2015年05月28日

「確定給付企業年金Q&A」がひっそりと更新

厚生労働省ホームページに「確定給付企業年金Q&A」というコンテンツがあるのをご存じだろうか? 「確定給付企業年金Q&A」は、確定給付企業年金制度の法令・通達等について、項目別(加入者、給付、給付減額、掛金、制度間移行etc)にQ&A形式で解説したもので、2011年7月に公表された際には当BLOGでも取り上げている。今般、当該Q&Aが公表以降初めて更新された。具体的には、かつての適格退職年金に係る項目や給付減額の理由要件に係る項目が整理されトピック総数が102から88に減少したほか、掲載方法がHTMLテキスト形式からpdfファイル形式に変更された。新旧Q&Aのトピック数の比較は、以下の通り。

 <項目>     <旧版>        <新版>
・加入者     13個(No. 1〜13)   13個(No. 1〜13)
・給 付     44個(No.14〜57)   44個(No.14〜57)
・給付減額   14個(No.58〜71)    8個(No.58〜65)
・掛 金    10個(No.72〜81)    9個(No.66〜74)
・積立金     3個(No.82〜84)    2個(No.75〜76)
・制度間移行 10個(No.85〜101)  10個(No.77〜88)
・規約変更    1個(No.102)          ────
    計        102個          88個

<参考リンク>
新版「確定給付企業年金Q&A」 (厚生労働省ホームページ)
旧版「確定給付企業年金に関するQ&A」 (Internet Archiveにて復元)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/7/20): 厚生労働省「確定給付企業年金に関するQ&A」






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2014年03月27日

年金数理人になるための要件が密かに緩和

仕事のため今週公布・発出された法令・通達につぶさに目を通していたところ、年金数理人に関する驚くべき改正が施されていたことに気がついた。

そもそも年金数理人に関する要件は、厚生年金基金規則第76条および通知「年金数理関係書類の年金数理人による確認等について」にて規定されている。具体的には、以下の4つの要件を満たしたうえで厚生労働大臣の認定を受ける必要がある。
1. 基礎知識:公益社団法人日本アクチュアリー会の正会員であること
2. 実務経験:年金数理業務に5年以上従事した経験があること
3. 責任者たる経験:上記業務の責任者として2年以上の経験があること
4. 十分な社会的信用を有するものであること

しかし、今般の改正厚生年金保険法の制定に伴い現行の厚生年金基金規則が廃止されることとなったため、年金数理人の要件については改正後の確定給付企業年金法施行規則(86ページ左下)に移設され、以下の通り改正された。
1. 基礎知識:アクチュアリー会が実施する試験の全科目に合格したこと
         または 数理人会が実施する試験の全科目に合格したこと
2. 実務経験:年金数理業務に5年以上従事した経験があること
3. 責任者たる経験:上記業務の責任者として2年以上の経験があること
4. 十分な社会的信用を有するものであること

新たな省令では、年金数理人に必要な知識要件が、アクチュアリー会の「正会員」から「全科目に合格した者」に変更されているほか、「数理人会が実施する試験の全科目に合格した者」が新たに追加されている。数理人会の能力判定試験は2002年から実施されており、従来は全科目合格しても準会員どまりだったが、今回の改正により、数理人会の能力判定試験が年金数理人へのパスポートとして公に認知されることとなった。

また、今般発出された通知「『確定給付企業年金制度について』の一部改正について」では、上記と同等以上の知識を有するものとされるための要件として「以下の1〜5の試験全てに合格している者」と規定されており、現行のアクチュアリー資格既合格科目の免除措置が正規に制度化されることとなった。
  【アクチュアリー試験の科目】     【数理人会試験の科目】
1.  「数学」および「損保数理」  または  「基礎数理T」
2.  「生保数理」          または  「基礎数理U」
3.  「年金数理」          または  「年金数理」
4.  「会計・経済・投資理論」   または  「会計・経済・投資理論」
5.  「年金1」および「年金2」   または  「年金法令・制度運営」

実務経験5年以上(うち責任者として2年以上)等の要件は従来通りだが、アクチュアリー試験の「損保数理」や2次試験で足踏みしている年金アクチュアリーにとっては、今般の制度改正は朗報と言っても良いのではないだろうか。
それにしても、厚生年金基金の実質的廃止(およびそれに伴う年金数理人業務の縮小)を企図した今般の制度改正の中で、シレっと巻き返しを図るこの抜け目のなさ。どんな知恵者が暗躍したのであろうか(汗)。



