回復」のどちらを見出しにするかが分かれているが、内容的には双方とも間違いではない。ちなみにレポート原文(2ページ)は後者を見出しに掲げている。

 ・年金490兆円喪失の試算 OECD (読売新聞)
 ・OECD:加盟国の年金資産、09年上期に回復 (Bloomberg.co.jp)
 ・OECD加盟国の年金基金、09年上半期に08年の損失の一部取り戻す (ロイター)

なお、日経の記事では「日本は加盟国の中では中位程度の実績」との記述があったものの、原文を参照した限りでは、日本の運用成績が中位程度だったとする記述は皆無であった(日本の資産構成割合、海外投資割合、企業の年金債務に関するデータは記載あり)。まあ、OECDのペーパーは上位と下位のみをピックアップする比較形式が一般的なので、「未掲載=中位」と捉えることはあながち的外れとは言えない。
それにしても、短期的な運用成績に一喜一憂すべきでないことは承知しつつも、やはり積立方式はボラティリティ(変動性)が大きいことは否めない。公的年金を積立方式に移行せよとの論者は(昨今トーンが低くなったとはいえ)後を絶たないが、事前積立方式である企業年金の実務に携わる立場から言わせて貰うと、積立方式は公的年金には不向きであると考える。よく「賦課方式は人口動態の変動に弱く、積立方式は金融市場の変動に弱い」と言われるが、そもそも経済成長は人口構成の影響を免れないのではないか。

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/12/5): OECDが提唱する日本の年金改革(総論)
The企業年金BLOG(2009/6/25): OECDの公的年金所得代替率に関する留意点
The企業年金BLOG(2008/12/5): 公的年金にまつわる10の神話






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posted by tonny_管理人 at 23:05 | Comment(2) | TrackBack(0)
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この記事へのコメント
積立方式で、運用をより確実な債権等に限って元金の確保に努める。少なくとも3%以上の複利で管理出来れば破綻する事は無い。
問題は、積立てた分を運用の名の下に減少させてしまう事と、現在のようにゼロ金利に近い情勢を金融機関主導で長期に続ける事が健全な経済を蝕むのです。
ゼロ金利は不況の為に必要では無く、金融業会にとって都合が良いから継続されているに過ぎないのです。
Posted by hisakunn at 2009年12月06日 20:11
> hisakunn様
コメントありがとうございます。お気持ちはお察し致しますが、現実には、「確実な債券」を見極めるのが難しい上に、「少なくとも3%以上の複利」を確保しようとすると債券以外のリスク性資産に投資せざるをえません。
Posted by tonny_管理人 at 2009年12月09日 06:21
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