2011年01月18日

「年金を選択する ― 参加インセンティブから考える」

「制度への参加」を唱えた新たな年金議論 各論と結論のチグハグさが唯一の瑕(きず)

年金を選択する ― 参加インセンティブから考える年金を選択する ― 参加インセンティブから考える
駒村 康平 (編著)

慶應義塾大学出版会 2009-05
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全労済協会の調査研究活動「参加インセンティブから考える公的年金制度のあり方研究会」での研究成果をまとめた一冊。従来の年金議論の主要トピックである「基礎年金と生活保護の関係」「世代間の公平性」「就業形態の多様化への対応」等に加え、「情報通知」「制度への参加」という新たな切り口を提供している。とりわけ後者は、年金制度の加入者の参加意識・当時者意識を促す点では積極的労働市場政策の流れを汲んでおり、良い意味で労働団体ならではのオリジナリティを打ち出している。この他にも「私的年金の充実」など、各論では先鋭的な議論が交わされている。

ところが、結論になると、唐突に民主党の年金改革案を持ち出してこれを支持するという不可解な展開を見せている。巻頭にて「税方式は年金空洞化の特効薬に非ず」(p.6)「年金制度を事前積立化あるいは個人勘定化すれば世代間の公平が確保されるという単純な構図は成立しない」(p.27)などと一刀両断しているにも関わらず、この各論と結論のチグハグさは理解に苦しむところ。おそらく連合あたりの意向が多分に入り込んでいるのだろうが、委員会の研究者達は、この不整合をどう考えているのだろうか。。。

なお、本書刊行後、本研究会主査を務めた駒村康平教授が厚生労働省顧問に就任したほか、委員2名(中嶋氏山田氏)が厚生労働省の年金調査員に任命されるなど、本研究会に携わった者が相次いで年金政策の中枢に据えられている。そのせいか、一部では本書を「民主党政権化における年金政策の『よげんの書』」と呼んでいるとかいないとか・・・(汗)



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2009年11月21日

「公的年金と財源の経済学」

君子豹変す!? 財政学者が社会保険方式の必要性を説く

公的年金と財源の経済学公的年金と財源の経済学
上村 敏之

日本経済新聞出版社 2009-03
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税制・財政における精緻な実証分析で知られる若手財政学者による公的年金論。「どうせまた財政学者による自己満シミュレーションの羅列だろ!?」と思いきや、さに非ず。中身は、著者お得意の実証分析だけでなく、年金制度の基本原理を丁寧に検証した良質な一冊に仕上がっている。とりわけ、主に政治哲学のアプローチを用いて公的年金の必要性を論じている第2章「なぜ公的年金が必要なのか」は白眉。また、税方式と社会保険方式との比較検討では、ワークフェア(勤労福祉)の観点から社会保険方式を支持するとともに、公的年金における情報提供の重要性を提唱するなど、従来の財政学者・経済学者には見られなかった深い考察を見せている。著者は1・2年前まではバリバリの実証分析至上主義者だっただけに、何が著者を(良い意味で)豹変させたのかが気になるところだが(汗)、ともあれ、公的年金の分析に関心のある向きにとっては示唆溢れる一冊である。

※著者の上村氏のサイトはこちら



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2009年08月25日

「年金の基礎知識」全訂新版

年金相談員御用達 市販書では最大の情報量

年金の基礎知識 全訂新版年金の基礎知識(全訂新版)
服部 営造

自由国民社 2009-08
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年金相談では社労士界最強を誇る、通称「服部年金」の手による年金本。完全に実務家向けであるためお世辞にも分かり易いとは言い難いものの、公的年金を扱った市販本としては最も充実していることは確か。公的年金に関するあらゆる項目が網羅されており、特に障害・遺族給付および共済年金関連については、他の類書の追随を許さない情報量を誇る。なお今版では、アメリカの年金請求手続きなどが新たに手当てされている。
なお服部年金のWebサイトでは、市販所以外にも数々の年金相談ツールが直販されている。ご興味のある向きは一度参照されては如何。



