2007年10月24日

規制が嫌なら税制優遇を返上すればぁ?

退職者の企業年金 NTTの減額認めず (NIKKEI-NET)
「経営悪化なし」東京地裁判決
NTTグループ67社が、退職者の企業年金減額を厚生労働省が承認しなかったのは違法として、国に処分取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁の定塚誠裁判長は19日、「減額がやむを得ないほどの経営悪化はない」などとしてNTT側の請求を棄却した。
法律に基づく企業年金の国の処分を巡る初の司法判断。定塚裁判長は年金を減額できる条件として「経営悪化により、企業年金を廃止するのを避けるためやむを得ない場合」との厳格な基準を示した。その上で、2004年度までの3年間、NTT東日本とNTT西日本で合計約1000億円の当期利益を継続的に計上したことを挙げ「給付減額がやむを得ないとはいえない」と結論付けた。
(2007/10/20 日経朝刊 1・5面)

NTTの確定給付企業年金を巡る訴訟については当BLOGでも何度か取り上げたが、このたび地裁レベルではNTT側が敗訴した模様。NTTが給付減額を画策した2002年当時の年金・退職金の積立不足は3兆円超と言われていたが、直近の財務諸表(←81ページ参照)を見ると積立不足(未払退職年金費用)は1兆5000億円にまで減少しており、こうした環境の変化も作用したように思う。

ところで、本件について「一民間企業の労使合意に行政がいちいち介入するな」とする見解が散見される(ココとか)。確かに一面的には正しい指摘である。かくいう当BLOG管理人もかつてはそんなふうに考えていた時期があった。しかし、税制優遇を伴わない社内預金制度や自社年金制度ならそうした理屈も成り立つが、確定給付企業年金制度は掛金の損金算入をはじめ数々の税制優遇措置を享受していることを見過ごしてはならない。税制優遇(実質的には国から補助金を受けているのと同義)を受ける以上は、民間企業であっても公的な責任を背負わざるを得ない。年金支給のために税金を減免して貰いながら本来の目的を果たさないというのは、補助金の不正受給と同じである。給付減額の要件が厳格なのは、受給権保護も然ることながら、税制優遇の不正利用を防ぐためでもある。

それに対して「年金制度のために企業が潰れたら元も子もないではないか」という反論が予想される。しかし、企業年金は借入金や社債と同様、後日他人に対して支払うべき債務(他人資本)である。契約社会で「借入金返済のために企業が潰れたら元も子もない」「社債の利払いのために企業が潰れたら元も子もない」という抗弁が通用する筈もないのに、企業年金に限ってそれを認めろというのは珍妙な話だ。契約変更の自由とは、後出しジャンケンまで容認するものではあるまい。

それでも「労使の好きにさせろ」「行政は口を挟むな」と言うのなら、税制優遇とは無縁な社内預金制度・自社年金制度に移行すれば良い。これらの設立・廃止はそれこそ企業の自由だし、行政からも余計な介入はされまい。規制されたくないが税制優遇は欲しいというのは企業のエゴに過ぎない。まあ、本件については企業にも受給者にもどちらにも与するつもりはないので、あとは当事者同士で勝手にやってくれ(汗)。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/6/14): NTT企業年金減額訴訟が結審したわけだが
The企業年金BLOG(2006/5/6): 企業年金減額、NTTが行政提訴
The企業年金BLOG(2006/2/23): NTTの年金減額、厚労省認めず



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posted by tonny_管理人 at 12:03 | Comment(7) | TrackBack(0)
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この記事へのコメント
興味深く読ませていただきました。まったく同感です。
税制の…というのは、某所で「年金老人」と
揶揄されていた坪○氏も著書の中で強調されていましたね。

まったく同感なんですが、「厚生労働省も、かつてあれだけ引き下げには無頓着だったくせに!」という企業の怨嗟(≒逆切れ)の声も聞こえてきませんか(笑)
Posted by 七誌 at 2007年10月24日 15:36
> 七誌さま
コメントありがとうございます。
NTTとしても、厚労省との事前折衝を経た上で給付減額の同意取付けに走ったでしょうから、不承認の決定には梯子を外されたような思いだったことでしょう。
Posted by tonny_管理人 at 2007年10月24日 21:19
はじめまして!
TBありがとうございました。
喉から手が出るほど、欲しかった情報満載のブログです。
企業年金や日本版401Kについては、まだまだ私個人は明るくない部分も多く、さらには、年金数理になるますと、全くちんぷんかんぷん(何が分からないかさえ分からない状態)です。
今後ともなにとぞ宜しくお願い申し上げます。
こちらのブログは、私のブログのほうにも、さっそくリンクを張らせて頂きました。事後承諾になりまして、申し訳ありません。
こちらのブログを紹介したら、大阪のプライベートサーブ社も大喜びだと思います。
今後ともご指導ご鞭撻のほど、なにとぞ宜しくお願い申し上げます。まずは コメントにて 取り急ぎ・・・。
Posted by 藤井 まり子(貞子ちゃん) at 2007年10月24日 22:01
tonny様

自社年金の世界もいいかげんですよー。
規約(規定)に「将来引下げることができる」とあるかないかで、スパっと明暗が分かれてますから。

しかも、対象者が現役従業員か退職者かでまた違ってますしね。
「退職して確定すれば、将来引き下げ可能条項がない限りは一切引下げを認めない」というのが、過去の裁判例ですので、その意味ではまだ、受給者減額の道を一応用意しているDBなり厚年基金の方が、経営者フレンドリーなのかもしれませんね。
Posted by 塙保己次 at 2007年10月24日 22:08
> 藤井まり子(貞子ちゃん)様
ご来訪ありがとうございます。こちらこそ突然のTBで失礼致しました。リンクは問題ございません。今後とも宜しくお願い致します。

> 塙保己次さま
コメントありがとうございます。
「裁量の大きさ」と「いいかげんさ」はまさに紙一重ですね(汗)。
Posted by tonny_管理人 at 2007年10月27日 18:23
管理人様
当事者じゃないんで真実は分かりませんが、事前折衝ではNGだったという説も。
Posted by 無明 at 2007年10月27日 19:47
> 無明さま
コメントありがとうございます。
それは本当ですか!? だとしたらNTT側は随分と思い切ったものです。それ以上の感想はございません。
Posted by tonny_管理人 at 2007年10月30日 00:15
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