2010年12月01日

日経ビジネスの企業年金記事はツッコミどころ満載

5回にわたって日経ビジネスONLINEに連載された「マネ美と金蔵デスクの企業年金探偵団」という特集記事。「企業年金については、旧社会保険庁の不祥事をきっかけにクローズアップされた公的年金に比べて馴染みのない人も多いだろう」という問題意識はご立派だが、肝心の著者自身も企業年金に馴染みがなかったのか、頓珍漢な内容に堕してしまったのが何とも残念。以下に、全5回の連載のツッコミ所を指摘しておく。


第1回:「えっ、企業年金って何? それってもらえなくなっちゃうの!」
金蔵 社員の高齢化が進む一方で、新入社員の採用を絞ったりして若手の社員が少なくなっている。その結果、社員の年齢別の分布が「ワイングラス」のような形になっている会社が多い。
これまでは退職者の人数が少なかったから、企業年金の額が大きくても払い続けることができた。しかし、このまま退職者が増えていく一方だと、企業年金の支給総額は、かつてとは比べものにならないほど巨額になってしまう。
企業年金は事前積立方式を旨としており、年金に必要な原資は、企業および従業員が事前に積み立てた掛金と運用収益の元利合計で賄う仕組みとなっている。もちろん、脱退率の予定と実績が乖離すると年金財政にも影響は出るが、社員の高齢化が給付増に直接結びつくものではない。現役社員の掛金が年金受給者の給付に直接的に充てられるかの如き文言は、公的年金と勘違いしているものと思われる。
なお、事前積立方式の年金制度における財政悪化の要因は、掛金収入の減少運用収益の低迷の2点に尽きる。後者の運用収益の低迷については万人の知るところであり繰り返さないが、前者の掛金収入については、かつて予定利率が5.5%以上と課せられたことにより掛金水準を低く押さえられていた要因も大きい。


第2回:「え〜、5000億円も不足? やっぱりもらえないんじゃないですか!」
金蔵 そういうこと。今や日本のほとんどの企業が企業年金の積み立て不足に陥っていると言っても過言じゃない。そこで企業年金を減額したり、年金の支給方法を変更する会社が続出しているってわけさ。
(中略)
会社が採用する制度は必ずしも1つに限られるわけではなく、例えば「確定給付年金と確定拠出年金」など、複数の制度を組み合わせる場合もあります。その場合は、それぞれの比率も確認する必要がありますね。
おいおい、「ほとんどの企業が企業年金の積み立て不足に陥っていると言っても過言じゃない」と言っておきながら、確定拠出年金(DC)の話がイキナリ出てくるのは唐突にも程があるだろ。運用難は給付建て年金(DB)だけのものなのか? 確定拠出年金は運用難とは無縁だってか!?


第3回:「利息だけじゃなく、元本まで減らされちゃうの? 許せない!」
金蔵 山崎さんの話で、企業年金の減額というのは、支給額をあらかじめ確定する確定給付年金の維持が難しくなってきたことから生じているということが分かっただろ。
それは、社員のいびつな年齢構成、運用環境の悪化、不況による業績の不振という要因が重なった末のことなんだ。でも、無理に高い利息を維持したまま年金を払い続けて、会社が倒産するよりマシだろ? 倒産してしまったら、その時点で残っている年金資産を社員とOBで分配して終わりだ。老後の資金どころではなくなるんだぞ。
本文では「DBは持続不可能→だからDCへの移行が増えている」とのたまうが、DCだって運用難で資産が目減りすれば実態は同じ。DCは年金資産を強制的に減らされないのがメリットだが、資産が絶対に減らないわけではない。


第4回:「へぇ、節税効果も? そんなにメリットがあるとは知りませんでした!」
第5回:「10年間で163万円もトクしちゃうんですか!」
マネ美 取材で聞きましたけど、確定拠出年金は運用益に税金がかからないから、同じ商品に投資するなら、税制優遇がある確定拠出年金の方がおトクなんですよね。
金蔵 お、税制優遇なんて言葉も覚えたか。お前もこの数日で成長したなぁ。
面倒くさくなてきったのでまとめて指摘しておくと、節税効果も複利効果もDCだけの専売特許じゃありませんから!(残念!) DBだって節税効果と複利効果を加味して制度設計されているし、掛金の損金算入額の規模だけならDCよりもDBの方が税制優遇度合いは大きい。しかし筆者の羽生氏の目には、「DBは危険」「DCは有利」と映ってしょうがないらしい(汗)。


今回の一連の連載を総括すると単なるDCのヨイショ記事なのだが、DBを貶すことでしかDCの素晴らしさを語れないのが痛い、痛すぎる。こういう輩を見ると、かつて野球を貶すことでしかサッカーの素晴らしさを語れなかったJリーグ創設当時のサッカーファンの姿と重なってしまう。残念ながら今回の企業年金探偵団、事件解決どころか迷宮入りのまま終わってしまったようだ(汗)。






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posted by tonny_管理人 at 23:48 | Comment(0) | TrackBack(0)
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