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2014年03月26日

政省令・告示・通知がようやく出たわけだが

昨年11月のパブコメ開示以来、出るぞ出るぞと言われつつなかなか出ずに業界関係者をやきもきさせた改正厚生年金保険法(正式名称:公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律)の施行に係る政省令・告示・通知が、今週月曜日(3/24)にようやく公布・発出された。
約半年も便秘状態だったものが解消されたのは喜ばしい限りだが、当BLOG管理人の業務的にはこれら法令・通達が公表されてからがむしろ本番。現在はこれらの解読・解説に時間を割かれているため、当BLOGで解説するまでしばし猶予願いたい。
参考までに、原文および各金融機関のニュースリリースを以下に掲載しておく。

政令・省令・告示 (官報ホームページ) ※公開は公布日から30日以内
通知一覧 (厚生労働省ホームページ) ※必ずしも全て出揃っていない
パブリックコメント意見募集結果 (電子政府の総合窓口e-Gov)

りそな銀行
みずほ信託銀行
日本生命
JPアクチュアリーコンサルティング


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2014/3/1): 政省令出す出す詐欺が横行!?
The企業年金BLOG(2013/11/6): 歴史ある制度を葬るなら万全を期するべし!
The企業年金BLOG(2013/6/19): 厚生年金基金の改正法案が可決したわけだが



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2012年11月01日

AIJ問題発覚以降の企業年金情勢について振り返る

11月が年金月間だからという訳ではないが、ここ数ヶ月サボり気味だったBLOG更新をぼちぼち再開しようと思う。再開に先立ち、本年2月にいわゆるAIJ問題が発覚して以降のわが国の企業年金情勢について、復習&リハビリがてら振り返ることとしたい。

2/24 AIJ問題発覚、AIJ投資顧問に対し1ヶ月の業務停止命令が下される
3/14 「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部」設置
4/13 「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」設置
7/ 6 有識者会議報告書の公表
7/13 厚生年金基金の資産運用規制見直しに係るパブリックコメント実施
7/27 厚生年金基金等の財政運営ルール見直しに係るパブリックコメント実施
8/29 AIJ被害基金に係る財政運営の特例措置が発出
9/26 厚生年金基金の資産運用規制見直しに係る改正省令・通知の公布・発出
9/26 厚生年金基金等の財政運営ルール見直しに係る改正通知の発出
9/28 第7回特別対策本部において厚生年金基金の廃止等が決定事項とされる
10/24 第13回社会保障審議会年金部会にて「厚生年金基金制度に関する専門委員会」の設置を決定

そして、企業年金とりわけ厚生年金基金を巡る議論の場は、今月より「厚生年金基金制度に関する専門委員会」に舞台を移すこととなる。第1回会合は11月2日に開催される。同委員会の動向は、当BLOGでも逐次チェキラしたい。


<参考資料>
AIJ企業年金1900億円消失問題がもっとわかるQ&A (All About)
厚生年金基金をめぐる昨今の諸情勢について (りそな企業年金研究所)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2012/3/7): AIJ事件発覚以降、妙にテンションの高いWebサイト2件
The企業年金BLOG(2012/6/30): 有識者会議が打止めとなったわけだが
The企業年金BLOG(2012/7/18): 厚生年金基金の資産運用規制見直しに係るパブリックコメント募集開始
The企業年金BLOG(2012/7/31): 企業年金の財政運営ルール見直しに係るパブリックコメント募集開始
The企業年金BLOG(2012/8/31): AIJ被害基金に係る財政運営の特例措置が発出



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2012年08月31日

AIJ被害基金に係る財政運営の特例措置が発出

7月27日付で募集開始されていた厚生年金基金および確定給付企業年金の財政運営ルールの見直しに関するパブリックコメントだが、このうち、AIJ投資顧問の被害を受けた厚生年金基金の特例措置に係る部分についてのみ意見および回答が公表された。
もっとも、寄せられた意見に対する回答は、殆どが「原案のとおりとさせていただきます」という木で鼻をくくったような内容だった。まあ、AIJ事件があれだけの大騒ぎに発展してしまった以上、行政としても徒な譲歩はできなかったのであろう。今回の結果公表とともに、当該特例措置に係る通知も併せて発出されている(平成24年8月29日年発0829第1号)。
なお、当パブコメのもう一つの論点である有識者会議を受けた財政運営基準等の一部見直しについては、今後審議会等での議論を経て順次提示される模様。

<参考資料>
AIJ投資顧問に投資残高のある厚生年金基金における財政運営についての特例的扱い等について (平成24年8月29日年発0829第1号)
厚生年金基金関連通知の一部改正に関する御意見募集(パブリックコメント)の結果について (e-Gov)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2012/7/31): 企業年金の財政運営ルール見直しに係るパブリックコメント募集開始
The企業年金BLOG(2012/3/7): AIJ事件発覚以降、妙にテンションの高いWebサイト2件