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2009年08月05日

「年金被害者を救え」

年金記録問題に関する客観的な分析と熱い提言

年金被害者を救え―消えた年金記録の解決策年金被害者を救え―消えた年金記録の解決策
野村 修也

岩波書店 2009-08
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年金記録改ざん問題の調査委員長を務めた大学教授による、いわゆる「宙に浮いた年金」に代表される年金記録問題の全容を俯瞰した一冊。年金記録問題の責任は、厚生労働省や社会保険庁ばかりにあるわけではなく、記録問題を政局に結びつけた民主党の戦略や、それに屈した政府・与党の不甲斐なさ、果ては虚偽の申請すら行っていた一部の企業・国民にもあるとし、これ以上の時間の浪費は止めてこの問題にけりを付けるべきと明言している。その上で、
 ◆謝るべき者(政府・行政)が謝る
 ◆許すべき者(国民)が許す
 ◆莫大なコスト(税金)がかかるだけの記録統合作業は直ちに止める
 ◆被害者は税金で直ちに救済する

──ことを提唱している。これら一連の主張は、ともすると暴論とも受け取られかねないが、本書に目を通すと、著者が記録問題発生の原因を実務的側面も踏まえて丹念に分析し、記録改ざん問題の実態解明に真摯に取り組んだ末の結論であることが良くわかる。とりわけ、漢字カナ変換をめぐる「窓口担当者の職人芸」(本書ではp.54〜55)にまで言及されては、実務経験者とて生半可な反論はおよそ不可能。こうした客観的かつ緻密な分析と、「最後の1件まで記録を統合することは不可能でも、最後の1人まで被害者を救済することは可能だ」との言に代表される良心的スタンスは、まさに法律家の鑑(かがみ)のそれである。この期に及んで年金問題を政争の具に利用する輩は、まずは著者の爪の垢を煎じて飲んでから年金問題を語るべし!


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/6/8): 基礎年金番号に反対してきた連中が年金記録不備を糾弾する矛盾
The企業年金BLOG(2006/9/5): 朝日新聞の年金記録記事は必見
The企業年金BLOG(2006/8/8): 年金加入記録にミスはつきもの!?
The企業年金BLOG(2006/4/25): 年金加入記録の記載ミス・記録漏れにどう対応すべきか
The企業年金BLOG(2006/4/1): 「年金生活への第一歩」改訂版



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2009年02月23日

「国民年金 厚生年金保険 改正法の逐条解説」7訂版

2004年改正法の全容を網羅

国民年金 厚生年金保険 改正法の逐条解説(7訂版)国民年金 厚生年金保険 改正法の逐条解説(7訂版)

中央法規出版 2009-02
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経過措置だらけでとかく難解と言われる国民年金法ならびに厚生年金保険法の解説書。法律条文に沿って詳細に説明しているだけでなく、立法趣旨や経緯にもキチンと言及しており、改正内容がより深く理解出来る内容となっている。厚生労働省・社会保険庁の職員をはじめ、およそ公的年金業務に携わる者ならば必ずや一度は手にした事がある定番書。今回の7訂版では、2004年改正法のうち前版では未施行だった離婚分割3号分割のほか、日本年金機構法時効特例法などを手当している。

余談だが、本書のような解説書への批判として「こんな分厚い本など無くとも誰でもシンプルに理解できるような年金制度とすべき」との見解が時々見られるが、「解説の分かり易さ」と「年金制度のあり方」を混同して論ずることはおよそ適切ではない。シンプルな制度とやらを求めるならば、「経過措置(=現在の年金受給者への配慮)は全て無くしてしまえ」と併せて主張しなければ、ただの机上の空論に過ぎない。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2007/10/12): 「国民年金・厚生年金保険改正法の逐条解説」
The企業年金BLOG(2007/10/9): 法令に精通してなくても「ミスター年金」ですかそうですか



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2008年11月26日

「脱=「年金依存」社会」

豪華執筆陣だったことに今更ながら気がついた・・・(汗)

