2010年02月09日

年金論争を一層堕落させる鈴木亘教授の反論

先日当BLOGでも取り上げた「週刊東洋経済2009年10月31日号」において名指しで批判されたとして、鈴木亘学習院大学教授が自身のBLOGおよび「週刊ダイヤモンド2010年1月23日号」に反論を寄せたとの事。当BLOG管理人も遅れ馳せながら鈴木氏の記事を拝見したのだが・・・はっきり言ってお粗末の一言(汗)。
詳細は鈴木教授の記事あるいはBLOG(その1その2その3)を見れば一目瞭然だが、結局、鈴木教授はこれまでの自説を繰り返すのみで、東洋経済から指摘された疑問点には一切触れず(例:積立方式に移行しても世代間格差は縮小しないetc)。そして、文中の随所で「官僚の詭弁」「厚労省の省益保護」「御用雑誌」だのと議論の本筋とは無縁なレッテル貼りに終始する始末。

例えば、「未納の増加は年金財政に影響を与えない」との論に対し鈴木教授は「未納者・無年金者を排除・放置して良いのか」と返しているが、そんなことは言わずもがな3大トピック(by権丈教授)だっつーの。東洋経済の記事でも「未納者・無年金者は他の手法で救済すべき」と既に論じており、この反論は的外れというか論理のすり替えも甚だしい。素人目に見ても、無年金者が問題だというスタンスは東洋経済も鈴木教授も一致しており、あとは無年金者対策をどうするかが課題となる。これに対して、東洋経済は「現行制度の枠内での対策」、鈴木教授は「目的消費税化」をそれぞれ掲げており、鈴木教授はここで税方式化の優位性を理詰めで説明すべきところなのだが、現行制度内でのやりくりは全て役所のプロパガンダとばかりに一刀両断し自説の正当性を唱えるだけでは、読者は何の示唆も得られない(汗)。
更にBLOGの方では「厚労省のシミュレーションはブラックボックス」とまで断言している。そんな事を言い出したら、オマエのこれまでの実証論文は完全に客観的なのか? という話になるのだが(汗)。

もちろん、現行の公的年金制度に全く問題がないとは思わない。鈴木教授の危機意識には仕事柄賛同する部分も少なくないし、「予定運用利回り4.1%の不可解」「公的年金債務の把握の重要性」など、至極真っ当な指摘も幾つかある。とくに後者は、賦課方式であっても何らかの形で年金財政を検証することの必要性は当BLOG管理人も大いに賛同するところ。しかし、全体的には結論ありきの我田引水な印象が強く、もっと理詰めの反論を期待していただけに甚だ残念。
この論争、東洋経済サイドが鈴木教授の反論の掲載を断ったことから、当初は「マスゴミの横暴」への反発から鈴木教授支持が多かったものの、内容的にはもはや勝負あったか(汗)。まあ、官僚の「詭弁年金論」に注意が必要なのと同様、経済学者の「詭弁年金改革論」にも騙されてはいけない、というのが当BLOGの結論である。

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/3/5): 「だまされないための年金・医療・介護入門」
The企業年金BLOG(2009/11/2): 積立方式の難しさを物語るOECDのレポート






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posted by tonny_管理人 at 00:37 | Comment(8) | TrackBack(0)
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この記事へのコメント
そう言えば、週間東洋経済様の記事への反論記事が、週間ダイヤモンド様に掲載されてました。(残念ながら号数は覚えておりませんが、今年になってからかと。)その内容については、深入りは避けますけど。

ところで、完全な税方式による基礎年金に移行する際にも、(完全積み立て方式に移行する際と同様に)発生するいろいろな意味での「二重の負担」について、如何お考えなのか、鈴木先生のご見解を賜りたいと考えるのは私だけかしら?(ボソッ
Posted by 素人の浅知恵 at 2010年02月09日 15:38
> 素人の浅知恵さま
コメントありがとうございます。
東洋経済の記事は、鈴木教授のBLOGのエントリを要約したようなものなので、情報量だけならBLOGを参照すれば事足りるかと。
質問なら鈴木教授に直接・・・と思いきや、残念なことに氏のBLOGは現在コメント欄を全面閉鎖した模様。どうやら「聞く耳」は持ち合わせていないようで・・・(汗)。
Posted by tonny_管理人 at 2010年02月10日 13:15
貴記事は、
明快に説明していて感服しました。

拙ブログ「坂之上介護福祉研究会」の
P3674に引用させていただきました。

私自身は、年金数理には疎いのですが
「介護政策」のうえでも大事と
おっとり刀で勉強しています。
Posted by 古瀬徹 at 2010年02月10日 14:00
> コメント欄を全面閉鎖

残念です。。。鈴木先生には、現下の人口構造や経済環境を前提として、消費税による完全賦課方式を実現できたとして、『給付水準を固定すれば、消費税率という世代間不公平が生じるのでわ?』とか『消費税率で世代間不公平を生じさせないなら、給付水準の世代間不公平は解消されないのでわ?』とか、色々ご見解を賜りたかったです。

極論してしまえば、世代間の公平性が完全に担保される社会保障制度なんか、与件(制度存立の前提条件)が常に変動する以上はあり得ないだろうし、年金について言えば現行方式だろうと鈴木先生の解法だろうと、与件となる制約を打破できる「バラ色の未来」は存在しないのでしょう。

「一切の社会保障政策を行わない」と言うことであれば、「社会保障分野での世代間不公平は解消される」と言えなくは無いはずなのですが。

財政的問題とは別個に、未納・未加入や無年金・低年金問題は確かに存在するけど、制度移行問題を(現憲法とか法理論や政治的な観点から)考えると、鈴木先生の提言に従っても、移行期間中はこれらは解消できないんじゃないかな。
Posted by 素人の浅知恵 at 2010年02月10日 18:28
> 古瀬さま
過分なコメントありがとうございます。
遅れ馳せながら、貴BLOGおよび「坂之上介護福祉研究会」へのリンクを貼らせていただきました。不都合等ございましたらご一報願います。
Posted by tonny_管理人 at 2010年02月10日 23:10
> 素人の浅知恵さま
是非何らかの形(論文orメール)で提起されることをオススメ致します! もっとも、先方が聞く耳を持っていればの話ですが・・・(汗)
Posted by tonny_管理人 at 2010年02月10日 23:32
http://dw.diamond.ne.jp/contents/2010/0123/index.html

1月23日号ですね。>鈴木先生の寄稿
ここの目次をクリックすると確認できます
Posted by 匿名希望 at 2010年02月15日 16:06
> 匿名希望さま
コメントありがとうございます。ご指摘のとおりです。
ところで、週刊ダイヤモンドの今週号が年金特集でしたね。相変わらず一方的に持論を展開するだけで見ごたえゼロでした(汗)。いずれコメントしたいと思います。
Posted by tonny_管理人 at 2010年02月16日 21:47
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