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2012年07月31日

企業年金の財政運営ルール見直しに係るパブリックコメント募集開始

そういえば、先日パブコメ募集が開始された、厚生年金基金の資産運用規制の見直しに続き、今度は厚生年金基金および確定給付企業年金の財政運営ルールの見直しに係るパブコメ募集が7月27日より開始された模様。
今般の内容はAIJ被害基金における決算の特例措置および予定利率引下げ・給付減額にかかるものであり、後者は当然ながら有識者会議報告での議論を反映した改正となっている。なお、有識者会議では最低責任準備金のあり方についても議論されていたが、こちらは法令改正を伴うことから、社会保障審議会等での議論を経ての改正となる模様である。パブコメで提示された改正内容のうち、主要なものの概要は以下の通り。


1.AIJ投資顧問への投資残高の平成23年度決算における取扱い
(1)決算提出期限(9月末)までに確定しない場合: 現金を除き全損計上
   投資残高が確定した年度の決算において収入として計上
(2)決算提出期限(9月末)までに確定した場合: 確定額を計上
   決算手続き上特段の理由がある場合は、上記(1)と同様の処理も可
  (平成23年度決算は全損、24年度決算で収入計上)

2.AIJ投資顧問への投資による損失額への掛金対応
(1)AIJの損失額に係る積立不足の償却期間を、最大20年から最大30年に延長
(2)特別掛金の段階引上げ償却では、引上げ期間を最大5年から最大10年に延長

3.有識者会議を受けた財政運営基準等の一部見直しについて
(1)予定利率の引下げを促進する措置
  予定利率引下げによる積立不足の償却期間を、最大20年から最大30年に延長
(2)給付減額の手続の明確化・簡素化
  @減額理由である「母体企業の経営悪化」および「掛金負担困難」を後者に一本化
  A受給者減額時に希望者に対して支給する一時金について、複数の選択肢を設け
   ることを認める。また、減額の対象を同意者のみとする場合は、当該一時金の
   措置を講じないこととする。
  B減額の選択肢を追加する規約変更であって、かつ、変更前後の総給付現価およ
   び各加入者・受給者の最低積立基準額が下がらない場合、給付減額として取り
   扱わないことを明示する。


<参考資料>
確定給付企業年金法施行規則及び関連通知並びに厚生年金基金関連通知の一部改正に関する御意見募集について (e-Gov)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2012/7/18): 厚生年金基金の資産運用規制見直しに係るパブリックコメント募集開始
The企業年金BLOG(2012/6/30): 有識者会議が打止めとなったわけだが



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2012年07月18日

厚生年金基金の資産運用規制見直しに係るパブリックコメント募集開始

そういえば、先日報告書が公表された「厚生年金基金等に関する資産運用・財政運営に関する有識者会議」での議論を踏まえ、厚生年金基金の資産運用規制の見直しに係るパブリックコメントが、7月13日より開始された模様。
資産運用規制における注目点といえば、先般のAIJ事件の発覚を受けて「1運用受託機関当たり●●%」といった上限が設けられるか否かにあったが、改正案を見た限りでは、「集中投資に関する方針」の策定が義務付けられているものの合理的理由があれば例外も認められるなど、現行の実務慣行におおむね配慮した内容となっている模様。パブコメで提示された改正内容のうち、主要なものの概要は以下の通り。


1.政策的資産構成割合
 政策アセット・ミクス(政策的資産構成割合)の策定義務化(現在は努力義務)
2.運用の基本方針
(1)運用基本方針の届出義務化(現在は届出不要)
(2)「集中投資に関する基本方針」の策定義務化
(3)オルタナティブ投資を行う場合の留意事項
  ・投資目的および投資割合等を運用基本方針に明記
  ・運用受託機関の選任にあたっての留意事項の明記
  ・運用商品の選定にあたっての確認事項の明記
3.運用の委託
(1)運用受託機関の選任におけるヒアリング対象の追加
(2)運用受託機関の評価における定量評価および定性評価項目の追加
4.運用コンサルタント等の利用
(1)運用コンサルタントは、金融商品取引法上の投資助言・代理業の登録者に限定
(2)運用コンサルタントと運用受託機関との契約関係の有無の確認義務化
5.研修等
 管理運用業務に携わる者の資産運用に係る研修の受講義務化
6.理事等の禁止行為
 基金役職員に対する、国家公務員倫理規程に準拠した倫理規程の制定義務化
7.資産運用委員会
(1)資産運用委員会の構成員への、金融・経済に関する学識経験者等の追加
(2)資産運用委員会の議事の「記録・保存」「代議員会への報告」「加入員等への周知」
  の義務化
8.その他
(1)「運用受託機関の選任・評価」「役職員の研修受講状況」等の代議員会への報告
  義務化
(2)「資産運用委員会の議事」の加入員および事業主への情報開示義務化