脱=「年金依存」社会脱=「年金依存」社会
別冊環 (9)

神野 直彦、田中 優子、原田 泰、田中 秀臣 ほか

藤原書店 2004-12
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他分野の識者による、雑多かつ多彩な年金論
著名な経済学者から歴史学者や社会学者、更にはノーベル賞学者に至るまで多彩な執筆陣による、各々の専門分野から年金の本質と社会との関係性について論じている一冊。確かに豪華執筆陣ではあるものの、収録されている論文はまさに玉石混交。いたく目を見張るものがあるかと思えば、自説の開帳に終始したり、表層的な知識や根拠のない思いつきのオンパレードなものもあり、このような論文集特有の雑多さを「多面的」と見るか「方向性が不明瞭」と見るかは、読者によって判断の別れるところである。
とはいえ、年金議論が盛り上がりを見せている割には議論に加わる面子が固定されがちな昨今、他分野の識者の意見をこのようにまとまった形で読めるという意味では貴重な一冊である。
(2005/2/25 amazon.co.jpへの投稿レビュー)

↑・・・とまあ、約3年半前(まだ当BLOGも開設していなかった)に本書を読んだときの感想は「色んな所から寄せ集めたね( ´_ゝ`)フーン」程度の感想しか持たなかったが、現在になって読み返してみると、"寄せ集め"という言葉で括るには畏れ多い豪華執筆陣であったことに今更ながら気が付いた次第。ノーベル賞経済学者のスティグリッツは別格として、『さらば財務省』を皮切りに現在一躍ブレイクしている高橋洋一氏や、『経済学という教養』の稲葉振一郎氏らが名を連ねていることをスルーしていたとは、何という不覚。己の不見識を心より恥じる。 _| ̄|●



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2008年09月30日

「変貌する世界と日本の年金」

「教科書」「資料集」「論説」の三部構成

変貌する世界と日本の年金変貌する世界と日本の年金―年金の基本原理から考える
江口 隆裕

法律文化社 2008-04
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元厚生官僚の大学教授がこれまでの論稿をまとめた一冊。第1部「年金制度とは何か」では、年金制度の意義や「税方式と社会保険方式」「賦課方式と積立方式」「給付建てと拠出建て」等の基本原理が上手く分類・整理されており、年金制度を議論するための前提知識が凝縮された良質な教科書となっている。第2部「変貌する世界の年金」は、フランス、ニュージーランド・オーストラリア、チリの公的年金改革に関する仔細な資料集。とりわけ、著者が規範としているフランスについて多くの字数が割かれている。第3部「変貌する日本の年金」では、現在の日本の年金議論における今日的課題(一元化、パート労働者問題、財源etc)を論じているほか、公的年金と私的年金の融合という新たな機軸も打ち出しており興味深い。

厚めのハードカバーでとっつき難そうな外観とは裏腹に、いざ開いてみると意外と読み易く分かり易い。同時期に刊行された西沢和彦著『年金制度は誰のものか』と併せて読めば、年金制度に関する質の高い知見が必ずや得られるであろう。もっとも、著者の元厚生官僚という経歴と現行制度に対する肯定的(改革ではなく改正で対応可能という意味で)なスタンスから、西沢本を評価する層(政治家、マスコミetc)からはおそらく一顧だにされまい(汗)。



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2008年09月18日

「年金制度は誰のものか」

御用学者とは一線を画す切れ味の鋭さ (鵜呑みは禁物だが)

年金制度は誰のものか年金制度は誰のものか
西沢 和彦

日本経済新聞出版社 2008-04
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社会保障審議会において煩型(うるさがた)の委員として鳴らしている民間シンクタンク研究員による年金改革論。前著「年金大改革」同様、政府および行政への一貫した懐疑的目線から繰り出される考察が本書の魅力。個人的には賛同しかねる見解も散見されるものの、御用学者による鈍(なまくら)本が跋扈する年金分野において、筆者の考察の鋭い切れ味は貴重な存在である。なお、個人的には以下の見解が興味深かった。

