2012年07月18日

厚生年金基金の資産運用規制見直しに係るパブリックコメント募集開始

そういえば、先日報告書が公表された「厚生年金基金等に関する資産運用・財政運営に関する有識者会議」での議論を踏まえ、厚生年金基金の資産運用規制の見直しに係るパブリックコメントが、7月13日より開始された模様。
資産運用規制における注目点といえば、先般のAIJ事件の発覚を受けて「1運用受託機関当たり●●%」といった上限が設けられるか否かにあったが、改正案を見た限りでは、「集中投資に関する方針」の策定が義務付けられているものの合理的理由があれば例外も認められるなど、現行の実務慣行におおむね配慮した内容となっている模様。パブコメで提示された改正内容のうち、主要なものの概要は以下の通り。


1.政策的資産構成割合
 政策アセット・ミクス(政策的資産構成割合)の策定義務化(現在は努力義務)
2.運用の基本方針
(1)運用基本方針の届出義務化(現在は届出不要)
(2)「集中投資に関する基本方針」の策定義務化
(3)オルタナティブ投資を行う場合の留意事項
  ・投資目的および投資割合等を運用基本方針に明記
  ・運用受託機関の選任にあたっての留意事項の明記
  ・運用商品の選定にあたっての確認事項の明記
3.運用の委託
(1)運用受託機関の選任におけるヒアリング対象の追加
(2)運用受託機関の評価における定量評価および定性評価項目の追加
4.運用コンサルタント等の利用
(1)運用コンサルタントは、金融商品取引法上の投資助言・代理業の登録者に限定
(2)運用コンサルタントと運用受託機関との契約関係の有無の確認義務化
5.研修等
 管理運用業務に携わる者の資産運用に係る研修の受講義務化
6.理事等の禁止行為
 基金役職員に対する、国家公務員倫理規程に準拠した倫理規程の制定義務化
7.資産運用委員会
(1)資産運用委員会の構成員への、金融・経済に関する学識経験者等の追加
(2)資産運用委員会の議事の「記録・保存」「代議員会への報告」「加入員等への周知」
  の義務化
8.その他
(1)「運用受託機関の選任・評価」「役職員の研修受講状況」等の代議員会への報告
  義務化
(2)「資産運用委員会の議事」の加入員および事業主への情報開示義務化


<参考資料>
『厚生年金基金規則及び「厚生年金基金の資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドラインについて(通知)」等の一部改正について』に関する御意見募集について (e-Gov)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2012/6/30): 有識者会議が打止めとなったわけだが



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2012年06月30日

有識者会議が打止めとなったわけだが

厚年基金、連帯負担廃止で解散しやすくAIJ問題で (nikkei.com)
厚生年金基金、再建困難なら解散 有識者会議が最終報告 (msn産経ニュース)
厚生年金基金:赤字基金の「退場」促す…有識者会議報告書 (毎日jp)
厚年基金は分散投資の徹底を〜有識者会議 (ytv読売テレビ)
返還減額策示されず 厚年基金の有識者会議 (信毎web)
厚年基金存廃は両論併記 財政難でも解散容易に 厚労省会議報告書 (jiji.com)

本年4月から8回にわたって開催され、去る6月29日に最終報告案が提示された「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」。当初は、いわゆるAIJ問題を契機に顕在化した企業年金全体をめぐる課題について検討するという触れ込みだった筈だが、時間的制約から報告書では厚生年金基金に関する言及ばかりとなった。
報告書は、@資産運用規制の在り方、A財政運営の在り方、B厚生年金基金制度等の在り方、の3つの大きな論点に沿った内容となっているが、当BLOG管理人が垣間見た限りでは、@資産運用規制は具体的・実践的な見直し案が列挙されている一方、A財政運営およびB厚生年金基金制度については両論併記ばかりという印象を受けた。とりわけABについては、冒頭に掲げた各マスメディアの記事の見出しが各社バラバラである事からも、意見集約に至らなかった混迷ぶりがうかがえる。