<参考資料>
『厚生年金基金規則及び「厚生年金基金の資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドラインについて(通知)」等の一部改正について』に関する御意見募集について (e-Gov)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2012/6/30): 有識者会議が打止めとなったわけだが



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2012年01月31日

DBの財政運営ルール改正に伴う省令の公布

本日(1月31日)、確定給付企業年金法施行規則の一部を改正する省令が公布された。これは、昨年7月14日および10月6日にパブリックコメントで意見募集された財政運営ルールの改正に関するものである。省令に規定されている主な内容は以下の通り。

 1.過去勤務債務の償却方法の見直し(段階的引上げ償却の追加)
 2.脱退一時金における一時金換算率の要件緩和
 3.選択一時金における一時金換算率の要件緩和
 4.非継続基準の見直し
  ・最低積立基準額の積立要件を、5年かけて90%から100%に引上げる
  ・回復計画による方法は5年の経過措置を設けて廃止
  ・数理上資産額の使用を止め、時価ベースの純資産額に再び一本化

 5.掛金引上げ猶予措置
  ・掛金引上げを要する場合でも、平成25年4月1日まで掛金引上げを猶予可
   (ただし猶予後の掛金引上げを規約に定めることが条件)

 6.申請書類の簡素化等

なお、上記省令の公布を受けて、厚生年金基金および確定給付企業年金の財政運営ルールの改正等に係る関連通知も本日付で発出される予定であったが、翌日に持ち越しとなった模様(汗)。


<参考資料>
確定給付企業年金法施行規則の一部を改正する省令
 (平成24年1月31日厚生労働省令第13号)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/11/16): 財政運営基準等改正に係る追加パブコメの結果公表
The企業年金BLOG(2011/10/17): 財政運営基準等改正に係る追加のパブコメ募集
The企業年金BLOG(2011/7/14): 財政運営基準の改正に係るパブリックコメント募集開始



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2011年12月22日

事業主が存在しない閉鎖適年の税制優遇措置の継続

先のエントリ閉鎖適年について触れたので、今月10日に閣議決定された「平成24年度税制改正大綱」についても触れておこう。
厚生労働省からの税制改正要望では、企業年金に関連する事項として、(1)事業主が存在しない等の理由によって企業年金等に移行できない適格退職年金に関する税制優遇措置の継続、(2)公的年金等所得の所得区分上の見直し(「年金所得」の創設)、(3)年金受給者の税負担(老年者控除の復活)の3点について改正要望に挙げられていたが、今般の税制改正大綱において取り上げられたのは(1)のみとなった。
具体的には、平成24年3月31日をもって廃止される適格退職年金に関して、いわゆる閉鎖型適格退職年金(受給者のみで構成される適格退職年金)のうち、事業主が存在しないものおよび厚生年金保険未適用事業所の事業主が締結している契約について、現行の適格退職年金に係る税制上の優遇措置(公的年金等控除の適用etc)を継続適用することとされた。この措置が適用されるポイントは、以下の2点である。

1.事業主が存在しないこと(or厚生年金保険未適用事業所であること)
適格退職年金の解約・廃止は事業主の意思により任意に可能だが、逆に言えば、事業主が存在しない制度は解約しようがないことを意味する。また、適年移行の受け皿である確定給付企業年金厚生年金基金などは厚生年金保険の適用事業所でなければ設立・加入が不可能であるため、未適用事業所には移行先の選択肢が存在しない(公的年金たる厚生年金保険に加入しない企業は、企業年金の税制優遇を享受できないことを意味する)。

2.閉鎖型(受給者しかいない)制度であること
今般の特例措置が閉鎖型制度のみに適用されるのは、受給者保護の観点も然ることながら、本措置を永続的なものにしないためでもある。年金受給者は、年金支給期間が満了すれば自ずと制度の対象外となるため、いずれは年金受給者がゼロ=制度終了となる。ここでいう年金支給期間の満了とは、確定年金であれば支給期間を終えたとき、終身年金であれば受給者が死亡したときを意味する。なお、適格退職年金は終身年金よりも有期年金・確定年金の割合が高いことを申し添えておく。


<参考資料>
平成24年度税制改正大綱 (内閣府:税制調査会)
平成24年度厚生労働省税制改正要望について (厚生労働省)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/2/22): 簡素化といっても「受託保証型確定給付企業年金」の話だけどね
The企業年金BLOG(2011/1/31): 簡素化と言っても「閉鎖適年」の話だけどね



