2009年12月05日

OECDが提唱する日本の年金改革(総論)

グリア事務総長会見「財政再建へ中期目標を」 (NIKKEI-NET)
経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長は19日、東京都内で記者会見した。「日銀はデフレと戦うべきだ」と述べ、日本は物価の上昇が確実になるまで超低金利政策を維持すべきだとの認識を示した。一方、追加的な財政出動には否定的な見解を表明。鳩山由紀夫政権に対して「財政再建の中期目標を早急に打ち出すべきだ」と注文した。
(中略)OECDは世界経済見通しの公表に合わせて、日本の経済政策に関する包括的な提言も発表した。子ども手当については再考を促し、むしろ保育所や就学前教育への支出を増やすべきだと訴えた。
(2009/11/20 日経朝刊 5面)

やや古い記事で恐縮だが、先月のOECD事務局長来日&講演に関する報道は、
 ・日本は持続的な経済成長の実現に焦点絞る必要 (Bloomberg.co.jp)
 ・子ども手当:再検討を OECD提言「重点、就学前教育に」 (毎日jp)
 ・子ども手当より「待機児童解消を」 OECDが政策提言 (asahi.com)
──など、報道機関によって見出しがまちまちだが、これらは全て『日本の政策課題達成のために:OECDの貢献』という一冊の報告書が情報源である。本報告書は、実際の内容は、「内需主導の成長戦略」「労働市場」「教育」など9つの分野にわたる包括的な政策提言集だが、この中には公的年金・企業年金に関する提言も含まれている。

報告書の「年金改革」の項(16〜17ページ)では、まず、日本の高齢者層における相対的貧困率が22%とOECD平均(13%)に比べて高いこと、また、公的年金の所得代替率がOECD域内で最低水準にあることなどから、日本の高齢者層における貧困問題は深刻であるとの見解を示しており、その対処策として以下の提言を行っている。各々の提言の詳細については、当BLOGでも順次取り上げることとしたい。

年金に関する主な提言
・高齢者層における貧困率を引き下げるよう公的年金制度を改革する。
・公的年金制度の長期的な持続可能性を、年金給付の切下げや保険料率の引上げでなく、必要であれば退職年齢の引き上げにより確保する。
・政府積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用資産配分を、過度なリスクを取らず漸進的に改善する。
・私的年金が現行の低水準から公的年金制度を補完するレベルへ発展することを支援する。
・私的年金の規制体制を改善し、景気循環に対する制度の安定性を高める。
 (出典:『日本の政策課題達成のために:OECDの貢献』16〜17ページ

ところで、ごく一部の論者(ココとかココとか)が未だに提唱している「賦課方式から積立方式への移行」については、OECDの報告書では言及すらしていない(汗)。公的年金の積立方式化・民営化論は、世界銀行の1994年レポートの発表を契機に世界的に話題となり、日本でも90年代後半に『年金改革論―積立方式へ移行せよ』(八田達夫・小口登良)『年金民営化への構想』(小塩隆士)が刊行されるなど議論が花盛りであった。しかし、当の言いだしっぺの世界銀行が2004年レポートで自説を撤回したのを機にすっかり鳴りを潜めてしまい、前述の著者らはかつての持論に触れることすらしないのが現状である(汗)。公的年金の積立方式化など国際的にはもはや論点ですらないという現実を、彼らはどう直視するのだろうか。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/3/26): OECD「Pensions at a Glance」2011年版が公表
The企業年金BLOG(2009/11/2): 積立方式の難しさを物語るOECDのレポート
The企業年金BLOG(2009/6/25): OECDの公的年金所得代替率に関する留意点
The企業年金BLOG(2008/12/5): 公的年金にまつわる10の神話



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posted by tonny_管理人 at 23:22 | Comment(0) | TrackBack(0)
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