受給権を守るための実践書+企業年金版「悪魔の辞典」タイトルから単なる制度紹介本を連想すると、その期待は裏切られるだろう。
「給付削減に唯々諾々と従うべからず」が本書のテーマ。信託銀行で企業年金のセールスに長年携わってきた著者が、一般の社員や労働組合を対象に、企業年金の受給権を守るため(泣き寝入りしないため)のチェックポイントを解説している。
中でも興味深かったのは、筆者の年金行政(厚生労働省)に対する見解。前著
「企業年金危機」では
「箸の上げ下ろしまで規制してきた事が基金の自主性を阻害した」と苦言を呈していたが、今回は
「労使の自主性を尊重するため、格差の解消には介入して来ない」と述べている。一見すると正反対だが、要は(企業年金2法が制定されて以降)
これまで以上に労使合意の重要性が増しており、労使交渉での中途半端な妥協は将来に禍根を残すという著者の警鐘であろう。
また、巻末の"企業年金用語集"は、いわば
企業年金版「悪魔の辞典」。定年退職して業界とのしがらみが無くなったが故の
毒づいたコメントの数々は業界人必見。
話のわかる大人向けの秀作に仕上がっている。以下にその一部を抜粋してみる。
運用ガイドライン
厚生年金基金などが、受託機関に指示する具体的な資産の運用方法を書いた文書。個別資産の比率、運用方法、運用評価等が書いてある。運用機関はこれを守れば成績が良いか悪いかを気にしなくてもよいありがたい文書。
過去勤務期間
年金制度ができる前に入社した従業員の、発足前の勤務年数を加入期間に含めることを「過去勤務期間の通算」という。過去とは制度ができる前の意味。この言葉を自由に使えるようになると、企業年金をわかった気になる初心者向けの専門語。
代議員会
厚生年金基金と基金型企業年金の運営方法などを決める会合。(中略)厚生省は「労使参加の民主的運営が行われ基金に対する信頼が得られてきた」と自賛したが、実は翼賛会である。
日本版401(k)
日本の確定拠出年金制度の俗称。法令にない用語だが新聞記者などが使いたがる。401(k)とは、アメリカの内国歳入法第401条k項のこと。(以下略)
ともあれ、企業年金関連の書籍で
加入員・受給者向けに書かれたものは滅多に無いため、実際に制度改正(改悪?)に晒されている向きは勿論、そうでない向きにも是非オススメしたい。
余談だが、その後同じ著書により
「やさしい企業年金用語事典」が刊行されたが、中身は毒気がすっかり抜かれた普通の用語集と化していた(汗)。
※普通の用語集でイイやという方はコチラ↓
posted by tonny_管理人 at 23:30
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書評:企業年金