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2011年11月28日

マッチング拠出に係る政省令が公布

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2011年11月16日

財政運営基準等改正に係る追加パブコメの結果公表

10月6日付で追加募集されていた厚生年金基金および確定給付企業年金の財政運営基準の改正に関するパブリックコメントだが、本日付でその意見および回答が公表された。
前回(7月14日)のパブコメで提示した改正案への批判が強かったことを受け、追加パブコメ(10月6日)の改正案は激変緩和のための経過措置を設けるなど若干譲歩した内容だったが、今回はさすがにこれ以上は譲歩せずほぼ原案通りで突っぱねた格好となった。
なお、今回の結果公表とともに、指定基金健全化計画に関する通知も併せて発出されている(平成23年11月16日年発第1116第1号)。関連する政省令および通知の改正は、今後順次実施される模様。

<参考資料>
「厚生年金基金及び確定給付企業年金の財政運営基準の見直しに係る確定給付企業年金法施行規則及び関連通知の一部改正等について」の意見募集の結果について (e-Gov)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/10/17): 財政運営基準等改正に係る追加のパブコメ募集
The企業年金BLOG(2011/7/14): 財政運営基準の改正に係るパブリックコメント募集開始



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2011年10月18日

マッチング拠出に係る政省令案のパブリックコメント募集開始

そういえば、確定拠出年金(DC)における従業員拠出(日本版マッチング拠出www)等の実施に係る政省令の概要案に関するパブリックコメントが、10月14日より開始された模様。業界内では、政省令・通知の条文案および新旧対照表も提示されたとの噂だったが、今回のパブコメでは、通知への言及が皆無な上に条文案や新旧対照表すら提示されていない。今夏の財政運営基準等に係るパブコメからこの傾向は続いているが、そもそも新旧対照表を出さないパブコメに意味はあるのか? という疑念は払拭できない(汗)。パブコメで提示された改正内容は以下の通り。

1.確定拠出年金法施行令の一部改正
(1)個人別管理資産額の算定方法の変更
  ・個人別管理資産額の算定基礎に「企業型年金加入者掛金」を追加
(2)事業主返還額の算定方法の変更等
  ・企業型年金加入者掛金は、事業主返還額に含めない
(3)企業型年金加入者掛金に係る規約承認基準の変更
  ・掛金額の決定・変更の方法が特定の者について不当に差別的でないこと
  ・前納及び追納は禁止
  ・掛金額の変更は年1回に限る(省令に定める場合を除く)
  ・掛金額の決定・変更の方法が不当に制約されるものでないこと

2.確定拠出年金法施行規則の一部改正
(1)企業型年金加入者掛金の変更の特例
  ・掛金額の変更は原則として年1回(下記の場合を除く)
   <やむを得ない場合>
   ・事業主掛金の変更により拠出限度額を超えてしまう場合
   ・規約変更に伴い掛金額を変更せざるを得ない場合
   ・掛金額を0にする場合
   ・掛金額を0から変更する場合

(2)資産管理契約について定める要件の追加
(3)企業型年金加入者等原簿に記録する事項の追加
(4)事業主から企業型記録関連運営管理機関への掛金額の通知
(5)企業型記録関連運営管理機関から加入者等への掛金額の通知


<参考資料>
「確定拠出年金法施行令及び確定拠出年金法施行規則の一部改正について」に関する御意見募集について (e-Gov)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/8/4): 年金確保支援法が成立 ─ 拡がる企業型年金と個人型年金の格差



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2011年10月17日

財政運営基準等改正に係る追加のパブコメ募集

そういえば、7月14日付で公開されていた厚生年金基金(厚基)および確定給付企業年金(DB)の財政運営基準の改正に関するパブリックコメントだが、10月6日付で意見募集の結果および回答が公表された模様。大半は原案通りとの回答だったが、一部の事項については見直しが行われ、同日付で追加の意見募集が行われることとなった。追加パブコメで提示された改正内容は以下の通り。

(1)掛金引上げ猶予措置 (厚基・DB)
  ・掛金引上げを要する場合でも、平成25年4月1日まで掛金引上げを猶予可
   (ただし猶予後の掛金引上げを規約に定めることが条件)

(2)予定利率の引下げに伴う不足金処理の特例 (厚基)
  ・予定利率引下&給付削減を行う旨規約変更すれば掛金引上げ留保可
(3)最低責任準備金調整額の算定方法の見直し (厚基)
(4)非継続基準抵触時の特例掛金の計算に用いる資産額の見直し (厚基・DB)
  ・数理上資産額の使用を止め、時価ベースの純資産額に再び一本化
(5)廃止までの経過措置期間中に回復計画で用いる前提の見直し (厚基・DB)
  ・回復計画を即時廃止とはせず、5年間の経過措置期間を設ける
  ・回復計画に実効性を持たせるため、計画作成に用いる前提の一部を見直す

