2010年06月28日

特別法人税に関するQ&A

平成23年度税制改正に関する要望について (生命保険協会)
生命保険協会(会長:佐藤義雄 住友生命保険社長)では、本日、平成23年度税制改正に関する要望書(下記参照)を取りまとめましたので、お知らせいたします。
 【重点要望項目】
◎公的年金制度を補完する企業年金制度(確定給付企業年金制度、厚生年金基金制度、適格退職年金制度)および確定拠出年金制度等の積立金に係る特別法人税を撤廃すること。(後略)
(2010/6/18 生命保険協会ニュースリリース)

気が付けば、2010年も半分を経過しようとしている。特別法人税(退職年金等積立金に対する法人税)の課税凍結期限が来年3月末に迫っていることから、早くも各種業界団体が凍結延長を要望する時期になったものだ。All Aboutの山崎俊輔氏が特別法人税に関する良記事を取りまとめたことだし、当BLOGもその余勢を駆って、特別法人税に関するQ&Aを以下に取りまとめることとしたい。 
 
Q1.法人税法を見ても「特別法人税」という単語が見当たらないけど?
A1.
特別法人税というのは俗称であり、法令上用いられてる用語ではない。正式には、退職年金等積立金に対する法人税と称する。

Q2.特別法人税の課税対象となる制度は?
A2.
わが国における法令上の企業年金制度(厚生年金基金適格退職年金確定給付企業年金および確定拠出年金)が対象となるほか、勤労者財産形成促進法に規定する勤労者財産形成給付金(財形給付金)および勤労者財産形成基金(財形基金)の積立金も課税対象となる。ただし厚生年金基金については、国の厚生年金を一部代行していることから、代行部分の3.23倍に相当する額(努力目標水準)までの積立金は非課税とされ、それを超える部分にのみ課税が行われる。

Q3.国民年金基金には特別法人税は課税されないの?
A3.
国民年金基金については、@事業主拠出ではないため給与の課税繰延の問題が生じないこと、A国民年金の付加年金を一部代行していること、B給付水準が厚生年金基金における努力目標水準に達しないこと、などの理由により、特別法人税は課税されないようである。

Q4.確定拠出年金は個人資産だろ? なぜ法人税が課税されるんだ!?
A4.
実務上は年金資産を管理している信託銀行および生命保険会社等が代位納付することから、法律技術上「法人税」と称している。実質的には、個人の年金資産に対する個人所得課税なのだが(汗)。気持ちは察するが、確定拠出年金が「企業年金制度」の一環として創設された以上、他の企業年金制度と同様の縛りがかかることは避けられない。

Q5.税収規模はどのくらい?
A5.
最後に課税が行われた1998年の特別法人税の税収は、厚生年金基金と適格退職年金を合わせて約2,100億円であった。現在は、代行返上や適年移行の影響等により企業年金資産が減少しているものの、それでも凍結解除すれば1,500億円程度の税収が見込めるらしい。

Q6.良く「課税繰延に対する遅延利子」だと説明されるけど、どういう意味?
A6.
給与課税と比較すると分かり易い。給与への課税は、当然ながら給与支払時に課税が行われる。企業年金は「退職金の分割払い」であり「給与の後払い」という性格も有するため、本来ならば、企業が従業員のために掛金を損金として拠出した場合、当該従業員の給与所得とみなして、掛金拠出時に直ちに課税しなければならない。
ところが、給与の場合は支払時に金額が確定しているものの、企業年金制度は、掛金拠出時点では各従業員の年金支給額が幾らになるか確定していない。そのため、企業年金掛金(企業拠出分)への課税は、(具体的な年金額が確定する)給付時まで繰り延べざるを得ない。この課税繰延に対する遅延利息を徴収する手段として編み出されたのが、特別法人税である。

Q7.税率(1.173%)の根拠は?
A7.
特別法人税の税率の変遷は以下のとおり。
   20100628tokubetsu-houjinzei.jpg
1974年以降の計算根拠に照らして説明すると、給与100円に対して17円(国税12円+住民税5円)の所得税を徴収すべきところを、代替措置として年金資産に1.173%の税率を課するものである。