しかし、当BLOG管理人は、今般の有識者会議の報告書を先送りだと批判するつもりは毛頭ない。ことAIJ問題の再発防止という観点に立てば、上記@による実務改善によりその目的はある程度達成できよう。ABの問題への対処を真剣に論じるならば、3ヶ月・8回という検討期間は拙速であるように感じる。もっとも、5年前に開催された企業年金研究会でも、7ヶ月議論したものの両論併記に終わったが(汗)。

余談だが、今般の有識者会議では、事務局である厚生労働省が制度廃止にわりと前向きであるような印象を受けた。行政というと「所管制度(ナワバリ)は絶対死守!」的なイメージが根強いが、単に時代が変わったのか、それとも、政権与党である民主党WTが厚生年金基金の廃止を打ち出していることと関係があるのだろうか・・・?

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2012/3/7): AIJ事件発覚以降、妙にテンションの高いWebサイト2件
The企業年金BLOG(2007/7/10): 企業年金研究会の報告書がまとまる



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2012年05月26日

企業年金の概況(2012年3月末)

毎年5月下旬に公表される「企業年金の受託概況」が、今年も信託協会生保協会JA全共連の連名によりリリースされた。

 ◆企業年金(確定給付型)の受託概況(平成24年3月末現在)
  ■信託協会のリリース
  ■生保協会のリリース
  ■JA全共連のリリース
 (注)上記3つのリリースはいずれも同じ内容。

上記によると、2012年3月末における企業年金(確定給付型)の受託概況は、厚生年金基金が制度数577件(前年度比▲18件)、加入者数440万人(前年度比▲11万人)、資産残高は26兆8,945億円(前年度比▲9,593億円)となった。AIJ問題によって年金資産が大きく毀損されたかの如き論調が蔓延しているが、統計を見た限りでは、年金資産の減少は制度減少によるものと捉えるのが妥当であろう。
一方、確定給付企業年金は、制度数14,991件(前年度比+4,941件)、加入者数801万人(前年度比+74万人)、資産残高は45兆3,407億円(前年度比+3兆3,686億円)となった。適年移行の最終年度ということもあり、駆け込み移行で制度数は約1.5倍に増加したものの、小規模制度が中心であるせいか資産規模の伸びは制度数ほどではなかった。なお、適格退職年金は本年3月末をもって廃止となったことから、今回より本統計の対象外となっている。

また、確定拠出年金制度の施行から10年が経過したこと等を受け、「確定拠出年金(企業型)の統計概況(平成24年3月末現在)」が運営管理機関連絡協議会、信託協会および生命保険協会の連名で本年より公表されることとなった。2012年3月末時点における確定拠出年金(企業型)の状況は、規約数4,136件、資産額5兆9,763億円、加入者数423万人となった。しかし、確定給付と確定拠出でリリースを分ける意味はあるのかね?(汗)

 ◆確定拠出年金(企業型)の統計概況(平成24年3月末現在)
  ■信託協会のリリース
  ■生保協会のリリース
 (注)上記2つのリリースはいずれも同じ内容。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/5/25): 企業年金の受託概況(2011年3月末)



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2012年04月25日

「新版 年金数理概論」

年金数理を用いた企業年金の啓発書 9年ぶりのリニューアル

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年金数理人の職能団体である日本年金数理人会が大学院生向け講座の内容をベースにした年金数理の解説書『年金数理概論』の9年ぶりの改定版。ここ9年間の法改正や経済社会環境の変化等を反映していることは勿論だが、本書の最大の革新は、計算基数定常状態など従来の年金数理における大前提を大胆なまでに簡略化したことにある。これにより、年金に馴染みの薄い初学者にとっても年金数理の全体像がイメージし易くなったほか、アクチュアリー会の年金数理の教科書とも良い意味で差別化が図れたように思う。試験対策用としては本書だけでは不十分だが、年金数理に真面目に取り組まんとする実務家にとっては格好の啓発書。

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2006/10/17): 「年金数理概論」



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2012年04月23日

「確定給付企業年金・確定拠出年金法令通達集」平成24年版

マギー司郎もビックリ!? 2年ぶりのリニューアル

確定給付企業年金・確定拠出年金法令通達集(平成24年版)確定給付企業年金・確定拠出年金法令通達集
(平成24年版)