<刮目すべき見解>
・マクロ経済スライドが基礎年金にも適用されるのは、所得保障機能の観点から問題
 である(基礎的所得水準を下回る恐れあり)
・スウェーデンの年金制度はスウェーデンのお国柄(納税者番号制、高い移民率etc)
 ゆえに成り立つ(日本に導入したからといって必ずしも機能しない)
・英国の「ベヴァリジ報告」は福祉充実を意図したものではない。国家が保障するのは
 基礎的給付のみ(それ以下でも以上でもダメ)
・在職老齢年金は百害あって一利なし  etc

<首を捻らざるを得ない箇所>
・役所批判が際立つ割には、その背後にある「政治家」ひいては「有権者」(=国民)
 への批判が皆無なのは片手落ち。「低負担高給付」を望んだのは役所だけでなく
 当時の日本国民の総意ではないのか?
・持論(間接税による二階建て制度)を1987年当時の年金局長が評価したことを以
 って「理想的」と評するのは我田引水もいいところ。役所の人間は信用できない筈
 ではなかったのかね?(汗)
・年金と税制のリンクについては、消費課税だけでなく資産課税への言及も欲しかった
 (高所得者は消費ではなく保有資産が大きいはず)  etc



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2008年09月14日

「年金の基礎知識」2009年版

年金相談員御用達

年金の基礎知識2009年版年金の基礎知識―厚生年金・国民年金・共済年金〔2009年版〕
服部 営造

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完全に実務家向けであるためお世辞にも分かり易いとは言い難いものの、公的年金を扱った市販本としては最も充実していることは確か。公的年金に関するあらゆる項目が網羅されており、特に障害給付、遺族給付および共済年金については、他の類書の追随を許さない情報量を誇る。巻末の連絡先窓口リストは、かつては更新漏れが散見されものの、現在は幾分改善されている。

※著者の服部氏のサイトはこちら



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2007年10月12日

「国民年金・厚生年金保険改正法の逐条解説」

年金官僚御用達 年金を語る国会議員にも是非

国民年金・厚生年金保険改正法の逐条解説国民年金・厚生年金保険改正法の逐条解説

中央法規出版 2005-06
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経過措置だらけでとかく難解と言われる国民年金・厚生年金保険法の解説書。法律条文に沿って詳細に説明しているだけでなく、立法趣旨や経緯にもキチンと言及しており、改正内容がより深く理解出来る内容となっている。厚生労働省・社会保険庁の職員をはじめ、およそ公的年金業務に携わる者ならば必ずや一度は手にした事がある定番書。本書の記載内容すら把握していないようでは、ミスター年金などと名乗るのは100年早い(笑)。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/2/23): 「国民年金 厚生年金保険 改正法の逐条解説」7訂版



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2007年09月12日

「真島の年金がアッという間にわかる本」11訂版

年金科目に悩む社労士受験生のバイブルが2色刷りに!

「年金」がアッという間にわかる本 11訂版「年金」がアッという間にわかる本 11訂版
真島 伸一郎

住宅新報社 2007-07
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年金科目に悩む社労士受験生の"駆け込み寺"としてつとに有名。社労士受験生向けに書かれているだけあって、解説が丁寧なのは勿論だが、「昭和36年と61年の2つをまず押さえろ」に代表されるように、憶えるべきポイントが上手く系統化されている点が秀逸。試験合格後も、法改正事項を追うのに重宝する一冊。
今回の11訂版からは2色刷りとなり読み易さがupした。また、前版のレビューで当BLOG管理人が指摘した、厚生年金基金に関する陳腐化した記述も幾分改善された。



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2007年05月19日

「年金問題 要点を教えて!」

昨今の年金不安の解消に最も貢献するであろう一冊

年金問題 要点を教えて!年金問題 要点を教えて!
金子 幸嗣

ランダムハウス講談社 2007-04
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昨今の年金不安・年金不信の誤解を解消すべく刊行された書としては「年金の誤解」(堀勝洋著)が代表的だが、正確性を優先するが故に記述が難解になり、一般市民にとっては却って敷居が高くなってしまった。そのため「年金は難解だ→難解な制度はけしからん!」という負のスパイラルを招いてしまい、誤解を解くはずが逆効果となってしまったのは記憶に新しい。