(6)非継続基準における積立基準の引上げスケジュールについての検討 (厚基・DB)
(7)指定基金の指定要件等の見直し (厚基)
  ・指定基金健全化承認計画の基準の明確化、簡素化および提出時期の弾力化


<参考資料>
「確定給付企業年金法施行令、確定給付企業年金法施行規則、厚生年金基金令、厚生年金基金規則及び関連通知の一部改正について」の意見募集の結果について (e-Gov)
厚生年金基金及び確定給付企業年金の財政運営基準の見直しに係る確定給付企業年金法施行規則及び関連通知の一部改正等に関する意見募集について (e-Gov)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/11/16): 財政運営基準等改正に係る追加パブコメの結果公表
The企業年金BLOG(2011/7/14): 財政運営基準の改正に係るパブリックコメント募集開始



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2011年07月20日

厚生労働省「確定給付企業年金に関するQ&A」

今週に入り、厚生労働省のWebサイトに確定給付企業年金に関するQ&Aなるコーナーが開設された。確定給付企業年金に関する全102問の質疑応答が、「加入者」「給付」「給付減額」「掛金」「積立金」「制度間移行」「規約変更手続き」の7項目に分類・掲載されている。先日公表されたパブコメとは違い、財政運営よりも制度設計や手続要件に重きを置いた内容となっており、2007年7月に公表された「規約型確定給付企業年金規約例」(pdfファイル)の簡略版&最新版のような位置付けであると言えよう。
なお、確定拠出年金では「確定拠出年金Q&A」が制度創設時より掲載されている。

<参考資料>
確定給付企業年金に関するQ&A (厚生労働省)
確定拠出年金Q&A (厚生労働省)



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2011年07月14日

財政運営基準の改正に係るパブリックコメント募集開始

そういえば、厚生年金基金(厚基)および確定給付企業年金(DB)の財政運営基準の改正に関するパブリックコメントが、本日付でようやく開始された模様。業界内では先月頃から内々に出回っていたが、今回は新たに「支払終了企業年金(閉鎖型のことか?)の制度終了後の残余財産の取扱」に関する規定が加わっている。主な改正内容を以下に列挙しておく。


1.制度運営の効率化の観点から改正する事項
(1)財政再計算時期の見直し (厚基)
  ・これまで変更計算に該当するものも財政再計算に含める
(2)特別掛金率の計算方法の見直し (DB、厚基)
  ・将来の加入者数や給与水準の変化を見込むことが可能に(どうやって?)
(3)過去勤務債務の償却方法の見直し (DB、厚基)
(4)確定拠出年金への一部移行に伴う一括拠出の緩和 (DB、厚基)
(5)脱退一時金における一時金換算率の要件緩和 (DB)
(6)選択一時金における一時金換算率の要件緩和 (DB、厚基)
(7)キャッシュバランスプランにおける指標の弾力化 (DB、厚基)
  ・市場インデックス(TOPIX等)も使用可能に!?
(8)制度終了時における残余財産の優先分配の追加 (DB)
  ・「加入者・受給者平等」「受給者優先」に新たに「加入者優先」を追加
(9)申請書類の簡素化 (DB)
(10)業務報告の簡素化等 (DB、厚基)
(11)代表事業主による申請手続 (DB)
(12)届出事項の拡大等 (DB)
(13)支払終了企業年金の制度終了後の残余財産の取扱 (DB)

2.財政の健全化の観点から改正する事項
(1)財務諸表の簡素化・透明化 (DB、厚基)
  ・財務諸表における数理的評価等の調整科目を廃止する
  ・財務諸表上の負債を責任準備金に戻す

(2)積立状況の的確な把握 (DB、厚基)
  ・数理的評価を用いてても、継続基準における検証時は時価(純資産額)を用いる
   (財政計算では従来どおり数理的評価を考慮)

(3)非継続基準の見直し (DB、厚基)
  ・最低積立基準額の積立要件を、5年かけて90%から100%に引上げる
  ・回復計画を用いた掛金拠出ルールを廃止する

(4)指定基金の指定要件等の見直し (厚基)
  ・指定基金の要件に「直近決算の積立金が最低責任準備金の8割未満」を追加

<参考資料>
確定給付企業年金法施行令、確定給付企業年金法施行規則、厚生年金基金令、厚生年金基金規則及び関連通知の一部改正に関する意見募集について (e-Gov)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/11/16): 財政運営基準等改正に係る追加パブコメの結果公表
The企業年金BLOG(2011/10/17): 財政運営基準等改正に係る追加のパブコメ募集



