2006年11月19日

退職金・企業年金は民高官低!?

年金受給「民間が公務員上回る」 人事院調査 (NIKKEI-NET)

人事院は16日、会社員の厚生年金と公務員の共済年金の一元化に伴う公務員の新たな年金制度の設計に向け、民間企業と国家公務員が受け取る年金や退職金の調査結果をまとめ、塩崎恭久官房長官に提出した。共済独自の上乗せ給付である「職域加算」を廃止した場合、民間の給付水準が公務員を約8%上回るため、格差を埋めるために国庫負担による新制度を作る必要があるとの見解も示した。

当BLOGでも以前触れた人事院による退職金実態調査の結果がこのほどまとまった。結果は官民格差どころか予想に反して民高官低となり、内閣官房長官に宛てた書簡では「不足分は国庫負担で(民間の企業年金に当たる)新制度を作る必要がある」と提言している。

まず初めに述べておくが、どうも「不足分は国庫負担で」というくだりで「税金を使うとは何事か!」と脊髄反射しているブログが散見される。しかし公務員とて一介の労働者。労働者を遇するのに雇用主(ここでは国や地方自治体)がある程度の出費(ここでは税金)を賄うことまで拒否するのは極論に過ぎよう。「公務員の処遇」の問題と「税金の無駄遣い」の問題を混同して批判するべきではない。

その上で本調査について言及すると・・・やっぱ怪しいわコレ(笑)。他の退職金統計と比較しても、民間企業の給付水準が過大評価されてるように感じる。この調査、不審な点もいささか多い。ポイントをまとめると以下の通り。

kanmin_hikaku.jpg

1.民間企業の企業年金は「退職金の振り替え」である
本調査では官民双方について「退職金+企業年金」の総額で比較しているが、そもそも民間の企業年金は退職金原資を移行したものであり、退職金原資の枠内で一時金受給か年金受給かを選択できるに過ぎない。そのため調査結果にあるような金額(2,980万円)を満額受給できるわけではない。一方公務員は退職金と共済年金の職域加算部分は別建てなので、双方とも満額受給が可能である。そもそも前提条件が違うもの同士を比較して「民間の方が高い」とのたまうのは我田引水もいいところ。しかし調査結果にはこの辺の違いをどう処理したかが明記されておらず、民間企業の退職給付水準はダブルカウントされている恐れがある。

2.割引率「2.20%」は妥当か
退職一時金は退職時に支払われた額を計上しているが、企業年金については、年金額だけでは評価が難しいため、本調査では、将来支払われる年金総額を現価換算した額を用いている。現価額で評価する事自体は真っ当である。だが問題は現価換算する際の割引率である。割引率が小さいほど現価は大きく計算される。本調査では、厚生労働大臣告示により定められている企業年金の最低積立基準額算出の割引率(平成17年度は2.20%)を用いたとあるが、上記の割引率は企業年金の解散・清算基準の算出に用いる保守的なものであり、企業年金に係る給付額が過大評価されている怖れがある。せっかく支給実態を調査したのであれば、実際に用いられている予定利率または給付乗率で割り引くのが筋ではないか。

3.「従業員規模50人以上」の実態は
企業規模50人以上6,232社(3,850社、回答率61.8%)を対象としたとあるが、実際はもっと大規模な企業に絞られているのではないか。今回の調査に当たってとある公務員系の労働組合では、「調査対象企業は1,000人以上とすること」などの要求を人事院に突き付けており、また今回の調査結果が出るやいなや「取組みを強化してきた結果である」などと誇らしげに語る始末。自分たちは大企業並みの待遇を受けて当然と考えているのか、或いは高水準な企業と比較する事により官民格差を小さく見せようと画策したのかは定かではないが、既得権益擁護のためなら集計方法に至るまで口を挟む緻密さ・勤勉さ、ぜひ本来の公務の方で発揮して欲しいものだ(汗)。

※人事院の調査結果はこちら


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/6/29): 企業年金・退職金に関する統計調査(総論)
The企業年金BLOG(2007/1/10): 追加調査に非ず、単なる帳尻合わせ






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posted by tonny_管理人 at 23:42 | Comment(10) | TrackBack(2)
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この記事へのコメント
TBありがとうございます。
公務員とて労働者です。正当な報酬を得て、正当な年金を確保する権利を否定しるものではありません。ただ、民間のサラリーマンも含めて、今の年金制度は信頼感という重大な基盤を喪失していると思います。私たちは将来まともに年金がもらえるかどうか、甚だ疑わしい。そういう中で、制度上止むを得ないとはいえ、国費=税金を投入して公務員年金の保護を議論されることには釈然としないものがあります。国費投入を議論する前提として民間の年金が置き去りにされないような施策を求めたいと思います。
Posted by 三四郎 at 2006年11月20日 22:17
> 三四郎さま
ご来訪ありがとうございます。こちらこそ突然のTB失礼致しました。
今回の人事院の調査は、当事者というか利害関係者に調査をやらせるとこんなもんだという好例ですね(汗)。おそらく後世には、最も杜撰な官製報告書の一つとして語り継がれることでしょう。
Posted by tonny_管理人 at 2006年11月20日 22:35
調査結果の妥当性がわかりませんね。ホントにワケワカメ酒です。