法研 2012-03

確定給付企業年金(DB)および確定拠出年金(DC)の法令・通達等を余すところなく網羅した定番法令集が2年ぶりのリニューアル。今回は、昨夏から新春にかけての財政運営ルールの大改正を網羅するとともに、装丁が縦書きから横書きに刷新された。本書はこれまで、初版(712ページ)→平成18年版(948ページ)→平成22年版(1,144ページ)と改訂を重ねるたびにページ数を増やしてきたが、今回の平成24年版では、収録法令の増大にも関わらずレイアウト変更により992ページにスリム化された。
余談だが、縦書きから横書きへの刷新といえば、当BLOG管理人には『月刊社労士』(旧「月刊社会保険労務士」)や『租税法』(金子宏著)第12版が記憶に新しいが、今回はそれ以来のインパクトであった。


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2010/9/6): 「確定給付企業年金・確定拠出年金法令通達集」平成22年版



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2012年03月26日

2012年度の企業年金の予定利率

厚生労働省は3月26日、厚生年金基金および確定給付企業年金の財政検証に用いる2012年度の利率を告示した(厚生労働省告示第153〜155号、年企発第0326第1号)。継続基準に用いる予定利率の下限は1.1%、非継続基準に用いる利率は2.24%となった。企業年金の予定利率は1997年以降ほぼ自由化されており、上記の利率は例年3月頃に告示または通知される。当該利率の根拠となる国債の応募者平均利回りは、財務省Webサイトの「国債入札カレンダー」から入手できる。なお、各制度における下限予定利率の推移は以下のとおり。

◆継続基準の予定利率
 <年度> <厚年> <DB>   <算定根拠>
 1997年  4.0%   ──  10年国債応募者平均利回りの5年平均
 1998年  3.4%   ──        
 1999年  2.9%   ──        
 2000年  2.4%   ──        
 2001年  2.0%   ──        
 2002年  1.2%  1.2%  5年平均または1年平均のいずれか小さい率
 2003年  1.2%  1.2%       
 2004年  0.9%  0.9%       
 2005年  1.3%  1.3%       
 2006年  1.2%  1.2%       
 2007年  1.3%  1.3%       
 2008年  1.4%  1.4%       
 2009年  1.5%  1.5%       
 2010年  1.3%  1.3%       
 2011年  1.1%  1.1%       
 2012年  1.1%  1.1%       



非継続基準については、利率そのものは告示等で定められているものの、2003年以降は、当該利率に0.8〜1.2の調整率を乗ずることが可能となっている。非継続利率の推移は以下のとおり。

◆非継続基準の予定利率
 <年度> <厚年> <DB>   <算定根拠>
 1997年  4.75%   ──  20年国債応募者平均利回りの5年平均
 1998年  4.00%   ──  (小数点以下0.25揃え)
 1999年  3.50%   ──        
 2000年  3.00%   ──        
 2001年  2.75%   ──        
 2002年  2.50%  2.50%       
 2003年  2.23%  2.23%  (小数点以下0.25揃えを廃止)
 2004年  2.29%  2.29%  30年国債応募者平均利回りの5年平均
 2005年  2.20%  2.20%       
 2006年  2.17%  2.17%       
 2007年  2.20%  2.20%       
 2008年  2.27%  2.27%       
 2009年  2.44%  2.44%       
 2010年  2.38%  2.38%       
 2011年  2.32%  2.32%       
 2012年  2.24%  2.24%       



※参考資料
企業年金制度における各利率の設定基準(日本年金数理人会) (pdfファイル)
◆10年国債応募者平均利回り (当BLOG作成)
 keizoku-rate2012.jpg
◆20年・30年国債応募者平均利回り (当BLOG作成)
 hikeizoku-rate2012.jpg


<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/3/30): 2011年度の企業年金の予定利率
The企業年金BLOG(2007/3/16): 企業年金の予定利率の算出根拠とは