そんな「年金の誤解」の戦略上の失敗を教訓にしたかのような書が本書。サブタイトルの「細かいことはいいから」というのがまさに本書のキモで、分かり易さを重視したレイアウトは「これなら読めそうだ」と気軽に手に取らせる効果大。それでいて内容も正鵠を射る本質的なもので、昨今の年金報道がいかに的外れであるかが実感できる。特に「年金制度が破綻することはないが、年金のしくみを知らないと貴方の老後が破綻するかもしれない」という著者の言葉は重い。また、こうした本を官僚出身者が著すと「体制擁護」と批判されがちだが、著者は市井の社労士なのでそうした不当なバッシングとも無縁。いずれにせよ、官僚や大学教授による著作以上に年金制度に関する誤解の解消に貢献してくれること必至。まさに"出藍の誉れ"を具現化した一冊といえよう。



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2007年05月16日

「年金の誤解」

正統的・体制的ゆえに耳目を集めきれなかった悲劇の書

年金の誤解―無責任な年金批判を斬る年金の誤解―無責任な年金批判を斬る
堀 勝洋

東洋経済新報社 2005-02
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社会保障審議会の委員を務める大学教授が、無責任かつ扇動的な年金批判に反論するべく、満を持して世に問うた渾身の一冊!
──となる筈だったが、その教科書的な面白みの無い文体が災いしてか、残念ながら、センセーショナルな年金報道に躍らされた一般市民の誤解を解くには至らず。それどころか、体制賛美的な姿勢と元厚生官僚という経歴を逆手に取られ、すっかり御用学者の戯言というレッテルを貼られてしまった悲劇の書(汗)。議論が盛り上がる法案審議時に刊行しなかったのがそもそもの敗因か。
とはいえ、無責任かつ扇動的な年金批判への反論はおおむね正鵠を射ており、2004年改正の意義と考え方を知る上では良い教科書である。前回改正から時を置いた今こそ、冷静になって本書を紐解いてみると、新たな知啓が得られることだろう。
なお各論に関する個人的見解は以下の通り。

○賦課方式と積立方式を混同した財政比較は無意味との指摘は、至極ごもっとも。
 だからといって「賦課方式に財政検証は不要」と言い切るのは単なる暴論。

○年金制度は政治的に崩壊させられないとの指摘は、確かにその通り。

○「労使折半で保険料はお得」との指摘には何故か批判が多いが、仮に事業主負担が
 廃止されても、企業がその分を給与に上乗せしてくれるとは到底思えないのだが。
 徴収システムとして考えると、労使折半は実は秀逸な制度ではないのか。

○「マクロ経済スライドは公的年金のインフレヘッジ機能を損う」等に代表される、2004
 年改正の問題点についても触れて欲しかった。
 



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2006年08月19日

「真島の年金がアッという間にわかる本」10訂版

祝10訂版! 年金科目に悩む受験生の"駆け込み寺"

「年金」がアッという間にわかる本「年金」がアッという間にわかる本
真島 伸一郎

住宅新報社 2006-07
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年金科目に悩む社労士受験生のバイブルとしてつとに有名。社労士受験生向けに書かれているだけあって、解説が丁寧なのは勿論だが、「昭和36年と61年の2つをまず押さえろ」に代表されるように、憶えるべきポイントが上手く系統化されている点が秀逸。試験合格後も、法改正事項を追うのに重宝する一冊。
今回の10訂版では、「離婚時の厚生年金の分割」や「老齢厚生年金の繰下げ支給の復活」など、平成16年改正のうち平成19年4月施行分までが本文中に反映されている。

