2007/09/05
特例適格退職年金 ─ 芽が出なかった大物ルーキー
前回に引き続き、特別法人税に絡む制度ネタ。
特別法人税の課税対象となるのは、厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金、財形給付金、財形基金の5制度だが、何事にも例外があるもので、積立金額が努力目標水準(代行部分の3.23倍)に満たない厚生年金基金および一定要件を満たした適格退職年金については、特別法人税の減免措置が講じられている。うち後者は、俗に特例適格退職年金と呼ばれているのをご存知だろうか。
特例適格退職年金とは、加入者(適年では「使用人」)が少ない適格退職年金契約のうち年金としての実質が確保されるなど一定の要件を満たしている契約をいい、租税特別措置法(第68条の5)の規定に基づき1993年4月より導入された。つまり、加入者数が少なくて単独で厚生年金基金を設立できない企業であっても、厚生年金基金に準じた年金給付を行うならば、同じく厚生年金基金に準じた特別法人税の減免措置を認めるというものである。なお、人数要件が一定未満に抑えられているのは、「大企業は厚生年金基金を使え」という政策的な意味合いだろうか。主な要件は以下の通り(租税特別措置法施行令第39条の36第4項より)。
<加入者数>
単独契約:500人未満
結合契約:800人未満(ただし1企業500人未満)
<給付水準>
老齢厚生年金の報酬比例部分の10%相当額以上
<支給期間>
退職年金の現価総額の2分の1以上は終身給付
<選択一時金の限度額>
「年金現価総額の90%」または「保証期間部分現価」のいずれか少ない額
上記のうち、人数要件が500名未満とあるのは、かつて厚生年金基金の人数要件が500人以上(単独型の場合)だったことによる。2005年4月より厚生年金基金の人数要件は1000人以上に引上げられたが、適年の新規設立が2002年4月より停止されていることもあり、当該人数要件も500名のまま変更されていない。
なお特例適年の実施状況だが、直近では2005年度末で356件と、適年契約全体のうち1%にも満たない。制度創設時こそ「年金らしさ(終身給付etc)を全面に出せば特別法人税が非課税に!?」ということで鳴り物入りで迎えられたものの、中小企業にとって終身年金は荷が重かったのか、企業年金の表舞台に立つことなく、2012年3月の適年廃止とともに消え行く運命(さだめ)にある。特例適年のこの有様を元中日の藤王の姿と重ねてしまうのは私だけだろうか・・・(汗)。
←気が向いたら是非クリック願います2007/09/03
財形給付金・財形基金にも課税される特別法人税
企業年金積立金への課税 完全撤廃を要望 厚労省
厚生労働省は2008年度の税制改正で、企業年金の積立金に課税される特別法人税を廃止するよう財務省に要望する。課税は株価が低迷した1999年度から凍結されているが、08年3月末で期限が切れる。完全に撤廃することで企業年金の資金運用を支える考えだが、財務省は慎重な姿勢を示している。
企業年金の積立金には、国税と地方税を合わせて1.173%の特別法人税が課税されることになっている。不況が深刻化した90年代後半に、企業年金の資金運用を少しでも改善するため課税が凍結された。凍結措置はこれまで三度延長されてきたが、同省は「凍結が続くなら、廃止すべきだ」としている。
(2007/8/24 日経朝刊 5面)
税制改正要望における特別法人税の撤廃は、業界団体あたりは飽きずに毎年要望しているが、監督官庁が同様の要望を行うのは課税凍結期限が切れる直前のみと相場が決まっている。なお特別法人税の廃止が要望されるのは、平成17年度改正要望以来、3年ぶり●回目(←高校野球の出場歴か)。
さて、平成20年度税制改正要望項目では、企業年金に関する要望項目は「第6」に列挙されているが、肝心の特別法人税に関する項目を見ると・・・
第6-(6)厚生年金基金、確定拠出年金、確定給付企業年金、勤労者財産形成給付金及び勤労者財産形成基金に係る積立金に対する特別法人税の撤廃〔法人税、法人住民税〕
厚生年金基金、確定拠出年金、確定給付企業年金、勤労者財産形成給付金及び勤労者財産形成基金の積立金に対する特別法人税を撤廃する。