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2011年06月22日

特別法人税の凍結延長が決定(3年ぶり6回目)

特別法人税(退職年金等積立金に対する法人税)の課税停止措置の延長規定が盛り込まれた租税特別措置法案(現下の厳しい経済情勢および雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案)が今月10日に閣議決定・国会提出されたことは先日解説したとおりだが、本日6月22日、同法案が参議院にて可決・成立したことから、特別法人税の課税停止措置は2014年3月31日まで延長されることが確定した。なお、これまでの課税停止の延長措置の経緯は以下のとおりであり、今回めでたく(?)3年ぶり6回目の延長とあいなった(汗)。

◆特別法人税の課税の状況
 1957年4月1日〜1999年3月31日 課税
 1999年4月1日〜2001年3月31日 課税停止開始(2年間)
 2001年4月1日〜2003年3月31日 課税停止延長(2年間)
 2003年4月1日〜2005年3月31日 課税停止延長(2年間)
 2005年4月1日〜2008年3月31日 課税停止延長(3年間)
 2008年4月1日〜2011年3月31日 課税停止延長(3年間)
 2011年4月1日〜2014年3月31日 課税停止延長(3年間)
 ←new!


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/6/15): 特別法人税の課税停止措置、延長へ動き出す
The企業年金BLOG(2011/4/2): 特別法人税の課税停止の延長は6月まで?
The企業年金BLOG(2010/12/17): おやおや凍結延長ですか
The企業年金BLOG(2010/6/28): 特別法人税に関するQ&A



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2011年05月12日

企業年金における被災者支援措置(第4報)

東日本大震災への対応特例法(東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律)が本年5月2日付で公布・施行された。このうち、年金関連の規定は以下の通りである。

1.標準報酬月額の改定の特例 (第94条)
 災害地域における事業所の厚生年金保険の標準報酬月額について、賃金に著しい変動の生じた月からの改定ができることとする。

2.保険料の免除の特例 (第95条)
 災害地域における事業所において、当該事業所の被保険者に対する賃金の支払に著しい支障が生じている場合、厚生年金保険料の免除ができることとする。

3.老齢年金の裁定請求の特例 (第96条、第98条)
 被災区域に居住する特別支給の老齢厚生年金の受給者が被災後6月30日までに65歳に達する場合には、裁定請求の申請がなくても引き続き年金を支給することとする。

4.遺族年金・一時金の支給事由の特例 (第97条、第99〜101条)
 東日本大震災から3ヶ月行方不明あるいは死亡時期が特定できない者については、震災発生日(2011年3月11日)に死亡したものとみなして遺族年金・一時金を支給することとする。

上記の規定は公的年金に関するものが大半だが、企業年金も無関係ではない。例えば、厚生年金基金は厚生年金保険法を根拠法としているため、厚生年金保険に関する措置は厚生年金基金にも適用される(国民年金法を根拠法とする国民年金基金も同様)。また、遺族年金・一時金に係る規定では、厚生年金基金に加えて確定給付企業年金(第100条)や確定拠出年金(第101条)も対象となっている。なお、保険料に関する規定は3月1日付、それ以外の規定は5月2日付で適用となる。


<参考資料>
東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律 (内閣府)
上記のうち厚生労働省の所管規定 (厚生労働省)
政令 (e-Gov:電子政府の総合窓口)
厚生労働省令 (e-Gov:電子政府の総合窓口)
通知 (厚生労働省)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/4/1): 企業年金における被災者支援措置(第3報)
The企業年金BLOG(2011/3/18): 企業年金における被災者支援措置(続報)
The企業年金BLOG(2011/3/15): 企業年金における被災者支援措置



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2011年04月02日

特別法人税の課税停止の延長は6月まで?

平成23年度税制改正大綱に盛り込まれた特別法人税(退職年金等積立金に対する法人税)の課税停止措置の2014年3月までの延長だが、特別法人税の課税停止を規定している租税特別措置法第68条の4の改定を盛り込んだ「所得税法等の一部を改正する法律案」(2011年1月25日国会提出)の可決・成立は昨今の政局の状況をみるに困難が予想されており、このままでは2011年4月から特別法人税が復活(正確には課税停止の解除する懸念があった。同様の事態は3年前の2008年にも発生しているが、この時は、特別法人税の第1回納付期限である5月末までに法案が可決・成立したため難を逃れた経緯がある。

今回、政府・与党(民主党)は、各種租税特別措置の期限を暫定的に本年6月30日まで延長する「つなぎ法案」(国民生活等の混乱を回避するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案)を3月22日に国会提出、3月31日付で可決・成立したことから、特別法人税の課税停止措置も6月30日まで延長されることとなった。なお、特別法人税の課税標準となる退職年金等積立金の金額は事業年度開始(期首)時点の額を用いることから(法人税法第84条)、4月1日に事業年度が開始する受託機関(生保・信託)については、少なくとも2012年3月までは特別法人税は課されないこととなる。