余談だが、本書は公的年金に関する記述は隙が無いものの、厚生年金基金に関する記述はすっかり陳腐化しており、当BLOGとしては非常に気になるところ。資産運用の低迷と硬直的な予定利率により基金は崩壊寸前云々って、アンタそれ前世紀のハナシですから! 著者の真島氏といえばかつて「誰も書けなかった厚生年金基金」という名著を世に贈ったものだが、どうやら企業年金に関する知識はその当時(1998年頃)から時が止まったままのようだ。



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2006年07月06日

「持続可能な公的年金・企業年金」

呉越同舟!? 年金論客のオールスター戦

持続可能な公的年金・企業年金持続可能な公的年金・企業年金
日本年金学会

ぎょうせい 2006-04
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学・業・官の三界より構成される日本年金学界の創立25周年記念論文集。タイトルこそ"記念論文集"と仰々しいが、まあプロ野球で言えばオールスター戦みたいなものと思って差し支えない(嘘)。執筆陣も、学者から実務家、社会保険方式論者から税方式論者までと左右一堂に会しており、オールスター戦の名に相応しいラインナップ。執筆陣の各メンバーに焦点を当てると、大半は相変わらず持論を展開するばかりで、メンバー間での論争(確執)が絶えなさそうな一触即発の雰囲気(特に第2章のH氏vs第3章のT氏)を醸し出しているのもまたオールスター戦ならでは(汗)。とはいえ、2006年春時点の公的年金・企業年金の論点を俯瞰するには最適な一冊といえよう。

ちなみに、当BLOG管理人の概感は以下の通り。
第1章(S氏):資料的価値高し。 
第2章(H氏):年金不信はマスコミの責任も勿論あるが、本当にそれだけか?
第3章(T氏):筆者の図示するバランスシートはいつもバランスしていない(汗)。
第4章(S氏):あとは経済成長次第。以上!
第5章(S氏):「雇用政策も踏まえるべし」という毎度お馴染みの論調。
第6章(A氏):開発途上国の年金改革にも言及している小論は初めてかも。
第7章(S氏):所詮は女性間(専業主婦vsバリキャリ)の権益争いなのか!?
第8章(K氏):企業年金の日米間の相違はもっと喧伝されるべき。
第9章(I氏):結語は明快だが、経過の文脈は相変わらず意味不明。
第10章(F氏):支払保証制度に関する考察は久々に目にした。
第11章(T氏):性善説に依っていれば済んだ時代はとうに過ぎ(遠い目)。
第12章(G氏):「数学も出来ない馬鹿は資産運用するな」と言いたげな不遜ぶり。
第13章(U氏):皆が満足できる解決策って結局無いのよね。議論は続く・・・




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2006年03月20日

「年金、もっと知りたいな」

誠実な姿勢に好感! 男性にもオススメの「年金絵本」

年金、もっと知りたいな。―女性に贈るみわ子さんの年金絵本年金、もっと知りたいな。―女性に贈るみわ子さんの年金絵本
菅野 美和子

ビーケイシー 2004-09
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福岡の社労士・FPの菅野氏が発行している殿堂入りメールマガジン「知っておきたい年金のはなし」をまとめた一冊。菅野氏のメルマガは当BLOG管理人も購読しているが、ソフトな語り口も然ることながら話題の切り出し方がものすごく絶妙なため、ついつい引き込まれてしまう。本書でもそのメルマガの魅力が如何なく発揮されており、「●●の場合はどうなの?」といった実務的な情報はもちろん、年金制度の問題点や課題に対する言及も正鵠を射ており本質的。

こうした著者の姿勢の根底にあるのは「年金制度は皆で支え合って行くべきもの」という良心・理念である。特に本書15ページの「厚生年金の創設が軍事費調達をも視野に入れてた」旨のくだりに、著者の人間味が如実に表れているように感じる。以下に引用しよう。

だれにも、人に知られたくない過去があるものです。厚生年金も、過去を知られたくないのかもしれません。でも、過去は過去でいいのです。これからどんなふうにして、私たちにとって住みやすい家にしていくかが問題です。ただ、過去を振り返ることで、未来への警告ができると思いませんか。同じことを繰り返さないために。
(以上、本書15ページより引用)