(平成20年度厚生労働省税制改正要望項目より抜粋)
勤労者財産形成給付金? 勤労者財産形成基金? 何やら見慣れない制度名が並んでいるが、勤労者財産形成給付金制度(財形給付金)および勤労者財産形成基金制度(財形基金)とは、サラリーマンにお馴染みの勤労者財産形成促進制度(財形)の一種である。財形貯蓄を行う勤労者に対し、事業主が1人につき年10万円を限度に拠出を行い、7年経過毎に拠出金の元利合計額を支給することにより、勤労者の財産形成を援助・促進する制度である。なお、財形給付金と財形基金の主な違いは以下の通り。
<制度の開始>
財形給付金:厚生労働大臣の承認
財形基金 :厚生労働大臣の認可
<運営主体>
財形給付金:事業主
財形基金 :財形基金
<人数要件>
財形給付金:要件なし
財形基金 :100人以上(設立時)
<助成制度>
財形給付金:中小企業の事業主に対して拠出金の一部を助成(財形助成金制度)
財形基金 :上記の財形助成金制度のほか、基金設立奨励金(一律30万円)を支給
こうして比べるとお気付きだと思うが、財形給付金は確定給付企業年金(DB)における規約型企業年金に、財形基金は基金型企業年金(企業年金基金)に相当する制度と言える。なお資産規模は財形給付金が503億円、財形基金が21億円(ともに2006年度末)と慎ましやかだが、無情にもこれら全額に対して特別法人税が課税される。特別法人税の餌食となるのは、何も企業年金制度(厚生年金基金、適格退職年金、確定給付企業年金、確定拠出年金)に限った話ではない。
※平成20年度厚生労働省税制改正要望項目はこちら
※財形給付金制度についてはこちら
※財形基金制度についてはこちら
←気が向いたら是非クリック願います2007/07/20
「拠出型企業年金保険」は確定拠出年金とは別物
ネットを巡回中、こんなやりとりを見つけた↓
拠出型企業年金保険とは、どういうものをいうのでしょう? (Yahoo!知恵袋)
【質問】
拠出型企業年金保険とは、どういうものをいうのでしょう。?
年金保険の税金控除の調べをしていてこの言葉を見つけましたが。どなたかわかる人いませんか?
【回答】
従来の企業年金を確定給付型、最近登場して普及が進んでいる企業年金を確定拠出型といいます。(中略)退職までの運用方法は各従業員自身が洗濯するという従業員責任負担型の退職年金制度が登場しました。これが拠出型企業年金です。
↑嗚呼、げに恐ろしきは勘違い(汗)。
拠出型企業年金保険は、生命保険会社において厚生年金基金保険・新企業年金保険(適年、特退共など)・確定給付企業年金保険・確定拠出年金保険と並ぶ、団体年金保険の一種である。「拠出」という語感から確定拠出年金(DC)と混同されがちだが、似て非なる別物である(DCに対応しているのは確定拠出年金保険)。
通常の団体年金保険は強制加入かつ企業(事業主)拠出中心が原則だが、拠出型企業年金保険は任意加入かつ加入者(従業員)拠出中心というのが特徴である。その他概要は以下の通り。
<加入>
企業または団体の構成員であることが要件だが、加入・脱退は任意。
<掛金拠出>
加入者(従業員)拠出が主体。
生命保険料控除(要件を満たせば個人年金保険料控除も)の適用あり。
<運用>
主に保険会社の一般勘定にて運用される。運用益および運用資産は非課税。
<給付>
年金給付(雑所得課税)のほか、一時金給付(一時所得)も選択可。
商品特性や税制措置は個人年金保険とほぼ同一。大手・中堅の保険会社ならば商品ラインナップに列挙されている筈(全労済の団体年金共済も仕組みは同じ)。企業拠出主体の制度に比べると税制優遇面で見劣りすることもあり、他の団体年金保険制度に比べると市場規模は小さい。主に業界団体や労働組合が構成員の自助努力支援のために導入するパターンが殆どである。
※拠出型企業年金保険の主な提供元
住友生命:ニューエイジ
AIGスター生命:拠出型企業年金保険
全労済:団体ねんきん共済
※拠出型企業年金保険の主な導入事例
東京商工会議所:マイライフ年金共済制度
(社)大阪市工業会連合会:積立共済年金
電機連合:ねんきん共済
自動車総連:積立年金共済
