2010年03月05日

平均余命と年金支給開始年齢の関係

Retirement - Golden years (The Economist online)
Time spent in retirement has sharply increased
引退後に過ごす時間は激的に増加している


AS GOVERNMENTS try to tackle huge structural budget deficits, one means of attack is to delay paying state pensions by gently raising the official state-retirement age.
政府が膨大な量の構造的財政赤字に対処しようと試みるとき、その取り組みの手段の一つは、公式上の引退年齢を徐々に引上げることによって公的年金の支給を遅らせることである。
(2010/2/23 The Economist online) ※日本語は当BLOG管理人簡訳

経済学の教科書でもお馴染みのMankiw教授のBLOGで取り上げられていた上記の記事。要約すると、先進諸国における平均余命の伸びが著しいという内容。下のグラフでは、1965-70年当時の平均余命(青)と2002-07年時点の平均余命(橙)が各国毎に列挙されており、引退年齢時点の平均余命が40年間でおおむね倍増している様がうかがえる(トルコに至っては8倍増、韓国のみ微増に留まる)。
なお、日本人男性の平均寿命は世界第2位だと記憶していたが、本記事のグラフでは、日本は下から2番目に位置しているのがやや不可解。おそらくOECDか何かのデータを用いているためだとは思うが、詳細は不明。

Life Expectancy at Retirement


このように、先進国をはじめとした諸外国では、公的年金制度の持続可能性を確保する観点から、平均余命の伸びに合わせた支給開始年齢の引上げが真剣に議論されている。一方日本はというと、支給開始年齢の引上げというと「制度改悪」「老人いじめ」という感情論が未だに根強く、過去には「支給開始年齢引上げにより1,400万円カットされる!」というトホホな推計(おそらく「月額20万円×12月×5年」で計算)まで飛び出していた(汗)。果たして、日本の年金受給者は本当に損をしてきたのだろうか?
そこで、厚生年金保険の過去の支給開始年齢および男性の平均寿命(=0歳時平均余命)の推移を以下に列挙してみた。こうして見ると、前述のEconomistの記事と同様、実際には支給開始年齢の引上げ以上に平均寿命の伸びが著しいため、平均寿命ベースでみた平均受給期間はむしろ長期化していることが覗える。よって、「支給開始年齢の引上げは老人いじめ」との批判は適切ではない。もっとも、支給開始年齢の決定は引退(定年)年齢との関連性が大きいため、雇用政策とのリンクが欠かせないことは言うまでもない。

<厚生年金保険における平均余命と年金支給開始年齢の関係>
20100305平均余命と支給開始年齢.jpg


ところで、上記は厚生年金保険の話だったが、国民年金は制度創設当初から65歳支給なのをご存じだろうか。平均寿命が63〜64歳だった時代(昭和30年代前半)に、それを超える支給開始年齢がよくぞまあ実現できたものだ。誰も反対しなかったのか? ともあれ、つくづく画期的というかファンキーな制度設計だと個人的には思う(汗)。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/3/8): 掛金拠出期間と年金受給期間の関係
The企業年金BLOG(2009/12/5): OECDが提唱する日本の年金改革(総論)



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posted by tonny_管理人 at 00:58 | Comment(5) | TrackBack(0)
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この記事へのコメント
「平均寿命=出生時点の平均余命」ですが、グラフは「引退年齢時点での平均余命(≠平均寿命)」と読めるので、その辺の事情でないでしょうか。

国民年金については、国全体が若く私的扶養の風潮も今よりも強く残っていた時期だったのと、農林漁業者・自営業者中心で「家業であり定年という線引きがない前提での補助的所得保障」という考え方が底辺にあった故に可能だった年齢設定たっだのでしょう。(根拠レス。
社会保険による皆年金という政治的命題から保険料を低位に抑える必要があった事も、影響した可能性もあるのでしょうけれど。

当時の厚生年金の支給開始年齢と比しても、よくコレで可決されたなぁと思う設定ですけど「被用者年金の枠外の人に年金制度が及ばない不公平を解消する」という命題に対して、「とにかく、制度の枠組みが出来る事が大事。」という側面があったのは間違い無いかと。
Posted by 素人の浅知恵 at 2010年03月05日 07:47
コメントありがとうございます。

データについては平均寿命と平均余命の違いかとも考えましたが、下記資料p.147を参照した限りでは、日本人男性は65歳時点平均余命も世界トップクラスなので、尚のことよく分かりません(汗)。
OECD「Pensions at a Glance 2009」
http://www.dia-vorsorge.de/downloads/st000515.pdf#page=147

国民年金の創設経緯を考えれば、おおむね貴見のとおりかと存じます。まさに国民年金は、引退所得保障よりも長寿リスクへの対応を主眼に置いている感がします。
Posted by tonny_管理人 at 2010年03月05日 08:32
> tonny_管理人 様
う〜ん、エントリでご紹介のグラフの左に白黒反転で示されている引退年齢の違い(即ち平均余命の計算年齢の違い)に由来するのかも知れないとも思うんですよね。
要するに、同一の条件で国際比較したグラフではないと言うことで。(根拠レス
Posted by 素人の浅知恵 at 2010年03月05日 21:49
引退年齢の違いも認識した上でコメントしております。
Posted by tonny_管理人 at 2010年03月08日 07:14
> 引退年齢の違いも認識した上でコメントしております。
ありゃ、私の思いつきって、文字通り”素人の浅知恵”でしか。(恥
失礼致しました。m(__)m
Posted by 素人の浅知恵 at 2010年03月09日 08:28
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