上記と同じ史実を「戦争=悪」のイメージと短絡的に結び付けて「今の年金制度は全てダメ」「こんな制度は潰してしまえ」とのたまう革新・労組系評論家と比べると、何という格調の高さ! 思うに、こうした革新・労組系評論家の思考回路って、人(この場合は厚生年金)を出自や門地だけで評価する差別思想の最たるものではないか。こういう言動の端々に、その人の本性というか人間性が滲み出てくるものよのう・・・(遠い目)。

いずれにせよ、今後の年金改革に必要なのは「国民vs政府による分捕りあい」という対決姿勢ではなく、「国民と政府が共に支え合う」共生の姿勢ではないだろうか。本書を読んで改めて感じた次第。

※ 著者の菅野氏のサイトはこちら



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2006年01月22日

「年金をとりもどす法」

実用的なアドバイス&余計な提言

年金をとりもどす法年金をとりもどす法
社会保険庁有志

講談社 2004-12-18
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2004年の年金改正議論から何かと批判の矢面に立たされてる社会保険庁(将来は「ねんきん事業機構」だそうな)の現役職員による「制度・組織への愚痴」と「実用アドバイス集」の2本立てだが、本書のウリはやはり後者。実務に裏打ちされた適格な助言の数々は、繰下げ支給レベルの措置を「裏技でござい」と書いて悦に入ってる自称年金裏技本は裸足で逃げ出すこと必至。

特に「一つの相談窓口で納得できなければ、他の担当者や社会保険事務所にも問い合わせるべき」という助言は、医療分野におけるインフォームドコンセントなどではかねてより提唱されていたものの、それが年金請求の場面でも必要なご時世になったとは・・・(汗)。
専門家や窓口担当者の言を鵜呑みにしてれば良かった古き良き時代の終焉を嘆くべきか、それとも専門家の言であっても鵜呑みにせず自分で検証できる能力を磨ける時代の到来を喜ぶべきか、人によって判断の別れるところである。

ところで、著者の執筆動機は「矛盾に満ちた年金制度と、不勉強で無責任な年金官僚への憤り」だとあるが、その割には、悪いのは全てキャリア官僚や労働組合であって自分らノンキャリア官僚には無関係と言わんばかりの態度が文中に滲み出ており、執筆者自身の当事者意識が希薄なのが鼻につく。だいいち、本当に義憤とやらに駆られてるのであれば、本書を刊行して印税を手にするよりも、自庁のWebサイトにこれら事例集を広く公開する方が先では? ともあれ、世直し人を気取った戯言は無視して、アドバイスだけを取捨選択するのが本書の賢明な使用法。



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2005年12月19日

「年金改革の原点―『年金の鬼』からのメッセージ」

故きを温ねて新しきを知る

年金改革の原点―「年金の鬼」からのメッセージ年金改革の原点―「年金の鬼」からのメッセージ
久保 知行

ぎょうせい 2005-09
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先日の記事で税方式論者の書籍についてレビューした以上、社会保険方式を支持する側の言い分についても紹介しておかないとフェアじゃなかろう。社会保険方式論者と聞いてまず思い付くのは法律・社会保障学系の学者(厚生省OB多し)だが、彼らもまた経済学者らと同様、自説に対する愛情の深さゆえか、反対論を無知と切り捨てたり無視を決め込むきらいがある。学者ってこんなんばっかりやね(汗)

そんな中、公的年金改革を議論する上で当BLOG管理人が最も自信をもってオススメするのが本書。本書がスポットを当てているのは、基礎年金制度の導入等を盛り込んだ昭和60年年金改正時の厚生省(現厚生労働省)の年金局長を務め、病魔に侵されつつも年金改革に邁進し「年金の神様」「年金の鬼」と呼ばれた故山口新一郎氏。そんな氏のエピソードや語録を引用しつつ、現在の公的年金制度の課題やその対応策を模索する内容となっている。適切かつ本質に迫った解説も然ることながら(個人的には図表2-5や図表7-4には思わず唸らされた)、「鬼」の足跡を辿ることによって制度創設・改正の理念や歴史的経緯を回顧させるという構成がユニーク。