←気が向いたら是非クリック願います2006/11/03
財政検証における継続基準・非継続基準とは
先日当BLOGで取り上げた企業年金の財政状況に関する記事だが、当方でも企業年金連合会から調査結果概要を入手・参照したところ、記事で言及されていた数値は非継続基準でみた積立状況だったことが判明した。記事では継続基準か非継続基準かについての言及が全く無かったが、この2つの違いは重要なので解説しておこう。
厚生年金基金制度および確定給付企業年金制度では、年に1度の決算期に財政状況のチェックを行う。これを財政検証といい、「継続基準による財政検証」と「非継続基準による財政検証」に大きく分類される(正確には「積立上限額に係る財政検証」も財政検証に含まれるが、ここでは省略)。
その名が示す通り、継続基準とは、企業年金が将来も存続するとした場合に、現在必要な金額が確保されているかを検証するものである。一方非継続基準は、企業年金制度を廃止した場合に、現在約束している給付を支払うために必要な年金資産が確保されているかを検証するものである。教科書的な説明は以上だが、まあ何のこっちゃか(汗)。詳しい説明は他のサイトやオススメ書籍に譲るとして、継続・非継続の違いを当BLOG流にかいつまんで表記すると以下の通り。
・継続基準 : 基準日以降は「掛金+運用収益」で賄う
・非継続基準 : 基準日以降は「
非継続=解散=掛金が入って来ないとイメージすると分かり易い。つまり、非継続基準では、掛金が期待できない(だって解散するんだし)ぶん、継続基準よりも積立水準のハードルが高くなることになる。前述の調査では継続基準についても調査しており、継続・非継続双方の結果を併記すると、継続基準よりも非継続基準に引っかかる基金の方が多いことがわかる。
積立水準を下回った企業年金の割合 (2005年度決算)
厚生年金基金 確定給付企業年金
継続基準 1.4% 2.9%
非継続基準 10.5% 28.1%
(出典:企業年金連合会「企業年金実態調査」)
なお非継続基準については、2007年度決算までは本来の水準の90%を満たせば良いという特例があり、前述の検証結果も特例適用後の水準であることを付記しておく。
<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/11/1): 企業年金の「積立不足」報道に関する留意点
←気が向いたら是非クリック願います2006/10/19
適年から特定退職金共済への移行は解禁されるのか
特定退職金共済(特退共)とは、所得税法施行令第73条に基づき、市町村・商工会・商工会議所等が税務署長の承認を受けて特定退職金共済団体となり、中小企業退職金共済(中退共)に準じた退職金給付を行う制度である。確かな統計は存在しないが、一説には900を超える団体が実施していると言われている。制度の概要については、以下のサイトに詳しい。
・商工会議所年金教育センター
・IICパートナーズ
・東京商工会議所
中退共との違いは、
@運営主体は商工会議所・商工会など
A企業規模による加入制限が無い(中小企業でなくとも加入可)
B掛金は最低1,000円から可(中退共は一般労働者の場合で5,000円から)
C事務費負担がある(掛金から控除)
──などが挙げられる。なお中退共との併用は可能だが、特退共同士の併用は不可能である。近年は、特にA中小企業でなくとも加入OKな点が好感されてか、特退共を適格退職年金(適年)からの移行先に加えるべきとの声も商工会議所を中心に根強くある。
しかし特退共は「税法(しかも政令レベル)を根拠としており法規範性が弱い」「受給権保護の仕組みが皆無」等の理由により、適年からの移行先に含まれなかった経緯がある。これはまさに適格退職年金が廃止に追い込まれた要因そのものであり、今後特退共が移行先として認められるためには、とりわけ受給権保護(積立水準検証・受託者責任・情報開示)に関する規定を中退共と同等レベルに整える必要があろう。あと個人的には、特退共に関する統計をもっと整備して欲しいところ。
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