2008年06月02日

「税制改革の渦中にあって」

公職から解放されての本音ぶちまけトーク、でも正論。

税制改革の渦中にあって税制改革の渦中にあって
石 弘光

岩波書店 2008-01
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6年間にわたって政府税制調査会の会長を務めてきた租税・財政学の大家による、これまでの税制改革議論を綴った回顧録。著者はその司馬遼太郎然とした風貌からこれまで冷静沈着なイメージがあったが、公職から解放された安堵感と鬱憤からか、本書ではそれまで聞かれなかったような凄まじい弁舌が並ぶ。曰く、

 「増税請負人と揶揄されようが、言うべきは言うのが政府税調の役割」
 「少子高齢化と未曾有の財政赤字の前では、もはや増税は不可避」
 「将来世代のためにも、負担増から逃げるな」
 「負担増を先送りしてきた結果が、今日の財政赤字の山だ」
 「経済成長や歳出削減だけで赤字が消えると思ったら大間違い」
 「マスコミは本質を正しく報道せよ」
 「政治家は覚悟を持て」
 「政治家を選ぶ国民の目こそ問題だ」 etc


──けだし正論である。賛否両論は当然あろうが、多面的な税制改革議論のためには、是非とも押さえておきたい論点ばかりである。それにしても、こうした議論を公職在任中に提起しても「サラリーマン増税」などと曲解して報じる辺りに、わが国のマスメディアの病巣が覗える。現在の年金改革議論においてもまた然り(汗)。






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2008年04月30日

「図説 日本の税制」

ビジネスユースにも耐えうる税制の入門書

図説日本の税制 平成19年度版 (2007)図説日本の税制 平成19年度版 (2007)
星野 次彦

財経詳報社 2007-08
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1990年の刊行以来毎年版を重ねている、わが国の税制に関する最も基本的な解説書兼データ集。毎年現役の財務省主税局調査課長が編著者を務めるだけあって、国税・地方税の各税目ごとの解説は勿論のこと、税のしくみや意義、国民経済との関係、租税制度の変遷、果ては国際比較等についてまで体系的に解説しており、外見はコンパクトだが中身は高密度。税制に関する入門書というと、物語調で読ませる書籍はそれこそ枚挙に暇がないが、調査・研究・論文執筆などのビジネスユースにも耐えうる入門書は本書くらいのものである。



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2008年03月02日

「「超」税金学講座」

消費税を通じて日本の税制を考える

「超」税金学講座 (新潮文庫)知っているようで知らない消費税―「超」税金学講座 (新潮文庫)
野口 悠紀雄

新潮社 2006-01
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「超」整理法シリーズの著者にして高名な経済学者による税金論で、前著「超」税金学の文庫本化。前半は消費税への言及にスペースを割き、そこから土地税制など全般的な税制の話に拡がり、最後は「包括的所得税」「支出税」といった課税ベースにまで言及している。野口氏が語る日本経済論(「資本開国論」など)は、秀逸なものとトンデモなものが玉石混合であるため、トピックによって内容の吟味を読み手に強いるが、本書は、著者の本来の専門分野である公共経済学・租税論の範疇だけに、安心して読める。やはり「餅は餅屋」といったところか。

昨今は、年金未納問題や消えた年金問題を受けて、「消費税にすれば未納がなくなる」「消費税なら高齢者からも負担を求められる」とばかりに公的年金制度の税方式化(福祉目的消費税など)がまたぞろ叫ばれているが、現行の消費税が抱える数々の課題(益税問題、インボイスの欠如etc)を手当てせず単純に税方式に移行したところで、真の公平性・中立性の達成には程遠い。いやしくも税方式推進論者を騙るならば、せめて本書の第1〜3章だけでも目を通しておくべき。



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2007年07月30日

「人にいえない仕事はなぜ儲かるのか?」

租税論の超入門書として高評価

人にいえない仕事はなぜ儲かるのか?人にいえない仕事はなぜ儲かるのか? 角川oneテーマ21
門倉 貴史

角川書店 2005-11-10
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タイトルからして「さおだけ屋〜」「社長のベンツ〜」系の業界ウラ話の二番煎じかと思ったが、中身は著者お得意の「地下経済」に「税制」を絡めた構成。「地下経済」はこの著者のライフワークだけに安定感はあるが、既に自ら類書を何冊も出しているだけに、内容はやや食傷気味。むしろもう一方のテーマである「租税論」の方が新鮮に感じた。芸能人の節税対策といった身近な話題から入り、終章では(包括的)所得税と支出税の違いについて言及するなど、租税論の"超"入門書としてオススメ。初学者が税法の専門書に挑む前のウォーミングアップに是非。



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