驚くべきことは、本書が厚生省のOBでも部下でもない、民間の年金数理人(アクチュアリー)の手によって著された事である。専門性と中立性を兼ね備えた著者による「経過措置を重ねるため複雑化してしまう年金制度において、過去(歴史)を知らずして現在や未来を語ることは浅薄である」という言葉は重い。


<この本を読んで欲しい方>
 ・効率性や損得諭にしか目が行かない経済学者ご一行様
 ・制度充実一辺倒でコスト意識が希薄な社会保障学者ご一行様
 ・国民の不安解消に関心を示さない政治家、官僚ご一行様
 ・制度不安を煽ることしか能の無いマスゴミご一行様
 ・公的年金改革に関心のある全ての方


そういえば、ここんとこ公的年金ばっかり扱っていて、"企業年金ブログ"の体を成していない感がある(汗)。次回から仕切り直しつうことで宣しこ。




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2005年12月16日

「消費税15%による年金改革」

消費税方式論者のガイドライン

消費税15%による年金改革消費税15%による年金改革
橘木 俊詔

東洋経済新報社 2005-08-31
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本書のレビューを書こうとしていたら、丁度良いことに、先日見学したRIETI政策シンポジウム「日本の年金制度改革」のパネルディスカッションに著者本人がパネリストとして名を連ねていたので、今回はその様子も踏まえてご報告しよう。

─────────────────────────

本書は「1階部分は全額消費税負担で定額給付、2階部分は民営化」という、絵に書いたような税方式論を展開している。経済的効率性に重点をおいた主張は経済学者ならではだが、巷で取り沙汰される「消費税の逆進性」批判に対抗するべく、食料品には低く贅沢品には高い「累進消費税」の導入を提唱するなど、消費税に抵抗を感じる向きにも配慮した姿勢を見せており心憎い。しかし、税方式の優位性を強調するあまりに、自説のデメリットについては過小評価している感がある。

  「消費税収や経済成長率だって、人口動態の影響を受けるのでは?」
  「税率を上げると低中所得者は貯蓄に走るから効果が薄まるのでは?」
  「間接税の高いヨーロッパ諸国は実際成長率が低いわけだが」  etc


など、税方式にも様々な疑問が生じるのだが、本書では「大したことない」と切り捨てるか無視を決め込む(意図的かどうかは知らんが)かで、反論に対処しようとする姿勢が感じられないのが残念なところ。先日のシンポジウムでも「本に書いてある」「とにかく税方式が一番効率的!」との発言が多かった。また、著者のゼミ生の見解を以って「若者も支持してる」とするのは、余りにもあざとい。「改革に妥協を許さない進歩的なオレ様」を夢想しがちな年頃に、抜本改革を唱えるなと言う方が無理な注文だろう。
シンポジウムでは見学者がペーパーでパネリストに質問することができたので、当BLOG管理人も上記の疑問を投げたのだが、多数の質問が殺到したこともあってか、残念ながら私の質問は見事にスルーされた。 _| ̄|○

ともあれ、本書は税方式vs社会保険方式の論点整理に有用な一冊であることは間違いない。もっとも、論点は整理できたとしても両社の溝が埋まるかどうかはまた別問題だが(汗)。著者もまた同じ認識のようで、「両者の議論は出尽くしたからあとは国民の選択に委ねるべき」と締めくくっていた。



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2005年11月27日

「真島の年金がアッという間にわかる本」

キーワードは「昭和36年」「昭和61年」

真島の年金がアッという間にわかる本真島の「年金」がアッという間にわかる本
真島 伸一郎

住宅新報社 2005-07
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年金科目に悩む社労士受験生のバイブルとしてつとに有名な書。社労士受験生向けに書かれているだけあって、解説が丁寧なのは勿論だが、「昭和36年昭和61年の2つをまず押さえろ」に代表されるように、憶えるべきポイントが上手く系統化されている点が秀逸。試験合格後も、法族正事項を追うのに重宝する一冊だ。





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