Q8.すると、特別法人税は運用時課税ではなく拠出時課税ということ?
A8.
上記Q6で解説したとおり、そもそもは拠出時課税に起因する課税である。
ただし、特別法人税の課税標準となる退職年金等積立金には、事業主拠出の元本部分のみならず事業主拠出および加入者拠出に係る運用益部分も含まれることから、実質的には運用益課税であると言える。

Q9.世界の企業年金は「運用時非課税」が標準だと聞くが?
A9.
そのとおり。ただし、運用時非課税というのは原則として運用収益が非課税であることを意味する。日本の企業年金も、利子・配当などの運用収益には課税されないことから、その意味では運用時非課税というカテゴリに入れられる。よって、税制当局に「運用時非課税が世界標準なんだから特別法人税を廃止しろ!」と主張しても、「既に運用収益は非課税ですが何か?」と切り返されるのがオチである(汗)。

Q10.最後に、特別法人税はどのようにあるべき?
A10.
特別法人税は「課税繰延に対する遅延利子」という性質上、平均上積税率や延滞利子税率等が変更された場合、本来は機動的に税率を見直すべきである。しかし、特別法人税の税率は1974年を最後に見直しが一切行われていない。なお、税率の算定根拠となる延滞利子税率は、2000年以降基準割引率(かつての公定歩合)+4.0%」とする特例が認められている。直近の水準(2009年11月末時点の基準割引率:0.3%)で再計算すると、現在の金利情勢に即した特別法人税率は約0.7%となる。企業年金の育成の観点からは特別法人税を廃止すべきという声は多いが、仮に引き続き維持するのであれば、直近の金利情勢を反映した税率に洗い替えるべきである。


<参考文献>
◆法人税法(第2章:退職年金等積立金に対する法人税) (法令データ提供システム)
◆第40回通常国会 衆議院大蔵委員会(第16回) (国立国会図書館)
私の401k資産に「法人税」がかかる?〜特別法人税の話 (All About マネー)
◆特別法人税の動向() (確定拠出年金コンサルティング)
◆私的年金税制の公平性・中立性に関する一考察

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/9/3): 財形給付金・財形基金にも課税される特別法人税
The企業年金BLOG(2008/3/25): ガソリン値下げの代わりに特別法人税が復活!?






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posted by tonny_管理人 at 23:46 | Comment(2) | TrackBack(0)
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この記事へのコメント
特別法人税は信託協会も生保協会も毎年のように撤廃を要請していますが、撤廃にはなりません。

ある顧客から聞いたのですが、財務省は撤廃の意向は全くないそうです。やはり財源が厳しいだけに、撤廃なら他の財源を見つけなくてはならないようです。

寧ろ民主党の政権になって、撤廃は遠のいたそうです。

民主党の最大の支持団体は連合。連合は中小企業をサポートしています。
大企業中心のDBに恩恵を与えるなんて、とんでもない。という発想だそうです。

だから局面においては、復活ということもあり得るかもしれません。

またDBに課税されるようになれば、当然会社型のDCも課税になりますね。そうなると大問題なような気がします。

もし特別法人復活になれば、企業年金制度には大打撃です。

企業から見れば、引当金だけ計上して、自社の事業に使った方が良いともなりかねません。

業界の一人として危惧しています。

恐ろしい話でしょう。
Posted by トム at 2010年07月03日 17:40
> トム様
ご意見ごもっともです。心中お察し致します。
ただし一点だけ認識が異なるのは、民主党の最大支持母体である連合は、中小企業ではなく大企業・公務員が中心の団体です。彼らは企業年金資産を労働者の資産(worker's capital)と見なしており、特別法人税の撤廃にはむしろ積極的ですらあります。もっとも具体的な行動は表立っては見えませんが。
Posted by tonny_管理人 at 2010年07月07日 08:22
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