ただ、慶応大学の権丈先生が新聞記者からコメントを求められて、
>大企業並みの待遇を受けて当然
というところに関して、新卒労働市場において両者が競合関係にある等々の観点から、国家公務員と大企業を比較するのもアリではないかな的なこと(*)を答えたらコメント不採用だったらしいです(爆)

(*) http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/korunakare53.pdf のpp.2-3の部分参照
Posted by silcexam at 2006年11月21日 22:55
> silcexam
「公務員の処遇」の問題については他に議論を譲りますが、民間企業の退職金の実態については、厚労省や経団連なども同様の調査を定期的に行っており、そうした先行調査の水準と比較検証を行うのは基本の筈なのですが・・・(汗)

※先行調査についてはコチラ↓を参照願います。
http://dbdc.seesaa.net/article/20234795.html
Posted by tonny_管理人 at 2006年11月22日 06:57
御意です。本調査結果においては、民間の退職給付総額が過大に出ていると思われますね(とはいえ、「就労条件総合調査」等の退職年金の現価の算出についても、私の理解不足かブラックボックスに思え、また謎なのですがorz)。
また、本筋とは外れた話を持ち出してしまい、申し訳ございませんでした。
Posted by silcexam at 2006年11月23日 00:36
TBありがとうございました。

私などは、思わず脊髄反射してる部類ですが(笑)
そんな私でも、公正な調査をした上で本当に格差が酷いのであれば、その不公平が是正されることは全く構わないのです。

でも、こういう場合、少なくとも利害が絡んだ立場の人が調査すべきではないですよね。
「きちんとした調査が行われた」とはいい難いものをベースにされれば、私のような単純な人間はやはり怒りを感じます。
そして、そういう部分をグダグダにするから、批判もより大きいのだと思うのです。

せめてもっと公平な、利害の絡まない立場からの調査報告ともつきあわせてから議論して欲しいです。
漠然ととはいえ、官全体のイメージが悪くなる一方で、そういう「誠実さ」すら感じられなくなっていることが、実は一番やりきれないことなのですが…。

退職金そのものが設定されていない会社も結構あります。企業年金に加入してない会社だってかなりあります。
大企業の人や、将来に不安がない人などは、民全体から見ればほんのわずかなパーセンテージなのではないでしょうか?

少なくとも、格差を是正するのであれば、官だとか民だとかで決めるのではなく、社会全体を考慮して「もっとも弱いところ」から是正されるべきではないかと思ってしまいます。
(自分の勝手で払ってない人は除外していいですが)
Posted by nekonomania at 2006年11月25日 00:34
> nekonomaniaさま
ご来訪ありがとうございます。こちらこそ突然のTB失礼致しました。
公務員の処遇については専門外なため何とも申し上げられませんが、しがない一年金コンサルとしては、人事院の調査・分析能力の杜撰さと、これを錦の御旗に意見表明してしまう人事院の空気の読めなさに失笑を禁じ得ません(汗)。
Posted by tonny_管理人 at 2006年11月25日 23:49
私もこの統計が自分の知っている民間企業の退職金+企業年金の統計と比べて高いのに驚きました。
調査方法などを確認しないと頭から信用することはできません。
私は割引率2.2%が臭いと思っていますが。
Posted by 渋谷 at 2006年11月27日 02:50
> 渋谷さま
コメントありがとうございます。
実態の給付乗率(3.0〜3.5%ぐらい)で割り引くと、企業年金部分は調査結果よりも2割ほど縮小しますね。すると結果は「官高民低」に変わります。
Posted by tonny_管理人 at 2006年11月29日 07:11
トラックバックを頂いて有難う御座いますと言うよりこの人達の記事を読んで驚いている所です。何だかんだ理屈を捏ねても日本経済の基盤は中小零細企業で成り立っている訳で、色々な調査で官民格差の比較をする場合には、大中小零細、企業全体の平均値で物を言わなければならない。そこのところが問題である。もう一つ言わせて貰えば、役所の無駄遣いも公務員の待遇改善も全部国民の税金が絡んでいるのだから是とあれはは別と言う論理は全くナンセンスでありその思想が堕落している官僚を象徴しているのではないだろうか、国民の皆さん!
Posted by 北市国報 at 2006年12月01日 18:53
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