<参考>
適用期限が平成23年6月30日まで延長された租税特別措置 (財務省Webサイト)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2008/3/25): ガソリン値下げの代わりに特別法人税が復活!?
The企業年金BLOG(2010/6/28): 特別法人税に関するQ&A
The企業年金BLOG(2010/12/17): おやおや凍結延長ですか(byぶらり途中下車の旅)



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2011年04月01日

企業年金における被災者支援措置(第3報)

東北地方太平洋沖地震を受けて、企業年金の世界においても様々な措置が講じられていることは過去にも触れたが(第1報第2報)、今回はその続報を幾つか。
厚生年金基金以外の企業年金制度(確定給付企業年金確定拠出年金適格退職年金など)についても厚生年金基金と同様の特例措置を講ずるよう行政へ要望する動きがあることは前回も触れたが、このたび、確定給付企業年金および確定拠出年金に係る特例措置を網羅した通知が出状された(年企発0329第1号および第2号)。概要は以下の通り。

1.規約変更・代議員会運営における特例措置
被災地域に所在地のある厚生年金基金が行う規約変更について、代議員会等の開催が困難な場合は、理事長専決による対応が認められることとなった。なお、この措置は基金型確定給付企業年金(企業年金基金)にも適用される。

2.年金等の請求手続における簡素化措置
被災地域に住所地を有する加入者に係る厚生年金基金の年金給付等の裁定請求については、添付書類等の簡素化等の措置が認められることとなった。なお、この措置は確定給付企業年金および確定拠出年金にも適用される。

3.行政宛届出書類の提出期限延長措置
今回の東北地方太平洋沖地震は、3月13日付けで公布された「平成23年東北地方太平洋沖地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令(平成23年政令第19号)により、「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置法に関する法律」(平成8年法律第85号)第2条第1項に規定する特定非常災害に指定された。この措置により、今回の震災の被害者については、法令上の義務の不履行については6月30日まで刑事責任が免責されることとなった。上記でいう法令上の義務には、法令上の根拠法を有する企業年金制度(厚生年金基金・確定給付企業年金・確定拠出年金)における行政宛届出書類の提出も含まれることから、これら企業年金制度に関する各種申告・提出期限も6月30日まで実質的に延長されることとなった。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/5/12): 企業年金における被災者支援措置(第4報)
The企業年金BLOG(2011/3/18): 企業年金における被災者支援措置(続報)
The企業年金BLOG(2011/3/15): 企業年金における被災者支援措置



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2011年03月26日

OECD「Pensions at a Glance」2011年版が公表

OECD加盟国の公的年金制度を比較検証する資料として定評のある『Pensions at a Glance』(邦題:図表でみる年金)の第4版(2011年版)がこのたび公表された。
第4版は、調査対象国が43ヶ国に増加したほか、「年金支給開始年齢」「退職行動」「年金による退職へのインセンティブ」「高齢労働者に対するニーズ」「年金と平均寿命のリンク」という構成が示すとおり、OECDがかねてより問題視している年金支給開始年齢と平均寿命が主要テーマとなっている。日本語概要が公開されているほか、海外では英語版がpdfファイルで全文公開されている。

なお、本シリーズは大変有意義なレポートではあるが、制度も歴史風土も異なる各国の制度を統一的な基準に置き換えているため、数値の解釈には慎重に挑む必要がある。また、本書の記述の一部を切り取って「OECDもかく語りき!」自説の権威付けに用いるマスメディア・研究者も多いので、その点要注意である。
さっそく反面教師的な事例を紹介すると、時事通信社の401kWebサイトでは、本レポートの紹介記事を確定拠出型年金の導入拡大と絡めて掲載していた。しかし、実際にレポートに目を通すと、「確定拠出型年金の導入では平均寿命の延びに対応できない」(給付減少という形で個々の受給者に影響が及ぶ)との見解が示されており(日本語概要にも記載)、記事とは様相が異なっている(汗)。

Pensions at a Glance 2011Pensions at a Glance 2011: Retirement-income Systems in OECD and G20 Countries
OECD 2011-02

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<参考資料>
日本語概要(OECD東京センター) (pdfファイル)
原文ファイル (pdfファイル)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2009/12/5): OECDが提唱する日本の年金改革(総論)
The企業年金BLOG(2009/6/25): OECDの公的年金所得代替率に関する留意点
The企業年金BLOG(2008/5/15): 「図表でみる世界の年金」2005



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