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本書に対する一般的な評価は、「ライフプランが9つもあって豊富」「やんわりとした語り口で不安を和らげてくれる」といったところだろう。本書の売りである「9つのライフプラン」にしても、シェアハウスやミニマリストといった独自性が織り込まれるなど、この点だけでも凡百の類書とは一線を画している。
だが、本書で最も衝撃的なのは、第3章第1節「1980年代半ばからの30年間で変わったもの」である。社会保障とりわけ公的年金は「現在の高齢者は逃げ得」「若い世代が割を食う」という誤解が蔓延しているが、この30年間でどれだけ社会(モノやサービス)が豊かになったかを認識すると、公的年金だけを切り取って負担と給付を比べることがじつに無意味だと痛感させられる。公的年金で得するからと言って、治安が悪い、自然環境も良くない、コンビニやインターネットやスマートフォンが無い時代に誰が生まれたいと思うだろうか?
著者が意図してこの節を書いたかどうかは定かではないが、世代をまたぐ制度を現在の価値観だけで論じては本質を大きく見誤ることを再認識させられた。いずれにせよ重要なのは、数字とロジックで現状を認識しつつ「なるようになれ」と前向きに生きることだろう。悲観論は論者を知的に見せるだけで何も産み出しやしない。

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