先日当BLOGで、
週刊ダイヤモンド(2010年1月23日号)における鈴木亘学習院大学教授の
反論のお粗末ぶりを取り上げたところ、なんと
今週号の週刊ダイヤモンド(2010年2月20日号)が「年金の大誤解」という特集であった。ほほう、今度は
週刊東洋経済(2009年10月31日号)に対してきちんと理詰めで反論をしているのかと思いきや・・・
何この暴論と正論のカオス(汗)・・・誤解の無きよう始めに申し上げておくが、当BLOG管理人も
現行の年金制度に全く問題が無いとは思わない。そういう意味では、ダイヤモンド誌や経済学者が抱く問題意識あるいは危機意識は真っ当であるし、賛同する部分も少なくない。しかし彼らの難点は、現行制度の仕組みや歴史をろくに調べもせず、特段問題のない事項まで針小棒大に問題視することである(汗)。
さて今回のダイヤモンド誌だが、個人的には
正論3:暴論7といった感じ。正論としては、
「マクロ経済スライドを発動すべき(基礎年金除く)」「経済前提(特に想定運用利回り)の見積りが甘過ぎ」という指摘は至極ご尤も。また、Part4など年金に定評のある
宮城社労士が手がけたトピックは安心して読める。しかし全般的には、前回の鈴木教授の寄稿と同様、今回の特集も鈴木教授(および経済学者)による
持論のオウム返しと
役所・官僚の陰謀論に終始する始末。
先ほど「正論3:暴論7」と評したが、これは、本特集を監修した(と思われる)鈴木亘教授が
旗色の悪い持論を引っ込めたことによる効果が大きい。例えば、
「積立方式に移行して世代間格差を解消すべき」という当初の持論が
「積立方式や税方式に移行しても世代間格差が無くならない」と指摘されると、
「ゼロにならなくても格差を縮小することが大事だ」と微妙にトーンを変えてくる。また、
「第一号被保険者の未納の増加は破綻に繋がる」との持論が
「未納者には年金が給付されないから財政上の影響は軽微」と論破されると、今度は
「無年金者の増加に繋がるから問題だ」と矛先を変える始末(汗)。結局、東洋経済誌の指摘には
反論どころか意図的に逃げている感すら漂う。
今回、鈴木教授がおそらく最も力を入れたのは、52ページの
「経済学者 年金制度に関する共同提言」だろう。鈴木教授が大量動員した師匠・研究仲間・かつての上司etcのコメントを以って
「鈴木・西沢コンビの改革案への賛同多数!」(苦笑)とアピールしたいのだろうが、各論者のコメントはいずれも各論レベルの指摘(これがまた玉石混合で・・・汗)に留まっており、
改革案全体の援護射撃には必ずしもなっていないのが滑稽極まりない(汗)。部分最適が全体最適に繋がるとは限らない好例ですなコリャ。
他にもツッコミどころ満載な特集だが、とりあえずこの辺で打ち止めとさせていただく。興味のある向きは、
両雑誌を比較検証することを強くオススメしたい。その上で、是非自分の頭で考えて判断いただきたい。少なくとも、
一方のみの見解を妄信して対論には耳すら貸そうとしない
城繁幸氏のような姿勢は論外。これまでは雇用問題を斬新な切り口で語る御仁だと思っていたが、どうやら極論だけが売りの世俗評論家でしかないようだ。年金問題を語る資格も能力もありはしない。
<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/2/9): 年金論争を一層堕落させる鈴木亘教授の反論The企業年金BLOG(2009/10/27): 「週刊東洋経済」2009年10月31日号The企業年金BLOG(2009/3/5): 「だまされないための年金・医療・介護入門」
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posted by tonny_管理人 at 01:53
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