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2012年03月07日

AIJ事件発覚以降、妙にテンションの高いWebサイト2件

先月末からのAIJ投資顧問を巡る一連の報道以降、蜂の巣をつついたような騒ぎとなっている企業年金業界。本件については当BLOG管理人も語りたいことは色々あるのだが(例:AIJを「日本版マドフ」と警告したとされる某業界誌の元記事読んだけど・・・どこが警鐘!?)、本件の煽りを受けて業務多忙を極めており、当面はブログ更新どころではない_| ̄|●
そんなヘタレな当BLOG管理人に代わり、今回は、AIJ騒動以降、更新頻度を急激に上げているハイテンションなWebサイトを2件ご紹介しよう。


企業年金の会計 (横山会計事務所)
  企業年金の会計(横山会計事務所)

企業年金の会計に特化したWebサイトとしては老舗中の老舗。当BLOG管理人がインターネットをやり始めた1990年代末頃から、黄色を基調とした昔ながらのデザインは些かも変わっていない。会計士の手によるだけあって基本的には会計情報がメインであり、2000年の退職給付会計の導入時には頻繁に更新されていたものの、その後は鳴りを潜めていることが多く、知る人ぞ知る存在であった。
ところが、今回のAIJ騒動を受けて、かつての雄姿を髣髴とさせる更新ラッシュを展開し始めたのは、オールドファンにとってはまさに嬉しい誤算。AIJ騒動を会計基準や監査の視点から論じているWebサイトは他に類が無く、まさに会計士ならではの専門的知見が覗える。


確定拠出年金(個人型)の基礎知識
  確定拠出年金(個人型)の基礎知識

一見すると確定拠出年金(DC)に関するただの商品比較・情報発信サイトであり、頻繁に更新しているようには見受けられない。しかし実は、メニュー右側の「最近のエントリー」欄およびページ下部の「最近の更新」欄に、Webサイト管理者によるコメントがたまに投稿される。これまでは1〜2月に1回のペースだったが、AIJ事件の発覚以降、本日時点で既に4回も更新されるなど、こちらも更新頻度が上がってきている。
それにしてもこのWebサイト、AIJ事件には敏感に反応するもののDCの情勢(マッチング拠出解禁など)への反応が希薄というのは、DC専門サイトとしては如何したものだろうか(汗)。まあ、それなりに面白いからいいけどw



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2012年02月16日

2011年12月末時点の適格退職年金は1,045件

本日、厚生労働省ホームページ内の適格退職年金制度の動向コーナーが更新され、適格退職年金は2011年12月末時点で契約件数1,045件、加入者数10.0万人であることが公表された。2011年9月末時点から3ヶ月で2,379件減少したことを考慮すると、廃止期限が到来する本年3月までにはほぼ対応が終了するであろう。
なお、上記とは別に、閉鎖適年は同時点で2,903件(受給者数:約2.72万人)となり、閉鎖適年が契約件数で上回る事態となった。
最後に、適年移行が始まった2002年以降の適年の推移は、以下のとおりである。

  <年月> <件数> <減少数>
  2002.3  73,582   ──
  2003.3  66,741 (▲6,841) 
  2004.3  59,162 (▲7,579) 
  2005.3  52,761 (▲6,401) 
  2006.3  45,090 (▲7,671) 
  2007.3  38,885 (▲6,205) 
  2008.3  32,826 (▲6,059) 
  2009.3  25,441 (▲7,385) 
  2010.3  17,184 (▲8,257) 
  2011.3   8,051 (▲9,133)
  2011.9   3,424 (▲4,627) ※半期ベース
  2011.12  1,045 (▲2,379) ※四半期ベース
  (注)遡及修正されているため、公表時の数値とは必ずしも一致しない。



<参考資料>
適格退職年金制度の動向 (厚生労働省)
適格退職年金契約関係 (国税庁)
適格退職年金移行支援 (企業年金連合会)

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2011/12/21): 2011年9月末時点の適格退職年金は3,424件
The企業年金BLOG(2011/5/25): 企業年金の受託概況(2011年3月末)
The企業年金BLOG(2011/1/31): 簡素化と言っても「閉鎖適年」の話だけどね



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2012年02月12日

所得再分配を伴わない公的年金は不要!?

