2010年04月27日

最近の日経新聞の企業年金記事の稚拙さを嗤う

4月から畑違いの部署に異動した関係で、企業年金に関する報道をしばらくチェキラする暇がなかった。最近になって、日経新聞の企業年金記事が酷いとの噂を耳にしたので、ようやくここ一ヶ月の報道を遡ってみたのだが・・・うん、これはひどい(苦笑)。


厚生年金基金 給付額、収入超す勢い (nikkei.com)
08年度 比率90%超 積立金4割が崩す
厚生年金基金の「高齢化」が進んでいる。2008年度は年金を受け取る人が2年連続で増える一方、保険料(掛金)を払う加入者数は11年連続で減った。その結果、収入に対する給付額の割合は過去最高の92.6%となった。全体の約4割の基金では100%を超え、積立金を取り崩して給付している。団塊世代の年金受給が本格化しているため、09年度は全体でも100%を突破する公算が大きい。基金の運営は一段と厳しくなりそうだ。
(2010/3/28 日経朝刊 1面)

事前積立方式を旨とする企業年金制度は、制度が成熟化して成熟度が高くなっても、「給付=掛金+運用収益」が成り立っていれば、財政運営上は特段の問題はない。これは給付建て(DB)制度にも掛金建て(DC)制度にも共通する普遍の原則(収支相等の原則)である。給付費が掛金収入を超えたからといって、年金制度が即座に倒壊するものではない。そのために掛金を事前積立するわけだし。
また、本記事では金額ベース成熟度(=給付費÷掛金収入)を指標としているが、日本の企業年金の給付は一時金が主流であり、一時金での受給が増えると金額ベース成熟度は高ブレする傾向にあることに留意する必要がある。



【底流】OB年金減額、解け始めた封印 (nikkei.com)
NTT裁判決着が転機に?
事実上の国の支援の下で再建を目指している日本航空の企業年金について、厚生労働省が受給者(OB)の減額を認可してほぼ3週間。年金債務負担に苦しむ企業関係者の間に「OB年金の減額申請が認められやすくなるのでは」との観測が強まってきた。
(2010/4/10 日経朝刊 5面)

何とも我田引水な主張である(汗)。日本航空の場合は、実質破綻状態だったが故のいわばレアケース。NTTが厚労省を訴えている裁判にしても、「止むを得ないほどの経営悪化はない」として東京地裁で敗訴(2007年10月19日)、東京高裁もこの判断を支持して控訴を棄却(2008年7月9日)している。現実は希望的観測よりも苦し。

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/10/24): 規制が嫌なら税制優遇を返上すればぁ?



厚年基金 代行返上が増加 (nikkei.com)
昨年度7件 運用難背景に
企業が国から預かって運用している公的年金を返還する「代行返上」が増えている。2009年度に代行返上を実施した厚生年金基金は前年度よりも2基金多い7基金。制度ができた02年度から減少が続いていたが、増加に転じた。運用難と業績低迷で重荷に感じる企業は多く、10年度はさらに増える見通しだ。
(2010/4/19 日経朝刊 3面)

将来返上と過去返上の違いすら踏まえていない点も痛々しいが(02年度から開始とあるのでおそらく将来返上だと思われる)、代行返上は2002〜04年で既にピークを過ぎておりたった2件増えたくらいで見出しを打つのは大げさ(汗)。また記事では、国への返還額の算定に用いる利率が2010年の(マイナス6.83%)から来年はプラス7%を超える可能性があることから「今年中の駆け込み返上が増える」かの如く喧伝しているが、これらの利率は一律に適用されるものではなく、暦年に対応した利率が各々用いられるため、適用利率が変わったからといって返還額が急激に増減することはない。
まあ、代行返上を煽るのは勝手だが、だったらまずは日本経済新聞厚生年金基金をとっとと代行返上すべきであろう。

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/8/31): 08年度公的年金決算からみる代行返上・離婚分割の動向



企業の年金費用 縮小 (nikkei.com)
株上昇、利回り改善
主要企業の年金資産の運用利回りが改善している。株式相場の上昇を受け、三井化学は2010年3月期に約23%の運用利回りを確保。前の期の大幅なマイナスからプラスに転じる企業が目立つ。運用の好転で企業の年金積み立て不足は縮小する。東芝の年金費用が年30億円減るなど今期の業績回復を下支えする。
(中略)
株高で年金財政の悪化に歯止めがかかったが、年金の積立不足は依然高水準。国際会計基準への移行などもにらみ企業年金制度を変更する動きは今後も続きそうだ。
(2010/4/24 日経朝刊 1面)

最後の記事は、2009年度の企業年金の運用利回りが改善したことを伝えるもので、内容そのものは至って普通。しかし、最後の一文に注目すると、結局、資産運用が良好だろうが不調だろうが企業年金制度を変更する動きは止まらないとする結論は一緒(汗)。ここでいう「企業年金制度の変更」とは、日経新聞的にはもちろん確定拠出年金(日経新聞的には「日本版401k」)への変更を意味するのだろう。
まあ、確定拠出年金への移行を煽るのは勝手だが、だったらまずは日本経済新聞厚生年金基金をとっとと確定拠出年金に移行すべきであろう。

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/8/8): 確定拠出年金は隗より始めよ!?






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posted by tonny_管理人 at 01:04 | Comment(2) | TrackBack(0)
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この記事へのコメント
http://diamond.jp/articles/-/8018
”企業年金、次の一手は店じまい!”
by山崎元

”もう一つの選択肢は、損が縮小してきた現状からDB(確定給付)の企業年金を畳む準備に入るということだ。特に年金基金を通じて企業がリスクを取る運用を手仕舞う。具体的には、DBの企業年金を止めて、DC(確定拠出年金)に移行するのが一つの方法であり、企業年金の形は同様にしながらも運用リスクを母体企業が負わずに済む「ハイブリッド型」と言われるような年金に衣替えする方法もある。”

ダイヤモンドですねぇ
Posted by 匿名 at 2010年04月28日 19:47
> 匿名さま
ええ、ダイヤモンドですねぇ・・・(汗)
Posted by tonny_管理人 at 2010年04月29日 19:38
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