前回のエントリの続き。

前回、わが国の公的年金は、単なる老後貯蓄商品ではなく長寿リスクに備えるための保険であると述べた。しかし、一口に保険といっても、民間の保険と社会保険とではその性質は大きく異なる。民間の保険は、基本的には、支払う保険料と受け取る保険金の期待値(=保険事故発生率×保険金額)が等価となるべく設計される。これを「給付・反対給付均等の原則」といい、個人単位ではなく制度全体に拡張したものを「収支相等の原則」という。
しかし、社会保険の場合は、制度全体では収支相等を図るものの(そうでないと制度が成り立たないw)、政策上の目的を達成する観点から、個々人単位での収支相等にはあえて目をつぶる場合がある。終身年金に次ぐわが国の公的年金のもう一つの特徴である所得再分配機能は、その最たるものである。

ここで所得再分配というと、何とかの一つ覚えみたいに世代「間」扶養が取りざたされるが、所得再分配機能でより重要なのは、世代「内」扶養、すなわち高所得者から低所得者への所得再分配である。たまに「社会保険方式なのだから再分配をするな!」「負担に見合った給付をしろ!」などの批判が見受けられるが、社会保険方式は純然たる保険料方式とは質を異にする以上、そのような指摘は的外れでしかない。逆に、所得再分配を伴わない公的年金など民業(企業年金&個人年金)圧迫でしかない。

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2012/2/3): 終身給付ではない公的年金は不要!?



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2012年02月03日

終身給付ではない公的年金は不要!?

年金の支給開始が70歳になったら、「金融商品」としての損得はどうなるのだろうか? (橘玲 公式サイト)
公的年金の支給開始年齢を70歳に引き上げるという案が話題になった。あまりの反発に民主党は即座に撤回したが、年金財政の悪化を考えれば、早晩復活することは間違いないだろう。
ところで年金の支給が70歳開始になったら、積み立てた保険料と、生涯にわたって受け取ることになる保険金の関係はどうなるのだろうか?

上記のような議論でありきたりなのが、掛金支払総額と年金受取総額(見込)を比較して「払った分だけ元が取れないから(公的年金への加入は)損だ」とするもの。中には、馬鹿の一つ覚えみたいに内部収益率(IRR)を算出して「数学的にも証明されました(キリッ!)」とドヤ顔して恥じない学者・学生も後を絶たない(汗)。世に蔓延するマネーの常識に淡々と異議を唱えることで知られる橘玲氏もまた、残念ながらそのご多分に漏れなかった模様。
さて、上記の橘氏の記事では、70歳から平均余命までの期間を基に比較検証していたが、実は、確定年金と同じ感覚で公的年金それも終身年金(終身給付)の収益性を論じるのはあまり意味がない。何故なら、終身給付は文字通り生きている限り給付を受け取れるため、受取総額が最終的に幾らになるかは受給が終了しないと(=死んでみないと)分からないからである。内部収益率の算出には期間の設定が必要であり、終身給付のように不確定なキャッシュ・フローでは内部収益率の算出は不可能である。何せ人間はいつ死ぬか分からないからである。まあ、内部収益率だなんて大層なモノを引っ張り出さなくても、ここでは終身年金は長生きすれば得、早死にすれば損とだけ覚えておけば良い。

わが国の公的年金は終身給付を旨としている。つまり、公的年金を金融商品になぞらえるなら、単なる老後貯蓄商品ではなく、不意に長生きしたことを理由に支払われる保険商品と捉えるべきであろう。生命保険(死亡保険)がいつ死ぬか分からないリスクへの備えであるのに対し、公的年金(生存保険)はいつまで生きるか分からないリスクへの備えである。よって、死亡保険で払った分だけ元を取ろうという発想が珍妙なのと同様、公的年金で払った分だけ元を取ろうというのもまたお門違いである。

また、終身給付は、早死にした者の給付原資を長生きしている者に再分配することを前提に構築されている。このため、長生きする自信のある層がこぞって加入する民間保険よりも、早死にする可能性が高い層もまとめて強制加入させる公的年金の方が掛金水準は低くなる傾向にある。すなわち、効率的な終身給付を提供するなら強制加入の公的年金が最適なのである。逆に、終身給付を提供しない公的年金など民業(企業年金&個人年金)圧迫でしかない。

<関連エントリ>
The企業年金BLOG(2012/2/12): 所得再分配を伴わない公的年金は不要!?



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